ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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大塚家具はどうすべきか

2015年02月28日 | ニュース・コメント

  大塚家具が親子の醜い争いで揺れています。野次馬としては面白い見ものなので、高見の見物と行きましょう。しかし一言いいたいことがあるので、野次っておきます(笑)。

   私は10年ほど前に一度だけ大塚家具に行ったことがあります。その時入り口で会員のみだと言われ、驚いた覚えがあります。

  行った目的は2つ。一つは家具を見るため(いいものが安ければ買ってもいいつもりで)。二つ目は新宿の比較的新しい三越百貨店のビル1棟を丸々テイクオーバーするほどの今をときめく家具屋に興味を抱き、どんな店を構えているのかを見るため。

  しかし入り口で「うちは会員制です」と言われ、個人情報を含む会員申し込み書を書かかないと入れないと言われ腹が立ちやめようかと思いました。しかし家内からせっかくきたのだからと促され、ウソの住所を書いて入場しました。私はそうした「会員になれ、個人情報をよこせ」は大嫌いなので、その場限りで書けば安くなる時は、住所は町名まで書き、番地は正々堂々「800番地」と書くことがあります(笑)。うそ八百ですが、これまで書かれた方が気付いて怒るとか笑うということは一度もありませんでした(笑)。うちの町には800番地はないのですが、800番地に住んでいる方がいらしたら、すみません。なお買いたかった家具はもちろんIKEAで買いました(爆)。

 

  大塚家具の話でしたね。私は株主でもなく顧客でもありませんが、私がもし娘であの事態に遭遇したどうするか、余計なお世話をしてみようと思い立ちました。

   彼女のやり方はダメです。醜い親子喧嘩など誰も見たくもない。そもそも上場企業としてはガバナンス上サイテ―の出来事で、上場基準であの企業をはじけないことがおかしいと思います。それはさておきます。

   彼女は親父さんと同じ土俵でどっちが正しいかで戦いを始めてしまいました。その戦略が間違いなのです。株主の興味はこの企業がどうしたら再生できるかにあります。取締役を大勢従えた親父さんにまかせるほうがいいか娘にまかせるほうがいいか、ではぜんぜんないのです。娘がいくら紙に書いた中期計画を示し委任状で多数を得ても、実行する前に親父さんと大勢の取締役達が抜けてしまえば片肺飛行になってしまうかもしれません。しょせん営業のみの会社なのですから、顧客をつかんでいるベテラン社員がやめるのは、会社の価値を毀損します。

   私が娘ならこうします。どうせ絵に描いた餅の中期計画など示さず、まずは腕利きの企業再生のプロを連れて来ます。親子喧嘩ではなく、『再生のプロと古臭い親父のどっちを選ぶか』という図式を作るのです。その戦略こそ新しい経営を勉強しコンサル会社をやってきた経営者のすべきことでしょう。

   株主であればその図式を見て古臭い親父さんを選ぶことはまずないでしょう。親父さんも彼女もすでに一度自分が失敗しています。それを繰り返さないためにも、そしてなにより株主や顧客のためにも再生のプロが必要だと思うのです。そしてそれが彼ら親子の自分達の保有株の価値を保つなによりの方策でもあります。

 以上

 林 敬一 改め 林 研一でした(笑)

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21世紀の資本について

2015年02月26日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  フランス人でパリ経済大学教授トマ・ピケティの分厚い本、すいぶんと評判になっていますね。すでに解説書も山のように書かれています。お読みになった方、いらっしゃいますか。私はまだ読んでいません。本屋で手にはとりましたが、同じくらい分厚い本でも既に読んだ「国家は破綻する」ほどには、読む努力をしようと感じさせてくれませんでした。でも伝え聞く内容は、今回のシリーズ「戦後70年第2の敗戦に向かう日本」にも示唆の多い内容だと思われるため、私なりのコメントを試みます。

  よくもあれだけデータを収集したものだと数字ヲタクの私も頭が下がります。しかも各国の納税申告からのデータ収集が多いので、まだ経済統計がほとんどない古い時代でも収集でき、信憑性が高いところがミソですね。

   本のアイコンは、

r > g

資本の収益率(r)は歴史的に経済成長率(国民への分配)を上回ってきた。故に資本を持つものと持たざる者の格差は拡大の一途をたどる。なんとかしないと社会は不安定さを増す。

  本の9割はそうした数字の解析に費やされています。そして最後に彼なりの解決策を示しています。その主なものは所得税の累進性を強めることと、資産そのものに課税することなどです。もちろんタックス・ヘイブンを取り締まることも。

私は彼の考え方に基本的には賛成です。極端な不平等は税制などを通じて是正すべきでしょう。

   私自身が「21世紀の資本」について得た情報は立ち読みを除けば以下のとおりです。

 <トマ・ピケティ直接>

・パリ白熱教室、大学での3時間に及ぶ講義ビデオ(学生向けのためわかりやすく、質疑応答が面白かった)

・アメリカや日本のテレビによる直接インタビュー、合計1時間程度

 <間接>

・新聞での特集や経済誌の特集 (様々なコメンテーターのコメントが面白いが、お門違いも多い)

・ネットにアップされている主に批判的評論多数(玉石混淆)

・訳者山形浩生氏による反批判、プレゼンテーションがネットで見られます(的確だと思われるし、面白い)

   こうしてみると私もかなり時間は使っていますね。だったら読めばいいのにという感じを持たれるかもしれませんが、もともとデータ本の色彩が強いので、ダイジェスト版でも十分ではないかと感じています。と言ってもダイジェスト本も読んでいません。

   この本についてはずいぶんと手厳しい批判も多く聞かれます。評論をする人達は批判的に見ることが宿命づけられているので、しかたない部分もあるかと思います。でも批判されればされるほど、実は彼の意図は達成されるのです。何故なら彼はインタビューで「私の提供したデータで資本主義の現状をみんなで議論し直すきっかけになることがこの著書の最大の意図だ」と言っていましたから。

  あまりご存知ない方のために付け加えますと、彼はマルクス主義者ではなく、あくまで資本主義の信奉者です。

繰り返しますが、彼の本の内容は次の式で集約されています。

 r > g

 資本の収益率(r)は歴史的に経済成長率(g 国民への分配)を上回ってきた。資本を持つものと持たざる者の格差は拡大の一途をたどる。それは社会を不安定化するので、政策的に是正されるべきだ、というものです。

   私は彼の主張を大筋で支持しますが、数字ヲタクなので次の2つの点で少し違和感を覚えています。

 1.  gは単なる成長率ではなく、一人当たりの成長率にすべき

経済成長率が資本の収益率より高くなれば格差は縮小し国民は経済的に幸せな方向に向かう。一般論では正しいでしょう。しかし日本のように人口が減少している国では成長は難しい。しかし待てよ、『一人ひとりが今より経済的に恵まれるか否かは国の成長率ではなく、一人あたりの国民所得が上がっていけば達成できる』。つまり成長率がゼロでも、その時人口が1%減少していると、一人当たりはプラス1%になる。これからの日本を考えれば、それもありでしょう。

中国の成長率がいくら高くても日本より幸せに見えないのは一人当たりの所得は日本が中国の数倍もあるからです。逆に成長率が低い小さな北欧の国々が幸せに見えるのは、一人当たりの所得が日本の倍もあるからです。

なので、議論の主旨に沿えば g は単なる成長率ではなく、一人当たりのgに書き直すべきだというのが私の提案です。

 2.    資本の収益は我々も享受している

株主の「機関化現象」という言葉をご存知でしょうか。古きよき時代には個人の大金持ちが主な株主でした。今の韓国の財閥、戦前の日本の財閥、アメリカのかつてのロックフェラーやモルガンしかり。それがいまでは個人の株主比率は減少し、替わって金融機関・年金・生保・事業法人などの機関投資家が大半を占めるようになりました。日本の株式分布の現状を以下に示します。東証が昨年6月に発表した14年3月末の上場企業の株式分布です。

    金融機関; 27%

   証券会社; 2%

   事業法人; 21%

   個人;   19%

   海外法人; 31%

     合計; 100%

  海外法人を除いた全体を100とすると、株式保有の3分の2は法人が所有し、個人は3分の1です。ということは、資本からの収益を享受しているのは3分の2が機関投資家で、その中に我々の年金や投資信託などが含まれています。つまり資産家でない個人も資本収益をかなりの部分享受しているのです。銀行や生保が株の配当などで儲ければ、それも金利や配当の形で庶民にもある程度は還元されていますし、事業法人が配当や金利をもらえばそれも給与やボーナスで資産家でない個人に還元されます。

  日本の場合、株式からの収益は純粋に個人の大金持ちが享受している部分は目くじらたてるほど大きくない。それが株主の機関化の帰結です。そして株のキャピタルゲイン・ロスや不動産の価格上昇・下落を考慮すると、むしろこの20-30年くらいなら、資産家の資産増加率 r はマイナスである可能性のほうが大きいのではないでしょうか。

   日本で格差が大きな問題として浮上したのはバブル崩壊以降に成長率(g)が鈍化してからです。であれば、上記の私の推定は当たらずしも遠からずで、「21世紀の資本」どおりではない部分も相当程度ありそうです。

   だからといってトマ・ピケティの主張は日本に当てはまらないのではけっしてありません。低賃金や非正規労働の問題をそのままにしてよいのではなく、是非とも解決すべきだと私も思っていますし、金持ちの海外逃避による税金回避は世界的に包囲網を築き防止すべきです。

   トマ・ピケティの「21世紀の資本論」は興味深いデータを提供してくれましたし、今後の資本主義社会にとって政治課題の最重要部分であることに間違いはないと思います。


   以上、読んでもいない書評でした(笑)

 

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ぽんぬきさんのご質問への回答

2015年02月23日 | ニュース・コメント

  ぽんぬきさん、私の著書とブログをお読みいただき、ありがとうございます。そしてコメント、ありがとうございました。

  ぽんぬきさんの「将来の見通し」については、みなさんも関心を持つ問題だと思いますので、こちらの本文にて回答をさせていただきます。

>①アベノミクスによる円安株高はどうなっていくのか?という点と、②米金利による為替の変動はどうなるのか?という2点です。


それは私も含めて、どなたも知りたい点ですね。

>GPIFの資産として日本株保有率を上げ、今後も日経平均3万円台まで届かせようと政策に必死な様相が伺えますが

そうですね、かわいそうなくらい必死ですね。でもGPIFのポートフォリオシフトでは2万円はいけても3万円は無理だと思います。海外投資家が買い上げた13年の大相場での買いは15兆円でしたが、GPIFの余力はわずか5-6兆円です。

  ぽんぬきさんの以下の文章でわからない部分がありますので、できれば教えてください。その回答をいただく前ではありますが、私からのコメントを記します。

>年内中に予定通り米金利が上がれば、米国債が海外投資家より更に買われて円売りとなり、アベノミクス(と、一部の富裕層)が望む円安になると思われます。

この海外投資家とは日本人ですか?日本を含む世界の投資家ですか。

この米金利の上昇ですが、世界の安全資産を求める投資家はだれもがそのチャンスをうかがっていますので、簡単にどんどん上昇するとは思いづらいのです。それをまずみなさんにも向かって申し上げておきます。

>その際、日本株も短期売買目的で一気に買われ、日経平均2万円越してくるかもしれません。

短期売買ということは、例えば海外のヘッジファンドでしょうか?短期売買で儲けるためには、買った後はすぐ売却しますよね。それを日本人がうまく拾ってあげて儲けるのを手伝うのでしょうか?でないと株価は反落します。すでに日本株のPERは16-7倍になっていますので割高感が少しずつ出ています。2万円になるとさらに割高感が鮮明になってきます。


>しかし米金利が上がらず、据え置きの状況が続けばドル不安から円買い→円高反転というシナリオも考えられますよね。


ドル不安の意味がよくわかりません。いままでドル金利据え置きもしくは下げ続けましたが、不安はなかったですよね。米国景気の回復基調を世界の投資家は確信して、米株も米債券も買い続けました。ドル不安とは米国景気が一気に後退して起こるのでしょうか。私には考えづらいシナリオです。

>そうなるとアベノミクス以前のデフレ時代に戻る可能性もある。

アベノミクスは日銀と政府が一体化し財界が支持する大勝負ですよね。それが失敗したら日本は相当大きなダメージを受けますが、それでも円は上がるでしょうか。そのときは誰が円を買うのでしょう。

  例えばそれまでにぽんぬきさんや他の方々がドルや米国債を買っていたとしたら、アベノミクスの失敗でそれらを売却して円に戻されますか。

  私はアベノミクスは「最後の聖戦」なので、失敗は政府・日銀の信頼失墜、株価暴落、円も暴落すると見ています。そしてもちろん安倍政権が本気で手を付けなかった財政問題はより深刻化し、日本国債も日銀以外は誰も買わなくなると思います。

  少し前にも同様な議論がありました。それは「アベノミクスが失敗した場合でも、そのまま何事もなくなんとなく平穏もしくは停滞する程度だろうという」というご意見でした。その時の私のコメントも上記と同様で、相場と言うのは期待先行で上げたものは期待がはげると失墜する。決して平穏無事では済まない。これが私のこれまでの経験であり、世界が経験してきたことだと思います。

  もしこうした大実験で失敗しても、その後平穏無事が見込まれるのであれば、金融・経済政策はダメモトでどんどん実験すればよいのです。しかしこれまで新興国のハチャメチャな独裁政権以外にそのようなことをしたことはありません。その理由は、先進国の常識ではただでは済まないからだと思います。今後のギリシャを見ていれば、自ずと回答の一端は見えるのではないでしょうか。

  ついでながら横道に逸れますが、1月28日のニュース・コメントで私は「ギリシャはEU・ユーロから離脱など絶対にできない」、そして「ギリシャ問題など心配する必要はない」と言いきっていました。ギリシャの若い首相とかっこいい財務大臣が大見えを切った割には、返済延伸以外にはたいして得ることもなくお帰り遊ばされました。卵をぶつけられないことをお祈りいたします(笑)。

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戦後70年、第2の敗戦に向かう日本  その8 黒田発言、日本国債のリスクについて

2015年02月21日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  日銀黒田総裁のオフレコ発言の内容の一部がテレビで報道されてしまい、大きな話題になっています。最近の国債市場の変動に不安が募っている中での発言だけに、放ってはおけないニュースです。発言は先週の経済諮問委員会(首相も出席)の中でのオフレコ発言ですが、ご存知ない方のために報道元のテレビ朝日のHPからまず引用します。

 引用

先週の政府の経済財政諮問会議で、日銀の黒田総裁が日本国債の将来的なリスクについて言及したにもかかわらず、議事要旨から削除されていたことが分かりました。

(経済部・門秀一記者報告)
 前回の諮問会議は財政健全化がテーマでした。議事要旨の黒田総裁の発言部分、私が読んでも1分ほどです。しかし、実は自ら発言を求め、5分以上も日本国債のリスクなどについて話していて、そうした発言は議事録から削除されていました。出席者などによりますと、黒田総裁は、ヨーロッパで国債をリスク資産とみなし、銀行への規制を強化する議論が始まっていると説明しました。そのうえで、日本国債の格下げに絡み、「安全資産とされている日本国債も持っていることでリスクになり得る」などと述べ、財政健全化に取り組むよう訴えました。こうした発言はマーケットに影響を与える可能性もあるため、議事要旨から削除され、箝口令(かんこうれい)も敷かれたということです。
 日本銀行・黒田総裁:「財政について信認が失われれば、国債の価格、あるいは金利に影響が出る恐れがある。リスクがあることは事実でありまして、であるからこそ、政府は財政再建目標を決め、それに向けて着実に前進しておられると思う」
 20日の予算委員会でも論点となった財政健全化の問題は今後も大きな焦点となりそうです。

引用終わり

 

  この発言は今後様々な解説がなされると思いますが、私は大事な点は以下の点だと思っています。

1. 日本国債市場のボラティリティ(変動幅)がかなり拡大している中での発言のため、今後さらに動揺が走る可能性がある

 2. オフレコにして議事要旨から削除すること自体が日本国債のリスクの高さを表している

 3. 「安全資産とされている日本国債も持っていることでリスクになり得る」と言い切っているが、一番保有しているのは他ならぬ日銀で、そのトップが中央銀行の信認リスクを認めた

   面白いのは日経新聞の扱いです。他社スクープということもあるためか、本来なら一面で取り扱われてもよいほどのニュースですが、2面の「真相深層」というコラムで、財政に関する政府と日銀の蜜月に転機が訪れているというストーリーの中で少し取り上げただけでした。大本営のご意向に逆らわない配慮なのでしょうか。

   このニュースが出る前に私はある方から「海外投資家が日本国債をかなり買っているというニュースがあったが、何故か」という問い合わせを受けました。まだ回答をしていませんでしたのでこの場で回答をさせていただきます。

   海外勢の日本国債買いは私の見るところ「黒田プット」で儲けるためだと思います。クロちゃんが就任してほどなく私は「株式にしろ債券にしろ海外勢が買いまくる最大の根拠は下げに対しては日銀が買い取りで保証してくれるプットが付いているからだ」というコメントを書いています。これはリーマンショックから立ち直る際、FRB議長であったバーナンキが住宅ローン証券化商品を大量に買い取る様を指して言われた「バーナンキプット」をもじったものです。要は相場で負けそうになったらバーナンキに売ればいいということですが、日銀のクロちゃんはバーナンキより爆食するので負けることなく儲けられるということです。

   しかしここにきて債券相場は怪しくなっています。今年1月に10年物が0.195と史上初の0.1%台を付けて価格がピークを打ち、その後はむしろ不安定さを増し新規国債の発行で十分な需要がないまま不調に終わるなど、大きな変調きたしています。海外投資家も遂にクロダプットが付いていてもこれ以上は儲けられないと判断し、一部が撤退を始めているのでしょう。

 

  オフレコ発言の内容でもわかるように、彼は財政のリスクや国債保有のリスクを十分に理解しています。とにかく頭脳は極めて明晰な方ですから。しかし彼は日銀の力量というよりも自分自身の力を過信していたのです。箝口令で人の口に戸が建つと思っているくらいですからね(笑)。

   「2年で、2倍、2%」というバズーカ砲を発射するのに、まさか2年ぎりぎりで2%の物価上昇を達成できるだろうなどと思ってはいなかったはずです。当然もっと余裕しゃくしゃくでできるはず。「うまくいけば1年、悪くても1年半では達成可能で、あとの半年しゃ寝て暮らす、いや、ニッコリ笑って出口へ向かってやるさ」と思って始めたに違いありません。

  発射後1年近くまでは彼も「しめしめ」と思っていたでしょう。それが1年半後にまさかの真っ青、2年では降参となります。私がクロちゃんよりもっと強くその発言と考え方を批判したリフレ派代表で副総裁の岩田規久男氏は、すでに「わるうございました」と白旗を掲げています。

   では今後国債市場はどうなるのか。私は一気に総崩れはないと思っています。もう少し金利が上昇すればまた海外の短期勝負のヘッジファンドが戻り、クロちゃんにプットしてしこたま儲ける。そうしたことがしばし続くのでしょう。それが本格的に変調を来すのはクロちゃんが言うように「ヨーロッパで国債をリスク資産とみなし、銀行への規制を強化する」、あるいは日本国債の格付けがさらに低下する。そして国債の引き受け手に困る状況になってからだと思います。

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日経平均、15年ぶりの高値

2015年02月20日 | ニュース・コメント

  本日の日経新聞朝刊のトップは

「日経平均15年ぶり高値」というタイトルでした。

テレビのニュースなどでもしきりに明るいニュースとして流されていました。しかも日経では久々にトップにしては珍しくカラーで、アベチャンとクロちゃんが15年間の日経平均のグラフとともにお出ましになり、「日経平均は様々な危機を乗り越えた」と太字で書かれています。そして記事の小見出しは

・企業の構造改革が原動力

・攻めの経営にカジ

というものでした。株式投資をされている方には、誠にご同慶に堪えません。

   しかし私の様に投資を国際スタンダードで見て数字をしっかりと追い、ちょうちん記事を書かない者にとってこのタイトルはイケてません。しっかりと水を掛けてあげます(笑)

  私に書かせると記事は以下のとおりになります。

 タイトル;「日経平均、15年もかかってやっと元に戻っただけ」

小見出し;企業は10年以上何をやっていたのか

 

  投資家にとって15年でリターンがゼロというのは許し難いことです。私の著書では「投資家は常にリスクフリー・レートを意識し、リスクを取ったらそこからナンボ上に行くのかが最低限の判断基準だ」という投資の国際スタンダードを掲げています。

  それに倣い日本のリスクフリー・レートである日本国債に100万円を投資したとして結果をみてみると、

 2000年1月初めの15年物金利;2.164%

単利で15年を運用した場合の元利合計;134万円(日本国債は複利運用できません)

   とまあ、あの超低金利の日本国債の単利運用ですら34%も利益があるのに、「リスクを取ってゼロとは何事か」となります。ここでは日本国債のリスク議論は棚上げします。

  そこでこの記事を国際スタンダードでもう一度書き直すと、

 「日経平均の15年のリターンはリスクフリー比較でマイナス25%だった」

 となります。(マイナス34%ではないことに注意しましょう。計算は100÷134=0.75)

   何故こんなにしつこく書くかと申しますと、「リスクを取る」という意味をみなさんにしっかりと考えていただきたいのです。「リスクは取らなくても最低のリターンはある」ものなのです。この場合で言えば34%もリターンがあるのです。

  そして日本においては「ハイリスク・ハイリターンなどという証券会社の謳い文句はウソだらけだ」と言うことを申し上げたいのです。

  ちなみに同時期に米国債の20年物(15年物のレートはない)で15年間運用したとするとドルベースで1,000ドルが2,790ドルになり、為替は102円が119円だとさらに+16.7%になりますので、利益合計は+235%です。つまり100万円が325万円になっています。

いいですか、これは「リスクフリーですぞ」みなさん。

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