ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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アメリカ経済 アップデート

2017年03月31日 | アメリカアップデート

  今回からは久々にアメリカ経済の現状を見ていきます。

 その前にちょっと寄り道。

 「ユニクロ万歳、柳井氏万歳!」です。

  日本企業でもトランプにシッポを振る企業が多い中、ユニクロは「NOと言える」企業でした。昨日の朝日デジタル版から引用します。

 引用

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は29日、トランプ米大統領が個別企業に米国内での生産を求めていることなどを厳しく批判し、「もし直接言われたら、米国から撤退する」と断言した。

 米ニューヨークで朝日新聞などのインタビューに応じた。雇用拡大を目指すトランプ氏は、自動車メーカーなどを名指しして国内生産を迫ったり、輸入品に「国境税」を課す方針を掲げたりしている。柳井氏は「米国の消費者のためにならない。誰が考えても単純明快で、あり得ない話だ」と切り捨てた。

 米国内での生産については「顧客にメリットのあるコストでいい商品ができない」と指摘。「消費者にとっていい決断でないなら、米国で商売をする意味はない」と語り、政権から直接米国での生産を迫られれば店舗を引き揚げることもあり得るとの考えを示した。

引用終わり

  とても痛快です!

  ユニクロのアメリカ進出はまだ端緒についたばかりだし、売り上げや雇用が大きいわけではありません。しかし海外売り上げは全体の37%にも達していて、伸び率も国内の4倍もあり有望な市場と位置付けています。それでも「もし直接言われたら、米国から撤退する」と言い切る柳井氏に賛同します。

  負けるなユニクロ!

  ちなみに私は普段着ばかりでなく、ゴルフやスキーでもウェアの大半はユニクロです。機能的で耐久力があり、とにかく安い。同じような製品でもゴルフウェアやスキー・ウェアと名がつくだけで値段が何倍にもなるので買いません。コロラドの3,500m地点でもマイナス20度で強風の時がありましたが、スキーヤッケの下はユニクロの超極暖肌着とタートルの2枚だけ。それで全然寒くありませんでした。

 

  さて、トランプが勝利して以来、株価の上昇に歩調を合わせドルも上昇。さらにFRBの利上げもあって長期金利が上昇しました。しかしここに来て金融市場は若干の変調が見られます。株価の下落、金利の下落、ドルの下落が進行しつつあります。トランプ相場がご祝儀相場としてはいったん収束したかに見えます。

  政策面ではトランプ政権最大の公約であった「破滅的オバマケア」に対する代替案が、国会に上程される前に取り下げられました。それ以前にもイスラム系7か国からの入国禁止措置が裁判所から阻止され、6か国に変更しても再度阻止されました。

  大事な政権公約がどんどん実現から遠ざかり、さすがのトランプ・ツイッター砲も吠えれば吠えるだけ負け犬の遠吠えになっています。NFTAの一方的破棄宣言も、どうやらそうはなりそうもない妥協案が提出されました。これは注目です。

  負けず嫌いのトランプのこと、まだこれからも吠え続けるでしょう。人類みんなで推し進めてきた「エコ」と「地球温暖化防止」を否定する大統領令にサインをしました。その結末もどうなるか、注目です。

   ギャラップ社の最新の調査では、トランプの支持率はわずか36%に下落。不支持は56%とアメリカ人も見離しつつあります。かれの根拠のないウソのツイッターだけで、果たして相場を持ち直させるだけのインパクトを与えられるでしょうか。株価はトランプの政策実現見通しと実態経済の堅調さの綱引きになっているようです。

   では、トランプですっかりご無沙汰してしまったアメリカ経済のファンダメンタルズを見ておきましょう。

   アメリカ経済は順調です。いや、極めて好調と言っていいほどの好調さを示しています。以前から私は利上げはアメリカの快気祝い、そして「利上げにとって重要なのは物価と雇用だ」と言い続けてきました。失業率が5%を割り続けて失業者が少なくなっているのに、新規雇用者数は相変わらず20万人前後で推移しています。直近2月の統計では、新規雇用者数が23.5万人、失業率は4.7%、時給賃金の対前年上昇率も2.8%と好調で、3月の利上げを後押ししました。

   一方、物価もコア・インフレ率は今年に入って2%台で推移し、利上げを正当化する数字でした。

  ではGDP成長率はどうなっているか。四半期ごとに前期比年率で見ますと、

 

      16年第1四半期  第2四半期  第3四半期  第4四半期

実質GDP     0.8               1.4              3.5           2.0

 

   四半期の数字は振れますが均せばおよそ2%程度で推移。そして今後1年の見通しも17年を通して2%台がコンセンサスです。先進国の中でも好調組に属し、大きな不安材料は見当たりません。

  昨年の今頃原油価格が暴落し、シェール企業の大破綻予想があったことを覚えていらっしゃいますか。私はシェール企業が破たんし、それがジャンクボンド市場の崩壊から大不況へとつながるというシナリオを頭ごなしに否定しました。アメリカの企業破たんの処理方法やシェール企業のマネージの仕方、ジャンクボンドの市場規模などから、シェール産業の崩壊や大不況などありえないと申し上げていました。結果はそのとおりで、あれだけ叫んでいた人たちも今は何も言わなくなっています。

   では現在アメリカ経済に不安材料はないのでしょうか。市場では金利の上昇から個人ローンに頼る住宅販売や自動車販売がマイナスの影響を受け、特に自動車ローンは第2のサブプライム崩壊につながると言う予想が出されています。

  煽り屋さんたちがまたぞろ数字を調べもしないで針小棒大な話をしているので、クギを刺しておきます。

   アメリカは住宅ローンがそうであったように、ローンというローンは証券化されます。そのサイズを見ておきましょう。サブプライム・オートローンのサイズも把握されています。アメリカは統計の国です。Sifmaというサイトに行くと、証券化商品の全体像が示されています。

http://www.sifma.org/research/item.aspx?id=8589959616

 下に掲げた残高全体の統計は15年末の数字までですが、オートローン残高など全体に比べれば取るに足らないことがわかります。ドルを110円で換算します。

 

       オートローン全体 うちサブプライム  住宅抵当証券全体

2015年末    21兆円     4兆円        845兆円

  

  住宅抵当証券にはサブプライムの時に問題になった証券や、政府系のファニーメイやフレディーマックなどのローンの証券化商品も含まれています。住宅分野に比べるとオートローンなどわずか40分の1、サブプライム分はそのまた5分の1のわずか4兆円です。

   オートローン返済の滞りが増えていることは確かで、S&Pが先ごろ発表した17年1月現在、2か月払われなかった延滞の率は5.09%。前年1月の4.66%に比べ増加しています。こう言ってはなんですが、「だからどうした」、というのが数字で見た実態であることがわかると思います。

   ついでに言っておきますが、住宅のサブプライム破綻の場合、回収までには非常に手間暇がかかります。それに比べ自動車などは、差し押さえて売却するのはいとも簡単。それによりローン会社、あるいは回収専門のサービサーはかなりの程度回収できます。それが原因で中古車の価格が下がっていることは確かですが、新車販売を含めたインダストリー全体への影響は大きくありません。

  シェール産業の大破綻騒ぎと言い、サブプライム・オートローンの破綻問題と言い、数字と仕組みがわかっていれば、騒ぎをただの騒ぎだとして高みの見物をしていられるのです。

 つづく

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コロラド・ヴェイルでのスキー その2

2017年03月24日 | 旅行

  今回のスキーでもゴンドラの中やリフトで多くの現地スキーヤーと話すことができました。ゴンドラは8人乗りで20分くらい乗るため、そのたびに多くの人と話をする楽しみがあります。

  テキサスから来ている同年輩の男性とゴンドラで話をしました。彼は証券会社を退職後、資産運用のアドバイザーをしていて、本も書いているとのこと。私と全く同じようなキャリアで、意気投合しました。なぜテキサスからここまで来ているのかと聞くと、ヴェイルが好きでセカンドハウスを持ち、夏は避暑、冬はスキー場でボランテイアのホストをしているとのこと。ウラヤマシー!

 ホスト?

   どんなことをするかと言いますと、街中に多くの中高年男女のホストがいて、ゴンドラ乗り場はこちら、スキーのレンタル屋はこちら、レストランはどこがお薦め、などと案内をしてくれるのです。

   そしてゲレンデにも多くのホストがいます。広大なコースの道案内をしてくれたり、コースの難度のアドバイスをしてくれ、初めての人はとても助かります。そしてスキーヤーの安全を確保するためのセキュリティーもボランティアの仕事です。スキーヤー同士がぶつかったりするとすぐに救助に飛んできます。日本では見たことのない、とてもよい制度です。

  リフトで乗り合わせたIT企業の経営者とはとても面白い話題になりました。それは、「日本人はトランプ大統領をどう見ているんだ」という質問からです。私は正直に、「アメリカはとんでもない人を選んだね。我々は彼を厄介者だと思っているよ」と言うと、「ホントに嫌になる。世界の恥さらしだよ」と彼も全く同感だと言っていました。

   現地滞在中はトランプがつぶやいた「オバマがトランプタワーの電話盗聴を指示した」とのニュースで持ち切りでしたが、私が話したほとんどのアメリカ人の反応は、「彼のいい加減なつぶやきは、もううんざりだ」でした。なぜかスキー場でトランプ支持者には会いませんでした。


   海外でのスキーリゾートの楽しみはスキー場だけではなく、アフタースキーにもあります。日本のスキー場のほとんどがスキーリゾートと呼ばれない理由はアフタースキーがほとんどないためです。

   日本でも海外スキーヤーの増加や海外資本によるスキー場エリアへの進出で、リゾートらしさができつつあるところがあります。私が何度か紹介させていただいたニセコを筆頭に、野沢温泉、白馬八方尾根の一部です。それらもかなりの部分海外スキーヤーの増加と投資によってもたらされた新たな風です。

   では、ヴェイルというリゾートはどんなリゾートか。ちょっと町の雰囲気に触れていただきましょう。

   スキーを終えて麓まで滑って戻ると、ゴンドラの乗り場付近にはたくさんのオープン・カフェが並んでいます。そこでビールや暖かい飲み物で疲れをいやすのが、スキーヤーにとり最高のひとときです。

   カフェの隣には「メンバー・スキー・ヴァレー」と書いてある建物があり、みんな立ち寄っています。ヴァレーとは、駐車場のヴァレー・パーキングと同じですが、メンバー制のスキー用具置き場です。

  名前を告げると自分のスキー用具一式を持ってきてくれます。ここに預ければ、ホテルとゴンドラの往復で、歩きづらいスキーブーツを履いたり、重いスキー板を持たずに済むのです。スキーを終え隣のカフェでくつろぐときには、すでにブーツを脱いで解放感に浸れるのです。ブーツを脱ぐ解放感は、スキーをされる方でないとわかりづらい解放感です。こうした工夫は日本にはなかなかありません。

   そこはメンバー制ですが、実はこれがヴェイルのミソなのです。「その1」でリフト代が一日で2万円と極めて高く、5日間でも一日当たり1万4千円だと書きました。しかしシーズンパスを買うとなんと何日滑っても800ドル、10万程度です。そして用具は常にここに預けることで、シーズン中はいつでも快適にスキーを楽しむことができるのです。すべてがリピーターを囲い込む工夫です。ヴェイルの周辺には別荘地帯がたくさんあります。ほとんどの人たちはシーズンパスを持っています。

   いやそれどころか、最近はコロラド州全体が「別荘地」ではなく、リモートで仕事をする人たちの「居住地」になっています。夏は涼しく、春秋は釣り、ハイキングやサイクリングを楽しみ、冬は寒いですがスキーを楽しむことができます。ガイドのジミー大西も、夏場は釣りのガイドをしているとのこと。

  仕事で場所を選ばないITの技術者や、金融関係者でもファンドマネジャーなどがここに暮らしてリゾートライフを楽しみがら仕事をしているのです。リフトで乗り合わせた人でも、住みついている人が結構多くいました。リタイア族ももちろんたくさんいます。リタイアメント・ハウスを子供や孫たちのための別荘にもしています。すると自分たちも定期的に家族と一緒に過ごすことができます。なんともうらやましい生活です。

  ただ、ロケーションのよい別荘は非常に高額です。ガイドのジミーによると、1ベッドルームにリビングで百万ドル、1億円超え。1部屋付くごとに20-30万ドルのプラスになるそうですから、大都市近郊の高級住宅とかわりありません。


   では、ヴェイルの街を簡単に案内します。多くのスキー用品屋が並ぶのはもちろんですが、レストランや高級ブティック、そしてアート・ギャラリーがたくさんあります。建物はヨーロッパの雰囲気を持つ、重厚な作りです。そして我々が驚いたのは、街中の歩道に雪がないことです。ヴェイルの歩道はすべてヒーティングしてあって、雪で滑ることがないようにしているのです。

   それはスキー場でも同じで、ゲレンデからレストランに行く歩道や階段はすべてヒーティングして雪を溶かしています。こうした整備のよさこそがヴェイルの真骨頂で、リフト代が高いのも納得できるのです。

   こうしたリゾートの雰囲気を持つ街には、アーティストもたくさん住みつきます。ゴルフ・リゾートのペブル・ビーチのそば、カーメルの街もそうでした。街中にもアートがあふれています。

   我々は毎晩違ったレストランで食事をすることが楽しみの一つでした。アジアン・エスニックから始まり、イタリアン、ステーキハウス、スイス料理、メキシカンと味わい、最後はまたステーキハウスに。何故そこだけ2回行ったかと申しますと、もちろんすごくおいしかったからです。東京にあるアメリカのステーキ・レストラン、ロウリーズをご存知のかたなら、あそこのリブステーキの美味しさをご存知でしょう。それと同等のリブステーキが食べられました。

   そこのウェイターがすごく面白い白人男性で、名前がなんとケン・ハヤシだというのです。私はケイイチなので、アメリカではケイ・ハヤシと呼ばれていましたので、私はケイだけど、同じハヤシだというと、彼の名前の漢字は渡辺「謙」と同じだと言うのです。

 いったいどうなっているのか?

   実は彼の父親は離婚後新たな日本人の妻と岐阜で暮らしていて、日本には20回以上行っているのだそうです。日本語もある程度できて、とても面白い会話ができました。

   日本では味わえない素晴らしいスキー場とアフタースキーの楽しみ、それがヴェイルでした。

   では3年ほど前に行ったフレンチ・アルプスのヴァルディゼールとどちらが上か。私の個人的感想は、「ヴァルディゼールが上」です。一緒に行った仲間の感想も、ヴァルディゼールが上だと感想を持っています。

   理由は、まずモンブランを望むアルプスの景観が、ロッキーの景観を上回ること。スキー場の広さ、ボウルの他に氷河を滑れる多様性。そして街の雰囲気やレストランの食事内容など、アフタースキーを含めても、すべてにおいて若干ずつヴァルディゼールが上回っている印象を持ちました。

   それでも「次回はどちらへ行くか?」と聞かれると、アクセスの容易さで何故か「ヴェイル」を選びます。ヴァルディゼールはすごくよいところなのですが遠い、それが私の結論です。

 おわり

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コロラド・ヴェイルでのスキー その1

2017年03月21日 | 旅行

  みなさんはコロラドにあるヴェイルというスキー場をご存知でしょうか?

  私はすぐ隣のユタ州にあるソルトレイクのスキー場に行った時に聞いたことがある程度で、よく知りませんでした。全米で一番大きなスキーリゾートと言うのが謳い文句です。日本では絶対に味わえない、素晴らしいスキーを満喫することができました。

   何がって?

   ロッキー山脈の景色、ゲレンデの多さと多様性、とても安全なゲレンデ外滑走の楽しさ、そして整備の素晴らしさと、スキーの楽しみのすべてが詰まっていました。3,500m地点の写真です。スキーヤーのむこうは4,000m級の山々が連なり、思わず見とれてしまいます。

   東京からデンバーまで10時間。そこからバスで2時間半と比較的簡単に行くことができます。でも最初に予約を入れて驚いたのは、リフト代の高さです。我々は5日間滑ることにしていたのですが、シニア代金が7万円也。1日平均1万4千円。1日のみだと何と180ドル・2万円もするのです。日本でのシニア料金が3日間割引で1日平均3千円5百円くらいですから、なんと4倍です。

  しかし、実際にスキー場に行ってみると、確かにその価値があると納得できます。スキーをされない方のために、一体どこがちがうのか。 

  一口で表すなら、ただの温泉宿と星野リゾートの違いでしょうか。

  ロッキー山脈の真っ只中にある景色の雄大さ、パウダースノーの雪質、ゲレンデの整備状況、滑走距離の長さ、スキーヤーの安全性への配慮、そしてレストランを含むサービスです。

  ここの経営はヴェイルリゾートマネージメントという会社が、トータルにマネージしていて、何から何まで隙が無いのです。例えばゴンドラやリフトの乗り降りのサポート、運行スピード、リフトのベンチは日本のような寒さを感じる板敷きではなく、クッション付きで暖かく快適。足乗せサポートも全て備わり、騒音も振動もほとんど無し。

   そしてなによりも、コース整備の素晴らしさです。スキーヤーにとって、夜のうちにゲレンデを平らに均してくれるか否かは、死命を制する大問題なのですが、それが行き届いているのです。コース数は200近くあり、毎朝インターネットで整備済みのコースをチェックすることができます。現場でもすべてのスタート地点に整備済みか否かの表示があります。

   そのことがどれほど違うか。自動車できれいに舗装された高速道路を突っ走るか、穴ぼこと砂利だらけの道を穴にハマらないように気をつけながら走るかの違い、と言えば分かると思います。快適さは100倍も違います。

   中には穴ぼこだらけのコースを巧みに行くのが好きな人もいます。オリンピックで言えば上村愛子のモーグルです。その人たちにためには、モーグルコースがいくつも設定されています。オリンピック仕様のジャンプ台が2つあるモーグルコースも自由に滑走できます。私は絶対にやりませんが(笑)。

   そしてここの最大の特徴は、日本にはほとんどないボウルと言われる雄大な滑走コースのある事です。その数9箇所。山登りをされる方なら、北アルプスの唐沢カールや槍沢をご存知だと思いますが、ボウルそれにあたります。3,400mから標高差800mほどを、一気に滑ることができます。

   ヴェイルの規模を標高差で表しますと、デンバーはマイル・ハイの1,600m、ホテルのあるベースの街が標高2千4百メートルで、そこからゴンドラとリフトをつないで登った山頂が3千5百メートルです。槍ヶ岳の頂上より5百メートル高い所から標高差1千メートルを滑り降りるのです。真面目な話、高所恐怖症や高山病にかかりやすい方には向いていません(笑)。

   コロラドは日本のマラソンランナーなどが高地トレーニングをする場所でも有名です。3千メートルを超えるスキー場では十分に体を慣らさないと、危険です。我々もガイドの勧めに従い、初日は上級者のコースには入らず、ゆったりと滑り、体を慣らしました。標高3千メートルの酸素量は地上の7-8割しかないそうで、一緒に行った7人の仲間の一人は、時々不調を訴え、休むことがありました。

   そして日本のスキー場では絶対に滑ることが出来ないのが、崖っぷちからのダイビングスタートです。山頂に連なる峰の垂直な斜面、あるいは雪庇の上からボウルに向かってダイビングスタートするのです。私が試したかって?

  もちろん、やりません。命が惜しいので(笑)。

   リフトから近いので、みんなが「ヤレー、トベー」と囃したて、それに手を振りながら飛ぶ腕自慢がいっぱいいて、見るだけでも結構楽しいのです。傾斜角度は雪庇部分は垂直以上、途中からは60度―45度くらい。我々がリフトから見ていた時に雪庇から飛び降りた二人組ですが、一人は成功、もう一人は落ちた途端に板がはずれ、雪の中でもがいていました。こうした場所はもちろん雪崩の危険性があります。そこはヴェイル・リゾートのこと、危険個所はたびたびダイナマイトで人工雪崩を起こして整備をするそうです。

   我々が5日間のツアーで、どれほどのコース滑る事ができたかと申しますと、全コースの10分の1程度です。残りの多くはいわゆる未舗装路なので、舗装路のほとんどは制覇できました。そして9つのボウルのうち滑ったのは4つ。あとの5つは頂上にたどり着くだけでも大変なので諦めました。

   そして滑っているうちにお気に入りコースが出来てきて、そこをついつい滑りたくなるのです。最高のお気に入りはナンバー2の6人乗り高速リフトで15分くらい乗り、ほぼ直線を一気に滑れるコースで、平均斜度20度、うち最大斜度30度が150-200メートルほど続く、高速コースです。八方尾根をご存知の方なら、リーゼン・クワッドからうさぎ平リフトを乗り継ぎ、黒菱からスタートし、リーゼンの終わりくらいまであると思います。パウダースノーのスピード滑走は、最高でした。

   これだけの広大なコースを初めて行って堪能するには、ガイドが必要です。我々は7人連れでツアーの組み立て、予約、そしてガイドを、日本人がやっている「スキーアメリカ」という現地エージェントに頼みました。奥さんが経営し、旦那さんはガイドです。

   もしヴェイルに行ってみようという方には、ここをお勧めします。希望に応じたホテルから、ディナーの予約まで、懇切丁寧に応じてくれます。ガイドのジミー大森さんは50代の方で、スキーの腕前は300人もいるヴェイルの先生たちの先生ができるほどで、実はヴェイル・リゾートの元社員でもあり、コースの成り立ちの歴史からよくご存知でした。

   ヴェイル・リゾートという会社は上場会社で、コロラドだけで4箇所のスキー場を経営し、何年か前にはカナダのバンクーバーにあるウィッスラーとブラッコムも買収して傘下に入れています。彼らの事業拡大意欲は旺盛で、日本のスキー場事情もよく調べていて、オーストラリア資本の進出や中国資本の物色の様子まで知っているとの事。

   この会社のリゾート開発とマネージメントは、地域全体と協力したトータルなもので、スキー場さえ儲かればよいというものではなく、四季を通じて楽しめるリゾート経営を行っています。そして、スキーヤーを増やす努力もしていて、ニューヨーク近郊の小さなスキー場も買収して子供たちのスキー教室を開き、上手になったらいつかはヴェイルへ、と言う長期ヴィジョンを持っています。1日2万円のリフト代を払っても行きたいという、夢のリゾートを作っているのです。ちょっと宣伝ぽくなってしまいました。

つづく

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ウソばかりの世の中だから、本物に投資をしよう

2017年03月19日 | 米国債への投資

  この1・2年、世の中がウソであふれているように思いませんか。

  特に国家を動かす側の人間のウソが目に余ります。

   昨年はBREXITキャンペーンで離脱派のボリス・ジョンソンやファラージがイギリスのEUへの拠出金を3倍に水増しするウソをつき、勝利しています。しかも勝ったとたん2人ともに逃げるというまさに公約違反のウソをつきました。

   トランプは選挙中言っていることの75%がウソとデマカセだと統計を取られています。その後も得票数でヒラリーに負けると、ヒラリー票の300万票がウソだとウソをつき(笑)、証拠が出せないので黙った。

   就任演説の聴衆数でオバマにメチャ負けているのに、史上最大だとウソをついた。それを指摘するメディアはウソツキだとウソを言った。大統領顧問の女性、コンウェイは、このウソは「オルタナティブ・ファクトだ」というウソで有名になった(爆)。

  先週私がアメリカにいた時、報道はトランプのウソ一色だった。トランプはウソを指摘されることに全くめげず「オバマがトランプタワーの電話を盗聴した」とウソ言い続け、上下両院の情報委員会が証拠はないと否定、そしてFBIからも証拠がないと完全否定された。

  それでも彼が最もよく使う言葉の一つが、

   BELIEVE  ME ! (爆)

  ジョークを通り越している。いくらウソがバレても支持者、いやトランプ大主教の信者数は減らない。


   日本でも防衛省制服組が証拠を隠し、廃棄したとのウソをついたがバレた。東京都は築地移転問題でウソのつきっぱなしだった。

   前都知事が2人もそれぞれのウソで失職し、来週はまた大本命の元都知事が知らぬ存ぜぬのウソをまき散らしそうだ。ついでに南場智子氏のDNAも、おまとめニュースでウソを2万件もつきまくりだった。

   森本学園問題では財務省や渦中の人間など、いったい何人がどれほどのウソを言っているのか、見当もつかないほどウソのテンコ盛りだ。

   すぐバレるウソを平気でつくのがサイコパシーだとすれば、世の中はサイコパシー人間であふれている。いったいどうしたのだろう。

  これでは世の中の情報の大半がウソだと思っていないと、正直者の我々は道を誤る。

   こんな世の中を間違いのないように泳いでいくにはどうしたらよいのか。どうやら自分でウソとホントを見分けるワザを身に付ける以外になさそうだ。

 

 さて、ではホントの話をしましょう。

    ブログのコメント欄では「米国債投資が損失を出している、どうしたらよいか」という書き込みがありました。

     このところ米国債長期金利が上昇し、投資チャンスが到来していますが、その一方で昨年までの低金利の時に投資をした方は、年限によっては評価損が出ています。

    特に地方銀行は、昨年来マイナス金利で利の乗った日本国債を売却し、そのカネで外債投資を行ったため、今期決算で損失を計上する見込みだと報道されています。

   今回はそうした評価損がどの程度であるか、個人投資家はどうすべきかをアドバイスします。

   例として金利の低かった昨年の8月1日に投資したとして、現時点での金利上昇のインパクトを計算し、評価損益をお示しします。10年債と30年債を例にとります。

・10年債 金利1.6%を 16年8月1日に為替レート102円、価格100で購入

・30年債 金利2.3%を   以下同

   現在の10年債利回りを2.5%、為替を113円とすると、評価損はどうなっているかを計算します。厳密には9年半くらいの残存ですが、9年半のイールドを入手できないため、近似値としてそのまま10年の利率を採用します。

 するとドル建ての

・10年債価格は、100が92.53になったためロス

・30年債価格は、    84.65になったためロス

 一方、為替は 102円だったドルが113円に上昇 113÷102=10.8%ゲイン

 その結果昨年8月1日にそれぞれ100万円購入した場合、現在の評価は

・10年債 102.5万円

・30年債  93.8万円

  10年債は価格の下落より為替の上昇が大きく、25,000円の評価益が出ている。それに加えて、年率1.6%の金利の7か月分9,300円を得ているため、単純計算で 34,000の益となる。

  30年債は価格の下落のほうが為替の上昇より大きく、62,000円の損失が出ている。しかし7か月分の金利13,400円を得ているため、48,600円の評価損となる。

  債券の評価損益の計算は複雑でわかりづらいので、私はキャピタルゲイン・ロス、為替のゲイン・ロス、金利のゲインと3つの要素に分けて数字をお示ししました。

  これがゼロクーポン債でも、さほど大きくは変わらないのですが、ゼロクーポン債の場合、金利が元本変動に含まれていてわかりづらいため、ここでは通常の利付債を例にとり、計算をお示ししました。

   では、30年債のように大きな評価損が出ている場合、どうするべきか。

   そもそも債券投資を複雑にしているのは、地方銀行のように四半期ごとに評価損益を算出するからです。なぜそのようなことをするのか。それは地銀のような機関投資家の多くが、持ち切り投資を前提に投資しているのではなく、途中での売却を前提にするからです。もちろん会計原則も、評価損益を計算しろとなっているからですが、我々一般の個人投資は違います。償還まで持ち切るので評価損益を気にする必要はありません。

  私がみなさんにお薦めしているのは、あくまで持ち切り投資です。債券はいくらで買おうが最後は必ず100で償還されます。100より高い価格で買う場合、クーポン金利が十分に高いため、最後まで持ち切って金利を得ていれば、ドル建てで損失することはありえません。

   その安心感が債券投資の安心感の大元です。最近相談された定年退職さんや地方勤務医さんも、円のリスクに目覚めてヘッジのため米国債投資を考え、ストレスフリーの世界に入ろうとされています。

   もちろん為替変動や金利の変動で超長期債は評価損・益が大きくなりがちです。それでもこれまで米国債を買われた大勢の方が、ストレスフリーの資産運用を心からエンジョイされています。これから投資をされる方も、買ったらあとは慌てず騒がず寝て暮らしましょう。

   最後に「フィクスト・インカム」について。

   アメリカでは債券投資のことを「フィクスト・インカム投資」と呼びます。私のブログのサブタイトルにも「フィクスト・インカムの専門家」と表示しています。今回コメント欄でいただいた質問にアドバイスを差し上げている中で、多くの方が定期的に金利収入を得られるフィクスト・インカムに目覚められたようです。それこそが本来の意味での債券投資です。金利上昇の果実を収入として得ることを、是非選択肢の一つとして検討してみてください。

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定年をひかえる地方勤務医さんへの資産運用アドバイス

2017年03月03日 | 定年退職時の資産運用

たいへんお待たせしました。

定年はまだまだの地方勤務医さんですが、私なりのアドバイスを差し上げたいと思います。

まず現状と将来を概観してみましょう。

 

現状

預金6,000万円

まずはよかったですね。何もせず、失敗もなく、トラの子が安全に保たれていて。それがなによりですよ。

>5年前に8000万で自宅を購入し残債が3000万程度となっております。

地方で8千万とは、すごいおうちなんでしょうね。52歳という年齢と年収を考えると、きっと残債は65歳の定年退職までに返済できると想像します。先走って返済する必要は全くありません。借金はインフレヘッジですので。

将来

65歳からは年金収入だけでも暮らせるはずです。持ち家があって当初の10年が40万であればなおさらです。75歳を過ぎたら、必要なおカネは少なくなります。

もっともその前に、ご自身が医師で定年退職後も働く気があれば、かなりの年収を得られるはずです。勝手な推測ですが、70-75歳くらいまでなら年金と同等どころか、それよりはるかに多く収入を得られるでしょう。 

医師不足の日本ですから、元気でいる限り是非とも世のため人のため、お仕事の継続をお願いしたいと思います。リタイアはそれからで(笑)。

そう考えるなら、現在の預金と退職金はかなりの部分を安心安全のためドルでヘッジされることをお薦めします。「定年退職さん」へのアドバイス、あるいは著書でもお示ししたように、円への偏りがなによりもリスクです。

 預貯金・退職金の全部をドルにしたところで、不動産や今後の収入を足し上げた額の半分以下です。では

 

提案その1.大胆案   代替案ではありません(笑)

6千万円をすぐに超長期の米国債、それも利付債へ全額投資。

 ちなみに今、珍しく野村証券のサイトに、30年の3%クーポン付きが出ています。

それを買うと、円貨ですが半年ごとに90万円、年に180万円が30年入り続けます。税引きでも144万円、毎月12万円もらえて、最後に6千万が償還されます。その間の円リスクはフルにヘッジできます。別に円安に振れなくとも、よい投資だと思います。一つぜいたくな難点は、82歳で6千万円ものキャッシュがもどってしまうことです。

 といってもそこまでは踏み切るのはかえってストレスになる可能性がありますので、

 提案その2.普通案

今後1年かけて6千万の半分から3分の2程度、3千万から4千万を徐々にドルに転換してはいかがでしょう。

偶然にもFRBによる利上げ機運が高まっていて、長期債の金利も上昇しています。為替と金利の難しい変動予測などせずに、ドルへの転換即米国債への投資をお薦めします。つまり直接ドル建て米国債を買うのです。

 例えば今の114円、10年債2.45%は好条件です。

 今後もし円安になったときには金利高になっているはずだし、逆に円高だと金利は低いけど、ドルを安い時に買えることになります。

こう考えれば、1年を何回かに区切って投資タイミングを決め、トランプ相場を楽しむのも手でしょう。

何故数年でなく1年なのか。理由は、これだけいい加減な大統領のいい加減な政策が続く時代に、適切な為替予測や金利予測は誰にもできませんし、この1年で大揺れしそうだからです。そして数年に分けると、日本の破たんが始まってしまう可能性があり、ヒヤヒヤするかもしれないからです。

 例えば1千万円を4回、合計4千万円を1年間で投資するとします。

対象の米国債は将来の楽しみに備えて10年物から5年ごとくらいの長期債に分散して満期時期を分け、5年ごとのボーナスを楽しむのです。10年債の次は15年債、20年債・・・というように。

そして私の地方勤務医さんへのお薦めはゼロクーポン債ではなく、大胆案にもあった「利付債」です。多額の預金があって、今後も長く収入の見込める方は、元本を増やす必要がありません。

例えば1年後に最後の1千万で25年債を買うとします。すると満期を迎えるころに78歳になっています。そこで大きなボーナスをもらっても使いきれません。今の金利でも元本がおよそ2倍にもなってしまいます。それよりも利付債で半期に一度、小さいながらもボーナスが出ていたほうが、楽しいですよ。そのたびに奥様と旅行を楽しむことができます。そうでもしないとこれまでの地方勤務医さんの生活同様、たぶんお金を使わないと思うからです。

「金利はすべて使い切る」

「宵越しの金利はもたねー」ことにするのです。

 

ここまでのアドバイスは私流のアドバイスです。そのまま従う必要は全くありません。投資時期、購入金額、満期時期などはご自分の生活設計、遺産の計画をしながら、じっくりと考えてみてください。わくわくした将来像を描けるはずです。

 

なんだか将来必ず当たる宝くじ、「取れるタヌキの皮算用」をしているようで、うらやましいですね(笑)。

 

今後も金利が上昇してくれば、利付債は実に素晴らしい投資対象です。

他のみなさんも今一度、利付債を検討対象に加えてみてください。

 

以上が地方勤務医さんへの私からのアドバイスです。

ご質問などあれば、いつでもどうぞ。

 

ただし、私はあさって日曜日から10日ほどコロラドのヴェイルというスキーリゾートにでかけます。今年何と6回目のスキー。我ながらあきれます(笑)

 

でもトランプちゃんが「貿易戦争中につき、日本人出入り禁止」などとご乱心しないうちに行ってきます(笑)。

ブログはもちろんチェックするつもりですが、返事が遅くなるのは、どうかお許しください。

コメント (32)
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