ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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「安全資産の円買い」について・・・大丈夫か日本財政のおまけ

2016年02月27日 | 大丈夫か日本財政

  北海道ニセコへのスキーツアーから戻りました。ニセコは街からスキー場まで、 ますますオーストラリアン・コロニー化が進展しています。オーストラリアのみなさん、八方、野沢、ニセコにどんどん進出いただき、本当にありがとうござい ます。おかげで寂れていたスキー場に活気が戻っています。

  ニセコのコロニーぶりを最も象徴する場所が、花園エリアです。ニセコは4 つのエリアが頂上でつながってできている広大なスキー場ですが、その一つが花園エリアです。聞くところによればリゾートセンターからレストランまで、すべ てオーストラリア人の所有とオペレーションになっているため、日本にいながら不思議な海外空間をリアル体験できます。

  そこではスキーヤーの8割がオーストラリア人で、彼らの多くは家族で来る ため子供たちの雪遊び施設が充実しています。子供たちに雪遊びとスキーやボードを教えるのもすべてオーストラリア人のスタッフ。もちろん大人に教えるス キーの先生も全員がオーストラリア人です。スキー場、レストハウスにあるほとんどの標識も英語という徹底ぶり。たまにいる日本人の若いスタッフと話をする と、みんなが口をそろえて言うのは、「ここで働く一番の目的は英語を学ぶことです」という返事が返ってきました。アルバイトで稼ぎながら英会話が勉強できるなんて、サイコーです(笑)。

   さて、4日間の留守の間、ブログのコメント欄ではずいぶん活発な議論がありましたね。そのやりとりについて、つれづれなるままに感想を書かせていただきます。

  まずは真剣に議論をされたみなさんに感謝いたします。楽しませていただきましたし、本音がたくさん聞けてよかったと思います。今後の参考にもさせていただきます。

   どなたかが書いていらしたように、私は自分のブログをどなたにも開放する主義で、議論の白熱も歓迎です。口汚いののしり合いだけは歓迎しませんが(笑)。ここに集まる多くの方は、実に秩序をわきまえた方が多いので、安心して見ていることができます。

   ブログ主催者の私の見方が常に正しいことなどあり得ません。お互いの切磋琢磨のためにも異論・反論は大歓迎です。ただし、私は常々申し上げているように、経済・金融は数字がすべてだと思っていますので、できれば実証できる数字で議論したいと思っています。

   私が本を書き、ブログを書いている動機も話題に上りました。私は著書の「あとがき」にあるように「義侠心」から書いています。かっこよすぎますか(笑)。

  世の中の多くの方が投資で損失を出されストレスを感じ、幸せになっていないことをおかしいと思い、世の中には「ストレスフリーの資産運用」という単純な投資スタイルがあるのだということを知っていただこうと書いているのです。

  もっともこのブログのスタートは、最初に私の原稿に興味を示した出版社と喧嘩したので、出版してもらえない時のヘッジでもありました(笑)。

   資産運用や経済、金融など市場の動向によって左右される内容を含む本 は、その多くが出版したそばから使い物にならなくなることが往々にしてあります。そこで、出版したあとのブログは、本を買って損したと思われないよう、市 場動向に合わせて本の内容をフォローする必要もあると感じ、書き続けています。

   私は90年代に在籍した投資銀行時代から様々な方にアドバイスを差し上 げていますが、幸いなことにアドバイスを実行された方はこれまでのところ例外なく幸せになっています。著書の内容にあるお薦め投資対象もそこそこのパ フォーマンスを上げているため、特段のクレームも受けていません。その理由はいたって簡単。危ない投資をお薦めしていないからです(笑)。

  ちょっとリスクを取るならということで著書で薦めた豪ドル債は13年に新規投資はやめるべきだとブログでフォローしましたが、それが一つの例です。

   米国債への投資を実行されていない方にとっては、「そんなことは何の慰めにもなんねー」かもしれませんし、「あんたの見通しが間違ってるから投資し損ねたんだよ」、かもしれません(笑)。

  それでも、今後も私は米国債への投資を薦め続けます。投資した人だけが感じられる、「ストレスフリーの幸せ投資」ですから。

 

   さて、ではコメントでたくさんいただいた現状の円高や安全資産論議についても触れることにします。

   議論を見ていた私の思いを、すでにシーサイド親父さんに代弁していただいているので、まずそれを引用させていただきます。

>現在の1ドル111円台は予想外で裏切られた?そんな感情で、正しいだの、正しくないのだのと議論して何の意味があるのでしょう。

  シーサイド親父さん、よくぞ言っていただき、ありがとうございます。相場 はいくらでも動きます。今後も世界市場は振れ幅が増大しこそすれ、小さくなることなどあり得ないと思います。今年末の円安を年初に予想したら、年初からど んどん円安にならないと満足されない方もいらっしゃると思いますが、それは高望みです。なんなら今後は振れ幅予想でもつけましょうか。

   「本日のドル相場見通し」というのが毎日出されています。昨日の終値が 113.0円だと、今日の予想は112.0-114.0円というような幅が平気で出ているので、1年間の振れ幅はスタートが120円なら、振れ幅は十分に とって1ドル50-190円の幅で、年末は130円になるとでもしましょう。ここまで幅を取ればきっと当たりますよ(笑)。

  冗談はさておき、ドル買いチャンス到来とのご意見も多かったですね。そのとおりだと私も思います。

   これだけでは真剣に議論をされたみなさんは満足されないと思いますので、最後に「安全か」の議論についてもコメントしましょう。

  最初に申し上げますが、今年の私の最初のシリーズのテーマは「大丈夫か日本財政」。クロちゃんの「マイナス金利」が入りましたが、まだ途中で継続中です。内容的には、15年までの見込み違いをきちんと並べ検証を始めていました。ところがある方の投稿から、みなさんの議論はシリーズで書こうと思っていたことを通り越して先走りしてしまっています。

 みなさん、「あわてなさんな!」ですぞ(笑)。

   さて、為替動向のニュースでは毎日のように「比較的安全資産と言われる円に買いが集まり」という解説が付きます。誰がその「安全だ」解説を出しているのでしょうか。ニュースを読むアナウンサーではありませんよね。きっと経済記者かもしれませんし、どこぞのアナリストが言ったのかもしれません。

   じゃ、円が反転し安くなったら「比較的危険資産と言われる円が売られ」という解説を何故しないのでしょう。みなさんは聞いたことはありますか。私はありません。安全と思って買われるのであれば、危険だと思って売られるのも妥当なことだと思いますが、決してそうは言わない。何故でしょう?

  「比較的安全資産と言われる円が買われ」という解説は、きっと解説しないとメシの食い上げになる、お気の毒な方々の性から出ているのでしょう。

   これと同様なことは以前にも言ったことがあります。円キャリー巻き戻しという理屈です。今回も以下のようなコメントをいただきました。

 >リスク局面では円売りキャリートレードポジション巻き戻しの為、円買いされるのではないでしょうか

   この「円キャリーの巻き戻しで円高に動いた」という解説もよく聞きましたよね。だったら巻き戻す前には「巻が入っていた」はずなので、「円キャリーの巻きで円安に動いた」という解説がないのは何故でしょう。ついぞ聞いたことがありません。

 巻きはそっとやるけど、巻き戻しは一気にやる?

 本当に儲ける投資家は両方ともステルス戦法で行きます。

   安全資産説にも巻き戻し説にも共通していそうなのは、「理屈がつかなくなると利用される常套句だ」、ということです。

教訓;為にする解説を信用してはならない

   私の常套手段は、もっともらしい解説やコメントを鵜呑みにはぜず、 ちょっと疑問を感じたら自分なりに考えるようにすることです。為替相場の微笑ましい解説はその代表で、突っ込みどころ満載です。みなさんも是非こうした視 点を変えてみる思考回路を持つことをお勧めします。世の中がもっとよく見えるようになりますよ。

  しまった、安全議論を忘れていましたね。

   いつも言っていますが、「日本は危ない派」は数字で議論し、「安全派は数字を決して出さない」。これだけは不滅です(笑)。

おっと待った。意味不明の数字を使う魔術師も一人だけいましたね(笑)。

  日本財政が安全か否かの議論の滑稽なところは、数字を最も詳しく知っている当事者である大本営は「負け戦になりそうなので増税するぞ」と言い、外野には勝ち組がいて「いや神国日本は大丈夫だ」と言っているところです(笑)。

   今まで破たんしていないじゃないか、という議論は今後の予想には何の役にも立ちません。

   為替がちょっと動いただけで日本や円が安全と危険の間を行ったり来たりするなんてことはありえない。

  以上、徒然なるままに書いてみました。

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マイナス金利導入をどうみるか その6 黒田マジックの終焉

2016年02月22日 | マイナス金利導入をどうみるか

  今回のマイナス金利導入により、もっとも影響を受けるのは銀行や保険会社をはじめとする金融機関です。それは株価にも出ています。銀行は貸出金利が低下するのに合わせ、調達金利である預金金利を引き下げる行動に出ました。貸出金利と預金金利の差が金利スプレッドと呼ばれる儲けの源泉です。しかし預金金利がもともとないに等しいほど低いため、貸出金利の低下を補うほど調達金利を引き下げられず利益が低下する。それを見越して株価が暴落したということです。

   銀行業の収益構造で基本的に重要なことは、調達期間と運用期間に差をつけることによる長短金利差が利益の源泉になることです。通常は短期の金利より長期の金利が高いため、短期金利で調達し長期に貸し出せば利益が出ます。順イールドという状態です。

   例えばマイナス金利導入前の住宅ローン貸し出し金利と預金金利、そしてスプレッドはおよそ以下のとおりでした。

10年住宅ローン固定;1.2%

普通預金金利;0.02%     ・・・スプレッド(利ザヤ)1.2-0.02=1.18%

10年物定期預金金利;0.12% ・・・スプレッド(利ザヤ)1.2-0.12=1.08%

 利ザヤは普通預金に対して1.18%確保できますが、将来の金利上昇のリスクは銀行側が取ることになります。一方10年物定期預金で調達し、ローンに回しますと、1.08%の利ザヤが確定します。期間がマッチしていればリスクはないが、利ザヤは少ないのです。

   しかし今回のマイナス金利導入により以下のようになり、利ザヤは縮小します。

10年住宅ローン固定;0.8%

10年物定期預金金利;0.08%  ・・・スプレッド(利ザヤ)0.8-0.08=0.72%

マイナス金利導入前との比較では、確定利ザヤは1.08%が0.72%に縮小します。普通預金はほとんどゼロなので、ローン金利がそのまま収益にはなりますが、将来の金利上昇リスクは丸取りすることになります。

   こうしたことは企業への貸し出しも同様で、貸出金利の低下のほうが調達金の低下の方が大きいため、銀行の利益は減少するのです。

  このように利ザヤの縮小も大事なことには違いないのですが、もっともっと重大なことがあります。それは短期金利上昇による逆ザヤの可能性です。それが一番象徴的なのは、35年の住宅ローンです。調達側の定期預金には35年物というような超長期の定期預金は存在しません。現在期間35年の固定金利が1.5%程度まで低下しています。政府も後押ししているフラット35です。それを各銀行は大チャンスとばかりに宣伝し、住宅ローンを拡大しようとしています。

   今後35年にわたり超低金利が果たして続くでしょうか。読者のみなさんもそんなことが続くと思われている方は多くないでしょう。調達金利が1.5%を上回ることなど、いとも簡単に起こる可能性があります。10年固定の0.8%でももし調達を普通預金に頼っていれば、十分にあり得ます。

   銀行はこうした逆ザヤのリスクを少しでも低下させようと、ALM(Asset Liability Management、資産負債マネージメント)という手法を導入しています。資産(貸出)と負債(調達)のミスマッチのリスクをコントロールしようというのです。

  にもかかわらず、日本中のネット銀行まで含めた銀行がこれをリスクとして背負っているのは、私から見れば異常としか言いようがありません。ひとたび金利が上昇を始めればこの国は政府が破たんするのみならず、銀行もそろって破たんを始めます。これは住宅ローンや企業向け貸し出しの場合だけではありません。ほとんどゼロに近い国債などで運用をしている場合も同じで、その投資を支える短期金利が上昇すると莫大な損失を抱えます。国債金利も上昇する場合はさらに深刻で、債券価格も暴落するので売るに売れない。償還まで抱えると調達金利と逆ザヤが続くという八方ふさがりになります。

   現状の銀行経営は、こうした非常に大きくかつ非常に長期的リスクを負った経営であること、みなさんも忘れないようにしましょう。

  では、銀行の破たんは借り手にとってはどういうリスクになるのでしょうか。借り手は貸してくれている銀行が破たんしても、返済を迫られることはありません。何年のローンであっても約束通りの支払いをすればいいのです。また、銀行が破たんしたらローンがちゃらになるかといえば、それもありえません。破たん銀行の債権者たちがローンを引き継ぎ、毎月の支払いを求めてくるからです。

   クロちゃんは今回のマイナス金利が効かなければ、さらにマイナス幅を拡大するぞと脅しています。あきらめが悪く凶暴な彼はきっとやってくるでしょう。

  ではマイナス金利の導入に関する私の見方をまとめます。大事なことから並べますと、

1.黒田マジックの賞味期限は終わった

2.企業も個人もガチョウじゃあるまいし、フォアグラになんてならない

3.インフレ2%の達成時期は、これからいつも日銀発表から2年後だ

4.日銀内部からでさえ、おおっぴらに批判が出た

5.日本で預金金利をマイナスにしたら、みんな預金を引き上げる

    これらをさらにまとめれば、

「マイナス金利導入で、日銀は信認を失った」

それが結論です。

 マイナス金利導入をどう見るかは今回で終了します。アンケートに協力いただいたみなさん、ありがとうございました。

   私は明日からまたまたスキーに出かけます。今シーズン最後のスキーとなるニセコへのツアーです。さすがにニセコは雪不足の心配はありません。でも最近のスキー仲間の心配は、「日本でいつまでスキーができるかな」、という寂しい心配です(笑)。いつもの仲間に加えて、私のスキーの先生や札幌に住む友人も加わって、みぎやかなツアーになりそうです。またまた1週間ほどお休みをいただきます。

   このところ私のところには、「アメリカは大丈夫なの?」という問い合わせが増えています。スキーから戻ったら、それについて書くことにします。

   では、行ってきます。

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マイナス金利導入をどうみるか その5、 そして野沢温泉サンアントン

2016年02月19日 | マイナス金利導入をどうみるか

  荒れ模様はこのところの天気だけでなく、相場も相当に荒れたままですね。今年4回目のスキー、野沢温泉スキー場から戻りました。2日目、3日目と天気に恵まれ、楽しくすべることができました。

   野沢温泉も町中からスキー場まで「熱烈歓迎海外スキーヤーご一行様」状態です。と言っても中国人旅行客は少なくオーストラリア人が圧倒的で、その他も欧米人がほとんどでした。彼らはスキーだけでなくアフタースキーも大いに楽しむため、町は活気に溢れています。足湯につかっているのも、野沢温泉の街に10か所以上ある公衆温泉浴場も、海外からのお客さんばかり。カフェやバーでゆったりとした時間を楽しむものも欧米人が圧倒的で、日本人の存在感はほとんどありませんでした。

   我々の定宿はハウス・サンアントンという小さなホテルで、料理が自慢のオーベルジュと言ってもよいプチ・ホテルです。ここのテーマは、「野沢温泉なのにヨーロッパ」です。http://st-anton.jp/

   美味しい料理を作ってくれる片桐健策という若きシェフは、元全日本クラスのスキーヤーでしたが、オーストリーのホテル学校で学び、今や評判のシェフ。それを姉たちが支えています。その一人は元JALのCAで、一緒に行く仲間の元パイロットの方とは会社時代からの知り合いで、我々を家族の里帰りのように迎えてくれるホスピタリティのプロです。ここのお客さんも海外からの長い逗留客が多く、チェックアウトの時に来年の予約を入れる人がたくさんいます。


   さて本題ですが、マイナス金利の続きです。

   マイナス金利の導入開始で、様々な影響が出てきています。まず株式相場と為替相場を数字で確認しておきましょう。日銀の決定前日である1月28日の終値からスタートし、当日の29日、ピーク2月1日、ボトム2月12日、現状2月19日と追います。

      1月28日  29日  ピーク1日 ボトム12日 2月19日   28日対比

日経平均   17,041     17,518     17,865     14,865     15,967   ▲6.3%

ドル円      118.8      121.0      120.9      113.2       113.0   ▲4.9%

 

  株価が発表前日より上昇したのは当日の29日と翌日の2月1日のみで、あとは乱高下を繰り返し、12日には発表前日比▲13%となりました。そして今週末現在ではどうにか半値戻しの▲6%というところです。

  債券相場も確認しますと、こちらはひたすら混乱し長期金利の指標である10年物金利まで一時はマイナスを記録し、トレーダーや投資家は混乱の極みとなっていました。そして生命保険会社が年金商品の販売を停止するというような事態に追い込まれています。銀行の預金金利も引き下げが相次ぎ、ほぼゼロ状態。

   我々への直接の影響としては預金金利の下げのほかに、住宅ローンや自動車ローン金利が下がるというプラスもあり、プラスとマイナスのインパクトが交錯しています。といってもいずれも超低金利が超々低金利になったという程度です。インパクトの総合的評価にはまだ時間がかかりそうです。


   日銀内部でも今回の決定は相当な軋轢をよんでいます。決定会合での評決は賛成5対反対4。前回14年10月のバズーカ2号も薄氷を踏む評決でしたが、今回も同様でした。しかし決定的な違いがあります。それは、反対票を投じた審議委員の一人である石田委員が、昨日2月18日の会見で今回の決定の危険性についてはっきりと言及したことです。これまで審議委員は反対票を投じても、その後の会見などで正面切って批判するというのはあまり聞きません。日経ニュースを引用します。

 引用

日銀の石田浩二審議委員は18日、福岡市での講演後に記者会見し、16日に始まったマイナス金利政策について「このタイミングで導入しても効果が期待できない」と指摘した。石田委員は1月末の金融政策決定会合で導入に反対した一人。円高・株安など市場の動揺が続く時期の決定に疑問を示し、黒田東彦総 裁ら執行部との認識の違いが浮き彫りになった。石田委員は三井住友銀行出身。マイナス金利に反対した理由について、「金融機関による貸出金利の低下余地が小さいことに加え、国内の利ざや縮小で金融機関による海外向け投融資が増えても国内経済の活発化にはつながらない」と説明した。・・中略・・「市場が不安定な時にさらに(政策変更を)やるのはいかがなものか」と苦言を呈した。

引用終わり

   彼は任期がもう短いこともあり、かなり本音を述べているのではないかと思われます。発言の中で私が注目しているのは次のくだりです。「金融機関による貸出金利の低下余地が小さいことに加え、国内の利ざや縮小で金融機関による海外向け投融資が増えても国内経済の活発化にはつながらない」。この発言は、今回はタイミングだけが悪かったと言っているのではなく、これ以上は何をやってもダメと言っています。

   そもそも政府から独立し、通貨の番人が本来の仕事であるはずの中央銀行ですが、日本に限らず政府の経済運営に加担するのが当たり前という危険な考え方が世界で蔓延しています。こうしたことをしていると、必ず手痛いしっぺ返しが来ます。

   中央銀行の甘い政策により、一国の経済の競争力が増し、経済が成長軌道に戻り、国力を回復するなどということはありえません。低金利政策にしろ量的緩和策にしろ、競争力を回復するまでの時間稼ぎをするための政策で、それが中央銀行の限界です。逆にインフレファイターとして非情なほど厳しい政策を取ることで、インフレを退治したということはかなりの国で経験していますが、逆はないのです。

 

  今回のマイナス金利導入に賛成したのは、黒田総裁、岩田副総裁委員、中曽副総裁、原田委員、布野委員の5人。反対は、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員の4人でした。面白いことに賛成委員は黒田体制になってからの任命つまりはアベチャンのいいなりの「御用委員」。反対委員は前の白川体制での任命です。反対派は今年3月までの任期である白井委員や、6月までの石田委員など、5年任期の最終段階の方が多く、その後は政権と黒田総裁の息のかかった御用委員がほとんどになるため、アベクロコンビの独裁体制がより強固になると思われます。ということは、将来はますます恐ろしいことになりそうです。

 

   次回は、現在当たり前のように行われている住宅ローンの金利引き下げなどが、どれほど将来に禍根を残すことになるかを解説します。

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ハッポウ・ワン 最新スキー事情

2016年02月13日 | 旅行

  株式とドル円相場がフリーフォールになっていますね。ドル転を狙っていた方にはいいチャンスとなりました。NYでどうやら反転したようですが、肝を冷やした人がたくさんいらしたに違いありません。反転の理由は原油価格の上昇と個人消費の堅調さを示す統計が出たことです。週明けの日本株が反転するか否か、そして1週間も休んでいた上海相場の行方に注目が集まりそうです。

  週末から月曜日にかけて、息子と長野の白馬八方尾根にスキーに出かけました。八方尾根は遂にオーストラリアのスキーヤーに敬意を表し、「ハッポウ・ワン」と名前を変更しました。

   八方尾根の英語表記は「Happo-one」と書かれています。ハイフンをいれないと、Happooneとなり、なんと発音したらいいのか。ハップーンでしょうか(笑)。海外からのスキーヤーは全員ハッポウ・ワンと言っていますので、それに従うしかありません。なにしろハッポウはオージー植民地と化していますので(笑)。

   平日のハッポウの外人比率はざっくりと約50%。そのうち3分の2くらいがオーストラリア人です。今回はそれに加えてフランス人が多くいて、ついでロシア人、アメリカ人、スイス人、そしてマレーシア人とおぼしきスカーフをした人たちもいました。海外スキーヤーのみなさん、八方のスキー場維持に多大なる貢献をいただき、誠にありがとうございます。

   なんで人種比率がわかるかと言いますと、ゴンドラとリフトに乗り合わせるからです。ゴンドラは6人乗り、リフトも多くは4人乗りです。袖振り合うも他生の縁ということで、10分から20分も一緒にいれば、スキーヤー同志、大いに話がはずむのです。一日滑れば10回以上はいろいろな国の人たちと話をすることができますから、数十人と話ができます。ゴンドラやリフトに乗っている間は寒いどころか、楽しいおしゃべり時間になるのです。

  ハッポウの外人さんはスキーヤーだけではありません。ゴンドラのスタッフやレストランのスタッフまでかなり大勢の若い外人さんが目立ちます。彼らは一生懸命日本語を習い、気持ちよく応対してくれます。もちろん一番多いのはオージー。ワーキング・ホリデー・ビザを日豪が相互に出しているためでしょう。

   ハッポウ・ワンもオリンピック会場だったという一枚看板を掲げたスキー場からの脱却を目指し、様々な工夫をしています。その一つはレストランです。これまでスキー場のレストランと言えば、混んでいて、まずくて、高い、が相場でした。それが最近は改善されつつあり、美味しくて、高もなく、サービスもいいレストランに変りつつあるのです。

   八方のメインレストランと言えるゴンドラの終点、ウサギ平にあるレストランで食べた特別料理が秀逸でした。なんとヒレステーキにマッシュポテトやダイコンの煮込みが乗せられ、トップにはフォアグラまでが乗せてあって、それにトリュフのソースがたっぷりとかかっています。一日限定10食ですが、看板には一流レストランから来たシェフの写真が貼ってあって「原価率100%」と書かれていました。価格は1,980円。普段はハンバーグやカレーくらいしか食べないのですが、話のタネに食べてみました。シェフ自慢の料理とあって本当に一流レストラン並みの味で大満足でした。美味しいソースがもったいないので、ごはんをとってトリュフのブラウンソースをかけ、トリュフごはんもいただきました。

   ピザも大きく変わっています。これまでは焼きあがってから時間が経っているピザが赤外線で温められていて、それを出していましたが、今は受注生産で、番号を呼ばれる方式に変り、焼きたての美味しいピザが食べられるのです。

  笑えたのは、同じレストランのラーメン・コーナーです。並んで待っているのも食べているのも全員が海外からのスキーヤー。その上、作っているスタッフまで外人スタッフがいて、いったい「ここはどこ?」状態でした。ラーメンはだいたい900円前後ですが、原価率はどれくらいでしょうか。一般的には2-3割と言われます。だとすると、2-300円くらいの原価に980円払う。だったら原価1,980円を1,980円で食べるのは、決して悪くありませんよね。ラーメンの2倍でフォアグラとステーキなら、超割安ですからね。来年もあるといいな(笑)。

   ハッポウ・ワンのだいご味はなんといっても北アルプスの絶景です。真冬の厳しい表情の北アルプスを目の前で眺めながら滑れるのです。今回も私は晴男ぶりをいかんなく発揮して、一日中快晴無風という稀有な天気に恵まれました。普通は朝快晴でも、昼ころにはモヤがかかりはじめるのですが、この日は最後まで快晴かつクリアスカイでした。

  麓のゴンドラ乗り場が高度760m、ゴンドラを降りてさらにリフトを2つ乗り継ぐと1,830mの第一ケルンまで一気に登ることができます。そこから3,000m近い白馬三山や唐松岳、五竜岳を眼前に眺めることができます。360度の大パノラマですから、反対側には妙高、志賀、八ヶ岳、遠方には南アルプスまで見ることができます。

  そして、もっといい景色を高い地点から見たいなら、さらに足で登れ、そこからバージン・スノーを滑ろうと、リフトの最高地点から唐松岳に登り始める大勢のスキーヤーやボーダーがいました。滑ったあとにできるシュプールがたくさんついています。重いスキーブーツを履き、スキー板やボードを肩に膝までの雪をかき分けて登るのは、実はとても大変です。

   最近、バックカントリーと呼ばれるゲレンデ外滑走が問題になっています。1月に野沢温泉スキー場で6人のノルウェー人が遭難し、翌朝救助されました。その翌日も福島で6人のオーストラリア人が遭難しています。バージン・スノーに憧れるのも、わからないこともないです。でも遭難は本人たちも死の危険に瀕し、周りも大迷惑です。ゲレンデ外滑走はしないで欲しいですね。

  ノルウェー人6人の救助はほとんどが長野県警の山岳救助隊が担当しました。上からのヘリと徒歩で雪山を分け入る非常に危険な救助作業だったそうですが、警察の人員と設備を使った場合、費用は原則無料だそうです。つまり税金。無法者の救助なので、割り切れないものがあります。

  今回のハッポウでは、春節ホリデイの中国人はあまり目立ちませんでした。雪国の往復は旅行者にとっては天候による様々なリスクが予想されるためでしょうか。そういえば去年もニセコでは中国人旅行客が多かったのに、ハッポウではやはり少なかったのを思い出しました。近くに空港がないとか、買い物の楽しみがないとか、大きなホテルがないなどの制約のせいでしょうか。

   では我々日本人のスキーヤーはこうした外人スキーヤーの存在をどうみているかです。私のような外人アレルギーの全くない人間にとっては、とにかく大歓迎です。最大の理由は、施設維持のための巨額費用の回収に客数の維持増加は必要不可欠だからです。もし日本人だけだと、スキー人口はピーク時の半減以下になっています。つぶれるスキー場も多いため、とにかくどなたでも熱烈歓迎なのです。そして彼らが日本人と決定的に違うのは、長逗留であること。誰に聞いても最低3泊、多くのスキーヤーが1週間くらい滞在しますし、かならず平日にかかるのです。すると経済効果は土日集中の日本人よりよほど大きくなります。スキーは3時から4時には滑り終えます。日本人のほとんどは宿に閉じこもりますが、外人さんたちはそれから街に繰り出し、バーやカフェに行って飲み食いが始まります。そして夜もディナーもそこそこにクラブで遊ぶのです。一人当たりでも経済効果は数倍ありそうです。

   そんなクラブが八方にあるかって?ありますよ。それもオージーがオーナーのクラブやバーが。そして最近オープンしたのがクラフトビールのHakuba Brewing Co.が開いたビアパブ。きのうの夜のNHK、「キッチンが走る」でも紹介されていました。私は行っていませんが、人気が出ているようです。ちなみにそこのHPにある文章を引用しますので、見てください。

 「弊社の醸造プロセスは施設内の井戸から始まります。元は白馬村にそびえる日本アルプスの山頂の雪です。それが溶け、滴となり山や岩石を経て私たちの元にたどり着きます。・・・」

   ストーリーがありますよね。そしてスキーヤーや山好きの人たちの心をくすぐります。

   では最後にハッポウの新しい遊びです。北尾根ゲレンデに、波打つようなゲレンデが作られています。そこに麓からスノーモービルで7-8人乗りのゴムボートを引っ張り上げます。それで波を滑るのではなく、極太タイヤ付き自転車を乗せて上まで運び、それに乗って波打ちゲレンデを走ろうというのです。波打ちライドをするのに10分、北アルプスの絶景付きにて1,600円なり。いろいろ考えていますね。   

以上です。

  私は明日から野沢温泉スキー場に行くため、しばらくお休みさせていただきます。遭難はしません(笑)。


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ストレスフリーの資産運用 トラさんへ その2

2016年02月12日 | ストレスフリーの資産運用

トラさんへ

>最後に、もう1つ質問させてください。林様が、米国債で投資に値する利回りは何%とお考えでしょうか。2%以上でしょうか。

リターンは多ければいいに決まっています。

円のリスクを回避するのがメインの目的であれば、何パーセントでも投資に値すると思っています。ゼロ%ではキャッシュと同じで意味はありませんが。いや、マイナス金利がありえれば、ゼロでも意味を持ちますね。

これでは回答としてご不満かもしれませんね。

では、以下のヒントを参考にしてください。

何%なら投資に値するかは、投資時点の為替レートで変わってきます。その時ドルが高ければ高い%が欲しい、何故なら下落リスクが大きいから。ドルが安ければ低い%でもかまわない。

債券投資には利率と期間が条件として設定されます。それにドル債であれば為替がからんできます。

そこで10年を投資のタームとし、為替変動に対する耐久力を考えてみましょう。例えば償還時点で為替が100円になっても耐えられる利率は何%必要か、というシミュレーションです。スタート時点の為替レートにより、必要最低利率は変化します。みなさんが簡単に計算できるよう、単利でいきます。

スタート時点為替レート       必要利率

100円               0%

110円               1%

(10年X1%=10%なので、100円になっても耐えられる。以下同)

120円               2%

130円               3%

簡単に見当がつきますよね。上の利率は単利ですから、実は余裕があります。つまり120円スタートで2%の複利だと、償還時に為替が100円になっていても、若干おつりがくるということです。

現在為替が110円だとして、80円まで耐えられるようにしたいのであれば、

110-80=30  30÷10=3  ・・・ 金利が3%にならないと買えないことになる(実際は複利なので、もう少し少ない利率でも大丈夫です)

簡単ではありますが、こうしたシミュレーションをしながら、ご自分でご自分の耐久力と相談しながら、考えてみてください。

投資決断のポイントは、「林は何%なら決断するかではなく、すべてはトラさんの考え方や耐久力による」ということです。

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