米国債10年物金利が4%に接近していますね。また投資チャンス到来です。
私は昨年10月21日に、「150円でも米国債は買いだ」という投稿をしていました。その時の金利は約4%で、10年後のブレークイーブン為替レートは100円でした。
現在の金利は3.94%と4%に接近しています。しかし為替レートは137円ていどですからそのときよりさらに有利で、ブレークイーブンもより低下しています。その高金利をめがけて「世界のマネーが米国債に集中」というニュースがありました。23年2月21日付、日経新聞のニュースです。
タイトル;世界のマネー米国債集中
引用
世界の投資マネーが米国債に押し寄せている。米国外から米国債への資金流入は2022年に過去最大の規模となった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げで投資妙味が増し、長期投資家やオイルマネーなどの資金流入が目立った。23年も積極的な投資が見込まれる。
米財務省の国際資本統計によると、米国外勢による22年の米中長期国債の買越額は世界全体で7500億ドル(約100兆円)と、22年の中長期国債の発行額の約2割に相当する。これまで買越額として最大だった10年を500億ドル上回り、12年ぶりに過去最大を更新した。
米国債に資金が流入した一因は投資妙味が増したからだ。長期金利の指標となる10年物国債利回りは21年末の1.5%から22年末の3.8%まで上昇(債券価格は下落)した。債券運用では債務不履行(デフォルト)に陥らなければ、購入時点の価格で満期まで保有した場合の利回りが決まる。生命保険会社や年金基金など満期保有を前提とした投資家のマネーが利回り水準が切り上がった米国債に流入している。
引用終わり
リスクと金利を比較すれば、米国債に世界のオカネが集中するのは実に妥当な投資行動です。しかしだからといって金利は高いままなので、米国債投資を考えている方には依然として大きなチャンスが続いています。
ところが同じ日の同じ日経新聞では、正反対のニュースが流れていました。
2023/2/21付日本経済新聞
タイトル;生保、損失覚悟の外債売却
サブタイトル;昨年の売越額11兆円、05年以降最多、 為替ヘッジコスト重く
引用
生命保険会社が外国債券の売却を急いでいる。米ドルなど為替リスクをヘッジ(回避)するコストが上昇し、実質利回りを食い潰しているためだ。2022年12月単月の売越額は2.2兆円強と統計を遡れる05年以降で最高で、通年でも11兆円強と最も多かった。
生保は外債投資の際、為替リスクをとる場合とそうでないときがある。足元で売却を進めているのが為替リスクを抑えたヘッジ外債だ。第一生命保険は22年4~12月に約2.7兆円分を純減させた。重本和之・常務執行役員は「ヘッジ外債の(実質)利回りがどんどんマイナスになり、売却額は当初考えていたより大きくなった」と話す。
主要生保12社の22年末の外債含み損は1兆円弱。その3カ月前は4600億円強の含み益で、外債の含み損益が急速に悪化している。
背景にあるのは為替ヘッジコストの急上昇だ。米ドル円の3カ月物は21年12月下旬の0.3%台を底に一本調子で上がり、22年末には4.9%台をつけた。ヘッジコストは異なる通貨間の短期金利差で決まる。急ピッチの利上げを進める米連邦準備理事会(FRB)と大規模な金融緩和を続ける日銀との政策の方向性の違いが反映された格好で、現在は5%台に乗せている。ユーロでもヘッジコストは上昇傾向にある。
ヘッジコストを引いた実質利回りの低下により、損失を覚悟する売却が増えてきた。住友生命保険は22年4~12月期決算で有価証券の売却損を2290億円計上した。前年同期の26倍で、多くが外債とみられる。日本生命は10倍の6616億円、かんぽ生命保険も8倍の1435億円を売却損として計上した。
引用終わり
生保はドルをヘッジをしているためにチャンスを逃す愚かな投資をしています。この場合のヘッジとは、将来のドル安円高に備えて、投資しているドルをスワップなどでヘッジしていることを指します。それにはコストがかかるのです。
ここへきての生保の行動の愚かさは、2重の愚かさになります。一つは米国債金利が上昇していると、当然米国債価格は下落しますので、最悪の時期に売却することになる。そして、金利高こそ米国債投資の絶好のチャンスなのに、ヘッジ付投資しか考えない愚かな生保は、そのチャンスで逆に売っている。なので、為替と金利の両方で愚かな行動と言えるのです。
では何故これほどまでに愚かな投資をしているのでしょうか。
その答えは私の著書「証券会社が売りたがらない米国債を買え」を読んでいないから。そしてついでに私のブログも読んでいないからです(笑)。
このブログの読者の皆さんは、おおむね私が買いサインを出したときに投資をし、生保のようにドルをヘッジなどしません。というより、個人が債券の為替ヘッジなどできないからです。
その結果、みなさんは大いに利益を享受しているはずです。私の最初の著書の結論は、「金利は為替に勝てる」というものでした。そしてその証左として、著書が出版された2011年まで、30年間、20年間、10年間の3とおりで米国債に投資をしていると、結果はどうだったかを数字で示しました。
1982年から2011年までの30年間の投資結果;ドル金額は100ドル→2347ドル、約24倍になりました。その間ドルは238円→83円とわずか3分の1になってしまいました。しかし円に戻した場合の元金は24÷3=8倍となっているのです。債券投資で8倍とは、驚きのパフォーマンスです。同様に20年では2.8倍、10年でも1.6倍になっています。金利は為替に勝ったのです。
生保の運用者が私の本を読んでいれば、為替をヘッジするなどというおバカなことをしないでしょうし、金利が上がって価格が下落した現時点で米国債を売却するなんておろかなこともしないで済みます。
生保も愚かなら一方で日経新聞もおろかです。なぜなら、
「世界のマネー米国債に集中」という記事と「生保が損失覚悟の外債売却」というニュースを同じ日に出し、生保の愚かさの指摘をしていないのですから。
それぞれの担当記者はともかく、統括している編集長は何を見ているのか。
喝―つ!