ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格⑥

2011年04月27日 | 資産運用 
前回は、米国債投資を実例をもとに勉強してみました。あまり違わない年限の債券でも、既発債にはクーポン利率が高いものもあれば、低いものもあります。その両者の選択の要点を説明しました。キャッシュフロー収入を多めに受取りたい方は、クーポン利率の高めのものを、クーポンは高くなくても最後にキャピタルゲインを欲しいという方には、クーポン利率の低めのものがお薦め、ということでした。

 みなさんがリタイアされているのであれば、5年債と言わずに、もっともっと長期のクーポン利率の高い債券をお薦めします。30年債だと4.5%くらいのクーポンが毎年入ります。

もしクーポン収入以上の現金が必要になったらどうするか?

米国債なら1,000ドル単位でいくらでも解約料などなしに売却できますので、必要な分だけ売却すればいいのです。それが例えば5年後とします。5年後に金利が多少高くなっていても、お持ちの債券の残存の年限が25年になっていますから、それほど大きなキャピタルロスは心配しなくても大丈夫です。10年後なら、もっと残存年限が短く20年です。金利の上昇に対して、長期であればあるほど値下がりは大きいのですが、毎年残存年限は短かくなり、リスクは軽減されていきます。あまり心配せずに長期を買うべきでしょう。

 では次に、もっと若い年齢層の方向けで、『クーポン収入はいらない。その代わりに複利で運用して、大きなキャピタルゲインが欲しい』という方向けの投資案内です。
ぴったりくるのはゼロクーポン債です。また大手証券会社のサイトで、投資商品から債券、そして既発外債を選択すると、たくさんの米国債のゼロクーポン債が出てきます。以下はそのいくつかの例です。
                       償還日     年限     価格   利回り
①アメリカ国債(ゼロクーポン) 2040/02/15   28年9カ月   27.98   4.47
②アメリカ国債(ゼロクーポン) 2031/02/15   19年9カ月   43.19   4.29
③アメリカ国債(ゼロクーポン) 2021/02/15   9年9カ月    72.37   3.33

①は年限が28年9ヶ月で、27.98%で買うと100%で償還してくれます。利回りは年率4.47%。要するに買ってほっておけば、29年後には3.6倍ほどになるということです。19年9ヶ月なら2.3倍10年弱でも30%近いリターンがあります。

これが、寝て暮らせるリスクフリー投資のリターンです。世界一安全な金融資産でこんなにもリターンがあります。大手の証券会社に行けば、どこでも簡単に買えます。コストは、毎年の手数料はかからず、外債口座の管理料だけです。

あとは為替のリスクをどう考えるかで、それについては最初の頃の金利と為替のシミュレーションのところを参考にしてください。30年後とはいえ、円が果てしなく強くなることは、考えづらいと私は思っています。むしろ日本の財政や国債に非常事態が発生することのほうが、ありそうなシナリオです。その場合、米国債は災害特約付(日本国債や円の暴落)ですから、大きな保険料(円安)が入る可能性があります。

米国債投資の実例での勉強、いかがでしょう。およその要点はつかんでいただけましたでしょうか。
私は連休中しばし旅に出て、日本経済の復活に貢献してきます(笑)。ですのでしばらくブログをお休みします。5月の連休は、海外のヘッジファンドにとって、とてもオイシイ季節です。FXで言えば、あの震災直後同様2匹目のドジョウを狙って、舌なめずりしていることと思います。みなさんも、もしそんなことがあれば一緒に舌なめずりして、オイシイくて安いドル債でも仕込んでみてください。

では、よいゴールデン・ウィークを!
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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格⑤

2011年04月25日 | 資産運用 
具体的な例をもとに、米国債の投資を考えてみます。

本日4月25日、ある大手の証券会社のHPで、外債投資の対象商品を見てみました。すると、年限5年程度の米国債の既発債(過去に発行され、流通している)リストの中に以下の2つの債券がありました。

米ドル        クーポン 償還日   年限    価格   利回り 
①アメリカ国債 1.250  2015/09/30  4年5カ月  97.99   1.72
②アメリカ国債 2.000  2016/01/31  4年9カ月  100.52   1.88


一方ブルームバーグ社のサイトで債券の状況を見ると、本日の5年の指標は以下のとおりです。
5年  クーポン2.250   償還日03/31/2016  価格100-20  利回り2.11

まず二つの債券の利回りを較べます。それが投資する側のリターンです。2つの債券の年限は4年5ヶ月と9ヶ月で4ヶ月の差です。それが利回りの1.72と1.88の差、0.16%になっています。ちなみに年限がもう少し長く5年になると、ブルームバーグの指標にあるように、利回りは2.11%に上がります。

しかしこの二つの債券のクーポンは1.25%と2.0%で、差は0.75%も違います。もらえるクーポンがこんなに違うなら、高いほう2%の②を買うのが得なように思えます。でも価格差が2.53とかなり違います。償還される時は両方とも100ですから、

①の債券を買うとキャピタルゲインは 100-97.99=2.01
②の債券を買うとキャピタルロスは  100.52-100=0.52

②はクーポンはたくさんもらえる分、ロスが0.52ある。 ①はクーポンが少ない分、ゲインが2.01ある。結果として両者の利回りはわずか0.16%と年限どおりの差なっています。

約5年の投資期間を考えているみなさんは、どちらを買いますか?

途中のクーポン金利が多い、つまりキャッシュフロー収入をたくさんもらいたいのであれば②を選び、キャピタルロスはいやだというのであれば①を選択するのがよいと思います。

そして、もうちょっと利回りをほしい方は、指標の銘柄に売り物が出てくるのを待つ、という選択もあるかもしれません。出てくる保証はありませんが。大手の証券会社のサイトなら、いつでもこうした外債の販売用債券リストを見ることができます。みなさんも直接見てみてください。

以上が具体的な投資例の解説です。ちょっと難しいですか?さらに解説が必要であれば、コメントでどうぞ遠慮なく質問してください。
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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限、金利、価格④

2011年04月24日 | 資産運用 
今回は日本国債を例にとって、金利と価格の関係について見てみましょう。4月5日に10年債の入札がありました。結果の報道は、
「10年物の313回債(4月発行)の入札結果に よると、最低落札価格が99円95銭、平均落札価格は99円97銭となった。最低価格はブルームバーグが調査した予想の99円91銭を上回り、最低と平均 価格の差であるテールは前回債の9銭から2銭に縮小。応札倍率は2.91倍から3.97倍に上昇して、昨年8月以来の高い水準を記録した。」とあります。

要約しますと、4月発行の10年国債は
クーポン;1.3%
落札価格;平均を取ると99円97銭
イールド(利回り);1.3%

ということは、クーポンは切りのよい数字なのですが、元本は切りのよい100円ではなく、3銭だけ安く買える半端な額です。つまりこの価格で買うと最終利回りは1.3%よりわずかによくなります。どれだけよいかというと、99円97銭で買っても最後の元本償還は100円でなされますので、3銭のキャピタルゲインが利回りに加わるだけです。利回り数値にはほとんど影響はないほどです。
なぜこんな面倒なことになったかといいますと、発行時点の10年物金利が、1.3%よりすこしだけ上だったので、その分を元本価格の下げで調整した、ということなのです。フィクスされたクーポンに対して、金利は常に動くため、こうした価格調整が常に行われます。もちろんたまたま落札価格も100円丁度ということも希にはあります。
日本国債を証券会社でみなさんが買う場合、この平均落札価格に証券会社の手数料を上乗せした金額で買うことになります。以前は手数料率が一律に決められていましたが、今はそれぞれの証券会社の裁量により、まちまちな金額(率)になっています。みなさんが実際に証券会社から提示される債券の価格も、こうした端数がついています。その端数があるために債券の投資はややこしくみえるかもしれません。
では、次回は米国債を買う場合、どんな価格が実際についていて、どう払込をするのか、具体的に見てみましょう。
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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限と金利③

2011年04月22日 | 資産運用 
フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限と金利③ 

債券のお話で、金利にはいくつかの言い方があるのに気づかれた方がいらっしゃると思います。
・金利
・クーポン
・クーポン金利
・利回り
・イールド
・利率

ほとんど同じような言葉なのですが、実はビミョウにニュアンスの違いがあり、フィクストインカムの専門家は使い分けています。この使い分け、実はとても大切なので、みなさんも是非およそのところを理解してください。それを解説します。

例;額面100万円
  クーポン利率 年3%
  最終利回り 年率3%

まず債券そのものには、元本とクーポンがあります。元本は例えば100万円というような切りのいい単位で、額面が印刷されています。購入時にはその額を支払い、満期(償還)時には同じ金額が返還されます。元本は、途中では価格に変化が生じます。それをわかりやすくするために、100として価格表示されます。これは投資のスタート時点の価格を100としたほうがわかりやすいので、そうしています。実は100%という意味です。ですから1億円額面の債券でもその価格を表示するのは100(100%)です。1%価格が上昇すれば、価格表示は101になります。


クーポンは、年限分だけの枚数がついています。10年物であれば10枚、もしくは半年毎の金利支払いがあるものだと20枚付いています。クーポンには利率が表示されています。たとえば10年物債券の金利が3%だとすれば、10枚のクーポンにそれぞれ3%と表示され、元本金額に3%を掛け算した金利が、毎年投資家に支払われます。半年毎の支払いだと、1.5%と表示されたものが、20枚付いています。
10年物国債を発行された時に100万円で買って、10年間保有して償還を迎えると100万円が返ってきます。元本は購入時点と償還時点では変化がありません。金利は3%だとすれば、3%のクーポンが10枚あるので、毎年3万円ずつ支払いがあります。すると、この債券の最終利回りは3%だ、ということになります。元本も金利も固定されていて、変動はありません。なのでフィクストインカムと呼ばれます。

ここまでの説明で私は、クーポン、金利、利率、最終利回りという言葉を使い分けました。それぞれの言葉のおよそのニュアンスの違いはおわかりいただけましたか?

クーポンは明らかですよね。でも金利と利回りは、ビミョウですよね。ただ、最終利回りという言葉からわかることは、利回りとは投資結果を表しているとお分かりいただけるかと思います。最終金利とは言いません。投資結果を表すのは、最終利回りです。そして、次のように使い分けます。「この債券のクーポンの利率は3%なので、金利は年3万円もらえる。償還まで保有すれば、最終利回りは年率3%だ」という具合です。

事を複雑にしてしまうのは、これに毎日変化する金利、あるいはイールドという言葉が加わるためです。この場合の金利とイールドは、同じニュアンス・意味で使っています。クーポンは10年間変化しませんが、金利は毎日変化します。金利には短期から長期まで様々な年限の金利があって、毎日それが少しずつ変化をしますが、概ね平行移動するイメージです。

米国債金利の例
4月20日はこうでした。
1年  5年  10年  30年  %
0.21 2.08  3.37  4.44

4月22日には5年以上が少し上昇
1年  5年  10年  30年  %
0.21  2.11  3.40  4.47

10年債を保有していると、金利が少し上昇したので、価格は少し下落しています。

金利と価格について別の角度から解説するつもりが、言葉の解説のみで終わってしまいました。次回は本題に絞ります。

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フィクストインカム投資入門 その3.債券の年限と金利②

2011年04月21日 | 資産運用 
きのうの復習

フィクストインカム投資とは、「決まった投資年限に対して、決まったリターンを確保できる投資」です。

10年債を10年持ち続けると、100で買った元本は必ず100で償還されますので、価格変動のリスクはありません。買った時にもらえるはずの金利を10年間もらい続けて終了です。これがフィクストインカムの「フィクスト」つまり「決まっている」という本来の意味です。

しかしきのうは、1年間の投資期間だけど、金利の高い10年債を買ったらどうなるか?という疑問への回答を、途中までしました。

ブルームバーグによれば、昨日の金利レベルは
1年物 0.21%
10年物 3.37%
でした。その差3.16%はけっこう大きいですよね。

勝負してみますか?

もし価格に変化がなければ、つまりは金利に変動がなければ3.16%の超過利回りを得られます。でも金利がちょっと動くと、得もあるけど損もあります。金利がどれくらい動くと、3.16%の差が相殺されてしまうか、それが問題です。

厳密な債券計算をフィデリティのサイトで行うと、1年後の9年物金利が3.78%くらいで収支トントンになります。つまり3.16%の超過利回りが、価格下落によるキャピタルロスで相殺されて、ブレークイーブンになってしまいます。

3.78%というのは、もともとのスタート時点のクーポン金利が3.37%でしたので、0.41%高くなった金利です。この程度の金利変動は大いにあり得る変動です。

この金利変動と、価格変動のメカニズム、かなり面倒ですよね。債券がもっとも理解しづらい部分です。
次回は、その難しいメカニズムを違う角度から解説してみます。いくつかの角度から見てみると、きっとわかってくると思いますので。
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