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トランプ、3つの大罪

2020年11月15日 | アメリカ大統領選挙2020

  すべてのメディアが大統領選の選挙人数の確定値を出しましたね。306対232で選挙人数ではバイデンの圧勝でした。トランプがいくら吠えても悶えても、勝負あり。彼の大嫌いな「負け犬」の称号をあげましょう。すでに訴訟を請け負っていた弁護団のうち大事なペンシルベニアやアリゾナでトランプ陣営から去っています。家族も離反、共和党内も離反者が続出と、「そして誰もいなくなった」劇場が幕引きを迎えました。

  本題の前に、アメリカ国民は現在までのところバイデンの当選を認めているか否かの世論調査結果がでているので、それをお知らせします。トランプ支持者を含め8割の人が認めています。

引用

  [ニューヨーク 10日 ロイター] - ロイター/イプソスの世論調査によると、米大統領選を巡り米国民の8割近くがバイデン氏が当選したと認識していることが分かった。調査対象となった共和党員の約6割、民主党員のほぼ全員がバイデン氏の勝利を認めている。

引用終わり

 

  このところのトランプは人前に姿を見せることもできないほどふさぎきっています。家族が負けを認めろと言ってもそれを聞かず引きこもり、遂にバイデンに「恥を知れ」とまで言われても反応すらしない。報道も「大統領職を放棄している」と非難していますが、反論すらしていません。さすがの彼も相当精神的にまいっているのでしょう。お気の毒に。

 

  では本題のトランプ3つの大罪に入ります。

  大罪の第一は権利のはき違い。そしてもう一つは、人の心の闇を解き放ってしまったこと、そしてミーファーストです。何でもしてよいという権利などない。

  コロナ危機の中トランプは、マスクをしないことは基本的人権を認められている国民の権利だ、という間違った意識を国民に植え付けました。銃社会のアメリカでは銃を保有することも等しく国民の権利だとされ、法的にも認められています。

  しかし銃を保有する権利は、人を殺してもよいという権利とは別物です。トランプ支持者はマスクをしないことは国民の権利であり、支持者の象徴であると勝手に思い込み、実践し、感染の拡大に加担してしまいました。その原因はもちろん大統領ともあろうトランプが科学的根拠もないのにコロナをバカにし、マスクをバカにし続けたからです。彼の第一の大罪とは、権利をはきちがえた結果、国民を危険にさらし、1千万人も感染させ、20万人も殺したことです。自分が感染した後も、反省も恥じることもなくマスクなしのラリーを続け、感染からの回復を自慢するという愚を演じ続けました。

  トランプ支持者たちのほとんどはマスクをしないことがあたかもトランプへの服従の証であると考え、クラスターを発生させていました。あのローズガーデンでの最高裁判事の受諾演説ではホワイトハウス内にトランプとファミリーを含む22人ものクラスターが発生。遊説ラリーでトランプは顔をむき出しにして感情のこもった演説をし、それをマスクなしの支持者たちが大声ではやすため、多くの感染者を出しています。

  スタンフォード大の学者の推定では、トランプの選挙ラリーにより感染者3万人、死者700も出したとしています。自由のはきちがいによる死者としては空前で、これが犯罪でなくてなんなのかと私は言いたいのです。

  AP通信によると、「米ミシガン州デトロイト・ラピアにある老人ホーム「Villages of Lapeer Nursing & Rehabilitation」でマスクを禁じていたため、47人の入居者と16人の従業員が新型コロナウイルスに感染し、そのうち19人が死亡した。4月に68歳の母を失ったデニス・ウィリアムズさんとその家族は、ホームの経営陣を相手取り訴訟を起こしている。USA TODAYによると、このホームでは従業員にマスクの着用を禁止していたという」。なんというたわけた老人ホームでしょう。きっと経営者はトランプ支持者なのでしょう。

  アメリカは訴訟の国、それもクラスアクションという手法があります。例えば100人の弁護士集団がコロナによる死亡者の遺族を全米で募り、無料で訴訟に参加させます。家族の死亡はトランプ個人とトランプ政権の責任であると訴訟を起こし、一人1億円を請求。20万人のうち半分が参加したとして10万人。一人5千万円を勝ち取れたとすると、合計5兆円になります。通常弁護士の成功報酬はだいたい3割なので、弁護士団は1.5兆円を手に入れ、一人当たり150億円の収入を得ます。残り3.5兆円を10万人の遺族に支払うと1遺族当たり3,500万円もらえます。訴訟に参加の意を表するだけですべて弁護士任せで済むため、費用もかからず参加は実に簡単です。このようなクラスアクションのシステムは例えば自動車の欠陥で怪我や死亡者が多数出た場合、メーカーに対して賠償を求めるのによく使用される訴訟手段です。

 

  トランプの大罪その2は、人間誰しもが持つ心の闇の部分を解き放ってしまったことです。それらの闇のほとんどは外に出すべきでないものです。例えば他人への憎しみ、差別的感情、犯罪の衝動などです。

  トランプは16年の選挙運動中から人種差別を表に出した言動を続けました。その結果として私が一番よく覚えているのは、中学生たちの人種差別行動です。教室の中で黒人やヒスパニックの生徒をあからさまに差別し、トイレにはなんと「こちらはColored、こちらはWhite」といういたずら書きをしていました。60年代以降は死語になったはずの差別用語を持ち出して、学校という神聖な場で差別的言動を行う様子はビデオに撮影され、テレビで報道されました。ビデオに撮ったのはどうも差別する側の生徒で、自慢動画だったようです。トランプはそれを一切非難せず、白人至上主義者たちの行動にまで目をつぶりました。それはもちろん大統領になったあとも、そして今回の選挙中も全く変わりませんでした。

  大統領ともあろうトランプがそれらの醜い行動を選挙の支援材料にしたとしか思えません。人種差別ばかりでなく、女性蔑視などを含む人間の持つ闇の部分を表に引っ張り出したという暴挙、それがトランプの大罪その2です。

  我々日本人の中でも隣国人に対して差別感情を抱く人はいると思います。それをむき出しにしてしまう人がいて、ヘイトスピーチが犯罪になったにもかかわらず、時々逮捕者が出ます。しかしまともな人間は闇の部分はしまい込みます。日本の為政者は行動に出ればそれを当然非難し、マスコミも非難します。トランプという指導者はヘイトスピーチを4年間も自国民に向けて繰り返しました。しかも選挙運動中は一段とエスカレートしてバイデン氏を「スリーピー・ジョー」と蔑み、支持者もそれを喜ぶ。名誉棄損もはなはだしい。

   選挙運動と限らず、彼の言動の半分はウソとウケ狙いでした。自分以外の人間でちょっとでも従わない人間を排除し、排除できない人には徹底的に非難を浴びせる。選挙後のトランプはほとんど気が狂ったように、大事なポストの閣僚や側近の首を切りまくっています。この期におよんでなおさら彼の愚かさの本性を表す好例です。

  大罪3つ目は自分がすべてのミーファースト。それを国レベルにまでグロテスクに適用したのがアメリカファーストです。精神分析医のほとんどが彼をサイコパスであると診断していて、大統領としては全くの不適格者です。そのトランプが4年間も一国の元首、もっと言えば世界の君主として君臨してしまった。

  このため世界の協力体制はことごとく破壊されました。様々な国が様々な考え方を持ち、まとまることは非常に困難な中、努力を続けて構築した国際間の合意をことごとく破壊した。例をあげれば、

・TPP離脱 貿易の環太平洋パートナーシップ

・パリ協定離脱 世界の環境破壊をくいとめるための合意

・G7  自由主義世界のリーダーの集まり。彼は途中で席を蹴って去った

・イラン非核化の6か国合意離脱

・米ロ 中距離核戦力全廃条約破棄

・WHO世界保健機構離脱

  バイデンはこれらを巻き戻してくれるでしょう。早くトランプなき世界になり、アメリカが元の鞘に戻り、余計な心配をしなくて済む平穏な世界が再構築される日が来るのを望みます。

  「バイデンになってもアメリカ国内の統治は簡単なものではなく、世界にはオレ様独裁者たちが跋扈しているためまとまりを戻すのは容易ではない」、という論調がほとんどです。でも私に言わせれば、「破壊者トランプがいなくなるだけで、どれだけ世界はホッとできるか」。

  それだけで十分です。

 

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愚かなるアメリカ人たちへ、送る言葉

2020年11月07日 | アメリカ大統領選挙2020

  最初に申し上げておきますが、私は日本が大好きな日本人です。アメリカという国に住んだことがありますが、好きなところもあれば嫌いなところもあります。それでもなお「好きか嫌いかどちらか」と聞かれても、どちらでもないと答えます。

  私がタイトルでアメリカ人を愚か者呼ばわりする理由は、もちろん愚かなトランプを大統領に選んだからです。そしてその愚かさ加減を4年も見ていながら、なおもまだ半数近い人々がトランプを支持しているからです。中には彼の愚かさを知りつつも経済政策や対外政策に絞って支持した人がいるでしょう。たとえそうだとしても人間の尊厳を否定し、人種差別をし、ウソをつき、愚かなアメリカ人を煽り続ける姿を見ても目をつぶるのは許しがたいので、トランプ支持者を全部まとめて非難するのです。

 

  昨日11月6日トランプ不利のまま最後の6州の接戦でカウントが進む中、トランプが記者会見を開きました。全米3大ネットワークのABC、CBS、NBCはなお大統領であるトランプの記者会見を途中で打ち切りました。別に申し合わせたわけではないでしょう。

  打ち切った理由は「嘘と根拠のないことを言い続けているから」。CNNとFOXは最後まで中継を続けましたが、CNNは途中で「根拠なく不正が行われていると主張」という注意書きテロップを流していました。トランプが大統領に当選した後、最初の記者会見でトランプから「オマエはフェイクニュースだ」と名指しされたCNNは、むしろそのまま放映を続けることでトランプの愚かさを世界にアピールしたのでしょう。

 

それに比べるとほぼ同時刻にバイデンが会見で述べた言葉は出色の出来でした。

 

「どうか落ち着いてください。票はすべてカウントされます。私はアメリカの大統領になります(一部の人たちのためではなく)」

 この言葉は、将来のアメリカの大きな安心材料です。

 

  今後も錯乱したトランプはウソとデマカセを言い続けるでしょうが、TVやその他のメディアも彼の言動をすべては報道せずシャットダウンするでしょう。ツイッター社も彼のデマカセにウォーニングを出し続けるにちがいありません。こうしたメディアの対応は、アメリカには良心が残っていることを世界に知らせています。

  そして彼が起こそうとしている裁判も多くは門前払いをくらい、再カウントが行われてもひっくり返ることはなく、トランプはホワイトハウスからつまみだされるでしょう。

  それが証拠に、将来を見据えた共和党内はトランプ排除に動き始め、彼の一派とみなされないように彼のそばから静かに去るものが増えるに違いない。

 

 今後アメリカに「良心」が戻ることに期待します。

    

 

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NO MORE YEARS !

2020年11月06日 | アメリカ大統領選挙2020

この記事はわかりずらいところがあったので、少し訂正をして再度アップさせていただきました。

 

トランプの支持者が叫ぶのは FOUR MORE YEARS! ですが、私はこう叫びます。

NO MORE YEARS!   NO MORE YEARS!   NO MORE YEARS!

  あーすっきりした。

 

   私は前回の記事で、トランプが再び逆転する可能性ありと言っている識者は、「あつものに懲りてなますを吹いている」と申し上げました。投票が終わり開票が進むにつれてトランプがリードし、オヤッと思う場面がありました。4日の夜11時に寝るころに当確数ではバイデンがリードしていましたが、ペンシルバニアやノースカロライナなど選挙人の数の多い州でトランプがリードしていたので、これはトランプが勝つかもしれないと思いつつも、寝てしまいました。私のいつもの就寝時間は10時なのです。

  しかし一晩明けるとバイデンがウイスコンシンやアリゾナで勝利し状況が一変。郵便投票がバイデンを後押しするという予想が当たっていたのでしょう。そして驚いたのはオッズです。朝一番の段階でバイデン80に対してトランプが20に沈没していました。

  ガッツ・ポーズ!

 

  選挙前にバイデン優勢が伝えられている中で、依然として前回選挙の悪夢の再来を予想する人が多くいました。しかしその予想をした人たちは、今回の選挙の本当の争点は「トランプ対バイデン」などではなく、「トランプ対反トランプ」であることを見誤ったのでしょう。反トランプ派は、はっきり言ってバイデンじゃなくてもいい、トランプでなければ誰でもいいと思っている人が多いのだと思います。候補者がバイデンなのでバイデンに投票したのです。

  前回の争点は、ヒラリーとトランプのどちらがひどいかというものでした。

 

  今回の選挙前に多くの報道機関がアメリカで有権者にインタビューしていました。その中で私が気付いたことがあります。それは、「前回はトランプに投票したが、今回はバイデンだ。あれほどモラルがなく、ひどい差別主義者だとは思わなかった」という声です。それをみなさんも聞いていらっしゃるでしょう。しかし私が気付いたのは違います。「前回はヒラリーに投票したが、今回はトランプだ」という声が皆無だったことです。こうしたインタビューなど誤差にもならないほどの微々たる数ですが、一方的であったことは注目に値します。

では私が確信を持ってトランプの負けを予想した理由のうち重要なポイントを以下に上げます。

 

1.先ほども指摘した選挙の焦点が「どちらがよりひどい候補者かの選択ではなく、ひどいトランプを落とせ」だったので、有権者は揺れることがなかった

 

2.18年の中間選挙を忘れるな

  18年の中間選挙では下院で大逆転が起こっていました。下院は2年に一度全員が改選されます。以下のとおり民主党が議席を42も増加させ、多数党を奪回していました。

          共和党   民主党

18年中間選挙   235→200  193→235(+42)

   これだけの大逆転の理由は、たった2年ですが多くの有権者がトランプを嫌った結果です。そうしたトランプ嫌いはその後の2年でひっくり返るどころか、コロナウイルスへの対処の失敗で確定的になったのです。

 

3.世論調査会社の反省

  前回の選挙で調査会社は総投票数の比率を当ててはいましたが、州別の選挙人獲得数では大外れでした。その原因を調査会社が集まって大反省会をして、今回は調査方法を改善していました。世論調査会社は日本と違いそれなりの規模のインダストリーですから、そのままほっておくと死活問題になります。その反省の模様を今年8月の時事通信ニュースから見てみましょう。

引用

隠れトランプ支持者の存在をめぐっては論争がある。4年前、激戦州の直前世論調査の平均は、実際の選挙結果と最大7ポイント違っていた。米世論調査協会は半年後の17年5月、「なぜ間違ったのか」を検証する報告書を公表。態度未定の有権者の多くが最終盤でトランプ氏に流れたことなどを理由に挙げたが、「隠れ支持者」の存在は「証拠がない」として認めなかった。

同世論調査協会は全米の世論調査関係者によって構成される権威ある団体であり、同調査結果が報告された2017年総会には1000人以上の関係者が出席している。

実際には、大統領選挙時の各州レベルでの世論調査の精度に問題があり、「直前まで投票意向を明確にしなかった層の動向」、「低学歴者のサンプル不足」、「黒人の投票率の低下」などが問題点として指摘されており、世論調査に嘘の回答を行う隠れトランプ説は根拠薄弱として棄却されている。

引用終わり

  この分析がすべて正しとは思えませんが、一定の評価はできると思います。それでも接戦になったということは、調査の精度には依然として問題が残っているためでしょう。

 

4. バーニー・サンダースの存在

  前回選挙で民主党はバーニーの善戦により、一時はヒラリーが慌てるほど攪乱されました。そしてバーニーを支持した若者の多くは実際の選挙では大嫌いなヒラリーに投票しない者が多かったと指摘されました。今回はトランプ嫌いが先立っていて、バイデン嫌いの存在を示すものはありませんでした。ですから投票に背を向けることなく投票率も大きく上昇しています。

  私はこうした4点がバイデン勝利につながった要因だと思っています。

 

  それでもこれにて終了とはならないという論調が多く聞かれます。特に「敗北者が敗北を認めない限り終わらない」という人が多いのですが、もちろんそんなことはありません。敗北演説は単なる慣習です。法的には12月14日の選挙人による投票によって正式決定します。

  じゃ、ブッシュジュニアとアル・ゴアのケースは?

  あのケースはフロリダという大票田において、わずか500票という僅差になったため、再カウントするしないでもめました。今回も、もし最後の州で決着する場合の差が500票などという僅差であればそうした可能性は皆無ではないでしょうが、そこまで引っ張る前、つまり最後の州の結果を待たずに決着する可能性が強いのです。

  もしトランプが12月14日の選挙人選挙でも負けたのに、ホワイトハウスに居座ったらどうなるか。FBIがトランプの首根っこを捕まえて、例の捨てゼリフ、

YOU’RE FIRED!と叫んでたたき出すだけです。

  この捨てゼリフを、醜くのたうち回るトランプ本人に吐きかける日が遂に来ました。

 

私の勝手な分析にお付き合いいただき、ありがとうございました。

  

  注;YOU’RE FIRED! お前は首だ、はトランプが出演していたテレビ番組で彼が最後に言う捨てゼリフです。

 

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最後のディベート後の大統領選のゆくえ

2020年10月26日 | アメリカ大統領選挙2020

  ディベート翌日、アメリカでも欧州でも多くのオンラインニュースはヘッドラインで「バイデンの勝ち、トランプの起死回生ならず」、という見出しで結果を報じていました。

  私が見た例外はFOXニュースのサイトで、なんとディベートの結果をトップニュースに取り上げていません。トランプ寄りが鮮明なFOXは、「トランプ勝利」とは書けなかったからヘッドラインニュースでの報道を避けたのでしょう。実に姑息ですが、報道の偏向問題については後ほど。

 

  すでに今回のディベートの勝敗の世論調査をした反トランプ色が鮮明と言われるCNNの発表では、バイデン53対トランプ39と大差でバイデンの勝ち。そして政治マターだけを取り扱う偏向しているとは言われていない「Politico」の世論調査結果はバイデンの勝利54%、トランプ勝利39%、どちらとも言えない8%で、CNNとほぼ同じでした。Politicoはワシントンをベースにし政治に特化した独立系の調査報道会社です。

 

  日本のニュースでも「起死回生を図ったトランプは、バイデンを負かすことはできなかった」というトーンが多かったと思われます。それでも日本の事情通の解説者やコメンテーターはトランプの逆転はありうると予防線を張り巡らしている人がほとんどです。

  私に言わせればそういう人たちは「あつものに懲りてなますを吹く」なのです。そして11月3日の投票後はトランプが訴訟などの手に出て、なかなか決まらないだろう、というトーンがほとんどです。

  混乱が起こる可能性はありますが、それは投票結果がきわどかった場合に限られ、圧倒的な差であれば、裁判所はトランプの訴訟を受け付けません。そしてすでに上下両院で、「トランプは負けたらスムーズにホワイトハウスを去るべし」と全会一致の決議までしています。わざわざ両院がそれほどの決議までしてトランプの無法な所作は許さないとしています。民主党だけの決議ではなく、共和党員を含む全会一致であることが重要なポイントで、トランプと違い共和党議員はいまだ良心を持っていると言えます。

 

  2回目のディベートはトランプが「やり方を変えるのは気に食わん」として拒否しました。これでわめくチャンスを失ったトランプですが、最後のディベートを前にしてこんなおバカなことを言っていました。

「2分間マイクを切るのはフェアーじゃない!」

   おいおい、「おまえさんが前回バイデンの発言を73回もさえぎったから公平を期してマイクを切るのに、それをフェアーじゃないだと。おまえ頭の中はどうなってるんだ」。ときっとディベートの主催者CPDは中指を立てたに違いありません(笑)。今の若者風に言えば、「ザケンナヨー!」、です。

 

  もっともディベートで勝利したからと言って選挙に勝つわけではありません。前回もディベートはヒラリーの勝利でしたが、選挙結果はトランプの勝利でした。

  では最後のディベートを受けた選挙結果予想の世論調査などはどうなっているのでしょう。各種世論調査のおまとめサイトであるRealClear Politicsの10月24日までの平均値によれば、バイデン勝利予想50.8%、トランプ42.8%とほとんど変わらず、トランプ岩盤支持層以外にトランプ支持は拡がっていません。

  世論調査ではなく、ディベート結果などをすぐ反映するオッヅはどうなっているか、これまでの推移を含めて見てみましょう。

 

              バイデン  トランプ  差

トランプの感染前9月末  ;  55     45    10

トランプ感染後10月11日 ;  67      33     37(最大差)

トランプ復帰遊説開始後  ; 60       40    20(最小差)

ディベート後10月25日  ;  62     34    28

 

    9月頃にはバイデンとの差が10ポイントだったのが、感染で差が37まで拡がってしまったトランプですが、感染後の遊説復帰でバイデンとの差を20まで回復しました。しかしフェアーな形式で行われた今回のディベートではあまり見るべき結果を残せず、逆に8ポイント拡大してしまいました。

  大事な選挙区で負けそうなトランプは最後の悪あがきで、前回勝利したフロリダ、ペンシルバニア、ノースカロライナ、ウィスコンシンなどを執拗に繰り返し遊説しています。この行動、いつものようにすべてが顔に出てしまうトランプの焦りが頂点に達していることを示す確たる証拠です。相変わらずかわいいね、トランプちゃん!

 

  では選挙結果を予想する同じくRealClear Politicsの別の角度からの統計を紹介します。それは、州別の選挙人獲得予想の集計です。この集計ですが、接戦州をいまだ白黒付けられないとする慎重な予想1と、接近していても数字で差があれば白黒をつけてしまう統計2の2種類があります。選挙は過半数の270人を獲得したほうが勝ちです。

 

                      バイデン トランプ 接戦

1.接戦州を除いた選挙人獲得予想       232   125   181

2.接戦でも予想確率が高い方が選挙人を獲得  357   181   0

 

 2の少しでも差があればウイナー・テイク・オールで集計する予想では、圧倒的にバイデン有利で、もしこうなったらいわゆるランドスライド、地滑り的勝利と言われます。このケースではトランプが何を叫ぼうが無駄。訴訟などしても無意味で受け付けられることはありません。

 ついでに最近とみに激しさを増すトランプのウソと報道の偏向についてです。

最近「アメリカの大手メディアは反トランプで偏向している」という意見を見かけるようになりました。それに対する反論です。

 

  まず、アメリカのCNNや大手報道機関は偏向報道だという方のご意見は、「トランプの言っていること、やっていることは全くもってまともだ」という前提に立たれていると思います。

 

  もしそうでなく、トランプの言っていること、やっていることが常人ではなく狂人の所作だとすればどうでしょう。そこでウソの回数が問題になります。

  では就任以来20年8月までの発言を分析した9月のワシントンポストの報道を見てみます。「就任以来のウソまたは真偽がさだかではない発言回数は2万回に上る」と書かれています。

 

これを日数で割ると、20,000÷1330日=1日平均15回・・・ウッソー!!!

 

  ほんとです。ちなみにワシントンポストはアマゾンのジェフ・ベゾスがオーナーを引き継いだ反トランプ(?)のメディアで、昔からアメリカでも随一のクオリティー・ペーパーと言われています。この数字を掲げたからと言って、それは事実を述べたまでで、偏向などでは決してありません。

 

  ではもし日本の首相が毎日1回でも明らかなウソをついたらどうなるでしょう。上を下への大騒ぎで、すべてのメディアは非難の大合唱になります。それは偏向報道ですか?

  アメリカ大統領が毎日15回もいい加減なことを言い続けている指摘を毎日続けるのは、至極当然でしょう。しかもそのウソがコロナに関するいい加減なデマをそのまま書いて大きな影響を与えるとしたら、報道は事実を書くだけでなく大統領を非難するのが当然です。

 

  コロナには消毒薬を飲めば効くとか、マラリアの薬がいいとか。最近は選挙結果が芳しくないとみるやいなや、郵便投票はインチキだ、負けと結果が出たら、インチキを暴くため訴訟で勝ってやる。最後のディベートでは、バイデンの息子はウクライナで数千億円も儲けたなど、報道が大きなウソを否定し非難するのは当たり前だと思うのです。

  以上、選挙予想とウソツキトランプ、偏向報道についてでした。

 

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コロナを笑うものはコロナに泣く

2020年10月08日 | アメリカ大統領選挙2020

因果応報、奢れる者久からず

  こうした教訓を地で行くトランプのあせりが、強引な退院という行動で見て取れます。大統領選が1か月後に迫り、いよいよホームストレッチまで来て一発逆転を目指したトランプでしたが、コロナにより見事に転倒しました。

    感染を受けた10月4日のアメリカABCニュースの世論調査では72%が「トランプ氏は新型コロナの危険性を真剣に受け止めなかった」、あるいは「トランプは適切な感染予防策をとらなかった」と答えています。

  軽視が72%もいるということは、岩盤と言われている40%の支持層の中でも、ダメ出しをした人が相当いるということです。簡単に計算すれば、

72%-40%=28%

支持者40%のうち28%は、  28÷40=70%

  つまり支持者でも7割の人は愚かさにあきれているということです。2つの調査は異なるものとはいえ、ざっくり言えばこういうことでしょう。しかしトランプ支持者のこと、あきれてはいても選挙では支持する人がきっと大半でしょう。

 

  では感染により、トランプ対バイデンの支持率はどう変化したか。これはまだ十分な調査結果は出ていませんが、感染後の調査例を一つ示します。

ロイターより引用

トランプは1日夜に新型コロナウイルス陽性が判明し、翌2日から3日間にわたって入院を続けている。世論調査は、ロイター/イプソスが成人1005人を対象に10月2日~3日に実施。11月の大統領選で投票予定の有権者は596人で、そのうちの51%がバイデンを支持、41%がトランプを支持する結果となり、バイデンのリードはここ1カ月で最大となった。

引用終わり

  まだ大半の調査機関は追い付いていませんが、追い付いている世論調査ではバイデンとトランプの差は10ポイント以上になっています。ちなみにトランプ支持が鮮明なFOXニュースの3日~6日の調査でさえ、バイデン53%対トランプ43%と10ポイントもの差になりました。

  従来の世論調査ではなく、事態の変化を即日反映させることのできる当選予想オッヅを見てみましょう。まずディベート前の平均ではバイデンの当選55ポイント程度、トランプの当選45ポイント程度で、差は10ポイントでした。しかしディベート直後に差が19ポイントと大きく拡大。さらに感染後10月2日には61対37.5、差が23.5ポイントと決定的に拡大。退院後10月7日のオッヅでは64.0対35.4でその差は28.6とさらに拡大しています。感染者トランプのあきれた行動を見てのことです。

  あきれた内容とは、入院中のトランプが支持者に向けて車でパレードし、セキュリティガードや医療関係者を危険にさらした。その上ホワイトハウスに戻ったとたん、マスクをはずして演説して見せるという愚かなパフォーマンスを行いました。ホワイトハウスでは昨日時点でトランプの周辺者が13人も感染しているクラスター発生地帯となっています。

「トランプこそコロナのスーパースプレッダー」です。すでに負け犬となったトランプの焦り狂ったパフォーマンスは、やればやるほど支持を失うという悪循環に入りました。

  

  このところトランプは選挙で落選したら裁判でひっくり返してやると宣言し、落選後に重点を変えています。しかしそれは簡単なことではありません。というのも議会は民主党、共和党の全員一致で「大統領選挙結果を守り、スムーズな政権移行を行うべし」と決議しているからです。それはもちろんトランプの無駄な抵抗をやめさせる目的です。そうさせないためにも選挙人の獲得数で大差がつくか注目されます。

  一方でトランプの感染について、「選挙用のウソ」だとか、「不利な状況の逆転を狙った感染だ」などというおかしな陰謀論が横行しています。私は常にこうした陰謀論的なうがった見方には組しません。彼は自分の命をリスクにさらせるほど若くないし、バレット氏の指名式典にホワイトハウスの上級スタッフや上院議員、軍幹部など多数を呼びリスクにさらすなど、すべてトランプ自身が不利になることばかり。

  もし彼がコロナを克服して「どうだ、オレ様はコロナを打ち破ったぞ」などと叫んでも、トランプの反対者が支持側に回ることなどありえない。あるとすれば、コロナに感染したためトランプから離反した元支持者の一部が戻る程度の話です。

  就任以来一度も支持率が50%を上回ったことのない大統領は、史上多分トランプだけでしょう。いや、前回大統領選でも選挙人獲得数では勝ちましたが、票数ではヒラリーに負けているので、選挙でも支持率は5割に満たなかったのです。その支持率をコロナ感染でさらに低下させる中、再選などありえないというのが私の予想です。

 

  副大統領候補のディベート

 

  その中で日本時間の本日、副大統領候補二人のディベートがありました。このディベートは前回のトランプによる妨害ほどのひどさはなかったのですが、やはり劣勢となり焦っているペンス副大統領がハリス氏の発言をさえぎったり、司会者が止めるもの無視して話し続けるシーンが多かったと思います。アメリカのメディア、日本のメディア、そしてアナリストたちの評価を簡単にまとめますと、

  「カマラ・ハリス氏が副大統領、そして大統領に不測の事態が生じたときのピンチヒッターとしての資質が十分にあると証明した。政策内容の討論でもペンスは精彩を欠き、ハリスが勝っていた」というものです。

  みなさんはもう覚えていらっしゃらないと思いますが、前回選挙での副大統領候補のディベートを私は「悪ガキ ティム・ケインと校長先生ペンスの戦いでペンスの勝」と評しました。今回は「悪態をつく高校生ペンスと、落ち着いた女性教師ハリスの戦いでハリスの勝」と表現しておきましょう。

  討論直後のCNNによる勝ち負け調査では、ハリス59%、ペンス38%とハリス。ABCの調査ではハリス66%対ペンス34%、圧倒的にハリス勝利でした。

 

  ここまでくるとアメリカではトランプ対バイデンの政策比較ではなく、バイデン勝利後のシナリオがメインテーマになりつつあります。バイデンの掲げる政策内容の分析や株式市場に与える影響などの議論が深まりつつあります。

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