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資本主義は限界か 2  公益資本主義

2017年01月09日 | 資本主義は限界か

  石打・湯沢方面でのスキーから戻りました。天気にも恵まれ、気温が適度に低くて雪もそこそこ。風もなくコンディションは上々でゆっくりとスキーを楽しむことができました。

  今年のガーラ湯沢で気が付いたのは、中国人客が去年に比べて極端に少ないことです。ガーラ湯沢は東京から新幹線でわずか1時間20分程。スキー場の中に駅があるようなところです。海外旅行者が東京駅から何も持たずに来ても、駅でウェアーからスキー道具一式すべてをレンタルして、ゴンドラに乗れば白銀の世界に行くことができます。そのため中国人が初めて雪やスキーを体験するのにはもってこいなのですが、なんとほとんどいませんでした。元が安くなっていることが原因の一つのようです。

  昨日のTVや新聞でも、中国人が通貨元を見限って外貨やビットコインを必死で手に入れようとする様子が報道されていました。元のメルトダウンが本格化しているのかもしれません。

  8日の日経新聞一面トップも元安についてでした。中国の外貨準備が2年前の4兆ドルから3兆ドルにまで激減しているのは見逃せません。記事ではさらに統計に反映されない資金流失の例として、元からビットコイン、そしてドルへの迂回逃避について書いてあります。昨年11月単月のビットコイン取引が過去最高の15兆円超となり、そのうち中国人の取引がなんと9割を占めているとのこと。ビットコインの対ドルレートは16年一年間で約2倍に高騰しています。

  何も知らないトランプは「元安誘導をしている中国を為替操作国に認定してやる」と吠えていますが、実態は正反対。中国政府はこの1年必死で元を買い支え、そのために外貨準備が1兆ドルも減っているのです。

  中国の動向は今後もフォローしていきます。

 

  さて前回は資本主義の限界を突き破ろうと、原ジョージ氏の唱える新しい資本主義、「公益資本主義」という考え方を紹介しました。概要を再度掲げますと、

「この言葉は、いわゆる強欲資本主義に対するアンチテーゼで、資本主義本来の利益の追求はそのままに、しかし成果の分配をもっと社会全体に行き渡らせようようという考え方です。」

  彼のユニークなキャリアをウィキペディアから簡単に紹介します。

「慶応大学法学部を卒業後、27歳の時まで中米で考古学調査に携わった。のちスタンフォード大学のMBA課程に進んだ。経営学を学ぼうとした目的はドイツの考古学者ハインリヒ・シュリーマンのように、商売をして研究資金を稼ごうとしたためであった。その後国連フェローを務めた後、同大学の大学院で工学修士号を得た。29歳の時、光ファイバー・ディスプレイの開発会社、ジーキー・ファイバーオプティクスを設立した。」

  そこからは主にIT通信分野のベンチャーキャピタリストとして活躍し、ビジネスと同時並行的に「技術を使って世界を変える」を標ぼうする米国の「アライアンス・フォーラム財団」の代表を務めています。財団には「公益資本主義部門」という部門があり、その考え方の普及に努めています。

  日本でも「公益資本主義推進協議会」という財団を作り、彼は最高顧問を務めています。

  その財団の趣旨は、企業を社会的存在ととらえ、株主の短期的利益のみを優先するのではなく、社員・顧客・取引先・地域社会など社中全体への分配・貢献、中長期的投資、起業家精神を重視する資本主義を推進する」というものです。

  より具体的提案としては、キャピタルゲイン課税では短期保有より中長期保有の税率を優遇し、配当も中長期保有者には高い配当金を支払う。また重要案件の議決権は中長期保有者のみが保有するなどの工夫を掲げています。

  たしかに理想主義的ではあっても、全く実現不可能ではない提案を行っています。さらに感心するのは、日本の「公益資本主義推進協議会」は、これらの活動を地方でも推進しようと、地域支部を作りつつあることです。

  私もこうした考え方が浸透していくことが、資本主義の弊害を緩和し、強欲とは対極的な資本主義の発展につながると思っています。

おわり

 

コメント (3)
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資本主義は限界か

2017年01月04日 | 資本主義は限界か

  みなさん、明けましておめでとうございます。みなさんのお正月はいかがでしたか。私は予定通り主夫をしていました(笑)。

  一番楽しかったのは、年末の築地での買い物です。勝手知ったるとまではいきませんが、市場内での買い物は安さと驚きの連続でした。なにしろ物がよくて安いのです。ほとんどが生もののため、正月前に半分くらいは食べてしまいました(笑)。

 

  今年の正月の東京は思わぬほど穏やかで暖かい日が続きました。私は明日から今シーズンの初スキーなので、暖かさは実は敵です(笑)。でも昨年とは違い、雪は比較的あるので、どのスキー場もゲレンデコンディションはまあまあのようで、安心しています。

   石打丸山を皮切りに、蔵王、八方尾根、八ヶ岳方面の富士見パノラマ、野沢温泉。そして最後は3月に今年のハイライト、コロラドのヴェイルという全米屈指のスキーリゾートに行きます。家族で行く以外は50歳代から70歳代まで、7-8人のグループと一緒ですが、みなさん元気な中高年の代表選手たちで、楽しいスキー仲間です。最後のコロラドまで、怪我をせずに滑り切ろうと思っています。

  年明けも株式市場はラリーが続いていますね。市場関係のアナリストたちは、いつものように株式相場や為替相場のあてっこをしていますが、今年こそ当たるも八卦で苦労されているにちがいありません。なにしろワイルドカードの「トランプ」という巨大リスクが立ちはだかっていますので。

  いつもと違い私は金利や為替などの予想をブログで提示していません。というより、できないのです。何度か申し上げているように、「政策期待によるボラティリティが、経済実態によるボラティリティ以上になっている」からです。

  当たるも八卦で当たっても、あまり意味はありません。ウソとハッタリに満ち溢れたトランプ政策の分析はするだけ無駄と思っています。かと言ってそれを無視して必死にファンダメンタルズを分析しても、明日になればひっくり返り、あさってにはそれがまた元に戻ります。ロシアによるハッキングの中身を「オレだけが知っている。木曜にみんなに教えるよ」と断言したばかりなのに、もう前言を翻しています。共和党もえらい大統領を抱え込んだもので、お気の毒としか言いようがありません。

 

   さて今回は、年末年始のテレビ番組で私の心に響いた番組を紹介します。それは3日の夜、2時間にわたって放映されたNHKのBS1スペシャル、「欲望の資本主義 ルールが変わるとき」です。

   見るように薦めてくれたのは番組にも登場する「原ジョージ(丈人)氏」で、私も参加する「サイバーサロン」を通じて知らせてくれました。彼は実にユニークかつ尊敬すべき人物です。番組の内容をかいつまんでと思ったのですが、あまりにも多岐にわたるため、NHKの宣伝文句をそのまま引用させていただきます。

 引用

「欲望の資本主義 ルールが変わる」とは

【どんな番組ですか?】「やめられない、止まらない。」資本主義の本質はこのシンプルな言葉に尽きているのかもしれません。こうした欲望というものを原動力とする、私たちが生きる資本主義社会のあり方を様々な角度から問いかけ、考える、異色の番組です。

【番組の見どころは?】学者、起業家、投資家、経営者…、様々なジャンルで、世界経済の第一線を走る人々に問いを投げかけ構成した、インタビュー・ドキュメントでもあるのですが、そもそも利子はいつ、どうして生まれたのか?など、歴史上の資本主義のルールが変わるポイントなども振り返ってみています。大きな潮流の変化を予想させる時代に、私たちは、どうその波の中考えていくべきか?

 引用終わり

  番組をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、見られなかった方はきっと再放送があると思いますので、ご覧になることをお薦めします。資本主義は限界か、変わるとしたらどう変わるか、というような問題意識で構成されています。

   何故この番組のことをブログに書くのかと申しますと、「グローバル化」との関連で、原ジョージ氏などが以前から唱えている資本主義をどう修正していくかについて、共感する部分があったからです。この1・2年批判され続けているグローバル化の負の部分に関しても、いくばくかの解決策を提示しています。

   私は、資本主義もグローバル化も人間による自然な営みであって、主義主張ではない。それをいかにうまく利用するかで国の行く末が左右されると思っています。つまり資本主義にしてもグローバル化にしても、阻止することでみんなが幸せになるのではなく、それが原因で生ずる格差の拡大などの問題を別途手当するべきだという考え方です。

  原ジョージ氏の考え方は、より具体的示唆に富んでいます。彼自身がどのような人であり何をしているかは別途書くつもりですが、今回は主張のエッセンスだけをお示しします。

   彼の唱える新しい資本主義は「公益資本主義」という言葉で象徴されます。この言葉は、いわゆる強欲資本主義に対するアンチテーゼで、資本主義本来の利益の追求はそのままに、しかし成果の分配をもっと社会全体に行き渡らせようようという考え方です。

   一見、共産主義の「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」に近いものを感じなくもありません。しかしよく見ていくと、あくまで資本主義の修正であることに気づきます。

 つづく

コメント (2)
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