ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ホンコン在住のバンカーの話し

2015年04月26日 | 資産運用 

  連休がスタートしましたね。みなさんは旅行など計画されていますか。私は八ヶ岳山麓に3日間だけ旅行します。お気に入りのペンションに宿泊して、のんびりと過ごします。

  さて講演会が終わったところで、10年以上ホンコンに在住し投資アドバイスをしている友人Kさんとゴルフをする機会がありました。このところの日本人の資産家の海外での動きについて教えてもらうことができましたので、その情報をみなさんにお届けします。

   私には3人ほどホンコンにいる日本人のバンカーの友人がいるのですが、その中でKさんは銀行や証券に属さず、独自の投資顧問を営んでいる方です。顧客の85%は日本人でその他は現地の中国人です。

    まずは海外で資産運用をしている日本人の一般的動向について聞きました。一問一答は以下の通りです。

Q;日本の税務当局の「海外保有資産5千万円以上の保有者は税務申告せよ」の指導で日本人の動きに変化はありましたか。

A;大きな変化はない。減るというインパクトはあまり感じない。むしろ日本のリスクを意識する人は増加していて、私の商売は順調です。

Q;日本の何がリスクと感じているのでしょう。

A;もちろん累積した財政赤字の大きさだ。どこかでおかしくなると感じているし、アベノミクスには懐疑的で、むしろリスクを大きくしていると感じている人が増えているように思う。

Q;ということは、日本人の新規口座開設は続いていますか。

A;続いている。ホンコンではかつて日本人をターゲットにツアーを組んで口座開設をしに来て、現地の大手銀行が日本人を配置してそのサポートをしていたが、最近はそうしたサービスを停止しているので、増加数は多くはない。

Q;海外での口座開設がしにくくなったといわれていますが、そうはなっていないのでしょうか。

A;一般的にはかなり困難になっている。日本語しかできないと開設は無理だが、ホンコンでは英語ができれば大きな支障はないため、相変わらず続いている。

Q;日本ではこのところ株価が上昇しているので、株式に目が行っているようですが、そちらでの投資対象はどんなものが多いのでしょう。

A;株にシフトするような変化はあまりない。多額の資産を保有している人は常に債券をメインに株式も運用していて、構成比を積極的に変化させようとする気配はあまり感じない。もともと日本のリスクを避けて比較的安全な外貨建て運用を心掛けている資産家が多いためかもしれない。

Q;中国株がかなり上昇していますが、その他の新興国ものも含めて投資動向はどうですか。

A;私の顧客は新興国ものに手を出す人はほとんどいない。私は中国が安全な投資先とは思っていないので、お薦めもしていない。

Q;債券ではどんな投資対象が多いのでしょう。

A;日本国債はなし(笑)、米国債は大いにあり。しかしイールドが低いので、社債などを織り交ぜている。個別の社債は売買がしづらいので、債券でもインデックスでの投資が多い。中には比較的安全性の高い銀行のイールドの高い劣後債を直接買うこともあるが、それはかなりの資産家。

Q;投資先の通貨は。

A;米ドルがほとんどで、かつてのようにユーロを対象にする人はいない。豪ドルは多少新規もある。高金利通貨は皆無だ。

Q;各国の租税回避防止策が本格稼働していますが、影響は。

A;ある。一番は海外での運用目的が租税回避ではなくなったこと。スイスをはじめ、オフショアなどでの運用などがしづらくなっているので、租税回避ではなくリスク回避目的での海外運用になっている。個人的にも今後租税回避は世界のどこでも無理だと感じる。

  Kさんとの一問一答はこのような感じでした。今回の話のポイントは海外での資産運用の目的が「租税回避ではなく、リスク回避に変化している」という部分です。そうした動きで突出しているのはギリシャ人で、彼の知る限りオーストラリアのメルボルンにはギリシャの大金持ちが集まって資産家コミュニティーを作っているとのこと。本当の資産家はギリシャをすでに捨て去っているようです。

  以上、ホンコン在住の友人のお話しでした。

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垣間見たフランスとスペイン

2012年07月27日 | 資産運用 
 2週間弱のフランス旅行から戻りました。

  フランス滞在中にユーロがなんと94円台に突入というニュースが流れました。日本からの旅行者にとってはとてもラッキーです。今回は円高満喫ツアーと円高阻止ツアーの側面をもっていたつもりなのですが、我々のようにみやげ物もほとんど買わない観光客は円高阻止には全く貢献できなかったようです(笑)。

  今回の旅行は全くの観光旅行でしたので、フランスやEU経済の状況をうんぬんするほどではありませんが、多少なりとも肌で感じるものがありましたので、感じたままを記してみることにします。

  フランスは夏休み中ということもあり、特段の政治日程もないためかなり平穏でした。オランド大統領も自分の出身地をツール・ド・フランス(世界最大の自転車競技)の一行が通過するのに合わせて地元入りし、それが大きく報じられほどのどかな状況で、危機感を感じさせる様子はありませんでした。

  ユーロ問題は日本での報道のように連日トップの扱いというほどでもなく、一般人の関心は世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランスがトップで、次はピレネー山脈の山火事、その後に経済ニュースの中でユーロ問題が出てくる程度です。ただテレビで放映されたユーロ安問題の特集ではスペインが取り上げられ、銀行に対する支援が決まったものの、経済状況は好転していないというトーンでした。

  その中でスペインの人々にインタビューをしていましたが、回答者全員が雇用問題の深刻さを口に出して、仕事がないことを嘆いていました。特に失業率の高い若者は深刻です。

  今年大学を卒後した人へのインタビューで気になったことがありました。それは「スペインでは仕事がないからアメリカに行って、IT系の仕事を探すよ」と言う回答でした。やっと彼らも外国へ出る気になったかということと、EUの自由化は域内の移住を伴う自由もあるはずなのに、ドイツに行くと言わずに、アメリカに行くと言うのです。どうやらこれは言葉の問題がありそうです。

  今スペインでは英語の他にドイツ語の勉強をする若者が相当増えていて、語学学校で生徒が一番増えているのがドイツ語だそうです。今から勉強しても仕事で使えるまでにはしばしかかりそうに思えますが、日本語とドイツ語の差ほどはないので、こうした動きは今後ジワリと効いてくるのでしょう。スペインやギリシャでも仕事も求める若者が本気で移動しだすと、ヨーロッパも統合のメリットが本格的に出てくるのかもしれません。

  旅行の途中、スペイン国境のバスク地方に行ったついでに、スペイン国境を越えてサンセバスチャンという大西洋岸の街に行ってみました。レンタカーで高速道路を走っているといつのまにか国境を越えていました。パスポートの検査もなにもなしです。

  サンセバスチャンという街は中世にはヨーロッパ中のキリスト教巡礼者が集まるところでしたが、今は海辺の国際的リゾートです。失業者があふれるスペインなどという風情は全くありません。街は観光客も多いため活気にあふれ、老人が多いフランスのリゾートより若い人が多く、また地元の子供がどこにでもたくさんいて楽しそうに遊ぶ風景は、財政問題などどこ吹く風という感じでした。

  フランスで訪れたパリやツールーズという地方の大都市でも、EU問題どこ吹く風というのは同じです。ツールーズは航空機メーカー、エアバス社の本拠地です。今回はエアバスの工場見学をすることができました。この会社はもともとヨーロッパ各国が協力し、国際的コンソーシアム(共同プロジェクト)としてアメリカの航空機産業に対抗するため70年代に設立された会社ですが、世界でも抜群の競争力を持っています。この会社のありかたこそ、EUという発想の原点というべき会社で、拠点十数カ所をヨーロッパ中に置き、繁栄を誇っています。

  機体の部品は仏・独・英・伊・蘭・西・日などで分散して作られ、主にツールーズやハンブルグで飛行機に組み立てられています。見学した工場の大きさはサッカー場が22個分も入る大きさとのことで、巨大なエアバスA-380(500人―800人乗り)が3機組みたてられている最中でした。ヨーロッパにおいてハイテク製造業分野で競争力を持つのはエアバスが代表的ですが、今後統合のメリットを活かす産業をさらに生みだすことがEU成功のカギになると思われます。

  そのためには労働力の流動化は不可欠で、最近ユーロに加入しつつある東ヨーロッパの国々からの安い労働力を得れば、統合のメリットを加速することが可能かもしれません。そして財政危機に見舞われ、失業が大問題となっているスペインやギリシャからも労働者が移動してくることで、さらに活性化されるのではないでしょうか。

  EUは統合メリットを打ち出せる前に財政問題のデメリットが突出してしまいました。しかし今回の大波を乗り切れば、再生の可能性は十分にあるということをエアバス社は教えてくたようです。

  エアバス欧州連合の発展とスペインの若者の海外就職、いずれも息の長い話ではありますが、世界経済のためにも是非推進してほしいものです。
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林の予想は、どの程度当たっているか、怖いけど投票ください

2012年07月08日 | 資産運用 
  来週末から2週間の予定でフランスに観光旅行しますので、新シリーズは帰国後の8月に開始いたします。

  今回のフランス旅行はスペイン国境のピレネー山脈のバスク地方がメインです。それに加え大好きなパリにも何日か滞在します。なんでそんな山奥にわざわざ行くかと申しますと、旅のメインの目的がツール・ド・フランスという自転車競技を観戦することにあるからです。

  ツールはフランス中を3週間にわたって3千キロくらい走ります。自転車のツーリングは日本でもポピュラーなスポーツになっていて、街中でもレーサーのような格好で走る人をよく見ますが、世界一の自転車競技とはいえツールを見にわざわざフランスまで行くとなると、かなりオタクっぽいですよね。

  この趣味、実は家内の趣味なんです。自転車といってもプロは平地だと平均速度は50kmくらいで走りますので、上り坂で見ないとゆっくりと選手をみることができません。ですので山岳地帯の観戦が面白いのです。レンタカーをして何日間か観光しながら観戦し、最後はパリのゴールも見るつもりです。9人がチームを作り全部で22チーム、約200人が走るのですが、日本人は今回もたった一人の参加です。彼、新城選手は4日目の区間で敢闘賞をもらいました。日本人としては大変な快挙です。彼が最後まで完走してくれることを祈ります。

  さて、今回の本題です。

  昨年の本の出版から1年ほど経っていますので、果たして私が本の中で言っていたこと、そしてブログで言っていたことがどの程度当たっているか、どの程度間違っているか検証をしてみましょう。著者にとってこうしたことをするのはとても厳しいことですが、避けて通ることはできないと思います。

  著書の内容の基本部分は債券投資のノウハウですので、その部分はあまり予測的なものはありません。ですので主に経済や相場の見方がどうだったかの検証になります。

  どんなことを予測的に言っていたかを以下に箇条書きにしながら検証してみます。まず私自身の採点を・・・のあとに文章で付けますので、みなさんは番号ごとに○、×、△で星取表をつけてみてください。それをどうぞ遠慮なく、コメントにアップしてください。

  番号と内容をコピペしていただいても結構ですし、番号と○×△でもけっこうです。よろしくおねがいします。判定時期になっていない場合、「時期尚早」もありですね。

例. 1. 時期尚早 2.○ 3.×



では項目と林のコメントです。太字項目、細字が林のコメントです

1. 日本経済は円高・デフレのトラップから抜けられない・・・政府があがこうが日銀があがこうが、抜け出られる兆しは見えない

2. 先進国では米国経済と豪州経済は相対的によいが欧州はダメで為替も投資に値するのは米ドル・豪ドル程度・・・対円で見ているとこの二つの通貨の価値はほとんど変化はないのですが、対ユーロ・ポンド・新興国通貨などで見ると、実は価値を上げています

3. 欧州は何度でも危機が繰り返され、安定は程遠い。ただしユーロ発の恐慌などこない。またギリシャはユーロに留まり、イタリア・スペインの問題は銀行問題など限定的で、ユーロを壊滅させるような問題ではない
・・・ギリシャは留まる選択をし、スペイン、イタリアと続けて市場はヒットしようとしたが、実際には先週の政策合意で打ち返され、恐慌論は引っ込んだ

4. 新興国は経済も相場も振幅が激しく、シロウトが手を出すべきでない
・・・ブラジル・レアル、南ア・ランド、トルコ・リラ、いずれも価値を下げ株式相場もかんばしくない

5. 商品の代表としてのゴールド(金)には投資すべきでない
・・・昨年の1,800ドル台から1,600ドル前後に程度に低下。それだけを見れば○だが、本の内容のとき金価格は1,500ドル台でそれでも投資すべきでないと主張していた

6. 世界が震撼するときに売られるのはすべての株、新興国の債券、買われるのは米国債・・・この図式に変化はないが、同時に日本円と日本国債も買われている

7. アップル株はバブル、バークシャー株はバブルでない
・・・アップルは高いと言った辺りが高値で若干低下したが判断は時期尚早。ただアップルのテレビが出ると『もうひと山か』と申し添えている。バークシャーはそこそこ価格を保っている

8. 日本の不動産は長期的にはダメ・・・最近またJ-REITの復活を一生懸命はやしたてているが、その程度で不動産市況は戻らない。路線価も連続低下

9.アメリカのREITは勝負するなら価値あり
・・・現状でも安定的なパフォーマンスを継続している

10. アメリカ経済は先進国の中では最も安定的で不安はない・・・判定は時期尚早だが、6月初旬欧州問題といっしょこたにした恐慌再来論があったが、その議論は大きく後退した

11. 複雑怪奇でリスクの高い『通貨選択型ハイイールド債券投資信託』などに絶対投資してはいけない・・・投信業界を挙げて問題化しはじめ、業界が反省期にはいりつつある

12. ほとんどが元本割れしている毎月配当型投信などに投資するくらいなら、自分で自分に配当しろ・・・上記同様に元本割れが問題化しつつあり、私の主張『配当は1万円を超えた部分ですべきだ』という議論が出てきた

13.米国債金利と為替動向について、米国債金利は比較的短期の景気動向に左右され、ドル円レートは比較的長期の構造要因に左右される。80円を切るドルを手当てしておき、米国債金利が高くなったら投資するのはよい戦略だ・・・この示唆をしてのは春だったので判定は時期尚早だが、ユーロ発の恐慌論から米国債が一方的に買われて金利がより低下している。10年物の金利の下限は特に予想していませんでしたが、1.5%になるとは正直心の中でも思っていませんでした

  以上、思いつくままに予測的な部分を書きだし、判定を加えてみました。判定に異論、反論、同意、同情などあればなんでも歓迎します。また他にも挙げるべき項目で私が忘れているものがあれば是非ご指摘ください。自分自身の勉強のためにもこうしたチェックは今後も続けたいと思っています。みなさんのご協力をお願いいたします。
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CD版、資産防衛セミナーのお知らせ、忘れ物!

2012年07月01日 | 資産運用 

すみません、URLを貼り忘れました。

下記の日本経営合理化協会さんのサイトでご覧いただけます。

http://www.jmca.jp/prod/1956.html

よろしく
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CD版、資産防衛セミナーのお知らせです

2012年06月30日 | 資産運用 

日本経営合理化協会さんのCD版セミナー、6巻の案内用サイトが立ち上がりました。

タイトル;「危機対応へのオーナー社長の資産防衛」

サブタイトル;会社と社長のお金を守る法


個人の資産防衛の話はあったとしても、会社の資産防衛の話はかなりユニークのようで、協会の方も他では見ないと言っていました。


まだ仮のサイトですので、トラックバックはのせません、本サイトが立ち上がったら載せるつもりです。

仮とないいながら、6巻のセミナーの内容がかなり詳しく書かれていて、私の講話の音声も一部聞くことができます。お試しください。

このブログをご覧の方に、実際の予約販売に先行してご覧いただけるよう、以下にURLを載せます。

実際の販売開始は7月中旬の予定だそうです。

価格はCD6巻、各CDは1時間くらい。20ページほどのテキスト付きで、なんと4万2千円といい値段です。6で割ると1回のセミナーが7千円、と考えると割高感はさほどでもないかもしれませんね。

会社経営者用のため、会社のバランスシートの再構成など、かなり専門性の高い話題が入っていますが、なるべく易しく解説しています。10年ほど企業買収と買収企業の経営をしていた時の経験が、大いに役に立っています。

みなさんのお知り合いの方で会社経営をされている方がいらしたら、是非お薦めして見てください。

日本経営合理化協会さんは会員向けがメインですが、一般の方にも販売するそうです。ただし会員向けと一般向けで価格は異なるそうです。

以上、お知らせでした。
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