ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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カミングアウトしていただいた方へ、2

2014年08月28日 | 2014年の資産運用
 新たにカミングアウトされた、しこさん、たかさん、ありがとうございます。
お二人の経験から作られた「まとめ」の箇条書きはみなさんにとってよい教訓となりますね。

 そして今回のきっかけを作っていただいた山ちゃんから長文のコメントをいただきました。その中では山ちゃんの父上がカミングアウトされていて、これまたよい教訓を示していただいています。

 それにしても実際のみなさんの損失額には驚きました。数百万円台のプラスの方もいれば、逆にマイナスの方もいる。損失の大きさでは5千万円に驚きましたが、なんと2億円マイナスの方までいらっしゃいました。みなさんそれぞれけっこうな額の授業料を払って得たものを記していただきましたが、中には「勉強代は言い訳」という方もいらっしゃいました(笑)。

 戦の時、戦地においては「戦陣訓」というものがあります。今回は投資における先人からの「先人訓」というべき教訓が得られたのではないかと思います。ここまでいただいたみなさんからの先人訓を私の勝手な取捨選択で並べてみます。

<授業料を払って得たもの>

・自分自身の欲や弱さ、世の中の危うい仕組 みなんかを「身をもって」学んだ
・投資を開始するとき、損がでるとは思っていない
・相場の上下動に一喜一憂しない
・常にポジションを持とうとするな
・円が安全だという思いこみは捨てるべき
・自分を買いかぶらない
・勉強代は言い訳
・円建てで考えるのをやめる
・売ったものはその後に上がる
・続けていれば、案外かなう
・ゼロサム・ゲームはだめ
・証券会社の言うことほど、当たらないものはない!


 こうしてみると、損失を出された方の教訓には学ぶ点が多いですね。その意味でこのカミングアウトの試みは大成功です。

 そして張本人である山ちゃんからは私に関して以下のコメントをいただきました。

「『相場の一寸先は、闇!』人間の小賢しい知 恵なんて、全く通用しない。今でも林さんに、先行きの予測を訪ねる書き込みを散見しますが、さすがの林さんも相場の先行きが全く予測できないことを ご自身が一番に理解されておられる。」

 まったくそのとおりで、先行きについてはいつも「私の予想が当たるとは思えませんが・・・」などと予防線を張りながらお答えしています。

 だからこそ100で買ったものが、最低限100で返って来る債券をみなさんにお薦めしているのです。

 私が「債券」に至った経緯は何度か述べていますが、再度カミングアウトも含め披露しておきます。直接のきっかけは投資銀行で債券を専門に扱っていたということがあります。遠因は、社会人になりたてのころ株式相場で3年間ほど相場師まがいの売買を繰り返し、日経平均が相当上昇したのにぜんぜん勝てなかったという経験があります。一日の勝ち負けが年収分に達することもあるほどレバレッジを掛けた投資でした。投資の開始時期が第一次オイルショック直後、73年暮れのボーナスをもらって絶好のタイミングだったのに、勝てなかった。そこから投資そのものを研究し、またその背後のファンダメンタルズの勉強もし、遂に80年代前半には経済研究所で予測研究員までやりました。それでも株式相場で勝てるとはとても思えず、株にはいっさい手を出していません。

 その後90年代初めに投資銀行で債券に出会い、その道の専門家になって債券投資に目覚め今日に至っています。私の著書をお読みの方はご存知でしょうが、世界の金融商品の3分の2は債券で、株などわずか3分の1にすぎない小さな世界なのです。ということは世界平均の投資ポートフォリオで株のポーションは3分の1だということです。
 
 今後も自己紹介、プロフィール登録、カミングアウトは大歓迎です。

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カミングアウトしていただいた方へ

2014年08月26日 | 2014年の資産運用
 山ちゃんからの問いかけに、何人かの方が勇気を出してカミングアウトされました。損失の内容と授業料を払って何を得たかについてです。
 カミングアウトされた場合、何と言って反応するのでしょうか。おめでとうでもないし、ご愁傷様でもないし・・・
 とりあえず私からは「ありがとうございます」と申し上げます。ブログの読者の方にとってはなかなか聞けない、大変貴重な体験談ですからね。
では私からコメントをつけさせていただきます。


ただの個人投資家さんへ

うーん、5千万円はかなり大きいですね。相場の波動を的確にとらえるのはとても難しいと思います。

>景気は循環する。待っていれば4~10年に1度は株価の底が来る!ということで確実に株価が上がる金融相場の初期は株をもち、金利上昇し、これから下がるぞーという時に米超長期債に乗り換える。

もう一度、うーん、日本だとバブルの崩壊以降ここが谷底だと思って買ったら、そこはまだ8合目でまた暴落した。さらに暴落したので買ったらまだ6合目でまた暴落した。また暴落して買ったらまだ4合目だった。最後は2合目まで行ってどやら底は打ったけど、まだ4合目くらいにしか戻らないでうろうろしている・・・これが現状ですからね。

ただの個人投資家さんの言われる
>確実に株価が上がる金融相場の初期は・・・

これが果たして今後通用するのかも、念のため一応疑ってかかってください

>これが2000円もしない林先生の本「米国債を買え!」で勉強したもっとも安価な勉強方法の投資方法だと思います!!

5000万円÷1,575円=3万1,746冊。数字を見ると意味もなくつい計算したくなる、悪いクセです(笑)


Genrechtさんへ

ドル建て債券の投資では、金利と為替の両方の要素があるのが難しいところですね。それでも昨今はドル金利が上がるとドルが上がるという経済原則に則って動いているので、昔のように金利がどうなろうがとにかくドルが安くなる、という時代よりはわかりやすい環境になっています。と言われても、為替と金利の2兎を追いたい方の慰めにはなりませんね。

>もう、円建てで考えるのをやめたいです。でも、円建てで計算するのは、日本人の宿命なのでしょうか

日本人ですから円建てで考えるのはやむをえないでしょう。究極的には円建てで考えるにしても。しばらくは目をつぶる必要がありそうです。


なんだかんださんへ

>幾度となく証券会社からは買い替えを薦められるも、頑なに拒否し

これこれ、これが大事です。証券会社は「上がったから売りましょう」、「下がったから、売りましょう」、「何はなくとも売買だけはしてちょうだいね」です。

>授業料払って何か得たとしたら、自分自身の欲や弱さ、世の中の危うい仕組 みなんかを「身をもって」学んで、ちょっとプラスで着地出来たのでよしとします。


そうですよ、「よし」としましょうちょっとでもプラスなんだし。


いざさんへ

>日経オプションコールのショートポジションで約2ヶ月間で約2億円の損失を被りました…一世一代のミスディールでした~

ちょっと桁が違いすぎて見当がつきませんが、よくぞカミングアウトしていただきました。オプション取引をすると、こうしたことが起こりうるというとても大きな教訓ですね。みなさんもきっと肝に銘じるでしょう。

>林さんの著作にもっと前に出会っていれば!

何名かの方から同様なコメントをいただいていますが、みなさん決して遅くないと思います。少なくとも今後は慎重になり、大きな損失を被る可能性のある投資はされないと思いますので。

 それと、授業料はたったの1,575円、いや消費税値上げで1,620円です(笑)。

 今後もカミングアウト、歓迎です。

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カミングアウトしてみますか(笑)

2014年08月24日 | 2014年の資産運用
 「ジャクソンホール前に」という前回の記事に、たくさんのコメントをいただきありがとうございます。その中で私はフェッド・ウォッチャー(FRB関係者の発言・議事録などから金融政策の先行きを見通す仕事をしているエコノミスト達)を揶揄しながら、こう言っています。

>演説内容を詮索するよりも実体の数字がよほど大切です


 今回のイエレン議長の発言はやはりどうとでも取れる、あるいは何も示していない発言に終始したようで、市場も反応しかねたようです。それでもあえて申し上げれば、先週公開された先月の議事録を決して否定するものではなかった。つまりコンセンサスより雇用は強く、利上げは従来の想定より早まる可能性はある、ということでしょう。それもこれも、要は数字が物語るのです。

 
 さて、いただいたコメントに私のコメントをつけさせていただきます。まず円安に関してですが、Owlsさんは、

>私は日本には通貨高へのブレーキはあっても、
通貨安へのブレーキは無いのではと思っています


そうですね。一つあるとすればこれまで円高に対して介入していたときに貯め込んだドル資金を逆に売却することくらいでしょうか。しかし本格的通貨安に対して介入は無力です。逆もそうであったように。

そしてたかさんからは、

>通貨安で破綻した国は沢山ありますが、通貨高で破綻した例は皆無なのですがね。

まったくそのとおりです。

>通貨が高いときは良かった・・・ということに、いずれ気づくときが来るでしょうか。

はい、私のように自腹でしょっちゅう海外旅行をしている人間は、すでに十分実感し、嘆いています(笑)。


 そして前々回の記事へのコメントからつづいている損失「カミングアウト(笑)」ですが、今回も思いきってカミングアウトされる方が出てきています。山ちゃんからは、高い授業料ということについて、

>それでいったい、何を学んだのでしょうか。思い当 たる方がおられたら、教えてください。

手厳しいコメントともとれますが、教訓をみんなでシェアーするという意味からは、とても有意義な質問だと思われます。授業料を払う前の方にとっては、無料で聞けるおいしい授業かもしれません。

 勇気のある方は是非この場でカミングアウトを!

そして折角ですので、逆に「してやったり」の成功談もご披露していただくことにしましょう。

 夏の最後の思い出に!


 低所得者層さんへ

 私の著書とブログをお読みいただき、ありがとうございます。ここは資産家専用ブログなどでは決してありません。それと400万円の資産は立派な資産ですよ。プロフィールの登録をしていただいた時にも300万円を申告された方もいらっしゃいました。ご自分で稼いだ大事な大事な資産を、どうしたら超安全に保全できるか、是非みなさんとともに勉強してください。

 ご質問の件、「国際非常時経済権限法(IEEPA)」に関してですが、どこでこのようなことをお知りになったのでしょうか。きっと私が嫌ういわゆる「煽り屋」さんが煽る目的で引っ張り出しているのかもしれませんね。

 この法律はしょっちゅう適用されています。アルカイーダ関連の資金の動きを封じたり、日本人対象では山口組系の資金を封じたり、要は凶悪な個人・グループ・国などを対象に発動されるものです。現時点での対象国は今回のウクライナを巡るロシア、自国民を殺戮するシリア、そしてお隣の北朝鮮などです。

日本は全く心配いりません。どうぞ、ご心配なく。



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ジャクソンホール前に

2014年08月22日 | 2014年の資産運用
 前回の記事にみなさんからたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。

 その中で私が気になったのは、やはり株式投資で高い授業料を払っている方が多いことです。2・3年前に自己申告していただいた数名の方の運用成績でも、やはり多くの方が1千万近い損失を出していることに驚いたことがありました。

 「投資とは損失覚悟の株式投資」という日本の常識を、何としても打ち破らないといけませんね。最近は外貨建て投資に個人投資家の目もだいぶ行くようにはなっていますが、その内容が「ハイイールド投信」では株式投資と同じ、いや、もっとハイリスクで、嘆かわしいことにかわりはありません。

 さて、一昨日7月末のFOMC議事録が公開されました。その内容を日経新聞からそのまま引用します。

引用

「要旨によると、地区連銀総裁ら多数のFOMC参加者は米失業率の大幅低下などから『この数カ月、雇用の改善はこれまで考えていたより大きい』と指摘した。株高や住宅価格上昇に伴う資産価値増加で家計の実質可処分所得が増え、消費は底堅いとの見方を示した。
 自動車受注や企業投資の見通しを踏まえ、FRBスタッフは『2014年後半の成長ペースが速まる』との見方を堅持した。大半のメンバーは利上げ時期は『今後の経済次第だ』とした。インフレを懸念する複数のメンバーは『緩和終了後も相当な期間のゼロ金利を維持するという公約が不適切だ』と指摘。『ただちに引き締めの方針を表明すべきだ』とも主張した。」


引用終わり

 何という変わりようでしょうか。これではまるで明日にでも利上げすべしという話があったように聞こえます。議事録公表前の私の記事はまるでこの議事録を事前に手に入れていたように思えるほどです(手前ミソ、笑)。
 きっと今日のイエレン議長の演説はちょっと水を差す言葉も入れるのでしょうが、経済の実態が概ね好調であることは、数字が物語っています。議長の言葉尻を深読みするフェッド・ウォッチャ―の悲しそうな顔がかいま見えますね。

演説内容を詮索するよりも実体の数字がよほど大切です。


 話はちょっと変わりますが、なんだかんださんから以下の難しい質問をいただきました。

>現在の104円/$どころは$を買えるレベルだと思いますが、いかがでしょうか?←US MMFで金利上昇を待ちます。

 私は金利と同様、為替の先行きについても自信を持って数字を示せるほどの力を持ち合わせません。このところのちょっとした円安についても、鋭い皮膚感覚はないので(笑)説明はできません。数字だけを追っていて見てとれる長期のトレンドから申し上げますと、100円前後は104円台も含めて買えないレートではないと思います。本当は怖い円安も、政府・経済界・投資業界・マスコミはこぞって大歓迎。「円高の方がいい」と声を上げようものなら、袋叩きでしょう。

 長期で円安を見ている理由は以前と変わりありません。2012年のブログの「円高・デフレに嵌まり込む日本」のシリーズでは、2015年前後1・2年で経常収支の赤字化を見ていました。14年現在、およそそのとおりの展開になっています。赤字化は当然円安につながると予想しているのですが、残念ながら「いつ、どれくらい」というところまでの予想はとても不可能です。言えることは、「円安トレンドが逆の円高トレンドにはますますなりにくくなっている」ことだと思います。貿易収支しかり、そして外貨建て投資の動向もしかり。突然、パニック的な円安に振れないことを祈ります。

 なんだかんださん、この程度でご勘弁を!

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アメリカの長期金利はどうなるか

2014年08月19日 | 2014年の資産運用
なんだかんださんから、以下のご質問をいただきました。

>夏休みが終われば、秋~年末相場。改めて林さんの皮膚感覚をお聞かせ頂ければ、有り難いです。

またただの個人投資家さんからも、質問らしきコメント(笑)をいただいています。

>ダウはこの先人工の増加やシェールガスオイルのエネルギーIT分野で延びていくのは確実でしょうが、もう調整という調整が4年以上有りません。FRB議長が 変わった年や利上げを匂わす頃になってきて、一度株の調整と共に景気停滞が来るのではと思っており、米国債をちょこっと追加すべきかドルで待つべきか検討中です!中間選挙も有り秋は混沌とするのでしょうか~?(^-^;

 皮膚感覚は鈍いので、よく考えた結果をお知らせすることにします(笑)。私の金利や為替の予想が的確に当たるとは思えませんが、なんだかんださんはそれを承知の上で、とのことと理解します。

 私の回答は、これまでの述べてきたことと方向性に変化はありません。アメリカ経済の強さは、コンセンサスより若干強くみており、従って金利のレベルもコンセンサスより強めに見ています。レベル感は10年物で年末までに3%程度のコンセンサスより強目の3.5%くらいという見方です。もっとも足元は2.4%すら割り込むほど低レベルだし、年末まであと4カ月に迫ってきています。大丈夫かな・・・(笑)

 金利にとって最も大切な要素は物価と雇用です。アメリカの物価は落ち着いてはいますが、デフレの懸念はありません。雇用はコンセンサス予想以上の回復を続け、むしろスピードが速すぎることを心配するくらいです。雇用はいずれ賃金に跳ね返りそれが消費を押し上げ、一方コスト高を通じて物価にはねかえります。雇用の強さの裏付けはもちろん経済成長にあります。季節要因を除けばアメリカの国内経済はコンスタントに上昇を続け、国内要素はこの先も大きな問題なしと思われます。

 最近になって心配が出てきているのは、アメリカにとっての海外要素です。欧州の景気後退懸念が顕在化し、日本の成長率も4‐6月期は予想以上に低下。そして中国も低下傾向にあります。海外の大どころがスローになると、さすがにFRBも世界経済の後退を促進させるような政策、つまり利上げは多少やりづらくなるでしょう。しかし元々巨大な国内市場を有し海外経済への依存度が低いため、それだけを理由に金融政策を判断することはないと見ます。

 もう一つの海外要素は地政学的リスクです。今後もそのリスクはますます高まるでしょうが、アメリカやロシアのこれまでの対処策に現われているように、世界を大混乱に巻き込むことは最後まで避ける対処策が取られています。従って市場もひと頃ほど地政学的リスクに大きな反応を示さなくなっています。大きな心配はいりません。

 
 では今後をどう見るか。FRBは出口戦略をより鮮明にし、テ―パリングは予定通り終了させることで、世界を安心させるでしょう。むしろ中断したら、そのショックの方が大きいと思われます。そして来年年央と見られている利上げの確実性が増してくれば、年内にも長期金利は上昇とみています。

 一方、日本の長期金利やドイツの長期金利がこのところアメリカの金利と同調して低下しています。3つが同時並行で低下すると、いよいよ「世界の日本化か」というような文字が踊り始めますが、これらが同時並行で動くことが長く続くとは思いません。各国の事情はそれぞれ大きく異なるからです。日本はクロちゃんが頑張っているし、消費増税で実質所得の低下から消費は今後も低迷は避けられないでしょう。再度増税すれば不況に突入の恐れありと見ます。域内輸出に大きく依存するドイツは周辺国に足を引っ張られ、欧州中銀が何らかの手を打つ可能性もあるでしょう。
 その点先ほども指摘しましたが、国内市場が巨大なアメリカは海外要因に左右されにくい体質を持っていますので、他の国・地域よりはるかに強目の展開を予想します。

 以上、簡単に私の現在の見方を述べさせていただきました。一つの意見として参考になればと思います。

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