ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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高齢者の資産運用の例、救われた投資家さんの場合

2016年01月28日 | 高齢者の資産運用

  救われた投資家さんから、ご自分と高齢のお母様の資産運用について、たいへん詳細かつ参考になる経緯をコメント欄にいただきました。高齢の方にはとてもよい参考になると思いますので、そのまま本文に掲載させていただきます。

  救われた投資家さん、ありがとうございます。

 引用

 円のリスク (救われた投資家)

2016-01-27 16:48:38

林様、皆様 こんにちは。

日本の財政問題による円のリスクは、私が林様のブログに辿りついたテーマですので、大変興味深く読んでおります。

此方に辿りついた当時にも円のリスクは承知しておりましたので、既に金融資産の90%以上が外貨でしたが、全て現金というお粗末なものでした。円からの緊急避難しか頭にありませんでしたので、火災や盗難のリスク、ご指摘を受けた偽札のリスクよりも財政破綻のリスクの方が確実に高い可能性を優先した結果との言い訳しか持ち合わせておりませんでした。

そんな低レベルな私には円のリスク回避と共に投資が可能というストレスフリーの投資術には心底驚いたものでした。

円のリスクについては、林様のブログで一目瞭然ですが、私も様々な方の著書を読んだ結果、一番恐ろしい事実は、破綻論者の主張に同意することで円のリスクを知ったのではなく、全ての非破綻論者の主張の根本に大きな誤りや矛盾があることで円のリスクを確実に知ったことでした。つまり、非破綻論者の理論崩壊は破綻しない理由が存在しないに等しいからです。これが私の円資産から避難理由です。

現在52才(今年53才)の私は自分年金を当初は60才から80才まで手当するつもりでしたが、零細企業勤務の為、財政破綻時は確実に失業すると思い、53才から70才までに変更致しました。
53才時に失業していなければ、その分を71才から80才までの自分年金に再投資する方針です。これが52才の私の円のリスクの捉え方です。つまり、2016年に財政問題が生じても不思議ではないとの考えです。

他方、私と共にストレスフリーに入った現在74才の母親は、金融資産の99%以上を利付米国債にしました。
2%弱の利息ですが満足しております。為替レートは120円の時の購入ですが、為替相場による一喜一憂は皆無です。
何故かと言うと母が3才の時に預金封鎖とハイパーインフレを経験しているからです。新円切替によるお金の価値の喪失、その後も続くインフレで更に金融財産は減少し一家の生活は困窮したそうです。
その経験は為替による差損など安い保険料と考えています。江戸時代の火災や盗難からお金を守る為に両替商に対する預け賃と考えても構いません。

その母との最近の話題が中国の資金流失です。財政問題が無い中国でさえ、自国通貨の価値が減少しそうとなると政府が頑張って介入しても資金流失が止まらないのに日本では国債の乱発、紙幣の大量発行で円の価値が日々毀損しているのに超低金利でも銀行にお金の大部分を預けたままなのは戦後の幸せボケでしょうかというものです。
中国人の金銭感覚は普通で日本人は超異常というのが母の印象です。

学が無い母でも紙幣の大量発行は世界規模で考えれば貧乏になっていると理解しております。日本円は採れ過ぎたキャベツの様に安くなり、しかも日々安くなって行きます。為替相場は他の要素も加わるので一方的な円安にならずとも方向性は間違いないとの思いとのことです。かつてのように旧円は価値を失い、子供のおもちゃとしての価値しか有せず、
それが自身の存命中かどうかは分からないが確実に到来するであろう思っております。

内容が本題から脱線致しましたが、円のリスクに対する考え方の74才高齢者のサンプルです。
その上でストレスフリーの投資術の実践は年齢を考慮して、私とは異なりゼロクーポンではなく利付米国債で、円のリスクを最優先し、為替相場による差損は米国に対する保険料ないし預け賃と考えますが、2%の利息も頂けるという高待遇であると思っております。

しかも、基本な考え方は全て林様のご著書にあった年代別の投資術を実践しただけです。

高齢者の運用の是非については、確かに母の様に73才からの運用では為替の問題は巨大です。
しかしながら、母の憂いのない姿を見ると、0.03%の預金金利、円安による世界規模で見た場合の資産減少、元本保証が危うい円のリスクを抱えたままの方が運用失敗だと悟っているかのようです。為替差損があっても保険料と書きましたが、米国債はそのものが保険と思っているのかも知れません。

あまりの円のリスクの大きさに運用の是非で括れないことが本テーマの問題ではないでしょうか。母の以前の運用を説明すれば理解を得られると思います。
以前は母も国内株式を保有しておりましたが、株価の上下に一喜一憂することがストレスでしたので、無借金経営の国際企業で高利益率、高配当であるキャノンの株式を保有し、株価を気にせずに配当の入金だけを楽しみにする長期保有の方針でした。取得時の平均単価は約2,800円で配当は4.2%でした。その後の アベノミクスで株価は4,000円を超えましたが、円のリスクから3,200円ほどで全て売却致しました。配当も増配があり、現在保有していれば5.3% ほどです。40%の売却益も5%越えの配当も円のリスクの前では一切後悔しておりません。
そこまでしても円のリスクは巨大だったということです。

引用終わり

 

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高齢の方の資産運用はどうすべきか・・・uzuracyanへのアドバイス

2016年01月23日 | 高齢者の資産運用

  やっと雪に恵まれた八方尾根から戻りました。そのお話は次回に。

  今回はコメント欄にいただいたuzurachanの考え方に対する私のコメントです。一般の高齢の方にも適用できると思いますので、本文にて書くことにしました。

  uzurachan、不安をたくさん抱えている高齢者を代表するご意見、ありがとうございます。

  ご自分は十分な貯えがないと思われている方が、「とてもじゃないが不安で使えない」、よくわかりますね。私が全部使ってしまえというのは、もちろん貯えの十分な方へのアドバイスです。

  ただし一方で私は、「70歳を超えたら運用などするべきでない」、とも言っています。これは貯えの多寡によりません。たくさんありすぎて、相場で減っても十二分に遺産は残るというのであれば別の話ですが。

  私のブログのタイトルでもあり、私が最も言いたいことは「ストレスフリーの資産運用」です。高齢の方であればあるほど、特に70歳過ぎて、ストレスを感じながらの運用に果たして意味があるか。

  米国債は安全です。しかし為替のリスクは大いにあります。たまたま著書を書いて以来円安に動いているので、お読みになったみなさんはかなり安心していらっしゃると思います。しかし相手は為替相場です。円高になることは大いにありえます。それはファンダメンタルズにかかわらず、突然の大幅円高もあるのです。97年には日本中が金融危機であたふたしていましたが、その中で突然ドル円レートが79円台に突入しています。そうしたことがぜんぜんないとは言いきれないのが、投資ということなのです。

  そのリスクがあってもドルに投資せよ、そして米国債に投資せよと言うのは、非常に長い目で見れば金利が為替に勝ってきたという実績によるのです。それは著書のP.256にある30年間~5年間のパフォーマンスを見ていただけば明らかです。

  しかし、ここからが肝心です。

  例えば将来お金が必要な70歳の方の米国債投資は、20年先、30年先を楽しみにというわけにはいきません。毎年なにがしか、そして数年後にお金が必要、あるいはその後死ぬまでの何年間はずっとお金が必要かもしれません。その時に円高になっていない保証はありません。もし買った時より円高になっていると、ストレスフリーどころではなくなります。毎日為替レートで泣き続けるかもしれません。

  それでも投資をしますか?

ということを高齢の方に言いたいのです。

  唯一の例外は、今の日本の状況を熟慮した結果、「円のリスクをしょっていることがストレスだ」という方です。「ドルにしておくだけで超安心」というのであれば、それこそがその方にとってはストレスフリーですので、どうぞ、と申しましょう。

  私の考え方を一方的に述べましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

  ご意見、反論やご質問があれば、どなたからでも歓迎いたします。

大事なことですので、みなさんと大いに議論しましょう。

 

 

 

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