定年退職さんの疑問とPuffinさんの懸念への回答です。
定年退職さんへのコメント欄で私は「記事と我々の米国債投資は、全く関係がない」と申し上げていました。そして日銀の件が一段落したら回答します、としていたのですが、その前にPuffinさんのご指摘の点とともにずいぶんと勘違いをされている方が多いようですので、今回説明をさせていただきます。
何人かの方々の間で日銀問題への不安から資産の海外逃避という話題に発展しています。このブログは脱税指南でもない限り(笑)、そうした議論は大いに歓迎します。特にPuffinさんのように様々な試行錯誤をされている方の経験談は、多くの読者の方の参考にもなると思いますので、大歓迎です。
仙台の読者さん、ご指摘をいただき、ありがとうございます。税務申告は大変な作業ですね。
さて今回の記事では読者の方が不安を感じている2つの問題に、私なりの説明をさせていただくことにしました。
1つ目はファンドマネージャーの言う米国債バブル崩壊
2つ目は日本の証券会社経由の米国債投資の安全性問題
まず定年退職さんが引用されていた債券ファンドマネージャーに関するブルームバーグの記事への勘違いから、説明をします。
>ハッセンスタブ氏は2015年から一貫して米国債に弱気
投資は「薄氷の上を歩いているようなもの」、安全資産でなくなる
フランクリン・テンプルトンで債券を担当する花形マネジャーのマイケル・ハッセンスタブ氏は米国債が世界最大級のバブルのただ中にあると指摘し、米国債に安全を求めている投資家は利回り上昇で大幅な損失に見舞われるだろうと警告した。
こうした記事を書いている記者にも知識不足の感がありますが、「安全資産でなくなる」というのは全くの間違った表現で、正しくは単に「価格下落の恐れがある」です。
ファンドマネージャーは私がよく言う「株やさんちの・・・」と同じで、売らんがため、または自分の投資にちょうちんを点けさせるためのニュースを意図的に流します。それをポジショントークと言います。彼のポジションは債券のショート・ポジション、つまり空売りポジションと思えるコメントです。バブルだと言っているのは、アメリカ政府が日本政府のように借金まみれだとうことではありません。ただ米国債が高く買われすぎて、金利が低すぎるという指摘です。ですので彼は、それが暴落すれば大儲けできるポジションを取っているのでしょう。
そもそも私が提唱しているストレスフリーの米国債投資は「償還までの持ち切り投資」です。それは十分にご理解いただいていると思います。途中の価格の上下など、全く関係がありません。
それに対して債券ファンドの投資法は、市場価格の上下動をとらえたバクチです。四半期毎に評価を受けるファンドは、価格が上昇しようが下落しようが、あらゆる手段を尽くしてパフォーマンスを上げなければなりません。その人たちにとって債券を保有しているとき、金利の急上昇による価格の暴落は最大の惨事です。彼が言っているのはそのことです。米国債のデフォルトリスクが上昇して安全性が損なわれると言う警鐘ではありません。それをブルームバーグの記者が勘違いしているのです。
我々が買った債券の償還までの利回りは、買った時点で確定しているので、保有の途中や最後で金利が急上昇していようが急低下しようが、影響はゼロです。彼の言うような暴落が起こったら「ヤッター、チャンスだ!」と言って米国債をみんなで爆買いしましょう(爆)。
これが「全く関係がない」と私が言っていることの説明です。
定年退職さん、ご理解いただけましたでしょうか。「債券型投信」のことは私の著書の240ページからも説明がありますので、それも参考にしてください。
次はPuffinさんからのコメントです。米国債の名義は証券会社などのため、所有権は主張できない。だから危険を感じるという部分です。
名義と投資資産の安全性はもちろん全く関係がありません。日本で証券会社を通じて様々な投資をされている方は、ご自分の投資した証券が証券会社のふところにあるのではなく、それとは全く別に、いわゆる「分別管理」されていることをご存知ですよね。証券会社の破綻には影響を受けません。それは株であろうが債券であろうが変わりません。同じことが海外株にも海外債券にも言えます。証券会社のリスクとは完全に切り離されています。
Puffinさんの文を引用します。
>日本の証券会社で外国株式を購入しても、その所有者は証券会社になっており、個人投資家は資金提供者に過ぎず、配当を証券会社が受け取ったものを投資家に渡すだけで、名義や議決権は証券会社のものだと。
あまりにびっくりしたので、口座を持っている店頭・ネット証券会社に次々と同じ質問をしたら、すべて同じ答えでした。
もちろんそのとおりです。債券も同じです。しかし次の文章、
>つまり、何か大きな金融恐慌が生じて証券会社が傾いた時には、「道連れ」ということになります。
いいえ、そうはなりません。
理由は先ほど申し上げたとおり分別管理されているからで、山一證券などに預けられていた金融資産はすべて引き継いだ別の証券会社の管理になりました。山一の破たん処理の材料になったりしていません。
分別管理は証券投資管理の基本中の基本です。
投信なども、販売窓口の証券会社や運用会社が倒産したり詐欺行為を働いたりしても大丈夫なように、別途信託され管理されています。そうすることで、設立が簡単な投資顧問会社などが詐欺行為の温床にならないよう、システムが確立しています。
ご心配であればみなさんが米国債を買っている証券会社に、「おたくが破産したらどうなるの?」と聞いてみてください。Puffinさんの質問は書かれていらっしゃるように、「名義は誰なの」という質問ですので、回答はもちろん「証券会社です」と答えがかえってきます。
以上、どうも多くのみなさんが勘違いされているようなので、解説しました。
では日本の財政が傾いて、政府が個人資産の凍結や召し上げをしたらどうなるか。
個人資産のしばしの凍結はまだしも、資産の召し上げはない、と私は見ています。日本と言う国の自殺行為になるからです。そんな国に住み続けたいと思いますか?
そもそも、日本の実体経済、つまり日々経済活動を続けている日本企業全体は全く問題がありません。また個人も実に堅実に生活していて、借金まみれではありません。ひたすら大問題を抱えているのは政府・日銀だけです。財政は実質破たん状態ですし、国が直接かかわる年金・福祉・医療などは大問題を抱えています。
その政府が自分の失態をすべて国民にかぶせるなどという暴挙はできない。第二次大戦後の混乱期ですら、そんなことはしなかったと私は理解しています。それが私の見通す資産召し上げはない理由です。
もし資産の召し上げなどしたら非常に影響が大きく、日本の健全なる実体経済までがとてつもない悪影響を受けるので、実行される確率はほとんどありません。日本の金融システム全体が凍結状態となり、企業も個人も即刻身動きできなくなります。
それより自然発生的、あるいは意図的に起こる円安・インフレによる解決のほうがはるかに影響度は小さいため、意図するかしないかわかりませんが、そちらの方向へ向かうと思います。
このあたりのことは、また別途私の考えをじっくり述べる機会を設けましょう。
にもかかわらず、何人の方かが書いていらしたように、海外に資産を移したり、移住を検討されるのを私は反対まではしません。どうも怪しい、住みにくいと感じている日本に住み続ける必要はないでしょう。
昨日も好天の中、知人のニュースキャスターの先輩とゴルフに行き、帰りにとても安くておいしいお寿司屋さんで、たらふく寿司を食べました。日本大すきな私は、日本に住み続けます(笑)。
今回は以上です。