ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

友愛を捨てて、日本に返れ37

2010-01-22 09:23:31 | 時事
●離米志向のアジア共通通貨構想

 鳩山氏は、東アジアについて次のように言う。「ヨーロッパと異なり、人口規模も発展段階も政治体制も異なるこの地域に、経済的な統合を実現することは、一朝一夕にできることではない。しかし、日本が先行し、韓国、台湾、香港が続き、ASEANと中国が果たした高度経済成長の延長線上には、やはり地域的な通貨統合、『アジア共通通貨』の実現を目標としておくべきであり、その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出する努力を惜しんではならない」という。
 経済協力にはいろいろな仕方がある。現にAPECやASEAN+3(日中韓)等による経済協力が行われている。しかし、鳩山氏は「地域的な通貨統合、アジア共通通貨の実現」へと話を飛躍させる。
 鳩山氏は「『アジア共通通貨』の実現を目標」とすると言うときに、「その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出する努力」と述べる。鳩山氏は地域集団安全保障が共通通貨の実現の「背景」となるものであり、先行すべきものであることを認識しているわけである。認識しているのに、その問題を無視して、アジア共通通貨に話を移すのである。安全保障の問題は、次の項目で述べることにして、まず通貨について書きたい。
 鳩山氏はアジア共通通貨も、「友愛」から導かれるものだとする。氏は「世界、とりわけアジア太平洋地域に恒久的で普遍的な経済社会協力及び集団的安全保障の制度が確立されることを念願し、不断の努力を続けること」が、「日本国憲法の理想とした平和主義、国際協調主義を実践していく道」であり、「米中両大国のあいだで、わが国の政治的経済的自立を守り、国益に資する道」でもある。また「カレルギーが主張した『友愛革命』の現代的展開」でもあると言う。ここから通貨のことに話が進むのだが、鳩山氏は「こうした方向感覚からは、たとえば今回の世界金融危機後の対応も、従来のIMF、世界銀行体制のたんなる補強だけではなく、将来のアジア共通通貨の実現を視野に入れた対応が導かれるはずだ」と言う。
 そして、「アジア共通通貨の実現には今後10年以上の歳月を要するだろう。それが政治的統合をもたらすまでには、さらなる歳月が必要であろう。世界経済危機が深刻な状況下で、これを迂遠な議論と思う人もいるかもしれない。しかし、われわれが直面している世界が混沌として不透明で不安定であればあるほど、政治は、高く大きな目標を掲げて国民を導いていかなければならない。いまわれわれは、世界史の転換点に立っており、国内的な景気対策に取り組むだけでなく、世界の新しい政治、経済秩序をどう創り上げていくのか、その決意と構想力を問われているのである」と書いている。
 引用が長くなったが、私も今日、世界金融危機後の対応は、従来のIMF、世界銀行の補強にとどまってはならないと考えている。むしろ、ドルを基軸通貨とするIMF=世界銀行の体制に替わる新しい体制の創出が求められていると思う。しかし、鳩山氏の発想は、世界経済の全体を考えるのではなく、アジア地域に局限されている。なぜアジアに限定するのか。私はここにも鳩山氏の根本的な反米姿勢を見る。ドルを外しドルを除いて、アジアの通貨を考えているわけである。私は、アジア共通通貨構想は安全保障における離米志向に対応した経済における離米志向だと思う。

 次回に続く。