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日本経営合理化協会での講演内容 第2回 日銀は大丈夫か

2022年11月17日 | 大丈夫か日本財政

  今回は講演会内容の続き、二回目です。

  一回目講演内容は、日本財政を議論するには予算でなく決算を見る必要があるということをお知らせしました。毎年補正予算を組み、予定された赤字国債の発行額がこの3年間いつも予算平均の2倍の80兆円にもなっていること。年間の国債発行額が借換債を含め200兆円を超えてしまっていることも数字で示しました。

 

  本年度の予算も第一次の補正予算に加えて第二次が組まれ、すでに30兆円を超えています。もちろんその財源は赤字国債以外にありません。

  それでも「日本は大丈夫、日本財政の破綻などない」ということを声高に主張する人たちがいます。

  アメリカではMMT理論=Modern Monetary Theoryなどという怪しげな新セオリーを唱えていましたが、最近は根拠がないと批判を受け、すでに退場させられています。

  日本ではその急先鋒は高橋洋一氏です。その内容は、「日銀はいくらでも国債を買えるし、国債という資産をしこたま持っているので、最後は債務超過の国と合併することで資産と債務を帳消しにできるという愚かな議論を展開しています。講演内容の二回目は、このナンセンスな議論を数字で完全否定することにします。それが日銀の危うさも説明することになるからです。氏の最近の著書は、

「財務省、偽りの代償 国家財政は破綻しない 」(扶桑社新書)、 22年4月

まずこの方のそうそうたる履歴をウィキペディアから引用します。下線は無視してください。

理財局資金第一課資金企画室長プリンストン大学客員研究員内閣府参事官経済財政諮問会議特命)、総務大臣補佐官内閣参事官内閣総理大臣補佐官付参事官)、金融庁顧問、橋下徹市政における大阪市特別顧問菅義偉内閣における内閣官房参与経済・財政政策担当)などを歴任した。」

  こうした経歴の方の議論を頭ごなしに否定するのですから、普通なら相当な覚悟が必要ですが、私は無名の「資産運用コンサルタント」ですから、恐いものなし(笑)。

  高橋氏の議論は、本人も言っているように「政府・日銀は打ち出の小槌をもっている」というものです。彼はきっと日銀のバランスシートを見たことがないのでしょう。ではそのバランスシートを簡単に解説します。

 日本経営合理化協会は中小企業経営者の方がメンバーになられているので、会計内容をみなさんよく理解されていて、私の話を簡単に納得していただきました。日銀のバランスシートの左側=資産側には日本国債が530兆円ほど計上されています。その他の資産を合計すると736兆円です。右側の負債にはその資産を購入するために負った負債額が預金という項目で550兆円計上されています。ご覧になりたい方のためにURLを貼っておきます。

https://www.boj.or.jp/about/account/zai2205a.htm/

 

  「高橋氏のバランスシートでは、負債の代わりに「打ち出の小槌」と書いてあるに違いない」と講演中に冗談を言ったところ、講演会後に出席者の方がこんな話をしてくれました。

「前回のセミナーは、高橋洋一氏でしたが、彼はまさに林さんの言った通り、打ち出の小槌があるから大丈夫だと断言していました」。そして、「林さんの話は数字を基にしているので信用がおけるが、高橋氏の話は机上の空論だと思う」とのこと。まさか私の前に高橋氏がこの協会で講演を行っていたこと、私は全く知りませんでした(笑)。協会側担当者はきっと聞きながら苦笑していたことでしょう。

 

  さて、私の解説です。ちょっと難しいですが、じっくりと説明しますので、是非ご理解ください。バランスシートの初歩の初歩は、左右が一致することです。資産を抱えるにはそれ買うための負債、もしくは資本が必要です。まず日銀発表の最近のバランスシートからです。

  22年3月期末の日銀バランスシート

資産側            負債+資本側

国債       526兆   発行銀行券  120兆      

その他貸し出し等 210兆   預金     590兆

               (うち当座預金563兆)

               その他負債   21兆

                                     資本・純資産 4.7兆

資産合計     736兆   負債・資本合計 736兆

 

 説明します。資産合計は736兆円、負債+資本の合計も736兆円でバランスしています。日銀の自己資本比率は 4.7兆円 ÷ 736兆円 = 0.64%

絶望的過少資本であることがわかります。

 

  では国債を買うための資金はいったいどこから来たのでしょう。打ち出の小槌ではありません(笑)。それは負債側に示されている預金の590兆円です。一般的に銀行のバランスシートにはみなさんからの預金が負債として計上されますが、日銀も同様で市中銀行から預かった預金が負債側に計上されています。それに加え打ち出の小槌に近い発行銀行券、つまり刷ったオカネが120兆円計上されています。これも日銀にとっては負債です。空手空拳で国債は買えません。  

   このバランスシートで一番の問題は、市中銀行などから国債を買ったとき、銀行はその売却資金を自分で貸し出しなどに使わずに、日銀にそのまま滞留させていることです。これが「ブタ積み」と言われる死んだオカネで、上記のように当座預金に563兆円もあります。

  何故か?それは企業が銀行から借り入れを増加させないからです。つまり資金ニーズが強くないからです。それは置いておきます。

 

  市中銀行が日銀に預けている当座預金には金利が付く部分と付かない部分、さらに預けると逆にマイナスになる部分があり、単純ではありません。しかし金利の合計額はおおむねゼロ近辺と言えます。すると資産側の国債からもらえる金利がプラスであれば、日銀の収支はプラスになります。しかしこの十年、特に後半の数年は国債の金利をゼロからマイナス金利に押さえつける抑圧的政策を実施しているため、収入は大幅に減っています。自業自得とはこのことです。

  国債を買い続けるにはその資金的裏付けが必要です。預金が減って行けば国債は買えなくなりますので、ある程度の金利を付けて預金流出を防がなくてはいけません。金利を付けることを「付利」と呼びます。では付利しだいで日銀の収支はどうなるのでしょう。それを日本総研の河井小百合氏が今年5月にシミュレーションしていますので、その結果だけを引用します。氏によれば、付利を1%にした場合、日銀の収支は5兆円悪化するということです。当座預金が560兆円で、そのうち金利の無い部分もあるため、おおむね500兆円に対する1%は5兆円だと考えられます。それに対して保有する国債からの金利収入は現在1兆円程度ですから、大きな逆ザヤが見えています。

  すると日銀の収支は悪化し、赤字国債の引き受けは停止に追い込まれる可能性があります。日銀の純資産はわずか4.7兆円です。1%の金利を付けただけでマイナス5兆円となり、すぐにも債務超過に陥りかねないのです。

       アメリカのようにFRBの利上げが4%に達したら、20兆円もの赤字になり大きな債務超過となって日銀は信用を失い、国債購入など絶対にできなくなります。同時に政府もこれ以上の国債発行ができなくなります。日本は格付けを下げられ、日本国債は売りたたかれ、一巻の終わりになりかねないのです。これが黒田氏がいい気になって国債を買いまくっている日銀財務の実態であることを我々は忘れないようにしましょう。

 

  それに対して高橋氏は国の借金がさらに膨らんで行くなら、「最後は日銀が政府と合体すれば、日銀の資産である国債と政府の借金が相殺できる」と言っています。

  そんなバカな話はありません。日銀の資産である国債を政府が奪っても、市中銀行からの借入は1円も減りません。それを強引に減らすということは日銀に預けてある市中銀行のオカネを徳政令で召し上げることになります。冗談じゃない。そんなことされたら我々が銀行に預けた預金のうち590兆円を引き出せなくなります。ナンセンス極まりない!

  だいぶ難しい話になってしまいました。しかしこれを理解することが、政府と日銀の本当の危うさを理解することにつながります。

 

つづく

 

 

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日本経営合理化協会での講演内容 その1.決算から知る日本財政の姿

2022年10月31日 | 大丈夫か日本財政

 先週金曜日に私は日本経営合理化協会さんで講演を行いました。準備などでしばらくブログに投稿ができずすみません。このところのドル高と、アメリカ国債の金利が上昇したことで、10年ぶりに私にお呼びがかかったのでしょう(笑)。協会のサイトには、以下のような私のページがあり、過去の分を含め講演の音声CDなどが販売されています。

https://www.jmca.jp/prod/teacher/1734

 

 今回の講演は協会のメンバーの方向け、かつ3時間に及ぶ長丁場でしたので、著作権のこともありそのままお伝えすることはできませんが、かいつまんで要点をみなさんにもお伝えしたいと思います。コロナ禍でもあり協会のホールに直接いらした少数の方とライブのオンライン配信をご覧になる方へ、ハイブリッド方式で行われました。

 

その1.日本政府の財政問題

 私の話のポイントは、みなさんがほとんどご存じない政府予算の実態とそのファイナンスについてです。みなさんも毎年編成される政府の予算案はある程度ご存知でしょう。また先週決まった補正予算も30兆円にもなったことくらいはニュースで聞かれていると思います。これまでも補正予算は毎年作られてきました。

 政府予算をおよその平均値でみると、歳出100兆円、税収などの歳入60兆円、赤字40兆円=新規国債発行額です。しかしこれだけ見ていては、本質を見誤ります。実際の決算では歳出額は毎年とんでもなく予算をオーバーしているのです。その結果国債発行額は21年度には236兆円にもなったことをご存知の方はほぼいらっしゃらないでしょう。

 それは報道も同じで、当初予算と秋にプラスされる補正予算だけで、決算時には大幅な予算オーバーになっています。当初予算はニュースになっても、それ以外は報道されないか、政府発表もローキーのため目に留まることはありません。それにより赤字額も平均の40兆円が実際にはその2倍近い80兆円だと知る方は皆無に近いと思います。いいですか、歳入が60兆円なのに歳出は140兆円ですよ!

 

 いつも報道は予算だけですが、それはあまり意味がありません。どうぞ予算ではなく、結果の決算数字をご覧ください。

 報道はまた借換債が議論に入っていないことがほとんどですが、一部の方は問題なしと考えているようです。何故なら「それによって国債発行残高が増えることはない」という理由からです。毎年の借換債は100兆円から140兆円にものぼります。それが問題ないとは?

 国債の残高維持こそ、将来日銀が破綻する端緒になりうる大問題ですが、それはまた次回解説します。

 ほとんどの方は予算しかご存じないと思いますが、数字ヲタクの私の目はごまかせません。会社も予算ではなく結果がすべて。真実は、財務省のサイトに行けばすぐ見ることができます。財務省のサイトでは「年度の予算」ページもありますが、目に留まることのないようにひっそりと(笑)「年度決算」のページがありますし、実際の国債発行実績もあります。

 ではその決算数値などを見てみましょう。以下のようにとんでもなく予算を超過し、国債発行も莫大な数字になっています。

   

    当初予算  決算    国債発行額  うち借換債

20年度 102兆円  147兆    257兆     108兆

21年度 106兆円    143兆    236兆     147兆

22年度 107兆円  137兆(見込)245兆(見込)

 

 もちろんこのところ3年間の大きな予算超過はコロナ対策の影響が大ですが、コロナの無かった平年の補正予算も巨額です。22年度は当初予算にプラスし、先週成立した30兆円の補正予算を私が単純に追加しました。

 なんというひどい予算超過でしょう。会社であれば社長は株主からすぐ首にされます(笑)。この真実を知らずして、日本財政を語るなかれ。

 今回はここまでです。次回は日銀の本当の姿をお目にかけます。

 

 

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「このままでは国家財政は破綻する」   矢野君、よく言った!

2021年10月27日 | 大丈夫か日本財政

  選挙直前のこの時期に、これだけはっきりと「このままでは国家財政は破綻する」と財務省次官が発言するとは驚きですね。しかもそれに対して経済団体の首脳までが「そのとおりだ!」と述べていますし、私も当然そのとおりだと思います。

  各党の選挙公約を見て、よほど腹に据えかねたのでしょう。各党の選挙公約はバラマキ一色で、財政的裏付けなど一切なし。いや、すべて国債発行でまかなうとなっています。

  しかし今回の選挙に関する意識調査を見ると、選挙民は決して愚民ではありません。10月15日の読売新聞ニュースによると、政府の経済政策について「国の借金が増えても経済対策を優先すべきだ」と「国の借金が増えないよう財政再建を優先すべきだ」のどちらに考えが近いかを聞くと、「財政再建を優先」が58%で、「経済対策を優先」は36%だったのです。

  

  矢野事務次官の発言は文芸春秋のインタビューで出てきた内容ですが、実際の記事のサマリーが文春のサイトに行くと見られます。直接お読みになりたい方は、以下の文春オンラインにありますが、以下にそれを引用しておきます。

 https://bunshun.jp/articles/-/49082?page=2

 

引用

タイトル;「このままでは国家財政は破綻する」矢野康治財務事務次官が“バラマキ政策”を徹底批判

 

本文サマリー;

「もちろん、財務省が常に果敢にモノを言ってきたかというと反省すべき点もあります。やはり政治家の前では嫌われたくない、嫌われる訳にはいかないという気持ちがあったのは事実です。政権とは関係を壊せないために言うべきことを言わず、苦杯をなめることがままあったのも事実だと思います。

 財務省は、公文書改ざん問題を起こした役所でもあります。世にも恥ずべき不祥事まで巻き起こして、『どの口が言う』とお叱りを受けるかもしれません。私自身、調査に当たった責任者であり、あの恥辱を忘れたことはありません。猛省の上にも猛省を重ね、常に謙虚に、自己検証しつつ、その上で『勇気をもって意見具申』せねばならない。それを怠り、ためらうのは保身であり、己が傷つくのが嫌だからであり、私心が公を思う心に優ってしまっているからだと思います。私たち公僕は一切の偏りを排して、日本のために真にどうあるべきかを考えて任に当たらねばなりません」

矢野康治氏

“破滅的な衝突”を避けるためには……

「昨今のバラマキ的な政策論議は、実現可能性、有効性、弊害といった観点から、かなり深刻な問題をはらんだものが多くなっています。それでも財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えません。そのことが一連のバラマキ合戦を助長している面もあるのではないかと思います。

 先ほどのタイタニック号の喩えでいえば、衝突するまでの距離はわからないけれど、日本が氷山に向かって突進していることだけは確かなのです。この破滅的な衝突を避けるには、『不都合な真実』もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます」

 国家財政をあずかる現役トップ官僚の告発財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」全文は「文藝春秋」11月号(10月8日発売)に掲載される。

 

引用終わり

 

  この発言に対して政治家、経済学者などこころある方々は賛成の意を表しています。一方いつもの「国家は破綻しない」派の面々がいつもの根拠のない反論を試みています。私から見ると反論に有効打は見当たりませんでした。

 

代表例は、

1.国内債務で破綻した国はない。円建て債務なので返済は可能である

2.日本国は売る資産をたくさん保有している

3.日本は経常黒字国で、債権国だ

 

というような具合です。

では上記の議論に私が反論して差し上げましょう。

 

  1の「国内債務で破綻した国はない。国債は円建て債務なので返済は可能である」と、2の「日本国は資産をたくさん保有しているので売れば返済可能である」をまとめて反論します。日本はもちろん破綻した経験があります。

  そもそもこうした「破綻しない派議論」は、国債などの利払いができなくなった時の経済状態がどうなっているか、またその時為替レートはどうなっているかの議論を避けています。

  日本を含め過去に破綻したどの国も同じですが、破綻する時はその国だけでなく世界経済が大恐慌に陥ったり、為替レートが乱高下したり株式市場が混乱して閉鎖されたりします。日本の敗戦直後45~46年、97年のアジア通貨危機の時のアジア諸国、同時期のロシアなどがそれにあたります。

  日本の為替レートは1ドルに対して明治の初めは1円程度、第2次大戦前の40年には4円程度、戦後49年に一気に360円となった歴史があります。つまりたとえ国家は債務返済をしたとしても、返済される時の通貨価値は何分の1,いや何百分の1になりえます。であれば、それは支払い不能と同じです。

  経済的大混乱は株式や不動産価値の大暴落を伴うこともよくあることです。そのような破綻国家の資産を誰が買うのでしょうか。日本人はもちろん、海外投資家も見放すに違いない。つまり国家に資産があっても価格は暴落し続け、あてにできないのが国家破綻時の資産価値です。例えば日本政府保有の国有企業の株式や国道・橋・堤防などはもちろんだれも買いません。収入を上げられる港湾施設・空港・高速道路などは買いの手が出てくる可能性はなきにしもあらずですが、高齢化が進み経済発展の見込めない国の施設に買いの手が入るかは極めて怪しいのです。買われるときはとんでもない安値になっている可能性が大です。

その3.「日本は経常黒字国で、債権国だから大丈夫だ」という議論、これは国が民間企業や投資家の資産を収奪するということです。

  そもそも経常黒字を作り出したのは民間企業で、その黒字を海外や国内に蓄積しているのもその企業です。国ではありません。それなのに国が赤字を垂れ流した後始末をどうやって企業に負担させるのでしょう。国家の命令で内部留保を収奪する以外に方法はありません。そんな事態が予想されれば、みなさんはどうしますか。もちろんどうやって自分の資産や会社の資産を隠すか、あるいは逃避させるかを考えますよね。みんながそうした行動を取れば、その頃には円はさらに暴落していることでしょうし、その前に海外投資家は先物を売りたたいて、あらゆる市場であらゆる日本の資産価格を暴落させるに違いないのです。ロシアなどの破綻国家はそれを経験しています。

 

 この私の議論、著書でも書いているしブログでも何度も書き、講演会でも何度も説明しました。しかしそれに対する有効な反論を受けたことはありません。相手にされていないのかも(笑)。

 

  私は逃げも隠れもしません、いつでも受けて立ちますので遠慮なくカウンターパンチを繰り出してください(笑)。

 

  ちなみにGDP対比で現在の国家債務とちょうど同じ240%のレベルに達していた戦時の国家債務を、戦後日本政府はどう処理したのでしょう。もちろんすべてロハにしていますが、実に姑息な手段でデフォルトではないと主張していました。その手口は以下を参照してください。一口に言えば「国民の預金を封鎖して召し上げ、国家の債務を税金として奪い取り返済したことにした」。それを研究者が歴史の経緯として説明していますので、興味のある方は以下をお読みください。ちょっと長いですが、さほど難しことはかいてありません。将来の参考になりますよ。

 

日本総合研究所調査部主任研究員河村小百合氏によるレポート

引用

 昭和21年10月19日には、「戦時補償特別措置法」が公布され、いわば政府に対する債権者である国民に対して、国側が負っている債務金額と同額の「戦時補償特別措置税」が賦課された(図表5)。これは、わが国の政府として、内国債の債務不履行は回避したものの、国内企業や国民に対して戦時中に約束した補償債務は履行しない、という形で部分的ながら国内債務不履行を事実上強行したものである。そしてこれも、国民の財産権の侵害を回避すべく、「国家による徴税権の行使」という形であった。 

政府の戦時債務の不履行や、旧植民地・占領地における対外投資債権請求権の放棄等により、企業、ひいては民間金融機関の資産も傷み債務超過となった。このため同じ10月19日には、「金融機関再建整備法」および「企業再建整備法」も公布された。これを受け、民間金融機関等の経営再建・再編に向けての債務切り捨ての原資として第二封鎖預金が充当された(実施は昭和23年3月、図表6)。要するに、債務超過状態を解消するために、本来であれば国が国債を発行してでも調達すべき、民間金融機関に投入する公的資金を、国民の預金の切り捨てで賄ったのである。

国債が国として負った借金である以上、国内でその大部分を引き受けているケースにおいて、財政運営が行き詰まった場合の最後の調整の痛みは、間違いなく国民に及ぶ、という点である。一国が債務残高の規模を永遠に増やし続けることはできない。「国債の大部分を国内で消化できていれば大丈夫」では決してないのだ。

無論、世界大戦の敗戦国という立場に陥り、社会全体が混乱のさなかにあった当時と、平時の現在とは状況が全く異なる。政府債務残高の規模が、当時とほぼ並ぶGDP比250%の規模に達したからといって、すぐに財政破たんするというものでもなかろう。しかしながら、国債の大半を国内で消化するという現在の状況は終戦当時に通じるし、現時点で債務の膨張に歯止めがかかる見通しは全く立っていない。

 今後のわが国が、市場金利の上昇等により、安定的な財政運営の継続に行き詰まった場合、それが手遅れとなれば、終戦後に講じたのと同様の政策を、部分的にせよ発動せざるを得なくなる可能性も皆無ではなくなろう。この点こそを、現在のわが国は、国民一人一人が、自らの国の歴史を振り返りつつ、しっかり心に留めるべきである。

引用終わり

 

  大変興味深い歴史の考察です。こうした政府による姑息な手口があることを国民はしかと頭に入れて、自分の資産をどこに置くのが安全か、準備をおこたりなくすべきでしょう。

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日本で消費が高まらない理由

2021年02月22日 | 大丈夫か日本財政

  ここまで私はアメリカと日本を比較しながら、日本政府の巨額の債務がGDP対比では258%とアメリカの128%の2倍以上に膨らんでいることを示しました。政府債務の返済は経済活動による企業や消費をする個人の税金でまかなわれるため経済成長が必要なのですが、この10年間の累計成長率はアメリカの34%に対して日本はたったの5%と7分の1しかないことをお知らせしました。しかも今後の成長率を推し量る潜在成長率は、アメリカは1.7%~2.0%、日本は0%~0.5%と、この先も成長率の差は開く一方であることがわかります。

  

  ところが現在の日本では消費者は消費を手控え、企業は需要が少ないので設備投資を手控えるという悪循環に陥っています。そして最後に私が書いたのは、「何故消費需要が高まらないのか」という問いかけです。今回からはそれに答えを出していこうと思います。

 

  このところ金融市場の話題の中心は、日経平均株価が30年ほど前の3万円台に戻ったということです。買いの主体は海外投資家なので、はしゃぐと痛い目に遭うという警鐘だけは鳴らしておきます。ではその3万円のレベルに戻るまで、いったい政府は何をし、民間の企業や我々消費者はどうしていたのでしょう。

 

  そもそもバブルを作り出したのは、一億総不動産屋と言われた不動産投資と株式投資でした。特に土地のない日本で不動産は絶対に値下がりしないという神話を誰もが信じ、政府もそれに乗じて86年に「民活法」を成立させ、ウォーターフロントや地方でのリゾート開発などを主導、「臨海副都心計画」はまさにその象徴でした。団塊の世代もバブルに浮かれて郊外に借金で家を建て、ゴルフ会員権を買いまくり、株式投資も行っていました。企業も不動産や保有株式を担保に銀行からこれでもかと融資を受け、「財テク」と称する株式投資や不動産投資に走り、ゴルフ場やホテルを作り、地の果てに至るまで不動産を買いまくりました。不動産投資は海外にまで及び、ニューヨークやロスアンジェルスの一等地のトロフィー・ビルまで買いまくるというありさまで、世界の顰蹙を買っていました。買った不動産や株式を担保にしてさらに借り入れを行う行為は、今の言い方で言えば最も危険な「レバレッジ投資」そのものです。

  しかし過ぎたるは及ばざるがごとし。永遠の値上がりなどありえず、すべては一場の夢と消えたのです。

 

  そのころの市場関係者の間では、「株式相場の崩壊はソロモン・ブラザーズのせいだ」という話が、まことしやかに流布されていました。ソロモン一社が空売りで日本の株式相場を崩壊させたというのです。もしそれが本当であれば、ソロモンは今度は一社で株を買いまくって相場を上げ、その後売りに転じでまた儲ける。それができるなら実に簡単で、いくらでも儲けることができますが、日本の株式市場は一社で相場を動かせるほど小さくはありません。そしてソロモンなどの投資銀行は裁定取引はしてもそんな単純なカラウリをバクチのように行うほど愚かではありません。

 

  90年代のバブル崩壊以降政府がやったことは公共事業による経済のテコ入れでした。そのきっかけの一つは90年の日米構造協議でアメリカに公約した430兆円にのぼる公共投資です。一般会計の歳出規模が70兆円台の時代に10年で430兆円の公共投資を行うというのですから、とてつもない規模だったことがわかります。そのおかげもあって90年代は一貫して公共事業の拡大路線を突っ走り、クマしか通らない道路でも作って作って作りまくる。それで民間事業者がうるおえば設備投資をして人を雇い、その人々が消費をして好循環が生まれるハズという考え方を採用しました。ちなみにその当時の税収は60兆円程度しかありませんでしたから、当然国の借金が膨れ上がりました。

 

  当時の経済学には「乗数効果」という伝家の宝刀があり、それを理論的裏付けとして政府はかざしたのです。私が学生時代に学んだケインズ経済学の柱の一つです。1を投資すればそれが呼び水となりいずれは1.5になり、さらに波及して累積し何倍かになって返ってくるという理論でした。要するに政府の支出は単なる呼び水で、それが大きな水の流れを呼び込むという経済理論です。特にバブル崩壊後の内閣は、先ほど述べたように公共事業を大幅に増やし乗数効果を狙いました。しかし実際には財政によるバラマキは、公共事業に使われても呼び水として次の設備投資にはつながらず、多くが企業の借金返済に回ってしまいました。バブル崩壊で痛んだバランスシートを繕うために使われたのです。そのため企業は労働者の賃金を上昇させることもなく、賃金上昇が消費に回り好循環を生むことなどなく、結局国が借金を増やしただけに終わりました。

 

  株式投資や不動産投資が儲かると踏んだ企業は目いっぱい借金をして株や不動産を買いまくったのですから、公共事業で得たカネが借金の返済にしか行かないのはしごく当然です。乗数効果はものの見事に空振りに終わりました。それ以来、この乗数効果なる理論を振りかざす経済学者はいなくなってしまい、ケインズ理論も主流の座を明け渡しました。

 

  90年代のバブル崩壊とともに資産価値の大暴落を体験した企業も消費者も考え方を180度転換し、自己防衛に走りました。政府の無駄使いはいずれ自分たちが尻拭いをしなければならない。政府は財政破綻に追い込まれたら増税に走り、年金支払いを渋るに違いない。なので今は自分たちが必死に貯蓄しておかないとヤバイという考え方です。

  結局そうした自己防衛は現在まで継続していると私は見ています。「もうそろそろ政府も借金を払い終えるだろうから、そしたらみんなで晴れ晴れとして消費に励もう」などと、とてもじゃないが思えない。政府が使えば使うほど賢い国民は身構えてしまう。その結果が貯まりに貯まった家計の金融資産1,900兆円(※)なのです。

※日銀の資金循環統計によると、2020年9月末の家計の金融資産残高は1,901兆円。

  

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日本の財政赤字問題

2021年02月16日 | 大丈夫か日本財政

  株式相場がすごいことになってきましたね。株式投資をされている方へは、ご同慶の至りです。年末年始には各方面から今年の相場予想が出されていましたが、どなたも大外れ。それでも良い方への外れなので、不問に付されることでしょう。さて持続性はあるのか、私の見方は次の機会にお知らせします。

 

  今回はコロナ危機への対処による巨額の政府支出は大丈夫なのかの話の続きです。まずアメリカを中心とした前回のおさらいをしておきます。日米とも政府のコロナ対策による財政赤字が巨額になっていて、計画通り実施されるとアメリカの累積債務はGDPの128%になりますが、日本はその倍の258%にもなってしまうと指摘しました。コロナ対策は実行せざるを得ないので、私はそれを批判するつもりはありません。ただその結果、従来からの巨額の累積債務にさらに債務が積み上がってしまうという絶望的な数字をお示ししました。

  そうした債務の返済は経済の成長により税収が上がり返済原資を確保することになるので、「成長なくして返済なし」との指摘もしました。そしてこの10年間の経済成長がアメリカは34%、日本はたった5%しかなかった。アベノミクスとバズーカクロちゃんのやりたい放題の緩和にしてこの結果でした。日本の累積債務の絶対額は政府発表で1,125兆円です。日本人の総人口は少しずつ減り続けて現在1億2,300万人です。割り算すると一人当たり915万円にもなります。新しく生まれてきた赤ちゃんは、小さな肩にいきなり9百万円の借金を背負って生まれてくるので、本当にかわいそうですね。

 

  返済するための税収は基本的には経済の大きさと成長に依存します。例えば人々が消費をすれば消費税が国に入ります。ではいったい日本の将来の成長力がとの程度あるのかをアメリカと比較しながら見てみましょう。今後の成長率を予想するうえで大事なのはその国の経済が持つ潜在成長力です。

 

  潜在成長力とは労働力人口、生産性、資本の3要素がどう伸びるかに依存しています。アベノミクス3本の矢の一番重要な矢であったはずの成長戦略は、特に生産性向上がポイントでしたが不発に終わりました。潜在成長力の値は推計方法によって多少の幅があり、数字としてこれだという決定打はありません。そこで、よく引用されるOECDや日銀の推計を参考にします。今回のコロナ禍で不確定要素が増えたため推計のやり直しをする必要がありますが、従来から言われているおよその値をお知らせしますと、アメリカは1.7%~2.0%。日本は0%~0.5%です。

 

  日米の差は労働人口の伸び率がプラスであるアメリカとマイナスである日本の差がまずあり、その上生産性にも大きな格差があるため、今後日本がアメリカに接近あるいは逆転する可能性はほぼありません。水を掛けるようですが、例えば少子化対策をいくら実行したところで、うまくいったとして生産人口に寄与するのは20年~30年後。生産性の格差にしても、コロナ下で日本がデジタル化で世界に大きく後れを取っていることが白日の下に晒され、生産性上昇の必須条件の欠如が明らかになりました。

 

  特に保健所と病院などのコミュニケーションをファックスでやり取りしているという前時代的業務プロセスにはあきれましたね。保健所がパンクするわけです。今年9月にデジタル庁ができるとしても、政府・自治体のデジタル化の大きな遅れは2・3年で取り戻せるほど甘くはありません。役人のマインドの変化と技能向上だけでそれくらいかかります。とにかく今頃ハンコが必要か否かの議論をしているのですから(笑)。

 

  民間企業でのデジタル化は大企業では相当進んでいますが、中小企業ではまだまだです。一般消費者も実は大切な要素で、金融機関や飲食業、販売業でのデジタル化は消費者が追い付いてくるかに依存します。団塊の世代の我々の間でも、いまだにガラケイ依存率は2割近くありますし、そうした方々はパソコンも使用していない方が多いのです。

  というわけで、今後の経済成長率については日米を比較すると悲観的にならざるをえません。それを無理やり引き上げようとするのが政府日銀の強引な政策です。まず日銀の検証をしておきましょう。

 

  中央銀行が経済を引き上げるためにできることは第一に金利の引き下げです。これはすでにゼロ金利政策を導入しているので、これ以上はできません。マイナス金利という奇策もありますが、副作用が大きいため実行できないでいます。厳密には13年に黒田総裁の就任後、政策金利はゼロとされ、16年にはマイナス0.1%にはなっていますが、ほぼゼロ近辺です。

  この最重要な政策が限界に達していることは、次の景気後退局面では空手で立ち向かわなければならないことになるので、要注意です。

  それ以外に現在も必死に黒田氏が続けているのが量的緩和で、市中の日本国債や株式の購入によりカネをばらまく政策です。その額はすでに570兆円に達し、日本のGDP539兆円を超えています。それほど市中から債券や株式を吸い上げているのに、我々国民は日銀から一銭ももらっていません(笑)。ではいったいそのお金はどこに消えたのでしょう。

 

  日銀が買っている国債は、もともと発行済みで機関投資家保有が保有していた国債でしたが、それらはほぼ買い上げられてしまったため、今は政府が毎年巨額の財政赤字を埋めるために発行する赤字国債と、過去に発行された国債を償還するために発行される借換国債を買っているのです。もっとも国債の直接引き受けは法律で禁じられているため、いったんは市中銀行などが形の上で引き受け、それを買うという姑息な手段で違法ではないとしています。といっても金融関係者は誰もが実質違法行為であると認識していますし、国際的にも違法だというのが常識です。

 

  ではそもそも何故政府発行の国債を中央銀行が直接買うのがいけないかと申しますと、政府の支出に歯止めが利かなくなり、戦後のように大インフレを起こす可能性があるからです。世界を見回すと、国債発行など面倒なので、中央銀行が札を刷って政府に渡し、それを政府がそれを使うという簡単な方法が取られます。そこまでいくとジンバブエやベネズエラ、アルゼンチンなどひどいインフレに見舞われます。戦後の日本やドイツも同じような状況でした。

 

 現在の日本に戻ります。じゃ、金融機関は発行された国債を買うオカネはどうしているのか。それはありあまる我々の預金です。それを使って買いますが、買った国債を売って得たオカネをどうしているか。日銀にある自分の当座預金に置いてあるだけです。それを「ブタ積み」と言います。なので、日銀はオカネをバラまいたつもりでも、自分に跳ね返るだけで、我々には回ってきません。日銀の金庫はブタだらけです(笑)。ちなみに当座預金は現在なんと486兆円もあります。本来であれば銀行がその資金を企業に貸出し、企業は設備投資をして人を雇い市中におカネが回るはずなのですが、消費者による需要が高まらないため企業は投資を控え雇用も控えます。そのため資金需要につながりません。

 

  では何故消費需要が高まらないのか。それは消費者の自己防衛本能です。それについては次回に。

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