明日は、自民党の総裁選。福田氏が総裁に選ばれ、内閣総理大臣となる可能性は、ほぼ揺るがないようである。
福田氏は、経済優先的保守であり、日本経団連から保守系リベラルまでの広い支持を集めるのは、中国との間の経済的利益の追求を重視することが大きな理由だろう。金儲けの障害になる歴史認識や靖国神社や北朝鮮の拉致問題等は、相手と摩擦を起こさないように、妥協や譲歩をする。民族の理想や誇りは、損なわれることになる。
小泉氏が首相だった当初、氏は8月15日に靖国神社に参拝すると公約していたが、結局13日に参拝した。一説によると、福田氏が頑固に15日の参拝に反対し、前倒しを具申したという。
その福田氏が私的機関としていたのが、靖国神社に替わる宗教の国立追悼施設の建設を目指す有識者の懇談会だった。中国といさかいを起こさないように、脱靖国を図るというのが、目的だろう。
皇統に関しては、小泉首相時代に「皇室典範に関する有識者懇談会」がつくられ、女性天皇擁立・女系継承容認のために、皇室典範を改正しようとしていた。その立ち上げの時期に政府側の中心となっていたのが、当時官房長官の福田氏だと伝えられる。
福田氏は、雅子妃殿下の実家である小和田家と関係が深いと報じられている。妃殿下の実父・小和田恒氏が外務省から福田氏の父・福田赳夫氏の外務大臣秘書官として出向していた。総理大臣秘書官にもなった。その時、康夫氏は小和田氏と父の秘書官として事務所で机を並べていたという。小和田家とは、それ以来のつながりらしい。皇室典範を改正し、愛子様を天皇にという筋書きは、早くから官邸・宮内庁でひそかに作られていたことがわかっているが、福田氏は、これにもかかわっていたことだろう。
靖国神社の問題にしても皇統継承の問題にしても、福田氏が過去に重要なかかわりをしてきたということは、仮に氏が首相になった場合、氏が考える方向に、政府・官僚が動く可能性があるということである。
この点について、日大教授の百地章氏がいつもながら、明快な意見を書いていた。百地氏は、福田氏を「伝統破壊の仕掛け人」と厳しく批判している。以下その抜粋。
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【正論】安倍首相辞任 日本大学教授・百地章 女系天皇と追悼施設どうなる
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070921/srn070921000.htm
■伝統破壊の「仕掛け人」福田氏に問う
(略)
≪追悼施設調査費を計上か≫
福田氏が当選した場合、拉致問題の後退、媚中外交、改憲への取り組みの中断などは目に見えており、国益という点から考えてきわめて危うい事態が生ずると思われる。それとどうしても訊いておきたいのが、靖国神社に替わる国立追悼施設と女性天皇・女系天皇の問題である。というのは「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会(略称・追悼懇)」も「皇室典範に関する有識者懇談会」も、設置者は福田官房長官(当時)その人だったからである。しかも前者の懇談会では、追悼施設の建設に反対した委員は坂本多加雄氏のみ、後者の懇談会では女性天皇・女系天皇の容認に反対した委員が一人もいないという異例なものであった。
つまり、追悼施設と女系天皇の両者とも「仕掛け人」は福田官房長官であったといってよい。現に福田氏は今回の出馬会見でも「戦争のすべての犠牲者を追悼できる施設がいつかはできてほしい。戦後60年(以上)たっているので、これから考えていく必要のある時期だ」と語っており、これはまだ終わった話ではない。それに氏は超党派の「国立追悼施設を考える会」の発起人を務めている。しかも福田氏は、靖国神社参拝についても「相手が嫌がることをあえてする必要はない」とまで言い切っている。総理就任早々、追悼施設建設のための調査費を計上し、既成事実化を図ったりすることはないであろうか。
≪「女系容認」派を集め懇談会≫
次に女系天皇の問題であるが、皇室典範に関する有識者懇談会が「女系天皇の容認」と「長子優先主義」を骨子とする報告書を提出したのは平成17年11月のことである。
しかし、この答申に対しては多数国民の強い反対があり、昨年9月の秋篠宮悠仁親王のご生誕と安倍内閣の誕生により、報告書は事実上棚上げにされた。しかしながら、もし福田内閣の誕生ということにでもなれば、女系天皇容認派の巻き返しも考えられよう。
この報告書の問題点については、別稿で詳細な批判を加えたことがあるが、新憲法制定以来の政府見解が「憲法第2条の『世襲』とは、本来、男系を意味する」というものであったのに対して、「男系でも女系でも構わない」との政府答弁を初めて行ったのが、福田官房長官であった(拙稿「『皇位の世襲』の意味と『女系天皇』への疑問」『阿部照哉先生喜寿記念論文集 現代社会における国家と法』)。つまり、従来の政府見解と矛盾した答弁を自ら行ったうえ、女系天皇容認派の「有識者」を集めて、都合の良い答申を出させたのが福田官房長官であった。
追悼施設の建設に反対する国会議員は当時、自民党議員の過半数を占めていたし、「皇室の伝統を守る国会議員の会」会員約200人の大部分は自民党所属の方々である。派閥や選挙区事情等さまざまな理由がおありだろうが、ことは国柄や国家の精神的基礎にかかわる重大問題であり、一歩間違えば取り返しがつかないことになる。そのことをよくよく念頭に置かれ、総裁選びを行って頂きたいと思う。(ももち あきら)
(2007/09/21 05:22)
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福田氏は、経済優先的保守であり、日本経団連から保守系リベラルまでの広い支持を集めるのは、中国との間の経済的利益の追求を重視することが大きな理由だろう。金儲けの障害になる歴史認識や靖国神社や北朝鮮の拉致問題等は、相手と摩擦を起こさないように、妥協や譲歩をする。民族の理想や誇りは、損なわれることになる。
小泉氏が首相だった当初、氏は8月15日に靖国神社に参拝すると公約していたが、結局13日に参拝した。一説によると、福田氏が頑固に15日の参拝に反対し、前倒しを具申したという。
その福田氏が私的機関としていたのが、靖国神社に替わる宗教の国立追悼施設の建設を目指す有識者の懇談会だった。中国といさかいを起こさないように、脱靖国を図るというのが、目的だろう。
皇統に関しては、小泉首相時代に「皇室典範に関する有識者懇談会」がつくられ、女性天皇擁立・女系継承容認のために、皇室典範を改正しようとしていた。その立ち上げの時期に政府側の中心となっていたのが、当時官房長官の福田氏だと伝えられる。
福田氏は、雅子妃殿下の実家である小和田家と関係が深いと報じられている。妃殿下の実父・小和田恒氏が外務省から福田氏の父・福田赳夫氏の外務大臣秘書官として出向していた。総理大臣秘書官にもなった。その時、康夫氏は小和田氏と父の秘書官として事務所で机を並べていたという。小和田家とは、それ以来のつながりらしい。皇室典範を改正し、愛子様を天皇にという筋書きは、早くから官邸・宮内庁でひそかに作られていたことがわかっているが、福田氏は、これにもかかわっていたことだろう。
靖国神社の問題にしても皇統継承の問題にしても、福田氏が過去に重要なかかわりをしてきたということは、仮に氏が首相になった場合、氏が考える方向に、政府・官僚が動く可能性があるということである。
この点について、日大教授の百地章氏がいつもながら、明快な意見を書いていた。百地氏は、福田氏を「伝統破壊の仕掛け人」と厳しく批判している。以下その抜粋。
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【正論】安倍首相辞任 日本大学教授・百地章 女系天皇と追悼施設どうなる
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070921/srn070921000.htm
■伝統破壊の「仕掛け人」福田氏に問う
(略)
≪追悼施設調査費を計上か≫
福田氏が当選した場合、拉致問題の後退、媚中外交、改憲への取り組みの中断などは目に見えており、国益という点から考えてきわめて危うい事態が生ずると思われる。それとどうしても訊いておきたいのが、靖国神社に替わる国立追悼施設と女性天皇・女系天皇の問題である。というのは「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会(略称・追悼懇)」も「皇室典範に関する有識者懇談会」も、設置者は福田官房長官(当時)その人だったからである。しかも前者の懇談会では、追悼施設の建設に反対した委員は坂本多加雄氏のみ、後者の懇談会では女性天皇・女系天皇の容認に反対した委員が一人もいないという異例なものであった。
つまり、追悼施設と女系天皇の両者とも「仕掛け人」は福田官房長官であったといってよい。現に福田氏は今回の出馬会見でも「戦争のすべての犠牲者を追悼できる施設がいつかはできてほしい。戦後60年(以上)たっているので、これから考えていく必要のある時期だ」と語っており、これはまだ終わった話ではない。それに氏は超党派の「国立追悼施設を考える会」の発起人を務めている。しかも福田氏は、靖国神社参拝についても「相手が嫌がることをあえてする必要はない」とまで言い切っている。総理就任早々、追悼施設建設のための調査費を計上し、既成事実化を図ったりすることはないであろうか。
≪「女系容認」派を集め懇談会≫
次に女系天皇の問題であるが、皇室典範に関する有識者懇談会が「女系天皇の容認」と「長子優先主義」を骨子とする報告書を提出したのは平成17年11月のことである。
しかし、この答申に対しては多数国民の強い反対があり、昨年9月の秋篠宮悠仁親王のご生誕と安倍内閣の誕生により、報告書は事実上棚上げにされた。しかしながら、もし福田内閣の誕生ということにでもなれば、女系天皇容認派の巻き返しも考えられよう。
この報告書の問題点については、別稿で詳細な批判を加えたことがあるが、新憲法制定以来の政府見解が「憲法第2条の『世襲』とは、本来、男系を意味する」というものであったのに対して、「男系でも女系でも構わない」との政府答弁を初めて行ったのが、福田官房長官であった(拙稿「『皇位の世襲』の意味と『女系天皇』への疑問」『阿部照哉先生喜寿記念論文集 現代社会における国家と法』)。つまり、従来の政府見解と矛盾した答弁を自ら行ったうえ、女系天皇容認派の「有識者」を集めて、都合の良い答申を出させたのが福田官房長官であった。
追悼施設の建設に反対する国会議員は当時、自民党議員の過半数を占めていたし、「皇室の伝統を守る国会議員の会」会員約200人の大部分は自民党所属の方々である。派閥や選挙区事情等さまざまな理由がおありだろうが、ことは国柄や国家の精神的基礎にかかわる重大問題であり、一歩間違えば取り返しがつかないことになる。そのことをよくよく念頭に置かれ、総裁選びを行って頂きたいと思う。(ももち あきら)
(2007/09/21 05:22)
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