ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

小泉・安倍から福田か麻生へ

2007-09-19 12:19:33 | 時事
 小泉純一郎氏と安倍晋三氏は、それぞれどういう政治をしたのか。そして、次の首相候補である福田康夫氏と麻生太郎氏は、それぞれ彼らの路線・政策の何を受け継ぎ、何を変えようとしているのか。

 まず小泉政治と安倍政治の比較。思いつくままに。基本姿勢とカッコ内のコメントは、私の評価。

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●小泉政治

<基本姿勢>
 経済優先的保守(伝統尊重的保守に対抗、保守系リベラルとは連携)

<路線>
 構造改革(実は従米売国)

<党務>
 派閥政治の破壊(独裁的リーダーシップに)
 公明党との連立(一体化が深刻に)

<内政>
 改革なくして成長なし(景気は回復、財政赤字は増大)
 郵政民営化(アメリカへの身売りのおそれ)
 特殊法人の整理削減(中途半端で、骨抜きに)
 市場原理主義の導入(個人と地域に格差拡大)
 個の自立、個の確立(家族の崩壊が進む)
 男女共同参画の推進(フェミニズムが蔓延)
 皇統は女帝女系容認(親王殿下誕生で阻止)
 首相の靖国参拝の復活(個人的にとどまる)

<外交>
 アメリカ重視(イラク戦争に追従)
 自衛隊の海外派遣(法は未整備のまま)
 会社・会計・司法等の制度改革(年次改革要望書の実行、売国的アメリカ化)
 中国への距離、靖国がらみで首脳会談せず(歴史認識は争わず)
 北朝鮮拉致問題に一定の前進(政権維持に利用)
 国連安保理入り目指す(改憲せぬのではもともと無理)

●安倍政治 

<基本姿勢>
 伝統尊重的保守(経済優先的保守から出て、伝統尊重にシフト。保守系リベラルと対立)

<路線>
 戦後レジュームからの脱却(わが国の最大課題に取り組む)

<党務>
 派閥宥和の中での官邸主導(お友達内閣の弱さ)
 公明党との連立(一体化続く)

<内政>
 構造改革の継続(改革の推進力は低下)
 格差是正に着手(実効はまだ少ない)
 憲法改正を掲げる、国民投票法の成立(志半ばに終わる)
 教育改革に着手、教育基本法の改正(改革まだ前進せず)
 防衛庁を防衛省に(実質がまだ伴わない)
 家族の重視、フェミニズム蔓延の制止(浸透は遅い)
 皇統は男系継承の安定化(進んでいるか不明)
 靖国参拝あいまい(参拝せずに終わる)

<外交>
 アメリカ重視からアジアへの配慮へ(アメリカからは軽視される)
 集団的自衛権の行使を検討(論議不十分のまま)
 北朝鮮拉致問題に情熱(米中朝に振り回される)
 価値観外交の推進(アメリカニズムへの傾倒では)
 インドとの戦略的協力(日米印豪の提携は対中に意義)

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 こうした小泉氏・安倍氏の路線・政策に対し、福田氏・麻生氏はどういう姿勢・立場をとろうとしているか。本日の産経新聞の記事が、なかなかよく書いていた。とりあえずの整理に役立つと思う。
 本紙14版では「総裁選 路線継承でのスタンスの違い 福田氏「親小泉・反安倍」 麻生氏「反小泉・親安倍」と題されたもの。

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●産経新聞 平成19年9月9日号

自民総裁選、どっちが親安倍?、親小泉?
http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070918/shs070918002.htm

 23日投開票の自民党総裁選で、福田康夫元官房長官(71)と麻生太郎幹事長(66)のスタンスの違いが次第に広がりつつある。福田氏は小泉純一郎前首相の構造改革路線を強く打ち出す一方、安倍晋三首相の「戦後レジーム脱却」路線には否定的だ。これに対して、麻生氏は小泉路線の修正を訴え、安倍路線は高く評価する。同じ系譜にある小泉-安倍両政権の評価が分かれたことで、総裁選は複雑な様相を帯びている。
 「小泉改革はすごい改革をした。50年、100年続いた制度を根幹から変えてしまった」
 「小泉内閣があれほど大きな改革を成功させたのは国民の信頼があったからだ」
 福田氏は17日の大阪市での街頭演説で小泉氏を礼賛した。小泉路線への傾倒は日増しに強まる傾向にある。小泉内閣の官房長官を長く務めたので当然ともいえるが、平成16年5月にたもとを分かつ形で辞任しただけに違和感はぬぐえない。
 福田氏が小泉路線を打ち出すのは、各種世論調査で安倍首相の政治路線の変更を求める声が強い一方、小泉氏の構造改革路線への評価が依然として高いことがある。
 加えて、これまで安倍首相を支持しながら福田氏支持に転じた議員には、「福田氏が小泉改革を支持しなければ(同氏を支持する)大義を失う」(若手)との事情もあるようだ。衆院当選1回の「小泉チルドレン」の支持を取り付けるには小泉氏の看板は下ろせないとの事情もある。
 一方、福田氏は、対北朝鮮外交で首相の「圧力」路線から「対話」路線への転換を表明。首相が進めてきた教育再生や憲法改正、集団的自衛権の解釈変更などに言及したことはない。もともと安倍首相とは相性が悪いこともあり、「福田政権になれば安倍路線は全否定される」(中堅)との見方が強い。

   × × ×

 麻生氏は安倍政権を「9カ月間で教育基本法改正や防衛庁の省昇格、国民投票法など難しい法律を次々に成立させた。後世に高く評価されるはずだ」と絶賛する。
 麻生氏は昨年の総裁選で首相の対抗馬だったが、政権発足後は外相、幹事長を務め、「AAライン」と呼ばれるほど緊密に連携した。もともと文教族で教育改革に熱心だった上、外相として外交政策を首相と二人三脚で進めてきたこともあり、「安倍路線の否定」は自己否定につながるのだ。
 その一方で、小泉構造改革については「継承する」と言いながらも、地域格差問題では「光が強ければ影も色濃くでる」「改革の痛みには鎮痛剤や輸血などの手当ても必要だ」と修正を強調。参院選の敗因も「小泉政権から引き継いだ負の遺産が大きなマイナス要因」と断じている。
 党内基盤が脆弱(ぜいじゃく)な麻生氏が地方党員の支持を得るには「経済政策の軌道修正は不可避」との読みがある。加えて、麻生氏は総務相時代に郵政民営化などをめぐり、小泉氏のブレーンである竹中平蔵経済財政担当相(当時)と激しく対立。竹中氏と親しい中川秀直前幹事長とも仲が悪く、小泉改革を全面支持するわけにはいかないようだ。
 ただ、麻生氏の誤算は、首相の突然の辞任表明で安倍政権への信頼感が低下してしまったことだ。加えて、首相の出身派閥である町村派が丸ごと福田氏支持に回り、安倍首相が影響力を行使できなかったことも苦戦の原因となっている。
(2007/09/18 23:39)
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 こうやって見ると、福田氏「親小泉・反安倍」 麻生氏「反小泉・親安倍」という表題は、スタンスをよくとらえている。
 麻生氏は、安倍氏ほど明確に「戦後レジュームからの脱却」を打ち出してはいないが、基本的にはこれを達成しようという伝統尊重的保守派だと思う。憲法改正・教育改革・国防充実という国家の根幹となる課題を推進できる政治家の一人である。麻生氏は、日本の底力を信じ、これを引き出して日本人に誇りと元気を与えようとしている。
 これに対し、福田氏は、安倍・麻生の伝統尊重的保守とは対極的な位置にいる。経済優先的保守と保守系リベラルの中間あたりにいるように思う。そういう点で、小泉・安倍の後、本音では小泉政治に反対だった保守系リベラルを含めて、自民党の多数の派閥が寄り合って談合政治に戻すには、都合の良い人材なのだろう。最大のポイントは、日本人としての理念や誇りより、中国から経済利益を求める勢力の意向に沿うことだろう。

関連掲示
・私の言う「保守」「経済優先的」「伝統尊重的」「リベラル」については、以下をご参照のこと。
 拙稿「日本的な保守に日本精神の背骨を」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion13a.htm