ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ウォーレンバフェットの投資法

2011年06月30日 | 資産運用 

 では素晴らしい実績を上げ続けている、バークシャー好業績の秘密に迫りましょう。といってもそれは秘密でもなんでもありません。好業績は、当然のことながら彼の投資手法の確かさからきています。そしてその投資手法は彼自身が明かしているように、ベンジャミン・グレアムという先生の教えから来ています。彼の大学時代の先生であり、彼が仕事人生の初期にファンド運営の手ほどきを受けた教授兼投資ファンド経営者です。

 まずはバフェットがバークシャーの年次報告書の中の「会長の手紙」に書いている投資方針と投資のいましめを見てみましょう 

投資方針
・ 会社の「本源的価値」を重視する
「十年単位」でみて収益性が見通せるものに投資する
・ 信頼できる「経営者」が経営している会社に投資する
・ 投資先の十分な分散により、常に「高い流動性」を確保する

投資のいましめ
・ 将来性のわからない会社、理解できない会社には投資しない
・ 将来性がありそうでも、自動車・飛行機・テレビなど、競合が激しくなり消耗戦になりそうな産業には投資しない

 キーワードは、「本源的価値」、「十年単位」、「経営者」、「高い流動性」です。
 
 この中で最も重要なのが、そして一目見ただけでは意味不明なのが、会社の「本源的価値」の重視です。これについて解説します。

 バークシャー・ハサウェイのお話の最初の部分で、彼が会社の評価に当って、「評価は簿価(Book Value)の成長で測る。何故ならそれが会社の本源的価値(intrinsic value)を一番よく表すからだ」と言っているのを紹介しました。一方、私が株式の章の最初に、「株には本源的価値がある」ということをお話ししました。それは会社が過去の利益を積み上げた純資産を指している、という説明を差し上げました。私とバッフェトでは、本源的価値の定義が異なるようです。私はすでに会社が手にしている実現済みの価値を本源的価値と表現し、バフェットは会社の潜在成長力を本源的価値と表現しています。

 でもこれでは何のことかわかりませんよね。次回はそれを詳しく解説します。
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株式投資について その7 株式投資で勝っている人に聞く

2011年06月27日 | 資産運用 

 前回までにPBRやPERという指標は、どうも決定打ではなさそうだ、というお話をさしあげました。

 発想を変えます。もし株式投資で勝ち続けている人がいたら、その人に聞くのが一番かもしれません。

 古今東西、株式投資で圧倒的に儲け続けている人は、私の知っている限り一人だけです。株式投資の神様として私が崇めたてまつる、ご存じウォーレン・バフェット様です。その昔ピーター・リンチという人もいましたが、過去のひとです。

 Q;ウォーレン・バフェットって?
  A;えっ、バッフェト様をご存じない?

 簡単に紹介します。「アメリカの良心を代表する投資家」と言われている投資会社経営者です。

 彼の経営する投資会社バークシャー・ハサウェー(株式略号BRK)は、設立以来アメリカを中心とした多くの企業に投資して、それらを自分の傘下に置いて成長を続けています。まずバークシャーの投資リターンを見てみましょう。

 バフェットは会社のアニュアル・レポート(年次報告書)の中で毎年株主に宛てた「会長の手紙」を出しています。その冒頭には必ず1964年以来の各年度ごとのリターンが、S&P500(米国株式の指標)との比較で載せてあります。バークシャーのリターンとは、傘下の会社を決算上連結した純資産がどれだけ増えたかの実績で、株価そのものではありません。株価はこの純資産と将来の収益見通しにより上下します。会社業績の大事な指標の一つです。この内容はのちほど詳しく説明しますが、1964年から2010年末までの46年間の累計実績をここに示しますと、

             1964年―2010年末累計上昇率  同年率換算
S&P500               6,262%          9.4%
Berkshire Hathaway Inc     490,409%         20.2%

(注)「会長の手紙」のURL;http://www.berkshirehathaway.com/2010ar/2010ar.pdf
 
S&P500の累計上昇率6,262%に対して、バークシャーは49万パーセントです。途中のカンマは千の位のカンマで、小数点ではありません(笑)

NY証券取引所の全体指標(500種の時価総額)であるS&P500が46年間で62倍になっているのもすごいことですが、バークシャーは4,900倍です。年率複利換算ではS&P500が約9%、バークシャーは倍以上の約20%です。ただし、もう一度申し上げますが、バークシャーの数字は会社の株価ではありません。株価の成長は、さらに上を行っています。
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株式投資 その6  PER(株価収益率)は指標になるか?

2011年06月24日 | 資産運用 

 ここまでの説明で、株には本源的価値があるのですが、それが株価決定の決定的な基準ではなさそうだ。何故なら実際の株価は将来の収益を見据えて決まる度合いが大きいから。というお話をさしあげました。

企業の生みだす収益を見ている指標なら、PERという指標があります。

 PERのP(Price)とは株価そのもの、E(Earning)とは純利益のことで会社の産み出すキャッシュフローです。そしてR(Ratio)はその2つ数値の倍率です。つまり株価が純利益の何倍にまで買われているかを計算しています。このやり方も、基本は企業が将来生み出すキャッシュフローを予想し、それを元に株価との倍率を計算しているので、考え方は債券価格の計算と同様です。債券の場合は将来のキャッシュフローが確定しているので、予想は入りません。でも債券価格の計算は、将来の償還までのすべてのキャッシュフローを、現在価値に割り引く、という面倒な計算がひつようです。PERの計算は債券よりも簡便です。どこが簡便なのかといいますと、「割引く」という作業を省略しているところが、簡便なのです。

具体的な例で説明します。ふたたびYAHOOファイナンスを見てみましょう。
ふたたび、6月24日の今度はトヨタの株式欄を見ますと、

株価     3.285円
PER(実績)  25.24倍

と出ていました。

この場合、「現在の株価は前年の純利益の実績から見ると、約25倍に買われている」という指標です。このYAHOOファイナンスのPER表示ですが、カッコのついた(実績)が曲者です。
 本来のPERによる株価評価は過去の実績利益に対する倍率ではなく、将来の利益予想に対する倍率で示されるべきですから、実績PERの指標は非常にミスリーディングです。本来であれば今後の利益水準を予想して、現在の株価はその何倍に買われている、とするべきです。それに、例えば前年の純利益がマイナスだったりすると、実績ベースのPERは指標として使えません。実はソニーをまた使おうと思ったのですが、ソニーは前年の実績が赤字だったので、使えませんでした。

 ですのでこの指標も、インターネットに出ている倍率数字は株価評価のおよその目安として捉えるべきで、決定打ではないようです。

まとめ
PERは一つの指標だが、これも決定打ではない

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株式投資について その5

2011年06月22日 | 資産運用 


実際の株価は、会社の解散価値の10分の1にまでになってしまうという事実があると、それを表すPBRに果たして株価の指標性はあるのか?
つまり純資産価値に株価下支えの力があるのか、かなり疑問です。

 では逆に解散価値を大きく上回って買われている銘柄はあるのか?

 またYAHOOファイナンスを見てみましょう。あります、あります。最高は196倍、100倍超えが2銘柄、10倍超えになると26数銘柄もあります。本源的価値のはずが、下支えもあまり期待できず、天井知らずに買いあげられることもあるとなると、このPBR、株価の指標性にはかなりの疑問符が付きます。

Q;何故本源的価値から上へも下へも大きくかい離するの?

A;それは、本源的価値は過去の経営実績の蓄積だからです。利益を積み重ねて、それが純資産を作っていきます。実際の株価はその純資産をベースにはしますが、むしろ将来の経営によって会社の利益がどう変化するかを見ています。なので、本源的価値からかい離するのです。でも10分の1だとかいう数値は、決算に大いに疑問ありです。

 株のお話はまず、株には本源的価値があるか、というところからスタートしました。そして株には本源的価値がありますが、本源的価値は過去の実績の集積で、株の取引価格はそれとは別に会社の将来の経営見通しによって動いているのではないか、という見方をお示ししました。

 次回はそれに見合う指標をさぐってみます。

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株式投資について その4

2011年06月21日 | 資産運用 

 1株当たりの純資産価値と実際の株価を比較するのが、PBRという指標です。

最近の上場企業の株価は本源的価値の指標であるPBR1を下回って取引されている株が、たくさんあります。先週の日経新聞によると、11年6月時点では上場株式のちょうど半数が、1倍以下の値で取引されているそうです。つまり割安です。


 東証の上場銘柄で、その実際の数値を見てみましょう。

インターネットで「YAHOOファイナンス」を見てみます。ソニーの株式欄を見てみましょう。

ソニー 6月20日の株価 1,948円   PBRは0.76

 という具合にソニーは純資産価値=解散価値を24%下回る株価がついています。

 解散価値について、ちょっと解説します。会社の事業をやめて社員を解雇して解散します。退職金を払って残った預金・現金や土地・建物・機械・製品在庫などが財産として残ります。もしかすると退職金を払うのに、土地くらいは売却して現金をつくらないといけないかもしれません。退職準備金は会計上はある程度計上されています。それでも残った財産があればそれを残余財産といいます。その残余財産が解散価値と呼ばれます。

 ソニーも買収して解散すれば、24%の儲けが出るほど割安だ、という株価なのです。

 YAHOOファイナンスの株式欄には「株式ランキング」というページがあり、PBRのランキングを見ることができます。それを見ますと、最低の倍率はなんと0.11倍です。株価が本源的価値の10分の1でしか取引されていないということです。そしてその0.1倍台ですら20銘柄もあります。割安も割安、大バーゲン・セールですが、何か危うさを感じる安さです。つぶれることを予想しているのでしょうか。あるいは会計上純資産として計上されている資産の内容に、疑義を感じているのでしょうか。いずれかだと思います。

 PBRが0.11の会社とは、その会社を買収して残余財産を売却すると、0.89の売却益が残るということです。計算は、

1-0.11 = 0.89

つまり、0.11の会社は、買収して解散しろ!そうすれば瞬時に約9倍の儲けが出る、という計算ができるのです。

 それを実際に実行しているのが、よくハゲ鷹と呼ばれる買収ファンドです。墓場のダンサーなどとも呼ばれ、死臭を求めて徘徊しています(笑)


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