ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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講演会の様子・・・「マイナス金利、大丈夫か日本」

2016年06月08日 | マイナス金利導入をどうみるか

  先週末の5月のアメリカの雇用統計は衝撃の数字でしたね。新規雇用者増加数は4月の16万人から3.8万人へと激減しました。大手化学メーカーの大規模ストの影響や、4.7%に至った失業率により募集しても集まらなくなったとかいろいろ理由はあるようです。その衝撃はドル円レートに現れ、106円台に突入しました。アメリカの利上げはどうなるのか、本格スローダウンはあるのか、そうした見通しについては今後書いていくことにします。

 

  今回は講演会の報告です。講演会は私が本を書くきっかけを作っていただいたサイバーサロンというネット上のプライベートなサロンのメンバーを対象に、主催者の方がセットしてくださいました。会場の限度いっぱいの45名の方に参加いただき、2時間の講演とその後2時間の懇親会という長丁場でした。その模様が主催者の方からサロン参加者へメールで発信されておりますので、そのまま引用させていただきます。

引用

講演会では多様で活発な論議が交わされ、一方的な「レクチャー形式」より、はるかに充実した内容でした。これも、講師林さんのアイディアとテーマに関する深い分析と洞察、聴講者、皆様の強いご興味が相乗した結果で、全員で日本の現状・将来に関する理解をより深めることが出来たのではないかと思っています。また懇親の立食パーティでも、林さんを囲んでのグループ談義や、多彩な顔ぶれの方々との和やかな交流を楽しませていただきました。

 引用終わり

    休憩時間を含めますと4時間半にわたり話しっぱなしだったため、さすがに最後は声がかれるほどでしたが、みなさんの熱心さに時間を忘れるほどでした。一方的でない対話形式が好評を得たこと、嬉しく思います。

  今回参加されたみなさんは70歳以上の方が半数ほどとかなり年齢層は高いのですが、若い方では30歳代後半から40歳代の方も見受けられました。多くの方が印象に残ったと言われたポイントをかいつまんで述べます。


1.「現在の日本のGDPのうち8%相当は、財政赤字という上げ底だ」

 毎年60兆円しか収入がないのに100兆円も使っている。その赤字40兆円、つまり500兆円のGDPの8%は無理やりかさ上げされたもので、「日本の実力GDP8%分を差し引いた460兆円しかない」という指摘です。

   この事実を数字できちんと示した批判が見当たらないのは何故でしょう。このブログでの講演会内容の記事でも同じ指摘を強調しました。もう赤字は当たり前で、GDP8%のかさ上げだなどと指摘する方がおかしい、と言われるくらい、ひどい世の中になっています。これはとても恐ろしいことです。

   それに関連する次の指摘も印象に残ったと言われました。

 2.ドイツは日本同様少子高齢化の国でありながら財政は黒字を保持し、立派に経済運営を行っている

 ドイツはそもそも日本と同じように中膨れな人口ピラミッド構成で少子高齢化に悩む国ですが、日本ほど経済運営に悩んでいません。東ドイツというとんでもないお荷物を90年代初頭に背負ったにもかかわらず、国の累積債務もGDPの7割台しかなく、単年度財政は現在黒字です。インフレに対する国民の厳しい監視の目が働き、日本のように赤字垂れ流しを許すことはないのです。

3.ギリシャ同様になれば、年金給与は4割カット

 日本が今後赤字続きでギリシャのようになったときのことを考えると、とんでもないことが待ち受けます。ギリシャは公務員人件費や人員数、そして年金をはじめ様々な支出を約20%程度削減させられつつあります。日本はもし赤字分を削減しなければならないとなると、40%もの削減をすることになります。弛緩しきったこの国の国民が耐えられる限度をはるかに超えることになるでしょう。

 4.金利の支払いだけで10兆円以上、歳入の2割近いのに、それを除いたプライマリーバランスが取れるとか取れないとかの議論はナンセンス

 借金超大国日本の場合は、金利分も勘定に入れないと意味がないのです。累積債務は金利分だけで、あっという間に大幅増加するからです。

  講演後のことですが、一昨日、日本の格付け会社R&Iが増税延期を理由に日本国債の見通しを「ネガティブ」に変更しました。海外の格付け会社は警告を発しましたが、見通しの下方修正まで行っていません。珍しく日本の格付け会社が先行しています。もっともR&Iは日本をAAAよりわずかに1段階低いだけのAA+にしていますので、元が高すぎたとも言えます。

   さらに大きな日本国債にかかわるニュースは今朝の朝刊です。三菱UFJ銀行が日本国債のプライマリー・ディーラー資格を返上したというニュースです。実に大変なニュースですが、これも後ほど解説します。

   さて質疑応答の時間では、主に以下のようなコメントや、質問がありました。

・日本にも良い部分がたくさんある。例えば日本人の持つ素晴らしい資質。よいものをきちんと作り、世界に誇れるサービスを提供している

・普通の人がおかしいと感じるマイナス金利はやはりおかしいのだと確信が持てた

・消費税は増税すべきで、それにより成長が阻害されるというのは悲観過ぎる

・元大蔵官僚の高橋なにがしという立派な方が、「日本の借金が1,000兆円と言うのは嘘で、売れる資産が650兆円もあり純負債は350兆円だ」と言っている。林さんは間違っている

  と、もろに反論されました(笑)。私からは、「国の資産のほとんどは売れない。売れるのは元国営で上場されていたり予定されている企業の株くらいだ」という回答を差し上げましたが、「権威」ある高橋氏の議論を信じていて納得されませんでした。ところが助っ人現る!

   なんと財務省主催、国の資産査定の委員会に出席されたと言う方がいらしたのです。その方がおっしゃるには、「財務省の役人ですら国道や港湾施設、国有林などを始めほとんどの資産は計上しているだけで売れないと言っていた」と言うのです。これには私も会場のみなさんも驚きました。私からもさらに、「国が売り食いに入った時点で、ほとんどの資産は暴落するので、計算が成り立たなくなる。ギリシャなどでも破たんに瀕したときの国有財産には全く買い手がつかなかった」という話を追加し、やっと納得されたようです。

また以下の質疑応答もありました。

質問;財政の破たんとはどういう経路を経るのか

回答;巨額の累積赤字で国民の信頼が本格的に揺らぐと、円の信頼も揺らぐ。日銀の国債買い取りに不信感が拡がれば銀行システム全体に不安を感じ、預金の流失が始まり、円から外貨への逃避も起こる可能性がある。円安が悪性のインフレを招き、国債の買い手が日銀以外になくなり、財政が成り立たなくなる。

  そして、講演会後の懇親会で特に比較的若い世代の方からは、

・政府と日銀の対応は、信用できないし、アベノミクスも間違っている

・若年層が不安を募らせるのは全くそのとおりで、私を含め年金がもらえるなどと計算している楽観的な若者はいない

・将来、累積債務が自分たちに降りかかってくるので、国に頼らず自分でできる防衛をする以外ない

・無理な成長より、身の丈に合わせることが大事だということが理解できた

・前回の講演会を聞いてから自己防衛として円からドルへのシフトを少しづつ行っている。米国債の金利が上昇したら買いたい

  およそこのようなやりとりがありました。特に若い方々が飲み食いはそっちのけで、私を取り囲み持論を含め実に熱心に談義されていたのが印象に残りました。若い世代は政府には頼らず、自分たちのことは自分たちで面倒をみる気概を持っているようです。

  長くなりましたが、以上が講演会の様子です。

  次回からはアメリカ経済の今後の見通しを含め、日米の金融情勢を中心に議論をしていきたいと思っています。

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6月4日 講演会の内容 その2

2016年06月03日 | マイナス金利導入をどうみるか

  明日に迫った講演会内容の続きです。

   1回目に申し上げたとおり、今回の主要なテーマは項目1.の「マイナス金利にしてまで成長を追い求める必要があるのか」です。

  潜在成長利率が0近辺まで低下しているのに、2%の実質成長2%のインフレを目標にして無理に無理を重ねる。家計はアベノミクスには乗らず、金融資産の82%が安全資産に偏ったままの状態にある、という数字をお目にかけました。

項目の3.は何故無理に無理を重ねるのか、その原因の一つは世界の潮流にもありそうだ、という話です。


 3.   世界の期待、金融緩和

リーマンショック後、アメリカによる大緩和策に呼応し

・中国は財政出動・・・後遺症に苦しむ

5兆元(70兆円程度)もの財政出動の結果、鉄鋼などの生産設備が過剰になり、地方にまで過剰な不動産投資が行われ、後遺症に苦しんでいる。昨年は株式市場でバブルを無理に作ったが崩壊。懲りずにいままた一部都市の不動産市場にバブルが生成している。

・欧州は金融緩和でマイナスまで踏み込むが、機能せず

欧州は財政規律が厳しく赤字国債をむやみに発行できない。ドイツのように黒字予算で国債発行のない国もあり、国債の流通量が少ないため、欧州中銀が国債の大量買い取りができない。そのため金利を低下させる方に傾いて、いち早くマイナス金利が導入された。2年前に導入したものの、現在インフレ率はゼロと低下してしまい、全く奏功していない。成熟国ならではの潜在成長力低下が制約になっている。

・日本は財政プラス金融緩和、特に黒田総裁による異次元の緩和策

クロちゃんのバズーカは天に向けて発射されているため、いずれは自分が被弾する。企業も家計も資金需要はなく、供給された資金は日銀にブタ積みされる一方。それをマイナス金利で追い出しにかかったが、いくら強化したところで、企業も銀行も、家計も余計不安に感じるだけ。消費や投資には向かわない。その上消費税値上げの先延ばしで、政府自らアベノミクスの失敗を認めてしまったため、さらに不安が募っている。

・アメリカはすでに超緩和状態から脱出し、正常化に向け金融引き締めに入った

世界で超緩和策が当たり前になっている。それが歪んだ政策であることを認識しリスクを感じ是正しようとしているまともな政府・中銀はアメリカとドイツのみ

 

4.極端な政策は極端な結果を導く

2016年、政府がマイナス金利をエンジョイする異常な状況

国債を発行すれば政府はもうかり、発行の歯止めはない。10年国債を発行すると、政府は毎年0.1%もらえる。正常な神経の持ち主は、これを異常な状況だと判断する

1980年代企業がマイナス金利をエンジョイする異常な状況

株式、不動産、ゴルフ会員権などの資産バブルを生み出し、大崩壊。正常な神経を持ち主はバブルには乗らず、身の丈に合った生活を続けた

払わなくて済むツケはない

企業と銀行は、90年代から00年代半ばまで返済に10年以上要した。政府がツケを払うのにどれほどかかるか見当もつかない。インフレでの返済以外、方策はない。もしくは米国政府の債務は踏み倒すと言っているトランプに習い、踏み倒すか  

悲鳴を上げる金融界・財界

全銀協会長、経団連連会長まで遂に表立ってマイナス金利に反対論を展開。強化すればさらに反対論は強まる。マイナス金利を強化すればいずれは預金金利までマイナスにせざるを得ないが、それは銀行の取り付け騒ぎに通じる道

 やめることすらできない財政・金融緩和という薬物への依存

4月末に服用を見送っただけで株式は暴落。もしマイナス金利を撤回したら、さらなる暴落につながる。クロちゃんが「必要とあれば追加策を打つ。方法はいくらでもある」と言えば言うほど、自らこれまでの失敗を認めていることになるし、実際に追加すればどんどん深みにはまる。

思い出そう3年前を。クロちゃんは「打てる手は全部打った。政策を小出しにはしない」と豪語。その後バズーカを撃ち続け、「今後いくらでも打つ手はある」。この人たちの頭には、「自己矛盾」という言葉はなく、「約束とは先延ばしにするものだ」という言葉しかない。首相と日銀総裁がウソをつきまくる国に住むのは、悲しい

 大事な大事なこと

毎年40兆円の財政赤字とは、財政の超拡大政策である

政府、日銀、エコノミスト、学者、報道関係者、だれもが財政赤字とは財政拡張策だという基本を忘れてしまっている。予算は60兆円の収入より40兆円も使ってしまう大拡張策であることを忘れている。追加の補正予算の5兆だ10兆だけを問題視するという、大きな間違いを犯している。それを世の中の誰も指摘していない。裏を返せば、「ギリシャの財政削減策は2割だったが、日本は最低でも4割の削減が必要」ということを忘れてはならない

 マイナス金利をエンジョイする外銀と海外投資家

マイナス金利でも運用益、何故?

外銀はドル資金の提供により、0.8~0.9%もプレミアムを得ている。ちなみに現在の5年物ドル円のベーシススワップで邦銀は97bp、つまり0.97%もプレミアムを要求されている。実際に邦銀が調達しているドル資金総額は円換算93兆円程度なので、プレミアム分だけで1兆円近く損失を被っている。

 日銀が国債を爆食し株式投資を行うのは、信用がすべてである中央銀行が博打を打っているのと同じ。財政赤字を積み上げる政府とは、サラ金に走る無能な人間と同じ。そのツケがジャパンプレミアムに跳ね返っている


5.     徳勝礼子著「マイナス金利」    15年12月10日発行

副題;パイパーインフレより怖い日本経済の末路

 日本の信頼度低下は、国債のマイナス金利が象徴している

金利は成長の証で、マイナス金利とはマイナス成長の象徴

邦銀はスワップによるドル調達でプレミアム金利を払っている

ジャパン・プレミアムとは日本の信認低下のコストだ

 徳勝氏の結論

「マイナス金利の行き着く先はハイパーインフレではなく、衰弱死」

この項については、読者のみなさんにすでに説明済なので、省略します。

ここからは、時間が許せば触れたいと思っています。

6.    処方箋のない時代を生きる

これまでの経済学が通じない世界を生きなくてはならない

現代史は国別の歴史では語れなくなり、経済も国別に語れない

世界のカネ余りが各国市場をゆがめている

地政学的リスクの急速な拡散

「チュニジア青年の焼身自殺」からアラブの春→シリア内戦→中東難民問題→BREXIT・EU崩壊の危機・極右台頭・トランプ出現

経済の相互依存と地政学的アプローチの融合?

 

じゃ、どうしたらいいのか。

1. 国としてはおとなしく低成長に甘んじ、それに適合する体制にもっていく

2. 自分の生活水準も身の丈の範囲にとどめ、高望みをしない

3.  米国債で資産防衛をし、ストレスフリーの生活をエンジョイする

賢い読者のみなさんは決してトランプには騙されないし、アベチャンにも騙されません。身の丈に合った生活と資産運用をすべきです。

以上、明日の講演会の概要を2回に分けてお伝えしました。

会場での様子などはまたお伝えします。

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6月4日 講演会の内容

2016年05月31日 | マイナス金利導入をどうみるか

 今回の講演会タイトルは「マイナス金利、大丈夫か日本」です。

  もちろん結論は「大丈夫じゃないよ、日本」です(笑)。

   だってアベチャンがサミット直後、世界経済に危機なんかないのに消費税値上げをギブアップしてしまったからです。各国首脳のサミットでのアベちゃんへの反応が伝わってきました。だれもが「リーマン前夜?そんなことはない」で完全一致でした。

   ということは、アベチャンは日本だけが危機的状況であることを自ら認めたことになります。しかも先延ばしは2度目という体たらくです。それでもサミット直後のアベチャンの支持率は、3ポイント上昇でした。ここに私は日本人のおめでたさ、危うさを感じます。

   総理大臣は「解散についてはウソをついてもいい」ということになっています。今後は「解散と消費増税はウソをついてもいい」と改定されるそうです(笑)。

  消費増税は伸ばすけど、20年度に基礎的財政収支は黒字にするそうです。そんなムシのいいことができるか。

   クロちゃん流に言えば、2%のインフレ目標達成と同じで「消費増税も期限が来たらいつでもそこから2年後だ」ということです(笑)。格付け会社の反応をしっかり見ておきましょう。いよいよトリプルBに向かってさらに一歩です。

   すでに先日申し上げた通り、彼の本命は憲法改正ですから、消費税値上げを先延ばしして人気取りをし、それがあたかも選挙の焦点であると言っておいて、実際には憲法改正をしてしまう。前回の解散総選挙後の強引な安保法制採決と同じ手口で2匹目のドジョウを狙っているので要注意です。「解散はない」と言明しているようなので、あるに違いないと考えておきましょう(笑)。


   では、本題です。今回も講演時間は2時間ですが、およそ1時間を私からの講演に使い、あとの1時間は質疑応答、と言うよりも主催者の方の要望により、参加者のみなさんを交えたディベート時間にしたいとのこと。論客が多いので、おもしろい講演会になりそうです。参加者のみなさんにはすでに以下の概要をお渡ししていて、突っ込みどころをしっかりと準備していただくようにアレンジしています。講演者としては、厳しい2時間、そしてその後にさらに2時間の懇親会もあります。

  概要ですが、このブログ用には、配布予定の概要に少し説明を加えてあります。それはみなさんが講演会で私の話を直接聞くことができないための補足です。では内容に入ります。1.~6.までの項目があります。


 1.   マイナス金利にしてまで成長を求める必要があるか

これが講演会タイトルには掲げていない、本当の問題意識です。すでに高度成長をはるか昔に終え、よせばいいのに身の丈を考えずに無理に成長を求めれば、結局はツケが回って来ます。

失敗に終わったアベノミクス

失敗か成功か、最後の判断ポイントは国民のフトコロが豊かになり、生活が楽になったか否かです。アベノミクス導入後の日本経済は、ちっとも成長していません。実質成長率はこの3年でほとんどゼロです。その理由は、一国の経済の潜在力が衰えつつあるからです。

潜在成長力の要素は、「労働人口、生産性、資本」

このうち足を引っ張っているのはすでに2千年代に入ってマイナスに転じた就業者数です。(下表を参照)それを生産性がカバーしようとしていますが、追いつきません。資本は、昔は成長の制約条件でしたが、今は潤沢すぎるので制約条件からはずれました。

就業人口だけは2020年代まで見通せる

潜在成長率は00.5%。それを無理に上向かせようとしている

現在の推定値はほとんどゼロ。成長率などを10年ごとに見ていくと以下のとおりで、90年代以降は大きく下がっています。

 

GDPと就業者数推移 80年代  90年代  00年代  10年代※ 20年代

実質GDP伸率    4.2%   0.8%   0.7%   0.9%

名目GDP伸率    5.4%   0.5%  0.5%   1.4%

就業者数伸率        1.2%   0.5%  0.3%  ▲0.6%     0.7%

潜在成長力     4.5%   1.5%    0.7%     0.4%(15年、内閣府)

  10年代の成長率は15年までです。伸びているように思われますが、リーマンショック後の09年が大きなマイナスだったため、伸びています。実質成長率は、この3年間ゼロ%台です。


2.   夢よもう一度=バブルよもう一度

夢を追えば追うほど不安感をつのらせる若年層

自分たちの所得のかなりの部分は税金・社会保険として徴収され、高齢者世代に使われてしまっている。世代間の較差は政府が隠し切れないほど拡大し、それが若年層の不安につながっている。

中高年層も決して踊らず、政府日銀のお手並みを見物している

証拠は、安全資産に積みあがる家計の金融資産

 アベノミクス導入前と導入後の家計の金融資産をくらべると総額はしっかりと伸びているが、依然8割以上が安全資産に滞留したままで安全比率に変化はない。アベノミクスに踊って株式投資など増やしていない。ただし、値上がり分の増加は認められる。家計の金融資産増加をよいことに、政府は着々と累積赤字を積み上げている。政府の言い訳は、「民間が使わないので、政府が使ってあげている」、というおかしな経済理論を振り回す。それを言えば言うほど、家計の財布は引き締まる。

 

  アベノミクス発動前12年末   現状15年末 伸率 (単位;兆円)

  家計金融資産計  1,547        1,714     10.8%     

  うち現預金+保険 1,283     1,412     10.0%

  安全資産構成比  82.9%    82.4

  政府累積赤字   1,092    1,238     13.45%

  累積赤字GDP比  231%      248

 

もし預金金利までマイナスにしたら、どうなるか

このブログの読者の方へのアンケート調査では、ほとんどの方がそのまま損するようなドジは踏まないという結果だった。それはつまり預金引き出し、そして取り付けつながる危険な政策である。

 今回はここまでです。3.~6.は次回にて。

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日本の「衰弱死」に対する感想へのコメント

2016年05月21日 | マイナス金利導入をどうみるか

  「マイナス金の行方」の記事に、私からみなさんに感想をお願いしました。感想をお寄せいただき、ありがとうございました。

   では、お寄せいただいた感想に、私からのコメントを付けさせていただきます。


救われた投資家さんへ

冬眠、ですか。

なるほどおもしろいたとえですね。

そのまま死んだら、老衰死と同じで意外と幸せかも(笑)。

 

Owlsさんへ

>私も衰弱死じゃなくて、劇的な死に方の可能性が高いかなと思ってます

いずれにしろここまで死ななかった奇跡の国ニッポン、みんなでほめてあげましょうか(笑)。

でも、特攻隊でぶつかっても、神風は吹きませんね。

 

ななしさんへ

>円安になるってたって一筋縄ではいかなかった。ローソクって消える前に一瞬ぼっと火が大きくなるでしょ?あれに該当するのが今の時期のまさかの円高?とかイメージしてますが・・・

ななしさんの鋭い第六感、よくあたりますからね。

「巨大投資銀行」の本、投資銀行内部を鋭くえぐっているし、ソロモン内の多くのエピソードは事実を基にしているので、おもしろいです。

それも、内部者でもかなり事情通でないと知りえないような裏の裏のことまで書いてあります。数十人以上にインタビューしていることは間違いないですね。元ソロモンの友人何人かが、「インタビューを受けたよ」と言っていました。

私のように、地味なデット・キャピタル・マーケッツの地味な人間は出演していないので、面白おかしく読むことができます。でも主人公的な人物は、「誰が漏らしやがった」、とカッカしながら読んだことでしょう(笑)。

「沈まぬ太陽」といい、「巨大投資銀行」といい、私はなにかと小説ネタになりやすい会社にいたんだなーとしみじみ思いました。

Jake Jackさんへ

 >特に気になるのが日本国債の外国人投資家の保有比率が高まっていることです。今は10%以上あるそうですが、この数字はかなり高いように思えます。

 そうですね。そして最近の国債の買い手口はそれどころではなく、27%もが海外投資家による買いだと17日に日経新聞が報道していました。

>今から全力で、ドル転&米国債の爆買いをしたほうが、いいのかな~?

そればかりは私も的確な答えを持っていません。


チョコグラさんへ

「日本の没落」ですか。

たしかに、すでに始まっているような気がします。

 >主人の気になる一言「円安になるとは思うけどアメリカが許してくれるのかな?」

本当に没落が始まったら、円安を許すもゆるさないもないでしょうね。

どうしたら日本を救済できるのか、それには円安しかないのだ、が結論でしょう。

 そして英会話のことですが、もちろん英会話は一日にしてならず。

それはチョコグラさんもよくおわかりだと思います。

日本の英語教育は根本的に間違っていますよね。中学から大学まで行っているとしたら、10年を無駄にしています。最低半分は会話に時間を使うべきです。

最近は小学校からだそうですが、それこそ教科書はやめて、会話に徹すべきです。英語が母国語の外人はいくらでもいます。ワーキングビザを若い人たちにバンバン出せば、安い先生が雇えます。

 私は大学でESSに入ってから自分の周りをなるべく英語でいっぱいにしていました。クラブ活動では毎日英語で話すし、AFN米軍放送を毎日聞き、合宿では日本語が口をつくと罰金まで科されました。

 それでもホンマモンの日常会話は、アメリカ暮らしを数年するまでは学習できませんでした。今はメンテのためにテレビの多重放送は必ず英語で聞きます。特にBS世界のニュースは世界を知る上でも英語のヒアリング力維持のためにも毎日見ています。

 これからの方法としては、最近宣伝をよく耳にする聞き流しの会話学習法は有力な手段だと思います。英会話学習に限り、「百見は一聞にしかず」。いくら英語を見ても読んでも、話すことはできません。聞くことだと思います。本当の英語を話す先生のいない小学校でもこれなら簡単にできます。

 いや、もっと厳しく言えば、会話のヘタな先生などいないほうがまし。日本語英語の発音を身に着けてしまうのが最悪です。

うちでは子供達が小さいころからセサミストリートを聞き流し、見流しさせていました。実は親も勉強になったのだと思います。

 

救われた投資家さんへ

私の読後の感想も救われた投資家さんと同じで、衰弱死という新たな可能性を示唆してもらった思いです。

 

ぺぃさんへ

 >海外の過去の事例では、ハイパーインフレになる前に穏やかなインフレ期があったそうなので、そんなインフレ期に過剰なインフレにならないよう金融引き締めなどの対策をすれば良いそうです。

 どこの国の、いつの経験でしょうか。その国は日本のようにGDPの2倍を超える累積赤字があったのでしょうか。せっかくなので、聞かせてください。

きっと日銀も政府も、いざとなれば引き締めができると思っているので、金融財政政策に緊張感などなく、緩みっぱなしなのでしょう。

特に衰弱死しつつある中で、引き締めは不可能です。まだそれほど悪くない今でも、もしクロちゃんがひとこと「引き締め」について言及したらイチコロだと私は思っています。

いやそれどころか、クロちゃんが「これ以上国債を買のはやめる」とテーパリングに言及しただけで、イチコロでしょう。本当の薬中毒の禁断症状は、死んだ方がましだと思うほど激烈だそうです。

クロちゃんがお気の毒なほどに強気な発言を繰り返す本当の理由はここ、つまり「やめられない」にあります。

  

  以上、「衰弱死」についてみなさんからいただいた感想に私からコメントを返させていただきました。みなさん、ありがとうございました。

  最後にあらためて、新たな視点を提示してくれた元同僚の徳勝礼子氏に感謝いたします。

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マイナス金利の行きつく先

2016年05月16日 | マイナス金利導入をどうみるか

  友あり、遠方より来たる。

  先週末、遠方からの友人が東京で展覧会に行くために上京。私も2日間にわたり、彼にお付き合いしました。本命は他でもない生誕300年記念の伊藤若冲展です。今回はめったに公開されないシリーズ絵画が一気に30点、たった1か月だけ展示されているのです。宮内庁三の丸尚蔵館の「動植綵絵」です。

  江戸中期に活躍した伊藤若冲のことはご存じない方もいるかもしれませんが、優れた作品を残している割には日本での評価は低く、アメリカ人のジョー・プライス氏が戦後に見出し、大きなコレクションを持っています。それが日本でも遅ればせながら近年になって非常に注目されるようになりました。

  めったに見ることができない宮内庁の所有する動植物を精密に描いた「動植綵絵」30点を含む展覧会が開かれるためか、この2か月余りで若冲に関する多くのテレビ番組が放映されました。そのおかげで展覧会は近年まれに見る混在でした。私は列に並ぶのが嫌いなのですが、このときばかりはあきらめて並びました。開場前から前売り券を持っていて並んだのに、待ち時間はなんと2時間。開場まもなく当日券は売り切れとのアナウンスがありました。連休や土日はもっとひどかったようです。

  しかし30幅もの動植綵絵の見事さは、並んだ時間を忘れさせてくれるほどの素晴らしさでした。かなり大きな掛け軸の絵で、彼は40歳代の油の乗り切った時代に10年もの歳月をこの30点に注いだと言われています。当時は非常に高価だった絵の具をふんだんに用いたため、彩色は今でもみずみずしく、並んだ疲れも吹き飛んだほどでした。


  さて今回の本題は、マイナス金利に関する追加情報です。

  私はGWに何冊かの本をまとめ読みしたのですが、その中の一冊、タイトル「マイナス金利」、副題「ハイパーインフレより怖い日本経済の末路」についてです。2・3か月前にどなたかがコメント欄で取り上げていたと記憶します。

    著者については買ってから気が付いたのですが、なんとソロモン時代の同僚でした。名前は徳勝礼子。私よりかなり若く、あとの入社で、ソロモン内のヘッジファンドであるアービトラージ(裁定取引)部隊に入社してきました。部門のヘッドは伝説的トレーダーの明神茂氏で、彼が朝礼で紹介したのをよく覚えています。「今度採った「とくかつ」です、よろしくね。なんで採ったかって言うと、名前がよかったから。なんたって得して勝つだからね(爆笑)」

    この部隊は社内でもピカイチの頭脳を有する人たちの集まりで、彼女も東大経済学部からシカゴ大でMBAを取り入社してきました。著者である彼女の名前に何故早く気が付かなかったかと申しますと、実は明神氏が「得して勝つ」と言ったため、私は「得勝」だと思っていたからです。社内ではネームリストなどが全部英語だったため本の著者名を見ても全く気が付かず、略歴を見てやっと元同僚だと気が付きました。彼女は明神チームの中で「クォンツ」と呼ばれるアナリストの一人として活躍していました。

    本のサブタイトルは「ハイパーインフレより怖い日本経済の末路」と、かなり刺激的です。きっと出版社が付けたのでしょう。内容は相当に高度なことが多く含まれているため、一般の方にお薦めするのはかなりはばかられます。でも挑戦したい方はぜひお読みください。

    サブタイトルと書いてある内容が重なる部分はさほど多くはありませんが、私はその部分をみなさんに紹介させていただきます。

  概略は以下のとおりです。

    彼女はあとがきで、「短期国債金利がマイナスで取引された理由を解明しようと筆をとったが、よりおおきなテーマになっていった」とのこと。

    そのことの解明自体は、2-3か月前にこのブログでも解説した、「マイナス金利でも運用益、何故」と同じ理由です。つまり海外勢がドル円のベーシス・スワップで日本勢からプレミアムを得るという有利な立場にある。それがために運用をマイナス金利で行っても、自分たちのファンディング・コストがより大きなマイナスのため、十分にペイするという理由です。

    そして彼女は「邦銀が負担しているそのジャパン・プレミアムは、裏を返せば日本の信認低下のコストを払っているのだ」、と続けます。そしてさらに、

    「現在国債の破たんを防いでいるのは海外保有が低いのと経常黒字というのが一般論だが、それが終わりつつある。海外投資家の保有比率上昇し、経常利益も趨勢的に低下している。それでも低金利なのは日銀による財政赤字ファイナンスによるものだ。」

    重要なことは、「こうした金融抑圧=マイナス金利のツケは、ドルの調達コスト上昇を通じて日本全体が払わされている。海外投資家にとってマイナス金利での円調達が可能なため、かれらの利回りは米国債利回りをしのぎ、社債並みになっている美味しい投資だ」。そして、

    「日銀によるこうした抑圧によりハイパーインフレや国際暴落は起こらずとも、衰弱死が起こる可能性がある」。という結論を導いています。邦銀の調達コスト上昇は一般の人の目には見えないため目立たず、しかししっかりと日本をむしばんでいる。そして目立たないことをいいことに、政府は財政を弛緩させたままに放置し、一般の論調も最近は財政から目を逸らしてしまった。」

   以上が私の読み取った概要です。みなさんの関心を引く一番の点はたぶん「日銀によるこうした抑圧によりハイパーインフレや国際暴落は起こらずとも、衰弱死が起こる可能性がある」という部分でしょう。

   ではこの「金融抑圧による衰弱死」ということに関して、私のコメントを書きます。

   これは死に至る新たな視点を追加してくれたように思われます。決して大胆な分析ではありませんし、実際の文章は慎重な彼女らしい言い回しが多いのですが、最後の衰弱死に至るプロセスは詳しく説明されていないため、若干の不満が残ります。

    どういうことかと申しますと、財政が弛緩したままで推移すると、まず格付け会社は黙っていないでしょうし、マイナス金利がまかりとおるような低成長あるいはマイナス成長だと、円安は着実に進行すると思われます。その場合、海外への資本逃避が劇的でなくともじわじわ進行し、インフレもじわじわ進行する可能性があると思われます。それがコントロールの効く程度のペースならよいのですが、いつしかかなり劇的になる可能性が大いにあるように私には思えるのです。

   大きな視点から見れば、私と徳勝氏の考えには、ことが起こるスピード感以外にさほどの差はないように思えます。みなさんはどう思われますでしょうか。彼女の本をお読みになっていなくとも、みなさんの感想を聞かせてください。

                                            以上

コメント (7)
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