ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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マイナス金利導入をどうみるか

2016年01月30日 | マイナス金利導入をどうみるか

  私は1月13日の記事で、アベクロコンビについて以下のように言っています。

引用

今年に入りこれだけ株価の暴落が止まらないと、ますます何するかわかりません。たけしに言わせれば、

「その二人、凶暴につき」なのです(笑)。

引用終わり

  今回のクロちゃん、遂に本性を現したわけです。もう一人はすでに昨年の9月に凶暴なる違憲立法で本性を現していますので、これでそろい踏みです。

  みなさんから驚きと懸念のコメントを何件も寄せていただきました。特にシーサイド親父さんは徳勝礼子氏の著書「マイナス金利ーハイパーインフレよりも怖い日本経済の末路」を素早くお読みいただき、サマリーまでアップしていただきました。ありがとうございます。ちなみに私は読んでいません。

  では、「マイナス金利政策」について私なりの解説とコメントを試みます。重要なのは、今回の政策の本当の中身です。報道はわけもわからず報道しているので、みなさんも「わかったようで、よーわからん」というのが本音ではないでしょうか。

  今回のマイナス金利政策とは、いったい何の金利に適用されるのかと申しますと、市中銀行が日銀に預けている当座預金に対してです。それも厳密にはこれまでのゼロ金利の部分とプラスの金利がつく部分に加え、マイナス金利という第3の区分ができたということです。そもそも何故市中銀行が日銀の当座預金にお金を預けているかから大ざっぱに説明します。

1.準備預金・・・銀行がおかしくなったとき引き出して対応にあてるための強制預金で金利はつかない。預金量のおおむね1%以下の比率を日銀に預ける制度

2.補完当座預金(超過準備預金)・・・銀行が日常の資金需給の調節のための資金を置いておく。金融調節のために金利が付く場合があり、日銀は現在0.1%を付利している

3.余剰資金・・・基本的には2.の範疇だが、現状は以下の説明にある余資が莫大になっているが、2の範疇のため付利されている

日銀が銀行に、保有国債を売れ売れといって毎年80兆円も売らせたのですが、そのお金が日銀の意図に反して市中に出回らず、膨大な資金が日銀に「ブタ積み」されています。企業などに資金需要がないからです。当座預金合計は1.のわずかな準備預金こみで15年末に253兆円にもなりました。日本のGDPの半分を超える異常な滞留です。それを何としても引き出させ、融資に回させたいので、お金を置いておけばマイナス金利で損させるぞという脅しをかけようとしているのです。それが、

4.今後の積み増し部分・・・これまでの積み増しは「基礎残高」と定義し付利を継続。今後の積み増し分にマイナス金利を適用する

  以上がマイナス金利政策の概要です。おわかりいただけましたでしょうか。

  クロちゃんはマイナス金利と言いながら、一方では金利のつかないはずの当座預金に金利を付けるという政策も実施しているため、0.1%の付利とマイナス金利がごちゃまぜになる状況が現れようとしています。つまり日銀は支離滅裂になっているのです。クロちゃんはいろいろ説明をしましたが、昨日の市場は日銀政策の支離滅裂ぶりを反映して、株式市場も為替市場も支離滅裂の動きをしました。

  じゃ、みなさんが銀行だったら今後どうするか。この政策の実施によって国債を売ったお金を日銀の当座預金に置いてしまうとマイナス金利が付くので、「国債を売るのをやめる」が正解です。

  となると、資金供給を強引に進めるクロちゃんの異次元緩和との整合性もめちゃくちゃになります。

  そこでクロちゃんは国債を売らせるためのもう一つの政策も発表しています。きのうの国債市場では10年物金利が0.1%を下回るところまで買われましたが、その理由もクリアーになります。

  新規の政策は、「国債金利がマイナスになっても買い続ける」です。すると銀行は国債を売るととてつもなく儲かるのでそれに目がくらみ、売却します。

  でも金利を取られる日銀には預けておけないので、自行内に現金で留め置こうとします。ところが日銀はその「増加した現金額分は付利されるはずの当座預金額から差っ引く」という政策も同時に発表しています。つまり付利されるはずの「基礎残高」が減らされるのです。

  今回の日銀の新政策をおさらいしますと、3つの政策から成り立っています。

①  新規の超過準備預金にマイナス金利を適用する

②  国債を売らせるため価格が上昇してマイナス金利になっても買い進む

③  売ったカネを現金で置いたら、その分準備預金に付利しない

  だったら銀行はどうするか。もうかるはずの国債売却をしないかもしれません。クロちゃんの「何でもやる」とは、こうしたおバカな結果をもたらします。

  今回の政策はこの3点セットなのです。それを理解していない報道が混乱を招いています。しかし理解したとたん、もっと混乱します(笑)。

  この政策ミックスは支離滅裂というより、すでに

  「殿ご乱心に至る」

  が私の評価です(爆)。

  つづく

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高齢者の資産運用の例、救われた投資家さんの場合

2016年01月28日 | 高齢者の資産運用

  救われた投資家さんから、ご自分と高齢のお母様の資産運用について、たいへん詳細かつ参考になる経緯をコメント欄にいただきました。高齢の方にはとてもよい参考になると思いますので、そのまま本文に掲載させていただきます。

  救われた投資家さん、ありがとうございます。

 引用

 円のリスク (救われた投資家)

2016-01-27 16:48:38

林様、皆様 こんにちは。

日本の財政問題による円のリスクは、私が林様のブログに辿りついたテーマですので、大変興味深く読んでおります。

此方に辿りついた当時にも円のリスクは承知しておりましたので、既に金融資産の90%以上が外貨でしたが、全て現金というお粗末なものでした。円からの緊急避難しか頭にありませんでしたので、火災や盗難のリスク、ご指摘を受けた偽札のリスクよりも財政破綻のリスクの方が確実に高い可能性を優先した結果との言い訳しか持ち合わせておりませんでした。

そんな低レベルな私には円のリスク回避と共に投資が可能というストレスフリーの投資術には心底驚いたものでした。

円のリスクについては、林様のブログで一目瞭然ですが、私も様々な方の著書を読んだ結果、一番恐ろしい事実は、破綻論者の主張に同意することで円のリスクを知ったのではなく、全ての非破綻論者の主張の根本に大きな誤りや矛盾があることで円のリスクを確実に知ったことでした。つまり、非破綻論者の理論崩壊は破綻しない理由が存在しないに等しいからです。これが私の円資産から避難理由です。

現在52才(今年53才)の私は自分年金を当初は60才から80才まで手当するつもりでしたが、零細企業勤務の為、財政破綻時は確実に失業すると思い、53才から70才までに変更致しました。
53才時に失業していなければ、その分を71才から80才までの自分年金に再投資する方針です。これが52才の私の円のリスクの捉え方です。つまり、2016年に財政問題が生じても不思議ではないとの考えです。

他方、私と共にストレスフリーに入った現在74才の母親は、金融資産の99%以上を利付米国債にしました。
2%弱の利息ですが満足しております。為替レートは120円の時の購入ですが、為替相場による一喜一憂は皆無です。
何故かと言うと母が3才の時に預金封鎖とハイパーインフレを経験しているからです。新円切替によるお金の価値の喪失、その後も続くインフレで更に金融財産は減少し一家の生活は困窮したそうです。
その経験は為替による差損など安い保険料と考えています。江戸時代の火災や盗難からお金を守る為に両替商に対する預け賃と考えても構いません。

その母との最近の話題が中国の資金流失です。財政問題が無い中国でさえ、自国通貨の価値が減少しそうとなると政府が頑張って介入しても資金流失が止まらないのに日本では国債の乱発、紙幣の大量発行で円の価値が日々毀損しているのに超低金利でも銀行にお金の大部分を預けたままなのは戦後の幸せボケでしょうかというものです。
中国人の金銭感覚は普通で日本人は超異常というのが母の印象です。

学が無い母でも紙幣の大量発行は世界規模で考えれば貧乏になっていると理解しております。日本円は採れ過ぎたキャベツの様に安くなり、しかも日々安くなって行きます。為替相場は他の要素も加わるので一方的な円安にならずとも方向性は間違いないとの思いとのことです。かつてのように旧円は価値を失い、子供のおもちゃとしての価値しか有せず、
それが自身の存命中かどうかは分からないが確実に到来するであろう思っております。

内容が本題から脱線致しましたが、円のリスクに対する考え方の74才高齢者のサンプルです。
その上でストレスフリーの投資術の実践は年齢を考慮して、私とは異なりゼロクーポンではなく利付米国債で、円のリスクを最優先し、為替相場による差損は米国に対する保険料ないし預け賃と考えますが、2%の利息も頂けるという高待遇であると思っております。

しかも、基本な考え方は全て林様のご著書にあった年代別の投資術を実践しただけです。

高齢者の運用の是非については、確かに母の様に73才からの運用では為替の問題は巨大です。
しかしながら、母の憂いのない姿を見ると、0.03%の預金金利、円安による世界規模で見た場合の資産減少、元本保証が危うい円のリスクを抱えたままの方が運用失敗だと悟っているかのようです。為替差損があっても保険料と書きましたが、米国債はそのものが保険と思っているのかも知れません。

あまりの円のリスクの大きさに運用の是非で括れないことが本テーマの問題ではないでしょうか。母の以前の運用を説明すれば理解を得られると思います。
以前は母も国内株式を保有しておりましたが、株価の上下に一喜一憂することがストレスでしたので、無借金経営の国際企業で高利益率、高配当であるキャノンの株式を保有し、株価を気にせずに配当の入金だけを楽しみにする長期保有の方針でした。取得時の平均単価は約2,800円で配当は4.2%でした。その後の アベノミクスで株価は4,000円を超えましたが、円のリスクから3,200円ほどで全て売却致しました。配当も増配があり、現在保有していれば5.3% ほどです。40%の売却益も5%越えの配当も円のリスクの前では一切後悔しておりません。
そこまでしても円のリスクは巨大だったということです。

引用終わり

 

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米国債に代え、公社債投資はどうか

2016年01月27日 | 社債投資の心得

米国在住債券初心者さんのご質問に対する回答です。

  米国在住債券初心者さんから、「米国の公社債投資についてどのようにお考えか取り上げていただけないでしょうか。」というご質問がありましたので、こちらの本文にて回答させていただきます。

  債券「初心者」とハンドルネームにはついていますが、債券投資に関してかなり勉強されているのではないかと推察します。なにせ「デュレーション」という難解な言葉を抵抗なく、的確に使われていますので。

  回答に先立ち「公社債」という用語を説明します。国債以外の債券です。アメリカ市場で代表的なものは、住宅ローン債権を証券化した債券商品や、それらを扱う公社であるファニーメイ、フレディーマック、学生ローンを扱うサリーメイなどがあり、超巨大市場です。地方自治体の債券も免税のものが人気もあり、大きな市場です。そして銀行やその他金融など金融機関の債券や一般企業の債券が非常に大きな市場を形成しています。なかでも銀行の劣後債券市場は利回りが高いため人気があり、プライベートバンクなどと付き合うと、それらを積極的に薦められますが、仕組みが複雑なので要注意です。またハイイールド債もありますが、これはカテゴリーを分けられています。

  ではご質問に沿って回答いたします。質問は、

>もちろんクレジットリスクが高い分スプレッドは上乗せされておりますが、債券ということで基本的性質は国債に似ていると考えております。投資適格の社債で(今後の金利上昇リスクを見込んで)デュレーションが短いものを運用対象にしておりますが、プロの目から見てのご意見をいただければ幸いです。

  おっしゃるとおり、米国債とその他の公社債の差はリスクの大小に従ったクレジット・スプレッドの差だけで、投資の基本的要件は同じです。

  アメリカの公社債市場は格付けに従ってかなり厳密なスプレッド較差が付けられています。従ってご自分の取り得るリスクを大きくしていけば、それなりの利回りが得られます。しかし私は著書においてもブログでも、お薦めしたことがありません。その理由は、

1.個別銘柄の信用リスクを個人が判断するのは困難であること。格付け会社に任せるという手はありますが、自分の投資対象の把握を他人にまかせることになる

2.価格の妥当性(=利回りの妥当性)判断をする際、米国債イールドと上乗せスプレッドの二つを判断する必要があり、特にスプレッドの判断は個人には不可能であること

3.日本では国債とスーパーソブリン債以外は、ほとんど手に入らないこと。大手の証券会社の在庫にもほとんどありません。これはアメリカなら事情は違います。

そして最後ですが最も大切なことは、

★★★『流動性がないこと』★★★

  つまり買いたいときに買えず、売りたいときに売れないのです。もちろんものによっては流動性がけっこうあるものもあります。アメリカの例で説明します。

  さきほど公社債の説明で出した住宅ローンの抵当証券を扱うファニーメイとかフレディーマックの発行する債券は、ある程度の流動性もあります。個人でも買えますし、売れます。しかしリーマンショック時、それらの債券は価格が暴落し、流動性を失いました。最終的に破たんはしていません。

  一般的に流動性に欠けるということは、買いたいと言えばプレミアムを要求され、売りたいと言えばディスカウントされる。つまり売買スプレッドが大きくなってしまうことになるのです。もちろん持ちきりを前提にすれば、売りのディスカウントはありません。

  私の著書の最初に、投資で大事なことは1にも2にも「流動性だ」と書いてあります。投資で一番大事なことが、日本では債券でも株式でも無視されています。それこそが、日本の投資界の後進性の証左です。

  例えアメリカ市場においても、国債の流動性に比較するとその他の社債は数十分の一、あるいは数百分の一しか流動性はありません。債券は株と違い、一つの銘柄の発行量は小ぶりで、大きくてもビリオン・ドル、つまり1千億円の単位です。小さいとその10分の1、あるいは100分の1程度ですから、それが既発債として市中で取引される確率は非常に少ないのです。

  例えば巨大会社GEを考えてみましょう。GEの株はどの株も同じで1つの価格しかなく、いつでも売買可能です。しかしGEの社債(ほとんどはかつてのGE Capital 発行)は何百種類もあり、その個別銘柄の価格の妥当性などプロ中のプロにしか判断できません。それに、誰が所有しているかなどの情報は債券専門の証券などが持っていて、ほとんど公開されていませんので、証券会社でも探すのは容易ではありません。

  以上が公社債の投資は個人では非常に困難な理由です。流動性の低さがそのまま売りたいときに売れないというリスクになるのです。

  まとめますと、

「公社債は日本では売っていないし、たとえアメリカでも一部を除き流動性に欠けるので投資すべきでない。」  となります。

  すると公社債への投資は、投資信託で行う以外なくなります。債券投信のお話は次回いたします。

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大丈夫か日本財政 その3 財政破たん派、どこが間違っているのか 2

2016年01月25日 | 大丈夫か日本財政

  本日の本題に入る前に、uzurachanとなんだかんださんからコメントをいただいていますので、まずはそれに返答します。

  uzurachanからは以下のような感謝の言葉をいただきました。とてもうれしく思います。

>2013年このブログに出会い、当時、少し持っていた株をすべて売却しました。その時の身軽さ、爽快感は格別なものでした。

  そうですよね、たとえ儲かっていても、また逆に損失を出していても、「株を持たない爽快感」、それこそが高齢の方の人生の本当の楽しみ方だと思います。

                                       
>また円のリスクは感じていたので、同時にドルを購入しました。この間の円安で出た利益で家のミニミニ改修をしたり家族旅行も行くことができました。その意味で2013年の転機は私にとっては「投資・資産運用」でした。感謝申し上げます。

  これもまさに私が申し上げたリスク回避でのストレスフリーの実現ですね。

  そして私のブログを道しるべとして見ていただいているとは、大変光栄です。「70歳以上は投資をすべきでない」とのアドバイスにしっかり従っているとのことですが、その一方で今回は、

>適宜売買できる「米国債ETF」には興味があります。これも手を出さない方が良いのでしょうか。買うとすればそのタイミングだと思いますが。

  という正反対のことをするのはどうかとのご質問。

  答えはもちろんNO!です。

  安くなったと思えても、さらに安くなるかもしれません。ご自分で築き上げた大切な資産、1円でも失うべきでないと思います。ご自分の勘が当たるか試しでもされるのであれば、1万円程度の最低額でお試しください。そこまでは止めません(笑)。

  なんだかんださんからも、実に的を射たコメントが付いていますので、一部分を引用させていただきます。

>自分の余命期間に財が足りないようなら、投資か、人生の在りかた←幸せの求めかたを変えるしかありません。こちらは自分次第で、結構どうにもなるものです。なんぼの老後なら自分は引き受けられるか、分かるように思います。その上で余りがあれば使えばいいし、無ければ、無いなりに生きます。心配を背負い込んで、お金に翻弄されるような老後だけにはしないようにと頑なに自分に言い聞かせています。

なんだかんださんに一票!

 

  さて、本題です。このシリーズでは私の見込み違いの分析から始めました。見込み違い1点目は、「貯蓄率がゼロになっているのに、個人の金融資産が増え続けること」でした。

  本日、1月25日の日経朝刊もまさに同じことをより詳細に分析しています。タイミングも絶妙ですので紹介させていただきます。

大見出し;預金なぜ膨張?

小見出し;超低金利でも残高最高677兆円 「長生きリスク」で逆流

  内容を要約しますと、預金残高が増え続け、企業分を含め667兆円に達した。日銀の調べによると預金残高は20年で230兆円、年間10兆円のペースで増えた。09年から14年の5年間の内訳を年齢層別にみると、

・全世帯の半分を占める60歳以上の高齢世帯の平均預金は1,351万円で1%増。60歳未満の現役世代は625万円で2%減

・有価証券保有高は、60歳以上は337万円で0.2%減。60歳未満は103万円で3%増

  記事はその他の原因の一つに遺産相続が高齢者間で行われる老々相続を指摘していますが、これは総額に変化をもたらさないので、私は取り上げません。

  私の著書やブログを全国のみなさんが読んでいるはずもないのに(笑)、日本人、特に高齢者は余剰資金を見事なまでに預金に集中させていく様子が見て取れます。まさに記事の指摘する「長生きリスク」への防衛策で、私の見込み違いの理由を年齢層に分けて裏付けてくれました。


  ただし私のように数字を丸く見ている人間から見ると、世帯当たりの預金は減ってはいない程度だ、と見えるのです。

  みなさんに私は「数字ヲタク」だと言っています。しかしもっとよく注意して私を見ている方は、私の数字の見方がヲタクのわりに細かいところを無視していると見えているのではないでしょうか。私は小数点以下はたいてい無視します。もちろんGDP成長率などはいつもゼロ近辺なので、無視はしません。でも日経平均や円レートの話では、ほとんど小数点以下は四捨五入します。これは数字ヲタクの宿命である、木を見て森を見失うことを避けようとしているのです。

  寄り道しましたが、その伝で言えば、老齢世帯の預金が5年で1%増えたとか、有価証券が5年で0.2%減ったとか言うのは枝葉末節もいいところ。実にナンセンスで、「預金・有価証券とも変化はなかった」が正解だと思っています。

すると見出しもこうなります。

大見出し;預金なぜ膨張→預金ほとんど増えず

小見出し;「長生きリスク」で逆流→「長生きリスク」で滞留

  こうなります。かなり違いますよね。みなさんはどう解釈しますか。

  私の解釈が正しいとすると貯蓄の将来予測の見出しは、「いよいよ預金積み上げも頭打ちへ」となるのです。

  

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高齢の方の資産運用はどうすべきか・・・uzuracyanへのアドバイス

2016年01月23日 | 高齢者の資産運用

  やっと雪に恵まれた八方尾根から戻りました。そのお話は次回に。

  今回はコメント欄にいただいたuzurachanの考え方に対する私のコメントです。一般の高齢の方にも適用できると思いますので、本文にて書くことにしました。

  uzurachan、不安をたくさん抱えている高齢者を代表するご意見、ありがとうございます。

  ご自分は十分な貯えがないと思われている方が、「とてもじゃないが不安で使えない」、よくわかりますね。私が全部使ってしまえというのは、もちろん貯えの十分な方へのアドバイスです。

  ただし一方で私は、「70歳を超えたら運用などするべきでない」、とも言っています。これは貯えの多寡によりません。たくさんありすぎて、相場で減っても十二分に遺産は残るというのであれば別の話ですが。

  私のブログのタイトルでもあり、私が最も言いたいことは「ストレスフリーの資産運用」です。高齢の方であればあるほど、特に70歳過ぎて、ストレスを感じながらの運用に果たして意味があるか。

  米国債は安全です。しかし為替のリスクは大いにあります。たまたま著書を書いて以来円安に動いているので、お読みになったみなさんはかなり安心していらっしゃると思います。しかし相手は為替相場です。円高になることは大いにありえます。それはファンダメンタルズにかかわらず、突然の大幅円高もあるのです。97年には日本中が金融危機であたふたしていましたが、その中で突然ドル円レートが79円台に突入しています。そうしたことがぜんぜんないとは言いきれないのが、投資ということなのです。

  そのリスクがあってもドルに投資せよ、そして米国債に投資せよと言うのは、非常に長い目で見れば金利が為替に勝ってきたという実績によるのです。それは著書のP.256にある30年間~5年間のパフォーマンスを見ていただけば明らかです。

  しかし、ここからが肝心です。

  例えば将来お金が必要な70歳の方の米国債投資は、20年先、30年先を楽しみにというわけにはいきません。毎年なにがしか、そして数年後にお金が必要、あるいはその後死ぬまでの何年間はずっとお金が必要かもしれません。その時に円高になっていない保証はありません。もし買った時より円高になっていると、ストレスフリーどころではなくなります。毎日為替レートで泣き続けるかもしれません。

  それでも投資をしますか?

ということを高齢の方に言いたいのです。

  唯一の例外は、今の日本の状況を熟慮した結果、「円のリスクをしょっていることがストレスだ」という方です。「ドルにしておくだけで超安心」というのであれば、それこそがその方にとってはストレスフリーですので、どうぞ、と申しましょう。

  私の考え方を一方的に述べましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

  ご意見、反論やご質問があれば、どなたからでも歓迎いたします。

大事なことですので、みなさんと大いに議論しましょう。

 

 

 

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