ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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2015年07月31日 | 中国問題

  中国の株式相場について私は「損したヤツが騒ぎ、得したヤツは黙ってほくそ笑んでいるので、全体を見渡せば大した問題ではない」と申し上げました。しかしこのことはあくまで株式相場の暴落について述べただけで、中国経済全体が問題ないわけでは決してありません。

   去年の春ころに何度かに渡って中国リスクについて述べています。特に不動産問題や地方でバブルとして膨らんでいた理財商品の問題を取り上げました。そしてバブルが崩壊した場合のインパクトを、日本やリーマンショックと比較しています。

 引用

1. 日本のバブルとの比較・・・その1
一人当たりGDPでは中国はまだ日本の5分の1しかないため、長い目で見た衝撃の吸収力は中国のほうがある。

2.世界の実態経済への影響度
 世界の工場と言われる工場の具体的立地はほとんどが沿海地域で、(理財商品などで)バブっている地方都市とは離れているので影響は大きくない

3.世界の金融市場への影響度、日本との比較・・・その2
 海外から中国市場への投資はすべてが制限されているので、世界が損をかぶることは少ない。中国の大金持は政治的崩壊リスクと経済バブル崩壊のリスクヘッジをすでに十分進めている。

4.中国バブル崩壊の心理的効果・・・リーマンショックとの比較
リーマン前夜は日本を含め、世界の大部分がアメリカの好景気の恩恵を受けバブル状態にあり、世界中で株・不動産が沸き立っていたため、ショックの伝搬力が強かったが、中国の場合はそうした世界的バブルの気配はないため、激震の震度は弱い。

  以上のように、中国バブルの崩壊が金融市場と実体経済に与える影響は瞬間的には大きくとも、リーマンショックほど全世界に甚大な影響を与えるほどではないと予想しています。ただし、政治体制の崩壊が同時に来ると、混乱は大きくなり長引きます。

 引用終わり

   こうした見方は現在も変わっていません。このところ中国政府は株式市場の混乱を抑えようと躍起になって介入をしています。私は先日、介入の仕方がしょせん資本主義を理解していない共産党の稚拙なやり方だと批判しました。何故株式市場にこれほど必死に介入するのか。それはまさしく引用した昨年の文章の最後の部分、政治体制の崩壊が同時に来ると、混乱は大きくなり長引きます。」これを防ごうとしているためです。

  「中国の実態経済は、政府発表の数字とは違う」ということがたびたび言われます。私も懐疑的に見ていますが、そればかりは決定的証拠があるわけでもないため、確証には至っていません。

  例えば「新常態」というスローガンを掲げ、成長率を7%くらいに設定して、このところのGDP成長率発表数値は毎期ほとんどその通りのぴったり7%くらいで動いています。それってかなり怪しいですよね。よく言われるのは電力消費量と貨物輸送量の発表数値との乖離です。

   以下ではそれについての石・平(せき・へい)という日本に住む中国人の批評家で中国問題に詳しい方のコメントを引用します。

  『2013年、中国政府公表の成長率は7.7%であったが、それに対して、関係部門が発表した13年の全国の電力消費量の伸び率は同じ7%台 の7.5%であった。しかし2014年、中国全国の電力消費量の伸び率は13年の半分程度の3.8%に落ちていることが判明している。だとすれば、14年 の経済成長率が依然として7%台とは疑問を抱かざるを得ない。

  2014年の中国経済の減速が政府発表以上に深刻であることを示すもう一つの数字がある。中国交通運輸省の発表によると、2014年1月から11 月までの中国国内の鉄道貨物運送量は前年同期と比べると3.2%も減っていることが分かった。生産材や原材料の多くを鉄道による輸送に頼っている鉄道大国の中国で、鉄道の貨物運送量が前年比で3.2%減ということは、中国全体の経済活動がかなり冷え込んでいることを物語っている。』

引用終わり

  石平氏は中国生まれで北京大学を卒業し、神戸大学で博士号をとっている人で、中国にはかなり批判的な人です。日本と中国両方の事情に通じている人はあまり多くありません。私はもう一人中国人でやはり日本にいて中国問題を専門にしているSMBC日興のエコノミスト肖敏捷氏の発言も常に注目しています。肖氏も中国の実態経済を分析する場合、同じ様な指標を使うことがあります。

   ある程度信頼に足るという意味では、HSBC(イギリス系の香港上海銀行)が元々発表していた製造業のPMIなども信頼性は高いと思われます。HSBCのPMI(製造業購買担当者景気指数)はHSBCが発表する景気指数の一つで、数値が50を越えて上がると企業が先行きを強気に見ているとされます。最近はHSBCがこの業務から撤退し、中国の財新というところが受け継いでいるのが残念です。この購買指数は国家の統計局も発表していますが、HSBCはどちらかといえば中小企業が多く、国家統計局は大企業が多いと言われ、常に一定の乖離があります。

  HSBCの数値でいうと今年に入って2月だけが50を上回りましたが、あとは49台と50を下回る状態が続いています。そして財新になっての直近の7月の数値は48.2とかなりショックな数値でした。それに対して国家統計局の数値はだいたい50を常に上回り、直近の6月分は50.2でした。

つづく

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リンクスランドへ その1

2015年07月30日 | ゴルフ

  夏休みということもあり、しばらくスコットランドへのゴルフツアーのお話と、いつもの経済・金融のお話を並行してアップしていきたいと思っています。今日は「リンクスランドへ、その1」です。ゴルフ好きでない方は、どうぞあきれて無視してください(笑)。

   スコットランド人に「なんでゴルフをするの」と聞くと、決まって「そこにリンクスランドがあるからだ」と答えるのだそうです。山登りと同じですね。もっともスコットランドには山がないので、「そこに山がないからだ」かもしれません(笑)。

   私のリンクスツアーは87年、97年、14年、そして今回の15年とこれで4回目です。自分でもあきれるほどですが、私がもし何故そんなに遠くのスコットランドくんだりまでゴルフをしに行くのか、と聞かれたら「ここにはリンクスがないからだ」と答えるでしょう。日本にはリンクスがないのです。

   リンクスとは海岸沿いの砂地の丘陵地帯で水はけがよく、芝は生えても土はないため木は生えません。もっとも風が非常強いため木が立っていられないということもあります。リンクスには違いないのですがより起伏が多いところは、砂丘を指す言葉であるデューンズとも呼ばれます。もっとも砂丘といわれながら砂ばかりではなく海岸に自生する様々な草は生えていて、昔から羊の放牧をしていました。そうしたリンクス地帯がゴルフに最も適した環境を提供してくれるのです。芝には水が必要です。気候的には雨が多いため水の心配もいらず、降り過ぎても砂地で水はけがいいためゴルフの理想郷なのです。

  では、私が何故リンクスにいくのか、最大の理由はそこにゴルフの原点があるからです。リンクスでのゴルフは気候やコースに文句をつける人には向きません。地元の人は「スコットランドの気候は1日に四季がある」と言います。私がミュアフィールドで雇ったキャディは「降ってくるものは雨だけじゃないよ、一日のうちにアラレも、雪も、そして砂もだ」とのこと。気温もアッっという間に10度くらい変化します。その厳しい変化に我々日本から来たひよわなゴルファーが戸惑いを見せると、彼らは笑いながら「エンジョイ ウェザー」とたたみかけるのです。そう、気候の厳しさもリンクスのゴルフの楽しみの一つだと思わなければ、やってられないのです。

  天候にもましてもっと厳しく、我々の感覚からすれば理不尽なのがコースです。ラフはセミラフと呼ばれる2m幅くらいのラフを除くと基本的に刈ることはしませんので、30cmくらいあります。飛び込んだボールが見つかればラッキー、見つからなくてあたりまえ。フェアウェーを捉えたボールがフェアウェーのデコボコにはじかれてラフに飛びこむこともよくあります。日本のコースのようにフェアウェーはなめらかで、ラフの苅り高も5センチくらい。ボールの頭が見えれば許せるけど、10センチもあって見えないと許せないなんて言ったら笑われるだけです。

   そして一番手こずるのがバンカーです。日本のバンカーのように縁にラフがあってボールの落下を防いでくれたり、縁が少し上がっていて落ちにくくしてあることはほとんどありません。バンカーのそばをボールが通過しようとしてもバンカーに向けて必ず傾斜があり刈り込んであるため、ボールは吸い込まれるようにして落ちて行きます。そのうえバンカーの壁は垂直で、砂地はほとんどがフラットに作られているためボールはポトリと落ち、壁にくっついたままになります。するとピンどころかグリーン方向に向かってクラブを振ることすらできないことがあります。とにかく振れる方向に出す以外にない、たとえそっちがロストボールになるようなラフであってもです。

   フェアウェーもグリーンもかなり固いので、ピンを狙ってグリーンに直接落としていくことができず、どうしても手前からコロコロと転がし上げるのですが、それがわずかに逸れるだけでもバンカーにポトリ。なんという理不尽と嘆かずにはいられない、それがリンクスのゴルフです。

   今年の全英オープンは私がリンクスツアーをしていた7月にすぐそばの聖地セントアンドリュースのオールドコースで行われ、日本人プロは8人も出たのに18位となった松山一人を除き全員予選落ちに終わっています。そして6月の全米オープンでも松山一人が18位で、他の選手は全員が予選落ちを喫しました。今年の全米オープン最大の話題は実はプレーよりコースでした。プレーヤーもコメンテーターも今年のコースは全米用ではなく、全英オープンのコースだと評していたほどで、アメリカでも屈指のリンクス・コース、西海岸にあるチェンバーズベイで行われました。日本のひよわなプロゴルファー達は、全く歯が立ちませんでした。

   アメリカのコースは内陸型のインランド、またはパークランドと呼ばれるタイプのコースがほとんどです。しかし最近作られて評価の高いコースのほとんどはゴルフの聖地スコットランドにあるリンクスタイプのゴルフ場です。これが一つの流行なのかどうかはわかりませんが、世界の新しいゴルフコースはあきらかに原点回帰をしているのです。

  では日本のコースはどうか。残念ながら日本のコースのほとんどはパークランドタイプ、日本語で言うならきれいに整備された「箱庭コース」です。日本のプロが海外でほとんど通用しないのは、きれいなコースのおかげだと言えるでしょう。

   私が日本でプレーした中でもっともリンクスを体現しているのは、全英オープンの日本予選に使われるJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部です。そこで毎年行われる男子トーナメントには、「全英への道」というタイトルが付けられています。このコース、海辺にあって作りはリンクスを体現しているのですが、おかしな点が二つ。名前の頭にJFEと書いてあるくらいですから製鉄所の敷地内にあり、周りの景色は製鉄所であること。いま一つは、木は生えていないリンクスのはずが、何故か場違いのヤシの木が数十本も立っているのです。製鉄所はしかたないとしても、ヤシの木はいったどういうつもりなんでしょう。設計者の意図がなんなのか、私には理解不能です。

  最近の世界の新しいコースはますます原点回帰し、トーナメントもリンクスタイプのコースで行われることが多くなっています。フェアーであるかどうかがスポーツ精神の真髄で、特にアメリカではゴルフコースでもフェアーか否かが常に問われてきました。にもかかわらず理不尽なことが起きるリンクスタイプのコースを選ぶのは、ゴルフとはあくまで自然との戦いであり、自然とは理不尽なもので、理不尽もそれなりにフェアーなのだということからでしょう。我々もそれを学ぶ必要があると思います。

   とまあ、いろいろリンクスのゴルフコースに関して御託を並べてみましたが、要はゴルフが好きだからリンクスでゴルフがしたい、それに尽きると思います。次回からは今回のツアーの話に入ることにします。

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スコットランドから帰りました

2015年07月28日 | お知らせ

   昨晩、スコットランドへのゴルフツアーから戻りました。東京の暑さと時差もあってまだ半分ぼーっとしていますが、とりあえずの帰朝報告です。

   今回はスコットランドの南西部にあるグラスゴウからスタートし、東部のエジンバラ方面、北東部のアバディーン方面のゴルフ場を9カ所回りました。うち一カ所だけ9ホールの古いゴルフ場があったのでラウンド数は8.5ラウンドです。天候はいたって良好。雨は全ラウンド中たった3ホール降られただけで、全行程の半分は快晴に近い晴れ、あとの半分は曇り時々晴れの天気が続きました。ちょうど雨や風で中断されたり延期されたりした全英オープンをやっていた時にすぐ近くでプレーしていたのですが、我々は風で困ったり、雨で中断されるようこともなく、すべて予定通りのラウンドを楽しむことができました。晴れ男は健在でした。気温も20度くらいと快適で、暑さで疲れるという事はありませんでした。しかし連続して8.5ラウンドもすると、さすがに足や腰には疲労がたまっていますので、しばらくは思いっきり体を休めるつもりです。リンクスでのゴルフについては次回から報告します。


   さて、私がスコットランドに旅行をしていた10日間あまりの間は、出発前のギリシャ問題や中国株の暴落ほどの市場の混乱もなく、比較的平穏でした。と言ってしまうと、株式投資をされている方からは怒られるかもしれませんね。イギリスでは地元のBBC、FTを始め海外メディアが最も話題にしていた経済ニュースは商品価格の下落でした。ゴールドや原油だけでなく、その他の資源価がかなり下げていました。それにつられるようにして世界の株式市場も下げていますね。メディアが伝える内容は一様に、中国株式の下落とアメリカの利上げの可能性が世界の相場を下押しているというもので、きっと日本でも同様のことが言われていたのだろうと思います。今ひとつは同じアメリカの利上げ見通しにより新興国からオカネが流出し、新興国の株式市場が縮小しつつあるという解説でした。まあきっとその解説は当たっているとは思うのですが、それをもって悲観一色になるのは間違っていると私は思います。


   まず張本人のアメリカは、経済が順調なので利上げに向かっているのであって、利上げですぐ不況になるようなら利上げなどしません。そして何度か申し上げているように、アメリカはもともと貿易収支が大幅赤字なので、ドル高と原油など資源・商品価格の下落は大歓迎のはずです。アメリカの輸出が落ちることばかりが言われますが、逆にGDPにはマイナス要因である輸入金額が減少します。マイナス要素の輸入の方が輸出を大きく上回っているので、ドル高によって貿易収支は必ず好転します。経済全体は成長のゲタを履かせてもらったようなもので、アメリカには不利どころか有利な条件がそろったわけです。その分成長率を高めるので、ドル高と資源価格下落は大きな問題ではありません。

   ヨーロッパもギリシャ問題が一段落し、もともと経済は回復基調にあったため、原油など資源価格の下落は物価下落から消費を刺激することにつながり、大歓迎なのです。

   日本はどうか?と言うよりも、日本はどうかしている国なので、資源価格の下落は物価の下落につながって政府と日銀だけは困る。でも庶民は円安と増税による物価高に苦しんでいるので、とても助かる。エネルギーやその他原材料価格が下落した分、消費に回せるオカネは増えるので、成長率のプラス要因になります。

 

  この様に考えれば新興国の成長率ダウンによる輸出減くらい、自国の成長率が高まれば打ち消すことができるので、どうということはないのです。それは数字でしっかりと考えれば簡単に分かります。例えば輸出に大きく頼る日本経済はGDP全体が約500兆円、うち個人消費は6割の300兆円、輸出は80兆円程度です。新興国のスローダウンにより輸出が10%の8兆円減少したところで、物価の低下で個人消費がたった1.6%伸びれば8兆円は相殺できるのです。ましてアメリカのように個人消費が7割を占め輸出にあまり頼らない国であれば、新興国への輸出減などもののカズではないのです。ドル高と資源安は物価抑制を通じて消費を増やし、成長率を高めるのです。

 

  中国株の下落の時も私は同じようにしっかりと数字と理屈で考えろという解説をしました。株が暴落して騒ぐヤツのことばかりをニュースにするから間違う。得したヤツは賢いので黙ってほくそ笑んでいるのです。

 改めて言います。

 世の中の事、特に経済金融は数字がすべてなのです!

 何か大きなことが起こった時には、皆さんもこうした発想を心がけてください。そうすれば、大きく事を仕損じる事はないはずです。

    

  私の旅行中にコメント欄ではみなさんから円ドル為替の取引コストや今年中の益出しに関して、かなり突っ込んだコメントをたくさんいただきました。とても役に立つ情報が多かったと思います。情報を寄せていただいたみなさんに感謝いたします。

 

  今後は情報のカテゴリーを細かく分けて、みなさんが後で確認しやすくするつもりですので、その節はご協力をよろしくおねがいします。今検討中の記事のカテゴリーはおよそ以下の通りです。

 ・アメリカ国債の売買情報、どの証券会社がお薦めか

・円からドルへの転換はどの証券会社・銀行・FX取引会社がお薦めか

・円からドル建てMMF、そしてアメリカ国債への投資をする場合のお薦め方法

・来年の証券税制改正の内容と、何をしておくべきか

 

  上記の見出しだけの記事を私がアップし、そこにみなさんから自由にコメントをつけていただくという方法を考えています。すると半年後に例えば「税制はどうなるか」などを知りたい時に、「カテゴリー」の一覧からバックナンバーを探しやすくなると思います。上記の仮のカテゴリー分類や追加のカテゴリーの提案があれば、是非お寄せください。みなさんからの提案をおまちいたします。なお、私自身は中立の立場を維持し特定の証券会社などの推薦はしないことにしていますので、その点はご容赦ください。

 

  ついでに、私のこれまでのカテゴリー分類はずいぶんといい加減なところがありますのでそれを反省中です(笑)。特にニュース・コメントで始めた議論がどんどん展開してしまってシリーズ物になってしまったり、シリーズ物も最初のタイトルから内容がどんどんあらぬ方向に変化してしまうことが多く、あとでバックナンバーを読む方にはご迷惑をおかけしています。そのあたりの改善も追々していくつもりです。

  反省、ペコリ

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不気味なほど静かだった金融市場と平穏無事な経済動向 その14 欧州経済14、最終回

2015年07月16日 | 米国債への投資

  ギリシャ悲劇はチプラス・シナリオのとおりには進まず、最後はほとんど喜劇で一段落しました。どうやら「ユーロからの離脱など、誰も望んでいないしできっこない」という私の見通しどおりだったようです。

  この最後の結末までがすべて彼のシナリオ通りであれば、でかしたチプちゃんと言うよりほかありませんが、私は前から申し上げているように彼は支離滅裂で、シナリオライターの力量など全くなし。そうしたことを断定的に言える理由は、以下のとおりです。

彼が政権を奪取した今年年初の公約は、

・EUの理不尽な緊縮策を反故にしてみせる

・高齢者の医療費はすべて無料にする

・様々な税は今後減税する

などという威勢のいい公約で政権を得ています。しかし直近の彼の動きは、

・国民投票で国民を騙してEUにNOを突きつけさせた

NOだとユーロを離脱せざるを得ないとは説明はせず、離脱なしで緊縮策停止可能のような投票用紙を作って騙した

・国民投票勝利でもEUが言うことを聞かないとわかるや、国民投票でNOを突きつけた緊縮策を上回る緊縮策を受け入れてしまい、最初の公約なんか全くなかったことにした

   これが支離滅裂の動かぬ証拠です。こうした支離滅裂さに対してドイツやフィンランドなどは堪忍袋の緒が切れ、ギリシャの一時的ユーロ放逐をちらつかせ妥協させました。もちろん一時離脱など現実的ではなく、チプラスとギリシャ国民に対する強烈な仕返しパンチを見舞ったのです。一度離脱したら状況は悪化の一途で、ギリシャ難民がドイツに押し寄せるのは必至です。

  しかし支離滅裂であることよりもっと怖いことがあります。それは彼は自分自身の中では何も矛盾したことをしていないし、首尾一貫していると思っていることです。それが証拠にこれほどまでにドイツに打ち負かされても、辞任するとは一言も言わず、今後もみんなは当然自分を支持してくれると思っているふしがあることです。

  この手の人間が国家を運営すると国民は本当に不幸ですよね。北朝鮮しかり、ロシアしかり。もしかすると憲法違反をものともしない日本しかり。(たびたび申し上げますが、私は非武装中立論者ではありませんし、ましてや極右でもありません。ごくまっとうな中道派です。ただ自分は法治国家に暮していたいので、憲法学者149人中146人が憲法違反だと認定しているのに国会を強行突破したり、違憲判決の出ているまま3倍もの1票の格差をそのままにする選挙区割を強行する首相の姿を、ついつい上に挙げた方々と重ね合わせてしまうだけです)。

 

   さて、私は明日から暑い日本を離れてスコットランドの旅に出ます。「またゴルフか?」という声が聞こえますが、「ハイ、またです(笑)」。どうしてもラウンドしてみたかったミュアフィールドを回れるチャンスがでてきたので、飛び付きました。すぐ隣のセントアンドリュースでは、全英オープンが今日から始まります。なんか去年も全英の行われている隣のコースでプレーしましたね。

  このシリーズを開始した時はタイトルにもあるように、ここ数年めったにないほど金融市場が穏やかだったのですが、後半はギリシャに中国株暴落まで加わって市場が荒れ狂いました。

  といっても中国にしろギリシャにしろ私が言い続けたように、終わってみれば世界を震撼させるようなこともなく、一部のあわてた投資家が損したくらいで終わっています。円からドルへの転換をしようとしている方には買い場を提供することになったと思います。しかし当然のことながら、金融市場の混乱は米国債買いを招きます。FRBによる利上げ近づいているはずが、あれよあれよという間に金利は一時大幅に低下してしまいました。これはしかし市場の落ち着きとともに戻ると思いますので、それを期待しましょう。


  今回の記事は「不気味なほど穏やか・・・」シリーズの最後です。私が欧州編の本題だと示した「ユーロは投資に値する通貨か」について私の考えを最後にまとめます。

  2011年の著書執筆の時点よりよほど通貨ユーロは落ち着いているし、ギリシャ問題の混乱でも特に暴落することもなく推移しています。しかし著書で通貨ユーロはお薦めリストには入れなかったのですが、今回も見送りです。

  ギリシャ喜劇は、実はユーロ参加国に対しては強烈に効いていて、PIGSの残りの国も滅多なことではドイツに刃向えないことを肝に銘じたことでしょう。そして新たに参加を検討している国に対する牽制にもなったことでしょう。  

   ユーロは域内での為替調整機能を持っていません。つまり競争力の格差を為替レートでは調整できないということです。その代わりに労働者の移動の自由を認めたり、関税撤廃で物流をよくして経済格差をなくしていこうとしていたのですが、実際には十分に機能していません。そうした理想形に近付くにはまだまだ相当な時間がかかるでしょう。

  従って、ユーロがいくら大きな塊となって流動性を高めていても、とても安心して投資に値する通貨ではない。

  ギリシャの債務問題は一山越えてはいますが依然未解決で、先日指摘したようにアメリカの財政の崖のように繰り返します。その他の危うい国も今はどうにかなっていても、世界的な大問題が生じると突然問題化する可能性があるからです。

  多くの方から見ると、「そこまで安全性を見る必要があるのか」となるのでしょうが、非常に長いスパンで本当に安心できる投資先のみを投資対象にする限り、簡単に投資基準を下げることなどできません。

  「通貨ユーロはまだだ」それが私の結論です。

  では聖地巡礼の旅に行ってきます

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のれんの街 真庭市勝山へ

2015年07月14日 | 旅行

  ギリシャのサムライ債は無事償還されたそうで、ご同慶にたえません。保有者はきっと懲りて、2度と危ない高利回り債券には手を出さないでしょう。ギリシャ問題は支離滅裂の首相チプラスに振り回されながらも、メルケルおばんさんらは決してブレることなく彼にユーロ放逐をちらつかせ、国民投票のナンセンスさを説いたに違いありません。

  それにしてもギリシャ国民のインタビューを聞いていると、「EUは民主主義を踏みにじった」とか、「我々の生活をだいなしにした」とか、盗人猛々しいとまではいいませんが、よくもまあお手前勝手な主張をするものだと思います。しかしだいぶ解決に向かっているようなので、今日はこの話題はここまでにします。

  一方日本ではアベチャンが本格的に苦戦しはじめました。きのう公表されたNHKの世論調査で支持するが41%、支持しないが43%と、初めて支持しない派が上回りました。彼の行動も、自分が不利とみるや何するかわからないので、解散まで含めて見ておく必要があるのかもしれません。選挙区割と集団的自衛権の違憲2連発は命取りになる可能性がなきにしもあらずと思います。

  今回は先週の旅行のお話です。

  のれんの町、岡山県真庭市勝山に行ってきました。ここを最初に知ったのは、瀬戸内国際芸術祭2010年のメイン会場の直島にてでした。島を散歩中、立派な民家の玄関に掛けられていた素敵なデザインののれんに見とれていると、そこの女主人が我々夫婦を招き入れてくれました。「うちの中にものれんが掛かっていますのでどうぞご覧ください」と縁側に座らせてくれ、のれんがどこから来たのか由来を教えてくれたのです。その方によれば作家は瀬戸内国際芸術祭に参加している草木染めのれんを制作している真庭の加納容子さんで、直島には何十軒もの家に彼女の制作したのれんが掛けられていているので、是非楽しんでいって下さいとのこと。それ以来、いつの日か真庭を訪れようとおもっていました。

  昨年の夏ころ、NHKのBS放送で女優の中谷美紀が直島の美術館などを訪れる番組を放映したのですが、その番組でも直島の石川さん宅を訪れ、女主人とのれんの話をしていて、ますます行きたいと思うようになりました。そして決定打はこの春先にNHKで、真庭市の勝山地区がのれんで町興しを成功させているという番組を放映したことです。

   番組では勝山地区の住人が、それぞれ家のヒストリーなどにちなんだデザインを作家の加納さんに依頼し、何度も意匠の打ち合わせをしながら独自ののれんを作って軒先に掛けるまでを、ストーリー仕立てにして紹介していました。

   町屋にかかっているのれんの写真をご覧いただくには、私のフェースブックに10枚程度の写真をアップしてありますので、そちらをご覧ください。歴史地区に指定されている昔の街道沿いにある家は、昔ながらの白壁とナマコ壁を維持し、ほとんどの商家や家がのれんを掛けていています。商家も会社も普通の家もみんなが独自のデザインののれんを掛けているのです。しかしそればかりではありません。公共の建物にものれんが掛っています。例えばFBにアップしておきましたが、郵便局やキリスト教会、なかには公共トイレまで古めかしい「雪隠」の看板の下にのれんが掛っているのには思わず笑いました。

   このほかちょうど年に一度の「のれん祭り」開催中でもあったため、約百軒もの家々の入り口にのれんがかけられていて、街はのれん一色です。これだけ素晴らしい色彩、デザインと染めをたった一人の作家が作りだし、のれんで町興しを成功させているとは、本当に驚きです。

   我々は草木染め作家の加納さんの「ひのき草木染めギャラリー」を訪れて、もし気に入ったデザインののれんがあれば、購入したいと思っていました。ひのき工房は250年前に建てられた加納さんの自宅古民家を工房に改造した建物です。ギャラリーにはたくさんののれんが掛けられ、販売されていました。FBのページはこちらです。

https://www.facebook.com/studioHinoki

   うちはマンションで外に面した玄関などありませので、のれんとしてではなく、リビングの壁掛けにするつもりです。ところが展示品にはデザインが気に入ってもサイズが合わなかったりして、ぴたりと来るものがなかったのです。するとスタッフの人が作家の加納さんを外出先から呼び寄せてくれ、直接加納さんにお会いして相談の上制作していただくことになりました。加納さんはとても親切な方で、東京から来た我々をまるでお得意様のように扱ってくれました。おねがいしたデザインは、山々が重なりあった風景がモチーフで、色は緑や青がベースになる予定です。のれんが出来上がるのがとても楽しみです。

   勝山のおまけです。旅の楽しみの一つは食事です。この山奥の街で、十年に一度出合えるかどうかの美味しい銀ダラの西京焼きに出会いました。見るからに美味しそうだし、ボリュームもかなりある切り身の焼き魚です。旅行中、お昼に偶然入った造り酒屋の酒蔵を改造したレストランの今日のコース・ランチです。酒屋さんの料理らしく酒粕を使って絶妙の風味を出していました。見た目の焼け具合と照りが美味しさを予感させてくれました。箸を入れると透明感のある身がさらに食欲を感じさせ、期待が高まります。一口食べると、感激の嵐でした。切り身魚でここまで美味しい魚を食べたことが無い程の味でした。食べることが好きな家内も同じように大感激していました。

  場所はひのき工房と同じく昔の街道沿いの造り酒屋の蔵の一つ、御前酒 蔵元 辻本店の西側の蔵に「レストラン西蔵」があります。お店の前には石碑があり、彫ってあったのは「寅さん第48最終回ロケ地」でした(笑)。

  真庭のあとは倉敷に移動し、中学の修学旅行以来の倉敷の美しい美観地区を楽しみました。

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