「働いて、円高にして、大ハッピー」になりたいはずが、どうもそうならずに円高は不幸のタネを撒いているようです。その不幸の一番の原因は、生産設備の海外移転で雇用が確保できなくなることにありそうだ、というお話をさし上げました。
本来であれば為替レートには自動調節機能がついていて、どこかで調整機能働くはずです。
どういうこと?
円高が昂進すれば輸出競争力がなくなり、やがて貿易黒字が縮小もしくは赤字転換して、円安に戻るハズ。これが為替レートによる調整機能なのですが、最近の貿易収支の減少にもかかわらず、円高には歯止めがかかっていないようです。
その原因の一つは、貿易収支の他に国の対外収支を構成するもう一つの重要な要素である所得収支が黒字になっているからです。経常収支は貿易収支とこの所得収支の足し算です。
所得収支って?
所得収支のうちの収入は、企業が海外に進出した結果もたらされる配当などの成果や、外国証券投資から得られる配当・金利などです。反対に海外から日本への進出企業が本国に送る配当や、日本への証券投資の結果海外に支払われる金利や配当が支出で、そのプラス・マイナスを相殺したのが所得収支です。そして繰り返しますが、貿易収支と所得収支の合計が、経常収支です。
最近の貿易収支は赤字になったりしますが、所得収支がそれを補って余りあるほどの黒字になっています。このため、貿易収支が赤字化しても、経常収支は赤字になりづらく、そのため簡単に円安には振れないのです。
今年に入って四半期ごとの経常収支は以下のとおりです。
貿易収支 所得収支 経常収支 単位;億円
1-3月 4、806 39、256 39,866
4-6月 △15、575 33、493 15,371
7-9月 △ 8、050 39、943 29、825
(注)貿易収支と所得収支の合計は経常収支と差があります。その他のマイナーな項目があるからです。
以上のように貿易収支は振れが大きく、赤字も大きいときがあるのですが、所得収支はとてもコンスタントで、毎期3兆円以上の黒字が続いています。この所得収支は04年くらいまで4半期ベースで2兆円台の黒字だったのですが、05年くらいから3兆円台に乗せてきて、常に大きなドル売り要因になっています。
つづく