ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

友愛を捨てて、日本に返れ39

2010-01-27 09:28:17 | 時事
●安全保障における鳩山氏の大きな後退

 鳩山氏は、わが国が米中の狭間で「いかにして政治的・経済的自立を維持し、国益を守っていくのか」という課題を自覚している。また「経済協力と安全保障のルールを創り上げていく道を進むべき」「東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出する努力を惜しんではならない」とも言うから、日米安保体制だけでなく、東アジアの地域集団安全保障体制を構築することによって、わが国の安全保障を強化することを目指しているらしい。
 ところが、鳩山氏の安全保障論には、ほとんど中身がない。国家安全保障の核心は軍事である。具体的には、国防の意思と実力である。安全保障の問題は、誰が日本を守るのか、という根本的なところから考えなければならない。国防の主体は誰なのか、日本の国民なのか、自衛隊員なのか、米軍兵士なのかという点から、考えるべき問題である。
 鳩山氏は、平成17年(2005)の新憲法試案では、「安全保障」という独立した章を設け、自衛隊を自衛軍とする案を発表した。「日本国は、自らの独立と安全を確保するため、陸海空その他の組織からなる自衛軍を保持する」という条文を示し、集団的自衛権については、現在の政府見解である内閣法制局の解釈を改め、「集団的自衛権の制限的な行使を容認する」という立場に立つことを明らかにした。
 ところが、鳩山氏は、首相となると自衛軍への改正を語らなくなり、集団的自衛権に関する自説を撤回した。つまり、現状維持ということである。いったい日本の戦力を自衛隊と呼び、集団的自衛権は保有するが行使できないというわが国の現状のままで、東アジアの国々と集団安全保障の枠組み作りなどできるだろうか。集団的自衛権は保有するが行使できないというわが国のような国と、国家の運命をともにしようという国がアジアに存在するだろうか。私は存在しないと思う。日米関係が極めて特殊なのである。

●「逆説」ではなく破綻

 鳩山氏は、安全保障に関する姿勢に重大な問題を露にしながら、次のように「Voice」論文に書く。
 「いまやASEAN、日本、中国(含む香港)、韓国、台湾のGDP合計額は世界の4分の1となり、東アジアの経済的力量と相互依存関係の拡大と深化は、かつてない段階に達しており、この地域には経済圏として必要にして十分な下部構造が形成されている。しかし、この地域の諸国家間には、歴史的文化的な対立と安全保障上の対抗関係が相俟って、政治的には多くの困難を抱えていることもまた事実だ」と。
 氏の所論は、ここで大きく乱れる。「しかし」と鳩山氏は続ける。「軍事力増強問題、領土問題など地域的統合を阻害している諸問題は、それ自体を日中、日韓などの二国間で交渉しても解決不能なものなのであり、二国間で話し合おうとすればするほど双方の国民感情を刺激し、ナショナリズムの激化を招きかねないものなのである。地域的統合を阻害している問題は、じつは地域的統合の度合いを進めるなかでしか解決しないという逆説に立っている。たとえば地域的統合が領土問題を風化させるのはEUの経験で明らかなところだ」と。
 鳩山氏は「軍事力増強問題、領土問題など地域的統合を阻害している諸問題」は、「二国間で交渉しても解決不能」であり、「二国間で話し合おうとすればするほど双方の国民感情を刺激し、ナショナリズムの激化を招きかねない」と言う。そして「地域的統合を阻害している問題は、じつは地域的統合の度合いを進めるなかでしか解決しない」という。
 これは「逆説」ではない。「妄説」であり、論理の破綻である。

 次回に続く。