ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

憲法第9条は改正すべし9

2007-09-10 09:33:29 | 憲法
 最終回。

●第9条解釈検討のまとめ

 第9条の解釈について、以下の三つの説を検討してきた。

①戦争も戦力も一切放棄(完全武装放棄説)
②自衛のための戦力は持てる(自衛的戦力保持可能説)
③戦力は駄目だが自衛力なら持てる(非戦力的自衛力是認説)(政府見解)

 ①の説は、誤解である。素朴な思い込みか、日本を非武装にして侵攻・支配しようとする策略である。
 基本的には、②の説が正しいと私は考える。第9条は、侵攻戦争を放棄し、そのための戦力は持たす、交戦権は否認する。しかし、自衛戦争は国家固有の権利として保持し、自衛のための戦力は保持できる。このように解釈することが適切である。
戦後のわが国は、アメリカとの関係において②の自衛のための戦力は持てるという自衛的戦力保持可能説を取って独自の軍隊を持つことが、できなかった。自衛隊は、アメリカの管理のもと米軍を保管するものとして創設・編成された。
 こうした条件のもと、政府は、③の説を取り、自衛力を最小限という量的条件をつけて正当化した。この説を取れば、集団的自衛権の行使は憲法解釈上できないという見解となる。だから、もし集団的自衛権を行使できるようにするのならば、第9条の解釈を変更する必要がある。それは、③の説を止めて、②の説を取るという大幅な解釈変更に帰結する。この変更は、私の論では、変更というより是正である。もともとそう解釈すべきだったものに正すということである。

 そもそも自衛権は、国家の正当防衛権である。そのうち個別的自衛権は、自国のためにする正当防衛権であり、集団的自衛権は自他相互のために行なう正当防衛権である。
 第9条第1項は、国権の発動としての戦争、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇及び武力行使を放棄することを定めているが、これは不戦条約及び国連憲章と同旨である。不戦条約では、実質的な集団的自衛権が留保され、国連憲章において始めて明文化された。国連憲章では、個別的かつ集団的自衛権の行使は、単に国家固有の権利であるにとどまらず、同時にまた国際的責務ともなっている。したがって、これと同旨の第9条1項が集団的自衛権を否定するという解釈は、無理がある。

 憲法第9条が禁止しているのは侵略戦争及び侵略的な武力による威嚇及び武力行使であり、これを目的とする陸、海、空軍ならびに他の戦力の保持、ならびに交戦権である。第9条は自衛権を認めており、自衛のための戦力の保有を禁じてはいない。そう解するならば、国内法上その行使が禁止されていると解すべきでない。集団的自衛権の行使は可能である。ただし、その行使は無制限のものではない。実は、サンフランシスコ講和条約及び日米安保条約の締結、国連への加盟の時点では、わが国の政府は、そのような解釈を取っていた。
 現在の日米安保条約の第5条は日米両国が自衛権行使、集団的自衛権行使を相互に義務付け合ったものである。したがって、日本の施政権内での米国への攻撃には日本も共同行動をとる義務があり、日本がこの行動をとる根拠は、日本の集団的自衛権に基づく。ただし、この規定は日本の施政権外で米軍が武力攻撃を受けた時にも、日本が集団的自衛権を行使して正当防衛援助の行動に出ることを約束したものではない。この点を、アメリカの世界戦略に言いなりになってしまうと、わが国の独立主権国家としての主体的意思を失う。

●第9条の解釈変更ではなく、憲法自体の改正を

 以上、第9条の解釈について述べてきたが、私自身は、もとより憲法全体をできるだけ早く改正すべしという考えである。第9条の解釈を②に是正して、集団的自衛権の行使を可能としても、それだけではアメリカの世界戦略に追従することになりかねない。憲法を放置して、集団的自衛権だけを論じるべきではない。
 ②に関するところで書いたように、事の本質は第9条の解釈にあるのではない。日本国憲法そのものに問題がある。日本国憲法は、真に日本人が作った憲法ではない。占領下で占領軍によって押し付けられた憲法であり、占領基本法とでも言うべき性格のものだった。それが独立回復後も放置されれば、憲法は日本弱体化政策の効果を継続し、日本国を呪縛し続ける働きを持つ。

 憲法全体を改正することなく、第9条を②のように解釈するのみでは、根本問題は解決しない。わが国は、独立回復後、すみやかにこの憲法を改正し、独立主権国家にふさわしい憲法を日本人自身の手で制定すべきだった。それが、60年以上もの間、放置されてきたことに、わが国の根本問題がある。国家、社会、企業。地域、家庭等に現れている様々な危機の根本に、憲法の影響がある。
 憲法改正を成し遂げて初めて、日本人は自らの意思で自らの国のあり方を決めることができる。そこに日本再建の鍵がある。日本の再建は、憲法の改正なしには、達成できない。憲法全体に関する問題は、別に書いた。現行憲法の問題点と改正私案である。詳しくはそちらに譲ることにして、第9条の検討はこれで終えたい。(了)

関連掲示
・拙稿「日本国憲法は亡国憲法~改正せねば国が滅ぶ」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08c.htm
・拙稿「日本再建のための新憲法~ほそかわ私案」第4章が安全保障
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08h.htm