ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ななしさんへの回答 その3 ノックイン債の仕組み解説

2011年05月31日 | 資産運用 

>私はなにか今凄く得してる恵まれてる感じがします。

そんなことありませんよ。私はこのブログを読んでいただき、悪質な金融機関からみなさんを守りたい、その一心です。

>毎月を満期にして年12回外貨で受け取る。大体の寿命を想定して・・
>それか資産と一緒に海外移住も視野に入れてます。

ななしさん、とてもよく今後のことを考えていますね。それからオーストラリアのリスクのことも。絶対安全という投資対象はありませんから、ご自分なりにリスクを把握されることはとても大切ですね。

 さて、ななしさんの質問に答え、仕組みの解説をしてみます。難しいと思ったら、何度でも聞きなおしてください。
EB債は、またの名を「ノックイン債」と呼ばれることもある債券です。しかし実態は債券ではなく、ノックイン価格が株価に連動すれば株式投資、為替に連動すればFX投資だと説明しました。
例を私が5月21日に解説したソニー株への転換社債にとります。豪ドルなどの仕組債も全く同じ原理です。

ソニー株の例を復習します。
一口;10,000円
発行体;ソブリンより格の高い国際機関(発行体AAA格)
期間;2年
金利;年2%
償還条件;現在2,700円のソニーの株価が、2年後に2,500円を上回っていたら、現金10,000円をそのまま償還。もし下回っていたら、ソニーの現物株式で2,500円に対して1万円分相当の4株を償還。(4株は固定され、たとえ半値になっていても、倒産していても株式で4株だけの償還です)

 これをじっくり見て読み取る必要があるのは、「2%の金利がもらえる」ではなく、「ソニー株に強制転換された場合の損得」の仕組みです。
それは、「ソニー株が値上がりしても1銭も得はせず、値下がりしたらその分はすべて損失になる」という損得の仕組みです。豪ドルでも全く同じです。

「値上がり分は1銭の得にもならず、値下がり分はすべて損失になる。」
と商品説明書に書いてあったら、ななしさんノックイン債に投資しますか?
しませんよね。でもこの商品はそういう商品なんです。そのように書いてないことが罪に問われない。それが今の日本の金融庁の監督とは言えない監督です。

 この商品の原理はオプションを使っているのですが、オプションはとてもわかりづらいと思いますので、別の説明を試みます。

 みなさん損害保険に入っていますよね。この商品は損害保険と同じです。ただし投資家は保険金をもらう加入者ではなく、逆に保険金を支払う保険会社になっているのです。
 ソニー株にもしものことがあると、保険会社は損害に応じた保険金を払わないといけません。もし半壊なら半分、全壊なら全額を保険会社は補償します。保険を買った加入者は、保険会社に2%だけ支払い、保険を買っているのです。
 ソニー株のEB債では、保険加入者はオプション市場の不特定の参加者でソニー株に保険を掛けたい人保険会社は債券を買った人、たとえばななしさんです。ななしさんは2%の保険料をもらったばかりに、ソニーが全壊したら、保険金を100%支払わなくてはなりません。つまり投資額の全額をもっていかれます。豪ドルだとゼロにはならないでしょうが、50%くらいの値下がりはあるかもしれません。

これがこうした債券の原理です。とても簡単ですよね、おわかりいただけましたか?

 ななしさん、ご自分が保険会社にされているなんて、きっと思ってもみないことでしょう。

 次回は、証券会社は何故絶対にもうかるのかを説明します。
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ななしさんへの回答 その2

2011年05月30日 | 資産運用 
EB債の仕組み解説の前に、ななしさんのもう一つの質問にまだお答えしていなかったので、それからお答えします。

>いずれにしても素人なのでテレビのニュースで暴落した~~と騒げば買い、史上最大の円高だと騒げば買い、二割上がれば売ってくれと証券会社に伝えるだけの暴落時だけ買うテレビニュース待ちの素人です。

 相場でキャピタルゲインを狙うやりかたでしたら、そのやり方は大正解ですよね。大きく下げた時だけ買う。投資では基本中の基本です。

 でもほとんどの方は大きく下げると恐怖感から買わない、大きく上げ始めると一緒になって買う。それでは決して儲からないと思います。

>お金増えたので金利だけ見て豪ドル既発債なんかどうかな~~と

 5年くらいの長期で投資されるのであれば、豪ドルはかなりの確率で勝てる投資だと思います。きっとななしさんであれば、豪ドルの為替益と金利の合計が20%になれば売却して、さようなら、だとおもいますが。
 もし豪ドルが下げたとしても、年率5-6%も金利がもらえますので、5年も保有していれば30%くらいの豪ドル安でも耐えられます。86円の豪ドルがこの先30%下げて60円になる可能性は少ないと思いますが、それでもブレークイーブン。そして複利で運用していればそれでも楽勝です。豪ドルがリーマンショック直後のように、もし50円台にでもなったら、負ける可能性がでてきますが、そうなったらななしさんはきっと再出動。それこそめいっぱい投資したい水準ですよね。
 
 ただし債券ですから、途中売却は豪ドル高になっても金利の動向しだいでは、キャピタルゲインが出ない可能性がありますので要注意です。豪ドル金利が上昇すると債券価格は低下する。その原理は、1週間ほど前までに連載していた「債券の年限・金利・価格」で述べたとおりです。

 もっとも私の提唱している「ストレスフリーの資産運用」のやりかたは、豪ドルが安くなって買えると思ったら投資をして、「債券の償還まで持ちきる」というやり方です。20%のゲインが出ても、気にせずほっておく。要は5-6%にもなる金利を最後までエンジョイしよう、というやりかたですので、その方法で投資すれば金利動向には左右されません。このやりかたでは年限がながければ長いほど金利が為替に負けない強さを発揮します。単利でも10年で金利収入は50ー60%にもなります。豪ドルの為替86円が半分の43円でやっとブレークイーブンです。まずありえない水準でしょう。

 もし日本がその間にちょっとでも変調を来たして円安に進んだら、大きな為替ゲインが出ると思います。

 次回はななしさんのもう一つの質問、EB債デリバティブの仕組みの解説を試みます。
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ななしさんのコメントへの返答です(その1)

2011年05月29日 | 資産運用 
 ななしさんの買われたものと私の紹介しているものは同じ種類と思われます。債券とは名ばかりで、単なる為替の勝負です。
 ノックイン、ノックアウト、どちらも同じような仕組みです。仕組みを作る側と投資する側の立場をどう見るかで、インかアウトかの呼び名を使い分けたりします。何年ころのお話かで金利のレベルは変わりますが、豪ドルでも1年物の金利が6%という高金利だったことはないと記憶しています。
 レベルの話はともかく、ななしさんの勘はなかなか鋭いですね。当たりを続けられたのはとても幸運でしたね。こうした商品の本当の姿をお知らせしますので、是非知っておいてください。
 ななしさんが儲かったということは、相手方である発行体か斡旋した証券会社が損をした、と思うのが普通です。でも発行体も証券会社も実は普通の債券を発行するより大儲けをしています。それを知らずに投資家は買わされています。両者が儲からなかったら、そのような債券をわざわざ発行し証券会社が引受けるあずはありません。もしななしさんが損をしていたら、発行体も証券会社も恨みを買いますよね(笑)。恨みを買ってもペイするほど儲かっているからこうしたものを発行し引受けるのです。

 じゃ、誰が損したのか?
 誰も損していません。
より厳密には、
1.得したと思っている投資家が損をしている。つまりななしさんです。
それと
2.デリバティブマーケットの不特定参加者が損をしている

ということです。こんな手品のようなことを仕組むことができるのがデリバティブという最もわかりずらい世界なのです。ですので、絶対に買ってははいけないのです。

 簡単に説明しますと、SONYの株価連動EB債でお知らせしたように、投資家はSONY株に投資したことになり、どんなに値上がりしても値上がり益は2%で打ち止め、損失は投資額全部(SONYの倒産)までありうる。
 豪ドルも同じです。豪ドルの値上がりは6%までで放棄させられ、値下がりはトコトンリスクを取らされている。それがこの商品の仕組みです。

 もし本当にその仕組みの詳細をお知りになりたいということであれば、じっくりと解説差上げますので、遠慮なくご質問ください。

 
 
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買ってはいけない、投資商品  その3

2011年05月25日 | 資産運用 
 しつこく書きます。最近のヘッジファンドブームへの警鐘です。まとめて数十人が引っかかった実話です。投資総額は数十億円です。
 相場が上がろうが下がろうが儲けを出すヘッジファンドはかなり魅力的です。私はその魅力は否定しないし、私のいた時代の投資銀行ソロモン・ブラザーズの儲け頭が自社内ヘッジファンド部隊で、私自身がその恩恵をうけたのも事実です。今後もヘッジファンドは力を持ち、投資対象として注目を集め続け、大きく勝つところも出続けるでしょう。問題は規制に引っかからない詐欺的ファンドの横行です。

 私に相談された60歳くらいの方が引っかかりました。損失額数千万円、きっかけは投資セミナーです。そのセミナー主催者は現在も本屋に行けばいくらでも著書を見つけられるような資産運用本の著名人で「日本の破綻と海外投資のすすめ」をテーマに毎回数百人も集めてセミナーをしています。その一派にひっかかったのです。
その一派のセミナーはマルチ商法のたぐいと同様に熱気に溢れ、「日本国債の破綻は近い、いますぐこのヘッジファンドに申込め、締め切り間近」ということで投資家の不安心理につけ込みます。年間数十万円もかかるアドバイス費用を取ります。フィーが高ければ高いほど、信用してしまうというお金持ちの心理を匠に突いています。申し込み後はホンコンのプライベートバンクに行って口座を作ったり、タックスヘブンのカリブの国に旅行に出かけたりとか、いかにもお金持ちの方が喜びそうな仕掛けを見せます。そして英領マン島に支店のある、世界的に有名な銀行の口座に現金を送金します。信用しない人を信用させるために、最初は驚くほどの配当を毎月送金しますので、それに釣られて投資金額を大きく増やすのです。その後配当が滞りがちになり、遂には破綻したとの連絡で終わるという典型的詐欺のパターンです。その方の例ではその後何の音沙汰もなく、ほとんどすべてを失ったのです。
日本にいる一派は、「自分たちはヘッジファンドを紹介しただけで結果は知らん」とのこと。数十人の日本人投資家は対抗するすべもなく、被害者の会を組織しましたが、海外ケースを扱う弁護士費用は莫大で、それに耐えられず大半の方が落伍したそうです。最後まで戦った方もいらして、残余財産の分配額は投資額のわずか2%程度でした。ファンドの破綻管財人から送られて来た最終分配額の記されたレターのコピーを見ましたが、その間一体お金はどう使われたのか説明は全くありません。私の勝手な想像では、すべての関係者は裏で通じ合っていて、投資なんか鼻からせずに懐に入れていると思われます。
 何故こんなことになったかといえば、相手を信用し過ぎたからです。海外への送金はとても危険です。持ち逃げの危険を防ぐことはほとんど困難です。それを薦める方にたとえ著書があったり、マスコミに出ているような投資アドバイザーでも、それだけで信用するのはご法度です。
 先日私が聞いた別件でも、投資の世界では名もない人が、いわゆる自費出版で著書を作り、それをダシに人を集め金集めをし、驚くほどの手数料を稼ぐことが横行しているとのこと。
 その反面、日本の証券会社や信用のおけるプライベートバンクを通じて行うヘッジファンド投資は、手数料は高いですが信用はできます。その意味では、証券会社や銀行に大いに存在価値はありますが、その信用と儲かるか否かは全く別問題であることをお忘れなく。ヘッジファンドは様々な対象に投資しますが、必ずしも対象が十分な流動性を持っているとは限りません。例えば、ヘッジファンドではありませんが、エジプトのムバラク政権が転覆した11年1月には、日本の大手証券のエジプトに投資している新興国ファンドは、顧客の解約すら停止しました。つまり売りたいと思っても、損失覚悟で売ることすらできない、流動性の枯渇という最悪の事態に追い込まれたのです。大手証券だからと言って、投資対象が流動性に欠けていれば、逃げ出すこともできなくなるのです。海外に投資するということは、そうしたリスクを覚悟してください。

 海外投資の対象で、流動性を絶対に失わないのはただ一つ、米国債だけです。

まとめ
ちょっと待った、その振込み(笑)


警鐘;知合いの元プライベート・バンカーの独白
いまの世の中にハイリスク・ハイリターンなんていう商品はほとんどないよ。よくてハイリスク・ノーリターン、悪けりゃハイリスク・マイナスリターンさ。ほんとに儲かる商品なら、誰が他人になんか売るもんか!

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買ってはいけない、投資商品  その2 つづき

2011年05月24日 | 資産運用 

 前回は、ノックアウト・オプションという名の付いた、顧客を一撃で倒す商品を紹介しました。銀行が個人ではなく、中小企業に持ち込む悪質商品リストのナンバーワンもやはり、金利や為替にまつわるデリバティブ商品です。本来であれば銀行と企業の関係は一緒に儲けて成長していくべきなのに、顧客をノックアウトする商品に、ぬけぬけと「ノックアウト・オプション付」という説明まで付けて押し売りをしています。嘆かわしい限りです。
 しかし一方、銀行に比べ立場が弱いからといって、ひっかかる中小企業もひっかかるほうです。オレオレ詐欺が、名刺に「オレだオレ」と書いて差し出しているのに、めげずにひっかかるんですからね(笑)。いや、ひっかかってあげているのかもしれませんが(笑)
 11年1月24日付け日経新聞に、「円高損失の為替商品、中小1万9千社保有」の記事がありました。契約数は6万4千件で、為替取引に関係のない企業がほとんどで、特に契約数が多いのは3メガバンクとのこと。しかも中にはその損失がもとで、企業倒産まで起こっているそうです。
 その数日後の日経新聞に今度はメガバンクが「何らかの救済措置を検討」するとの記事が出ました。私はこの記事を目にして、投資銀行での経験を思い出しました。
 80年代の終わり頃、日本人を煽ってアメリカで不動産投資をさせ、90年代になってそれが値下がりに転じて困りはじめると、今度は「売ってあげようか」と手を貸す(笑)。マッチ・ポンプを絵に描いたような話です。こうした銀行のやっていることは初めの頃に書いた、高齢者にジャンクボンド投信を買わせる証券会社と同じレベルの話です。
 銀行さえ儲かれば、客など殺してもかまわない、次の客にいけばいい。これが今の日本の証券や銀行の実態だと思うと、本当に心が痛みます。しかもそれらは大手の証券・銀行なのです。
 みなさんの周りに、もしこうしたお話があったら、是非コメントとしておしらせください。私はそうした証券・銀行の所業を明らかにして、一般の方が詐欺的行為にひっかからないよう警告を発しつづけていきたいと思っています。
 日本の金融庁は、高齢者に複雑な仕組み商品を売る行為に目をつぶり、自ら最も大事な仕事を放棄しています。それが続く限り、みなさんご自身は自己防衛手段を身に着け、銀行・証券に決して騙されないようにしましょう。ついでに「変額保険」という、保険ではない詐欺商品に保険という名をつけて高齢者を騙した実績を有する保険会社にも。

まとめ
説明を要する商品には、絶対手を出してはいけない
説明するにはワケがある
銀行・証券の儲けは、投資家の損

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