連日なんとも目ざましい首切り戦果を上げているトランプちゃん、先週遂にあの報道官スパイサーを首にし、今週はプリーバス首席補佐官を首にしました。
スパイサーはCNNやNYタイムズに食ってかかり、気に入らない報道各社を記者会見場に出入り禁止にした札付きの報道官です。このところはトランプちゃんとうまくいっていないため、あまり顔を見せませんでした。かわりに毎日こわもての女性報道官が出ていると思っていたら、あっさり辞めてしまいました。
理由は先週ホワイトハウスの広報部長に就任したスカラムッチが気に食わないからとのこと。しかしあの苦虫をかみつぶした顔のスパイサーがいなくなったと思ったら、新報道官はもっととんでもないカミツキガメだったとは、なかなかの演出ですね、トランプちゃん(笑)。
では、トランプ劇場の今週一週間を振り返ります。以下は金曜日のCNNニュースを要約しています。
月曜日;司法長官セッションズに対してツイッターで、「あいつは何でオレ様を擁護しようとしないのか。オレ様を擁護しないとわかっていたら、司法長官になんかしなかった」と怒りまくった。といってもこれはこのところロシア問題が深みにはまったままなので、毎日同じ八つ当たりをしています。司法の独立という民主主義の基本原理も知らない、かわいい大統領トランプちゃんです。
その後全米ボーイスカウトジャンボリー(年次集会)に出席し、スピーチはひんしゅくものでした。彼は「ボーイスカウトの前で政治の話なんかする奴は地獄へ行け」、と放送禁止用語を使いながら、自分のスピーチは他人への攻撃と自己弁護の政治一色だった。そのためボーイスカウト連盟の主催者は3日後、「ジャンボリーに政治論争を持ち込み、申し訳ない。大統領からスピーチで非難された人々に謝罪する」とわざわざ大統領府になり代わって謝罪。おやまあ、お気の毒に。
火曜日;ふたたび司法長官を名指しで「なんでヒラリーの犯罪をもっとあばかないのか」と不満をぶちまけた。はたして司法長官が「もう辞めた」というのが先か、トランプが「首だ」というのが先か、どっちが早いでしょう。
水曜日;「アメリカ軍から、性転換をした者を締め出す」という決定を下した。この差別政策には民主党ばかりでなく、与党共和党からも重鎮を含め多くの反対の声が上がっている。
木曜日;カミツキガメ新広報官はインタビューでプリーバス首席補佐官を「妄想障がい者」と罵倒し、さっそく本性を現した。さらに「ホワイトハウスで情報をリークするやつはすべて首にする」と宣言。その後首席補佐官プリーバス氏はトランプちゃんに辞表を提出した。
さらにレックス・ティラーソン国務長官解任のうわさが出て、本人はインタビューで否定したが、すでに名前のレックスをもじってREXITという用語も用意されている。
ティラーソンは、極めつけの過激派首席戦略官バノンと喧嘩しているとうわさされ、どっちが辞めるかになっている。そしてもう一人、国家安全保障補佐官のマクマスターがホワイトハウス内で孤立し、解任のうわさが出た。
魔の金曜日;ついにオバマケアを廃止する代替案が否決された。何もできないトランプちゃんに決定的ハードパンチが浴びせられ、彼のいら立ちは頂点に達し、やぶれかぶれで首席補佐官プリーバスを辞めさせた。首席補佐官とは日本で言えば官房長官。安倍首相が支持率低下で官房長官をなぶり、辞めさせたに匹敵する。
そしてCNNはこう結んでいます。
「就任以来最悪の一週間が終わった。事実は小説より奇なり」
まったくもってその通りの一週間でした。
政権の今後について付け加えます。
共和党の議会指導部がとても重要な決定をしています。それはあれだけトランプが言っていた「国境調整税」を見送るという決定です。国境調整税は法人税率の低い国からの輸入に税を上乗せし、10年で110兆円も稼ごうという政策で、それをもってしてトランプ大型減税の財源にするはずだった政策です。これがつぶれたとなると、法人減税も個人減税も大型減税はほとんどが宙に浮き、トランプの公約はほぼ壊滅。さらにオバマケア代替案が成立せず、いよいよ八方ふさがりになってきました。
では来週もまたアガサ・クリスティー原作、「そして誰もいなくなった」上演中のトランプ劇場を楽しみにしましょう(笑)。