ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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アメリカ経済と世界的金利低下 その5

2016年07月31日 | アメリカアップデート

  おかげさまでこのブログのアクセス数が200万件にあと一歩となりました。

これもひとえに皆様のご支持のたまものです。

ありがとうございます。


  民主党大会はヒラリーによる受諾演説で幕を閉じました。トランプとヒラリーの受諾演説を比較すると、トランプは内容が全くない「オレを信じろ」に対して、ヒラリーはより具体性のある政策を示していました。CNNなどの主なコメントは、

・トランプの「アメリカは真っ暗だ」、に対してヒラリーは「明るいアメリカ」を示した

・その二人を象徴するキーワードは、トランプがAmerica First、ヒラリーはStronger Together

・トランプは世界に対してもアメリカ社会に対しても壁を作り分断させようとしているのに対して、ヒラリーは人種・宗教・思想・党派・性別を超えての結束呼びかけた

・トランプはそのままの自分を出し続けて支持者以外からヒンシュクをかった。ヒラリーは自分のイメージの転換を意図したが、成功したとは言えない

  では内容ではなくスピーチ自体の質はどうか。私なりの分析は、言うまでもなくヒラリーに軍配があがります。トランプは高齢者にありがちな「オレ様だけが常に正しい。オレに任せろ。オレを信じろ」の一点張りで内容が空虚で非常に後味が悪い。ヒラリーは内容を伴い、会場にいる様々な階層の人達にもれなく伝えようとしていて、優等生過ぎるきらいはあるものの、後味はよい。

   オレを信じろで思い出すのは、どこぞの宇宙人が言った Trust Me! です(笑)。低所得層の白人男性に広く支持されていると言われるトランプですが、彼は製鉄所が閉鎖された地方で失業者に向かい、「オレが中国から製鉄所を取り返してみせる」と言っていますが、新鋭設備を有し人件費が数分の1の中国から製鉄所など取り返しようもありません。すぐにホラがバレるに違いありませんが、信じる人たちがいるという厳然たる現実があります。

   そして民主党大会直後に行われた調査の支持率は両者が同率と拮抗したままでしたが、昨日のロイター・イプサムの調査ではヒラリーがトランプを6ポイントリードしたと出ています。もう少し時間が経過するとヒラリーがさらに挽回するのではないかと私は勝手に思っています。

    しかし、この二人の候補者を支持するかしないかは、政策内容や実行力などではなく、ただ単に好きか嫌いかだけのようにも思えます。従って今後予定されている二人の直接のディベート対決などの勝敗もあまり関係なく、好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い。好悪だけが選挙の行方を左右してしまうのではないかとの懸念もあります。

    それでも私はヒラリーが勝つと確信しています。理由はまだ4分の1ほどいる「決めていない」という層が、今後論戦を経れば、まともな人間を支持してくれるだろうという期待からです。

   

  さて、やっと本題です。

   前回は世界中で有り余るオカネが、一方的にリスク回避に回っているのではなく、NYの株式は史上最高値を更新し、新興国株も買い戻され、リスク商品の代表格であるコモディティーやジャンクボンドにもオカネは回り始めていることを数字で示しました。いずれも今年の2月にボトムを付け、BREXITで一時的な反落はあったものの、ボトムからは2割程度回復しています。

   ところで「カネ余り」と一口に言いますが、どこまでが不足で、どこからが余りなのか、それを数字で特定できるでしょうか。私はそれは困難だと思っています。ソロス指数などのように、通貨供給量を総額でとらえて推定することに意味はあるでしょうか。私はないと思います。そのことをまず説明します。

   例えばソロス自身が10億ドルのファンドを運用していたとして、彼がこれは絶対に儲かると思う対象が出てくると、その自己資金を元に借り入れでレバレッジを掛け、2-3倍にすることは容易にできます。それどころか先物やオプションを使えば数十倍にするのはいとも簡単です。FXをされている方が日常的にレバレッジを利用しているのと同じです。

   日本でもバブル時代のことを考えれば、企業がこぞって財テクに走り、自己資金に数倍のレバレッジを掛けて株式投資や不動産投資にのめりこみました。その裏付けとなる資金を銀行はここぞとばかりに貸し込みました。現在のように銀行が国債売却資金を日銀の当座預金にブタ積みすることなどなく、それどころか銀行は日銀からめいっぱい借り入れをして企業に貸し込みました。相手が個人の場合ですら、株式投資やマンション投資、果てはゴルフ会員権投資をしたいと言えばいくらでも貸し込んだのです。日本のバブルはそうして形成されました。

   つまり人は儲かると思えばタンスからでも銀行借り入れでも何でもして資金を捻出するし、銀行もサポートする。そうでなければおカネをビタ一文動かそうとはしません。住宅金利が10年固定で0.5%になったところで、あるいは35年フラットで1%台になったところで、買わないものは買わないのです。

  なので、どの中央銀行がカネをいくら刷ったかとか、世の中にいくらおカネが存在するかなどを静的に捉えたところで全く意味はない。ソロス指数などはしょせんその程度の静的数字に過ぎないと私は思っています。ということで、「カネ余り」を数字でとらえるのは困難だし、意味はないのです。

   では世界のマネーがまがりなりにもリスクを取り始めているのに、米国債が低金利のままでいることを、どう考えたらよいのでしょうか。私は二つの要因があると思っています。

   一つはここまで言ってきたことと若干矛盾しているような感じがするかもしれませんが、基本的需給要因としてやはり「カネ余り」です。株式市場や商品市場にカネが戻っているとは言え、バブルを形成する時のように債券を売ってでも株や不動産や商品に投資をするまでには至っていない。

  供給余力の大きい原油価格は依然として40ドル台だし、鉄鋼や非鉄金属なども供給力が大きく減ったわけでもない。中国をはじめとする新興国経済はスローダウンに歯止めがかかっていないので新興国株式も買えない。つまりリスク商品も、暴落すれば反騰狙いの買いは入るが、腰を据えた買いまでにはいたらない。

   すくなくとも日本では、個人も企業も待機資金を大きく抱えたままで、アグレッシブにM&Aに走っているのは孫正義氏や日本電産の永守重信氏くらいかもしれません。その証拠に日本企業の手元資金は増える一方だし、個人の金融資産も預貯金に溜まる一方です。

   安全資産が買われるもう一つの原因は当然ながら「安全志向」です。

  特に最近の安全志向の大きな理由はBREXITと、その後に予想される他の欧州諸国のEU離脱懸念。そしてやはりBREXITから連想されるトランプ・クライシスという「地政学上のリスク」です。イギリスがEUからの離脱を決めたくらいで世界のあらゆる相場が一気に崩れたのですから、もしトランプが本選で勝ちでもしたら、金融市場へのインパクトは瞬間風速ではリーマンショック並みになるかもしれません。

  しかもBREXITと違い、影響は長引きます。彼の言いたい放題は拍車がかかるでしょうから、極端に言えば大統領在任期間の3分の2程度。あとの3分の1はトランプ降ろしに集中し、次の大統領選に関心が移るからです。こうした政治的リスクとテロなどの爆発的ひろがりを含む地政学的リスクの高まりが、金利上昇に水をかけている。この地政学上のリスクも数字にはできないリスクです。

 以上2点が私の推論の主な点です。

   トランプ・クライシスが進行中のアメリカですが、今後の直接論戦の結果などでかなりの程度ヒラリーの当選が見えてくると、金利はある程度回復する可能性があると思われます。その裏付けはなんといっても米国経済の底堅さです。先週FRBはFOMCで利上げを見送り、アメリカの4-6月期のGDPがスローダウンしています。それでもイエレン議長などが言っているとおり、国内景気に不安要素は少なく、利上げをしないのはひとえに物価と海外経済に配慮してのことでしょう。

   では今後長期金利が上昇する可能性はあるのか。あるとしたらそのスピードや回復の程度はどうか。それを次回のテーマにします。

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民主党大会 アップデート

2016年07月28日 | アメリカアップデート

  ブログのアップデートが滞りがちで、すみません。理由は共和党と民主党の党大会の様子をライブで見ているためです。アメリカ国債をみなさんにお薦めしている私が、最大のリスクであるトランプ・リスクをしっかりと評価できなくては無責任極まりないため、CNNをしっかりと見ています。私自身が大統領選挙の推移を見通し、それをみなさんにお伝えする義務があると思ってのことです。

   先週は共和党大会の様子を私なりにお伝えしました。それに対して現役の大阪のTVジャーナリストで、主に政治問題を扱っている方から、以下のようなコメントをいただきました。その要旨は、

   林さんの解説、トランプ氏の解析、本当に興味深いです。「大衆扇動者たちの手口は世界共通」、「今が悪いのはコイツのせいだと悪者を作り出し、俺が退治して見せる、 という古典的手口」は、まさにテレビ受けするもので、彼の発信するキャッチコピーは短く力強い、しかし内容がないとのコメントは、何度も何度もニュースやワイドショーで流れました。日本の政治でも同様な手法を使う政党があり、無責任発言で人々をひきつけています。この手法は、人々に政治的関心を呼び起こさせる良い一面もあるのですが、一方で、複雑な問題を矮小化して誤認させ、安直な解決方法を信じ込ませるという取り返しのつかない一面もあります。

   というものです。現役のジャーナリストの方からこのような言葉をいただけるとは光栄です。

   さて、現在は民主党大会の3日目が開催されていて、私はそれを見ながら書いています。まずハイライトが初日に来ました。ミッシェル・オバマのスピーチをライブで聞いたのですが、これは本当に感動ものでした。女性代表として彼女が言ったのは、

 ・高かったガラスの天井をヒラリーが破ることになる

・すべての女性の夢を実現し、遂に女性が大統領になるときが来た

・これから4年あるいは8年、我々の子供の将来を任せられるのはヒラリーだ

・トランプはMake America Great Againと言うが、アメリカはまぎれもなく今も地球上で一番グレートだ

・人種や思想信条を超えて、この国の将来をヒラリーに任せよう

  アメリカというのはスピーチの国です。一国の歴史をスピーチで変えうる国です。リンカーンのゲティスバーグ・アドレス、ケネディーの就任演説、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式スピーチなどがグレートスピーチの代表でしょう。私が大学に入ってESSに入部したとたんに丸暗記させられたのは、決して短くはない、ケネディー大統領の就任演説でした。アメリカがスピーチの国であること初めて知った瞬間でした。

   女性大統領が誕生すると、ミッシェルのスピーチはヒラリー礼賛ではありますが、歴史に残る名スピーチの一つになる可能性があると思いました。

   そしてヒラリーの競争相手であったバーニー・サンダースのスピーチもスケジュールを前倒しにして初日に行われ、それもライブで聞きました。彼も自己主張を徹頭徹尾抑え切り、これまた感動ものでした。

   大会寸前に民主党内のスキャンダルが飛び出しました。公平であるべき民主党全国委員長が裏でバーニー・サンダースを阻止し、ヒラリーに加担したことがバレて辞任したのです。    

   それにも関わらず、彼は怒ったりせず火消し役になって民主党をまとめるために、スピーチの順序を初日に前倒しにして、ヒラリーを完全に支持しました。あの曲者爺さんとは思えないほどの寛容さを示し、報道からも称賛されていました。

   普段客観的な姿勢を保つ報道もこの二人のスピーチはほとんど手放しで称賛していました。アメリカ大統領選挙は党大会でのスピーチが大きく左右することがたびたびあります。その決定打が2連発された、それが私の抱いた初日の感想です。

   いま実は3日目の様子をライブ見ているのですが、その前にトランプのトンデモ発言がアメリカを駆け巡り、非難の嵐が起こっています。トランプはヒラリーの消えたメールについてロシアのハッカーに「これを聞いていたら、ハッキングして見つけてくれ」と言い放ちました。これにはすべての報道をはじめ共和党のポール・ライアン下院議長までがトランプ発言を非難しています。

   民主党の応援演説もこれに触れ、軍人代表などが「命を賭して国を守っている我々の仲間を見捨てるつもりか。プーチンを仲間に入れるなどという人間に、絶対に軍の全権を掌握させてはならない」と言わせました。なんともよすぎるタイミングでの放言です。

   ついでに本日のマイケル・ブルームバーグの応援演説にも触れます。これも秀逸でした。彼はもともと私の先輩でソロモン・ブラザーズのボンド部隊にいて、共同経営者・パートナーになり、その後ブルームバーグ社をゼロから立ち上げ、世界一の金融情報会社にした実績を持ちます。そして共和党からニューヨーク市長になり、現在はどの党も支持しない独立派です。

   彼が言っていたのは、

・自分はどの党の支持者でもないのに、どうしても言いたいことがあり、ここに出てきた

・アメリカと言う国をトランプなどに絶対にまかせてはならない。大統領選挙は賭け事ではない

・選択肢は国内政治と国際政治に実績を持つヒラリー以外ありえない

・同じビジネスマンとして言うが、彼のビジネスのやり口は騙しと借金の踏み倒しで、訴訟を何千件も抱え、何千人も首切りをし、まともに自慢できるようなビジネスマンではない

・その上自分の税務申告書を公表しないが、プーチンに近いロシア人へカネを流している可能性があるからだ

・このような人間にアメリカの未来を賭けてはならない

   かなり強烈なスピーチでした。ニューヨーク市長時代、給与を年1ドルしか受け取らずに3期も務めた実績を持つブルームバーグならではの迫力のスピーチだったと思います。

  3日目の最後はオバマ大統領の出番でした。オバマの最初の言葉は事の本質を突いていました。

 「今回の選挙を外国からみたら、ちっともわけが分からず、『いったいこいつらは何をしているんだろう』と思うにちがいない。」(爆笑)。

 

 そして主旨は、

・共和党のレーガン大統領は「アメリカは山の頂にある光り輝く国だ」と言ったが、トランプは「犯罪の巣窟で、失業者があふれ、外国に乗っ取られようとしている国だ」と言っている

・トランプが言うようにアメリカは沈んでなんかいない。今でも地球上で一番偉大だし、一番強い国だ

・この大会を開催している独立宣言の街フィラデルフィアは、自由・平等と人権を重んずる国を象徴している。民主党はそれを守り、ヒラリーはそれを実行してくれる人だ

・ヒラリーはこれまでいつもブレずに仕事を堅実にこなし何事からも決して逃げない。その姿勢は私が一緒に働いた時もそれ以前も、そして将来も同じだ

・ビンラデンを追い詰めたときも決断力発揮したし、オバマケアの元を作ったのもファースト・レディー時代のヒラリーの仕事だ

・(同盟国に費用負担をさせることに関して)NATOなどの軍事同盟にプライスタグを付けるとは、トランプは何を考えているんだ。ビジネスマンらしさが裏目に出ている

・司令官として国のすべてを任せきれ、大統領に最もふさわしいのは、私でもなく、夫のビルでもなく、ヒラリー、あなただ

   この他に夫であり将来のファースト・ジェントルマンであるビル・クリントンや副大統領候補に正式指名されたティム・ケインの演説もあったのですが、私の心をわしづかみにするほどではありませんでした。

   大事なのは明日のヒラリーの受諾演説後の評価で、民主党がまとまりを示したと評価されるか否かです。民主党は少なくともサンダースがきれいな引き際を示し、党内融和を図る演説をしたことで、点を稼いでいます。

   逆に共和党はすでに分裂症状を示しているため完全にミソを付けています。それでも共和党大会直後にヒラリーとトランプの支持率が逆転したことに驚いている方も多いと思われます。これは拮抗する選挙の時のいつもの出来事で、共和党大会後は共和党候補がリードし、民主党大会が終わると今度は民主党候補がリードする。従って、両者が終わってしばらくした時点での評価が本物と言われています。                  

   次回はシリーズに戻ります。

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アメリカ経済と世界的金利低下 その4

2016年07月22日 | アメリカアップデート

    アメリカ大統領の共和党候補がトランプに正式に決まりました。応援演説ではファースト・レディー候補の演説の大事な文言が、8年前のミッシェル・オバマの演説のパクリだったと判明してミソを付けています。しかもCNNは彼女に対して演説以前にインタビューし、そこで「スピーチ・ライターは誰か」と聞いたのに対し、「私が書いた」と言わせていました。なんともバツの悪い、言い訳のしようもない大失態です。

  他にも共和党の全国大会は異例づくめで、会場には反トランプ党員が押しかけて「Dump Trump!」とトランプ排除のシュプレヒコールをあげ、党の重鎮はだれも出席をせずに暗黙の抗議をし、彼らに代わる応援演説はトランプファミリーばかり。最後には候補を降りたテッド・クルーズが、一切トランプ応援の言葉のない応援スピーチ?をして、「本選挙ではみなさんが自らの信条に従い、憲法を守る候補に投票しよう」と、あからさまに反トランプののろしを上げるというお粗末な大会でした。

  私はこの戦いは「良識派対非良識派の戦いだ」と申し上げてきましたが、共和党員にも良識派は多数いることがわかり、やはりいつもの共和党対民主党の戦いではないことが明らかになったと思っています。

  実は先ほどまでCNNで彼の受諾演説を1時間15分、ライブで聞いていました。演説の中身は選挙スペシャリストの予想した、「これまでの主張をマイルドに修正した内容」などではなく、これまで彼の言っていたこととなんら変わりのない、ポピュリストによるアジ演説でした。移民に対しては壁を作るぞ、貿易協定は全部見直しだ、イスラム国をやっつける、軍事同盟国にはコストを払わせる。  

  演説中に何度も何度も言った言葉は、「Make America Great Again.  America First.  そしてBelieve Me!」。コミットメントの具体策などなく、俺を選べば明日からすぐにすべてを実現してみせる。「俺を信じろ」の一点張りでした。彼を選んだ共和党さん、党の結束をみじんも示すことができず、誠にお気の毒様でした(笑)。

  そしてこの演説を聞いたあとの単純な感想としては、ポピュリストとしての彼の恐さを見たということ。ヒトラーやパナマのノリエガ、ベネズエラのチャベス、金正恩、さらにトルコのエルドアンなどに見られる大衆を掌握する力を大いに感じました。

  念のため再度申し上げますが、私は民主党を支持しているわけでも、ヒラリーが好きでもありません。ただただアメリカ、日本、そして世界のためには、Anyone, but Trump. トランプでなきゃ誰でもいい、ということです。

 

  さて、シリーズの続きです。世界的な金利低下と株高が同時に起こっていることについて、前回の記事で私は以下のように書いています。

「株価と債券価格の同時上昇の大きな原因は、Genrechtさんも書いていらしたように、世界の余剰マネーがアメリカに引き寄せられているということだと思われます。」

  世界的なカネ余りが続くと、株高・債券高の状態はずっとこのまま続くのでしょうか。

   今一度、この数年の成長率、金利、そして株価上昇率を加えて並べてみます。

            12年 13年 14年 15年 16年(推定)

実質GDP           2.2    1.5    2.4    2.4    2.4  

名目GDP            4.1    3.1    4.1    3.5    3.4

米国債10年物6月末    1.67   2.52   2.53   2.35   1.49

各年最高値       2.30   3.01   2.86   2.48   2.13

S&P500(株式)      16.0  32.4  13.7    1.4   7.5

 

  インフレを加味したアメリカの名目成長率が3-4%で堅調に推移しているのに対して、株価の成長率はそれを大きく上回り、非常に高い伸び率を示しています。これは投資家がかなりリスクを取っているという事を示していますが、そのリスクの取り方をPER(株価収益率)でみてみます。

  このところ数年間は伝統的な15~20倍未満からかなり上方にはずれていて、20~25倍程度を示しています。ちなみに日経225の倍率は戻っても14・5倍にすぎません。

  株式がそこまで買われていることを近頃のアナリスト風の言い方で言えば、リスクオンの状態が続いているにもかかわらず、本当の意味の安全資産である米国債も同様に買われ、債券側から見ると正反対のリスクオフの状況にあります。


  今回はさらにリスクマネーがどう動いているのかを見極めるために、いつもあまりみなさんが見ることが少ないと思われる高リスク資産の価格動向を見てみます。

  みなさんには以前、「たまには商品相場も見ておきましょう」とお伝えしました。実行されていますか?

  まず商品相場の主要指標であるトムソン・ロイターCRBインデックスの2・3年間の動きを追います。14年の前半まではおよそ300前後で推移していたものが14年後半から下落し始め、15年は年間を通して下落。年初の220台から170台まで約2割下落しました。そして今年の2月19日に160と最安値を記録。その後現在は184と5か月で15%も一気に戻しています。その動きの主役は原油です。2月に26ドル台だった原油(WTI)が現在45ドル付近まで約7割も上昇したことが大きく貢献しています。

  次にこれも代表的リスク商品である新興国の株式相場を見ましょう。代表的インデックスであるMSCI 新興国株価指数を見ますと、先進国の株価より1か月くらい早い1月に約700でボトムを付け、現在は868と25%も上昇しています。

  さらに、これぞ私が忌み嫌う代表的リスク商品のジャンクボンドです。こちらはイールドからみるのではなく、価格をiシェアーズ・ドル建て社債ETFの価格が把握しやすいのでそれを見ますと、2月初旬に8,928でボトムを付け、現在は10,491と17%もの上昇です。

  以上を見ることで、世界の代表的リスク商品のほとんどをカバーできたと思います。これらのほとんどが年初にボトムを付け、そこからから2割程度の回復を示しました。

  世界の余剰資金は必ず大きく動き回ります。いまいちどレビューしますと、今年は年初の1月2月くらいにアメリカのスローダウンや中国をはじめとする新興国の景気低迷の懸念から、株式も商品相場もずいぶん下げていました。ところがアメリカをはじめとして実体経済は、相場の動きに反して意外と堅調でした。ところがそれに6月のBREXITが冷や水を浴びせ、一時的にかなりの程度あらゆる相場が下落したのですが、ここにきてBREXITショックは、現物経済や金融市場自体のショックではなく、地政学上のショック、それも将来がどうなるかわからないことに対する不安が大きかったとわかり、相場を回復させました。

  しかもNY株式などが史上最高値を更新するに至っては、単なるBREXITの反動以上の期待感を抱かせます。

  それにもかかわらず、米国債の金利だけはBREXIT後のボトムの1.37%からわずか0.2%程度しか戻していません。それを価格に換算すると計算上はたった2%程度の動きです。そして今年の年初のイールド、2.25%に比較しても、あまりにも低いレベルでしかありません。

  次回はその低金利の意味するところを私なりに読み解き、将来の予測のヒントにしたいと思います。

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金融センター,シティーの行く末

2016年07月19日 | イギリスのEU離脱 BRE

   今年の全英オープンゴルフは、実に見ごたえのある試合でした。おかげで海の日は寝不足でした。あれだけのビッグスコアで2日間死闘を繰り広げるのはめったにありませんね。優勝はスウェーデンの40歳ステンソン、2位はアメリカの49歳ミケルソン。リンクスの厳しいコンディションに打ち勝ったのはこの二人。若手の居並ぶ3位以下は11打も離されていました。

  テニスではしばらくイギリスの選手が勝てずにいたため、「ウィンブルドン現象」という言葉ができてしまいました。場所だけ貸して自分たちは蚊帳の外ということを言い表す言葉です。実はゴルフもアメリカ人が席巻していた時期があったのですが、最近はスコットランドや北アイルランドを含めイギリス人が勝つようになっています。

  ウィンブルドン現象の最たる分野がロンドンの金融街、シティーです。英国系金融機関で世界のトッププレーヤーがほとんどいなくなり、それでもシティーは世界の金融センターの地位を保っています。しかしBREXITで果たしてシティーの将来はどうなるか。

  最近はかなり悲観的なニュースが流れています。例えばロンドンのREITファンドが解約不能に陥ったとか、英系ファンドから400億ドルが流失したとか。それが果たしてシティーの衰退にまでつながるのかをみてみたいと思います。

キーワードは以下の4つです。

・ウィンブルドン現象

・シングル・パスポート

・国境なきユーロ市場

・資本調達市場

  最初の言葉はすでに説明しましたが、イギリス系のメジャープレーヤーがいなくなってもシティーの地位は全く揺らいでいません。

  次に2番目の「シングル・パスポート」を説明します。

  EU離脱の一番のデメリットはEUへのパスポートをすべての分野において失うことです。

  イギリスで得た銀行免許はEUのどこに行っても通用しますので、いちいち免許を国別に取り直す必要はありません。ちょうどEUパスポートの所持者であればEU内での移動には国境がなくなるのと同じです。それがEUメンバーの一大特権、「シングル・パスポート」です。

  世界の金融センターとして名をはせているのはロンドンのシティーとニューヨークが双璧でしょう。世界にはその他にもシンガポールや香港があり、最近は中東のアブダビなども頭角をあらわしていますが、2つの都市とは比べるべくもありません。

  では本当の意味で世界の金融の中心地はどこでしょうか。

  それはロンドンのシティーです。ニューヨークではありません。何故ロンドンのシティーが世界の中心なのでしょうか。それを解くカギは3番目のキーワード、「国境なきユーロ市場」です。

  私は米系の投資銀行ソロモンブラザーズで10年間仕事をしていました。仕事内容は資本市場部という部門で、日本企業、あるいは日本企業の海外金融子会社の発行する社債などの引き受けをすることでした。その主戦場はニューヨークではなく「国境なきユーロ市場」、場所は主にロンドンでした。

  ここで言うユーロ市場のユーロとは通貨ユーロの意味ではなく、欧州全体をぼんやりと指すユーロ市場という極めて自由度の高い「国境なき欧州の市場」を指します。

  ユーロダラーと言う言葉を聞いたことのある方は数多くいらっしゃると思います。実際には通貨はアメリカのドルなのですが、アメリカの国境を越えて、海外市場で自由に動き回るドルをユーロダラーと言います。それが円であればユーロ円と言われ、通貨がユーロだとユーロユーロになり、ちょっとへんですが、使われています。

  そうしたユーロダラーやユーロ円、ユーロユーロを運用する投資家をめがけて、社債発行の引き受けをするのが仕事でした。実際には発行された債券を買い取り、投資家に売って手数料を稼ぐのです。

  何故米系投資銀行がニューヨークでなく、ユーロ市場で活動するのか。

  理由はアメリカの厳しい規制を逃れるためです。発行された債券は株式同様、特定の取引所に上場されます。例えばロンドン証券取引所です。上場されない債券は投資家から買ってもらえません。取引所は上場の承認にあたり基準を設けています。ニューヨークだと数年の財務諸表を専門家がアメリカの会計基準であるUSGAAPのベースで作り直す手間が必要で、費用と時間が膨大にかかるのです。

  それに引き換えロンドンの取引所は、普段日本の会計基準に合わせて作られている財務諸表をただ単に英文に翻訳すればそれで許してくれるのです。そのため発行体にとって使い勝手は格段に上です。そのむかし日本国、正確には大日本帝国が高橋是清を送って日ロ戦争の戦費調達を行ったのも、他ならぬロンドンのシティーにおいてでした。それが次のキーワード、

  シティーは「世界の資本調達市場」なのです。

  ユーロ市場の自由度は投資家側にも大事です。アメリカだと債券保有者は国債、社債に限らず名義を当局に登録する必要があり(ベアラー・ボンド)、資産状況を捕捉され、源泉徴収を受けます。ユーロ市場では昔の日本株のように株券(債券も)を持っていれば名義を変更していなくても所有権を主張できるので、捕捉されづらく、名義変更手続きも不要となります(ベアラー・ボンド)。もっともこのような税制上の抜け道は塞がれつつあります。

  こうした資本調達手続きの簡素さは債券発行に限らず、株式発行でも銀行借り入れでも同じで、企業側も投資家側も、使い勝手が非常によいのです。そのため米系の投資銀行でも日本企業の証券の国際的な引き受けはシティーで行うことが多いのです。

  以上のことから投資家もおカネをユーロ市場に置いて運用するのです。オイルマネー、チャイナマネー、日本マネー、そしてアメリカの一部のマネーもいったんは「国境なきユーロ市場」に置いておき、そこから運用します。

  じゃ、もう一つの国際金融センター、ニューヨークは何なのか?

これは「巨大なローカル市場」です。アメリカ企業はユーロ市場という国際的な資金調達市場に頼らずとも、投資家のフトコロも深いアメリカ国内で調達が完結します。それが巨大なローカル市場、ニューヨークです。

  BREXITに伴い、ロンドン・シティーの代わりにフランクフルトやパリが名乗りを上げています。しかし今現在もそうであるように、それらの市場がユーロ市場の代表になることは非常に困難です。理由は、自由度が低いことの他、専門家が少ないことや英語だけでは通じないこと。そのことは金融機関も発行体である国家や企業、また買い手の投資家にも共通して言えることです。

  では本当にシティーが将来も世界の金融センターでいられるか否かについてです。

  私はBREXIT後も、シングル・パスポートさえ交渉で確保できれば、世界の金融センターでいられる可能性は十分にあると思っています。もちろん残留のほうがイギリスにとっては圧倒的に有利だと思うのですが、金融関係だけはシティーに優位性があるため、さほど悲観的ではありません。それについてもう少しだけ解説します。

  BREXITとは、EU内で人の移動や、貿易や投資などあらゆる活動でパスポートを失うということを意味します。企業は製造物の輸出販売許可をいちいち取り直し、それぞれの国と関税協定を結びなおし、銀行は支店や海外子会社の免許を取り直し、投資活動も許可を得なければできなくなる。

  今後の離脱交渉の一番のポイントは、27か国とすべての活動でいちいち交渉をしなくてはならないのか、あるいは一つのパスポートで済むよう、27か国全部が一括で認めてくれるのかが最重要になると思われます。

  BREXITに怒るEU側は域内のタガを締めなおすためにも、すべてに「ノー」と言う可能性があります。しかし市場の動揺を通じて各国経済を左右しかねない金融分野だけは、シングル・パスポートを認める可能性があると私は見ています。それがメイ新首相にとっても生命線となりそうです。

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アメリカ経済と世界的金利低下 その3

2016年07月15日 | アメリカアップデート

  イギリスではあっという間に首相が交代してしまいましたね。もともと勝ち目のないもう一人の首相候補、離脱派のレッドソム氏は「英国は大変な時期にあり、可能な限り早く新首相を選ぶことが国益だ」と語り、実に見事な引き際を見せました。その後新首相のメイ氏が官邸前で行った就任演説も、難しい局面での引き継にもかかわらず堂々としていて、簡潔かつ要領を得た内容だと感じました。

  さらに新首相を印象付けたポイントは新閣僚指名の中で、逃亡中のジョンソン氏をひっ捕らえて、「EUとの離脱交渉は言い出しっぺのお前がやれ」ということで外相に任命したことです。もちろん新首相自身も前面に立ち交渉を行うと宣言し、最重要課題にかかげました。

   こうした一連の動きは、市場にはポジティブに捉えられたようです。

   今後のイギリスのEU離脱問題で特に金融にかかわる部分で重要な、「ロンドンのシティの地位」が果たしてどうなるかについては、近々別途書くつもりです。

   一方、市場はアメリカ株の驚くほどの好調さを受け、だいぶ戻していますね。特にドルをお持ちのみなさんが心配されていた為替市場では、15日正午現在106円台と、「相対的に危険だとみなされている円が大いに売られている」ようです(笑)。

 

   では本題に戻りますが、今回はちょっと長いです。いや、いつもか(笑)。

   まず各国金利の状況をアップデートします。シリーズの最初にBREXIT以前と以降の各国金利レベルを示しましたが、それに昨日のレベルを追加します。

各国10年物指標金利%   6月13日  7月1日  7月14日

アメリカ          1.62       1.44    1.54

英国           1.23         0.87         0.79

ドイツ           0.02       ▲0.11       ▲0.04

フランス          0.39          0.18         0.18

日本           ▲0.17%     ▲0.26      ▲0.23

  アメリカとドイツはある程度上昇、日本は若干の上昇、フランスは変わらず、英国はさらに低下とマチマチの動きになってきています。第1波が去った証拠が見て取れます。なかでもアメリカではこのところ発表された経済指標が比較的かんばしいものが多く、株価は史上最高値を連日更新しています。

  シリーズ2回目ではアメリカFRBの利上げ先送りに関して、アメリカの実質GDP成長率が四半期ごとに低下していることが重要な要因の一つだろうと申し上げました。ここ1年の実質成長率は以下の通りでした。(前期比年率)

15年第2四半期  第3四半期 第4四半期   16年第1四半期

  3.9%             2.0%       1.4%    0.8%

  そして「実にコンスタントに低下しつつあります。この状況ではFRBも利上げには踏み切れず、長期金利も簡単には上昇しないでしょう。つまり正常化への復帰であっても、やはり成長率鈍化には勝てない」と申し上げました。もちろん世界経済の動向も影響を与えたとは思われますが、なんといっても自国の経済状況が最重要と思われます。

  今回はGDP成長率をすこし長い系列で見てみましょう。5年間の数字を示します。16年は推定値です。実質GDPも名目GDPも年間の伸び率は実にコンスタントな数字であることがわかります。そこに10年物国債金利の6月末と各年の最高値を追加してみます。

        12年 13年 14年 15年 16年(推定)

実質GDP         2.2    1.5    2.4    2.4    2.4  

名目GDP         4.1    3.1    4.1    3.5    3.4

10年物6月末    1.67   2.52   2.53   2.35   1.49

各年最高値    2.30   3.01   2.86   2.48   2.13

    金利は各年の6月末も最高値も瞬間風速ではありますが、実はけっこう狭い範囲で推移していることがわかります。6月末を指標の一つに上げたのは、直近16年の実績がすでに出ていることと、各年のいつを見るのが適当かを考えたとき、年央がよいと思っただけで、恣意的な意味合いはありません。

  米国債投資のタイミングを計っている方にとっては各年の最高値もきっと気になるところでしょう。こちらは13年末をピークにして年々低下しています。インフレ指標も実質的に含む名目成長率がさほど低下しているわけでもないのにです。

  5年間の成長率推移にNY株式価格の伸び率の欄を加えますと、NY株式が実にコンスタントにしかも大きく上昇していることがわかります。12年から株価の年間上昇率を並べますと、


        12年 13年 14年 15年 16年(現時点まで)%

        16.0  32.4 13.7   1.4    7.5

   15年を除くとほとんどの年で株価の成長は2桁の伸び率を記録し、5年平均でも2桁の伸びになっています。

   コメント欄でGenrechtさんは前回の記事にあった「相関関係」という言葉に反応され、各国の株式相場が相関関係にあるということを指摘されました。またこの金利問題では『株式価格の上昇と債券価格の上昇という本来であれば逆相関になってもよいはずの両者が同じ動きになってしまっている』という主旨のご指摘がありました。

   この部分については、必ずしも教科書的にも「逆相関だ」と言えない悩ましさがあります。例えていえば、

「金利が低いということは景気刺激的となり、将来の収益向上が見込める。従って株価にもよい刺激となり上昇する。逆に金利が高いと景気抑制的になり、将来の収益低下見通しから株価は低下する。」という事も言えるからです。株価も金利も現在だけでなく将来も見据えて値付けされるため、時差のとらえ方次第で、その時々で因果関係に違いが出ます。

  この伝でいくと、金利の低位安定が株価上昇の原因の一つだ、とも言えます。

  しかし株価と債券価格の同時上昇の大きな原因は、Genrechtさんも書いていらしたように、世界の余剰マネーがアメリカに引き寄せられているということだと思われます。


  それと各国の株式相場の連動性については、もちろんグローバリゼーションの進展の結果だと思われます。各国・各地域とも貿易や資本移動、そして人的移動の活発化で相互依存関係を強めています。

  最近は「反グローバリズム」という言葉を使ってそれに対して批判的な意見が多くなっています。BREXITの主張の中にもありましたし、アメリカ大統領選挙の焦点の一つでもあり、果てはイスラム過激派の主張にも反グローバリズムの考えが入り込んでいます。

   私は以前も申し上げましたが、世界各国・各地域に見られるのは自然発生的な「グローバリゼーション」であって、グローバリズムという思想や意思の元に進展しているわけではないと思っています。

   交通・運輸・通信手段が発展すれば、人・物・カネが活発に動き、交流するのは当然だと思います。それをイズム、つまり主義だととらえ、政治や宗教の勝手な「反グローバリズム」という考え方で阻止することなどできないでしょう。

   あの鎖国状態の北朝鮮でさえ国内で稼働している生産手段や通信手段、武器、エネルギーなどの重要部分のほとんどは海外から技術を得て初めて稼働したものです。もちろん日本の今日の発展も明治に開国したことがスタートになりました。

   そうした世界の相互連関は今後も進展するのは間違いありません。それでこそ世界は発展します。よく言われる「行き過ぎたグローバリゼーションが格差を生み、反グローバリズムを生んでいる」というのはある程度は事実でしょう。しかしそれに乗って行かなければ世界のどの国も発展からは取り残されます。それでも構わないという過激な思想は、不幸な結果しかもたらしていないと私には見えます。

   相互依存度が高まることにより世界の景気循環や株価まで連動性が高くなり、変動幅が増幅されてしまう、いわゆるボラティリティーが高まるという危険性が生じます。それを合理的に阻止する手段を人類は見い出せていません。理想的には各国・各地域の景気循環の周波数が異なり、波を打ち消し合ってくれるといいのですが、そうはいきません。

  つづく

コメント (15)
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