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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その8 トランプ劇場、はじまり、はじまりーー

2017年01月28日 | トランプのアメリカ

  トランプの理不尽な政策や矛盾に満ちた政策にいちいち腹を立てたり、理不尽ぶりを指摘したりしても意味はない、と私は思っています。メディアにはそうした批判があふれています。

  これまで「NATOは時代遅れだ」とさんざん言っていたにもかかわらず、メイ首相ときのう「両国はNATOへの確固たる関与を再確認した」そうです。こんなことをいちいち目くじら立ててフォローするより、我々はトランプ劇場を徹底的に楽しもうではありませんか。面白いですよ、そういう目で見ると。

  私の注目点は、今後いったい彼は「何につまずくか」そして、「いつつまずくか」です。この観点から観劇すると、これぞ本場のブロードウェイ、いや影響力から言えばワールドワイド・トランプ大劇場です。

  言いたい放題を言っていると、必ずいつかは彼を支える支持者を失うことになります。ただしこの場合の支持者から、トランプのツイッターに酔いしれている一般大衆を除きます。そうした人々のマインドコントロールは簡単には解けませんので。


  そのトランプ大劇場ですが、特に最近はメディアとの対決が面白い。第一幕は首席報道官スパイサーでした。彼は最初の出番であまりにもあからさまなウソをついたためメディアから批判され、次の出番であっさりと「今後はウソを申しません」とトランプのスタッフとしては珍しくも謝罪しました。もっともその後はまた強気に戻り、メディアと対決姿勢を強めています。

第二幕は、スティーブン・バノン首席戦略官です。そんな役職あったっけ、ですって。トランプが彼のために設けた特別席です。

彼のこと、みなさん覚えていますか。もう一人の隠れゴールドマンです。トランプの当選後、11月の中旬に「オルト・ライト」の旗手として非常に危険な思想の持ち主がトランプの首席戦略官・上級顧問に就任した、と私はみなさんに紹介しました。

  その彼が初めて公に発言しました。その内容は、

「メディアは黙ってろ!」

英語では、 MEDIA SHOULD “KEEP ITS MOUTH SHUT”

    大統領の首席戦略官がメディアに発言をやめろと暴言を吐いたのです。

   この男に関して11月に私が引用したロイター記事を、再度引用します。

「次期米大統領が首席戦略官・上級顧問に選挙戦で最高責任者を務めたスティーブンバノン氏を起用したことをめぐり、民主党だけでなく身内の共和党からも右翼扇動者の政権幹部入りだとして非難する声が相次いだ。バノン氏は過去にゴールドマン・サックスに勤務、保守派ニュースサイトを立ち上げた経歴を持つ。同サイトをめぐってはバノン氏が先陣を切って「白人至上主義」、「反ユダヤ主義」、「緩い新ナチズム主義的なグループ」へと導いたといった批判が挙がっている」。

  さすが危険人物。遂に本性を現しました。メディアがこの発言にどう対抗するか。また民主党議員や心ある共和党議員が、どう始末をつけるのか、高みの見物といきましょう。

  トランプ大劇場の第三幕は対メキシコ戦争です。「壁を作り、払いはメキシコだ」と言い続けるトランプに、メキシコ大統領は「会談はキャンセルする」と通告しました。

  それに対してトランプは「会合はやめると合意された」と、事実を曲げてアナウンス。CNNが言うには、人からキャンセルされる屈辱に耐えられないトランプらしい苦しい表現、です。そして昨日電話会談が行われましたが、「今後は非公開で話し合う」とのみ発表があり、どんな話し合いだったかも明かされていません。明かさないということは、相当激烈な議論があったと想像されます。

  方や壁を作られた上にコストを払えと言われ、怒り心頭。方や選挙運動の最初の公約で、お互い引くに引けない。合意などできるとは全く思えません。

  一方、相変わらず日本への非難も続いています。昨年11月のサンケイニュースから、古くからのトランプと日本のかかわりに関する部分を引用します。

引用

トランプ米次期大統領が、最も日本と関わりが深かった時期は、1980年代後半から90年代初めだ。トランプ氏は実業家として事業を拡大する一方、投資の失敗などで多額な負債を抱え、バブル活況に沸いた日本に対し、敵対心をあらわにしていた。

 「何十年にもわたって日本や他の国々は、米国を利用してきた。日本は、巨額の防衛費支出という障害を負うことなく、活気ある経済をつくった」。トランプ氏が87年9月にニューヨーク・タイムズなど有力3紙に出した意見広告。約30年後の大統領選でも同様の主張を繰り返し、トランプ氏の「日本たたき」の原点ともいえる。

引用終わり

  これがトランプの日本叩きの原点ですが、なぜそこまで叩くのか。それが恨みを晴らさないと気が済まない、サイコパスのサイコパスたるゆえんです。80年代後半、バブル絶頂期の日本はトランプの地元ニューヨークの不動産を泥足で踏み荒らしていたのです。それが本当の恨みの原点で、なんとしても徹底的にリベンジしないと気が済まない。

  前回「彼の政策はオバマへの意趣返しだ」というのと同じで、日本たたきとは日本への意趣返しです。そして80年代は日本車がアメリカ市場を席巻したため、日本車を叩き潰した、あの時代ですから、日本車叩きも意趣返しです。

  トランプに日米の自動車輸出入の真の姿、つまり「日本はアメリカ車の関税はゼロなのに、アメリカは日本の普通車に2.5%、ピックアップトラックには25%も関税をかけている」というようなことを、いくら説明しても無駄です。意趣返しだけが彼の目的なのですから。

  彼は憎たらしい日本車メーカーが、アメリカの誇るビッグスリーにいつのまにか匹敵、あるいは凌駕するほどにまで成長したのがどうしても許せません。そして日本でアメリカ車が売れないのは邪魔しているからだといちゃもんをつける。そのうち「日本の狭い道をアメリカ車が通れるように広くしないのは、非関税障壁だ」と言うでしょう(笑)。

   こうしたことはTPPのメリット・デメリットの説明も同じ。いくら安倍首相が説明しようが、サイコパスのトランプにとって、「そんなのかんけーねー」のです。日米の貿易額をバランスさせるか、あるいはアメリカの輸出額が大きくなるまで、つまり意趣返しを完膚なきまでに遂行しない限り、終わらないのです。

   なので、「彼の政策の矛盾を突け」とか、「そのうち彼の周りの歴代IQ最高値の閣僚連中が説得するだろう」とか期待しても無駄です。

   ヒラリーの得票数が自分への得票数を上回っていたことがどうしても許せない。「インチキだ!」。それもまた討論会でヒラリーに徹底的に負けまくった意趣返しです。自分が討論で負けたのは、きっと生まれてこの方初めてで、しかも3連敗ですから。

  そうしてみていると、本当に可愛いトランプちゃんに見えてきませんか(笑)。

  

  なのでひたすら「何につまずくか」、「いつつまずくか」を当てっこして楽しみましょう。

  みなさんも当てっこに参加して楽しみませんか。毎日あの苦虫をかみつぶしたような顔を見せられ、彼の言うことにいちいち腹を立てるより、よほどストレス解消になりますよ!

  トランプバロメーター;支持する 36%  前回比▲4%

以上

  私は明日から3度目のスキーで八方尾根に行きます。きまぐれな天気が心配ですが、「寒くなれ」などと言うと、ひんしゅくを買いそうなので、黙って出かけることにします(笑)。そう、スキーヤーには暖かさが敵なのです。すみません。

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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その7

2017年01月24日 | トランプのアメリカ

  トランプの就任演説に対する報道の一般的評価に、私もおおむね賛成です。選挙運動中言っていたことと同内容で、「アメリカ」と言う言葉を34回も使い、世界のことなどこれっぽっちも考えていない。

   そしてまたアメリカのメディアとトランプの新たな戦争が始まりました。就任式に集まった聴衆の数についてです。報道がオバマの時の180万人に対し、わずか25万人程度だとしているのに対し、彼は「史上最大の聴衆が集まった。式場からリンカーン記念堂まで埋め尽くされた」と言い、相変わらず「メディアは嘘つきだ」と述べています。

  しかしもちろん事実は異なります。みなさんもきっとニュースでオバマの1回目の就任式と同じ時刻のトランプの就任式の写真を見ていると思います。オバマの時はリンカーン記念堂までの広場だけでなく、周辺の道にも人があふれている様子が見て取れます。これを見せつけられてもトランプはオレ様の方が史上最大で、メディアはウソを流しているとツイッターでも主張し続けています。

   大統領府の新報道官スパイサーが21日初の記者会見に臨み、このことに触れました。トランプと同じように「史上最大の聴衆、150万人だった」と真っ赤なウソを述べています。それに対して新聞記者が質問をしようとすると全く無視し、去っていきました。さらに彼は「大統領は今後もウソツキメディアに話すことはない。直接ツイッターでものを言う」とも言い、宣戦布告しています。

   このことは実に大事なことを示しています。これまでよく言われたのは、トランプは就任後には取り巻きスタッフや閣僚により、選挙中のような暴言は控え、さすがにまともな言動に変わるだろうという見方です。それが根底から覆ったのです。彼自身の演説内容も選挙運動と同じことを言い続け、スタッフや報道官の言動も彼に合わせウソをつくし質問にも答えない。メディアとの全面対決の姿勢を崩しませんでした。大統領とメディア、「100日のハネムーン」などと言う人はいなくなりました。

   と私は昨日原稿に書いたのですが、スパイサーがウソを反省しましたので、その弁をそのままロイターから引用します。

 [ワシントン 23日 ロイター] - スパイサー米大統領報道官は23日、初の公式記者会見で、「今後はうそをつかない」と記者団に対して約束した。同報道官は21日、トランプ大統領の就任式に集まった聴衆は「過去最大」だったと発言。しかし 写真に写っている聴衆の規模は、2009年のオバマ前大統領の最初の就任式を下回っていることが明らかで、発言は虚偽と判明した。

さらに、コンウェー大統領顧問が22日、ホワイトハウスは偏向したメディアに対抗するため「代替的事実(オルタナティブファクト)を伝えたかった」と発言したことから批判が一段と強まっていた。
スパイサー報道官は23日の会見で、今後は常に真実を語るつもりかと記者に問われ「われわれの意図は、あなた方にけっしてうそをつかないというものだ」と答えた。その上で21日に述べた「過去最大の聴衆数」について、テレビやオンラインを通じた聴衆も人数に含めた、と釈明した。

 

  苦しい釈明ですが、少なくとも真っ赤なウソはつけないことになっただけ、少しましです。コンウェーとはトランプ勝利の最大の貢献者と言われる女性選挙アドバイザーで、顧問になっています。


   さて、トランプの言っていることにはあまりにもウソと間違いが多く、信頼できません。アメリカにはその人物の言ったことを一つずつ検証し、ウソかマコトか判断するサイトがあります。サイト名は「ポリティカル・ファクト」。トランプ発言の事実チェックです。

   これによると「本当」5%と「だいたい本当」11%を合わせてわずか15%しかありません。「半分本当」を足してもやっと30%。言っていることの7割が「ウソ」というひどさです。ちなみにヒラリーは7割が本当でした。

   こうしたことは彼が大統領として適格かどうかではなく、人間としてまともではないことを示しています。

  

  私は選挙中の解説でCNNが精神分析医を呼んで彼を分析させ、「彼はサイコパシー」だということを示唆したと書きました。その説明を見てみましょう。 

「こころなび」というサイトからの引用ですが、このサイコパシー、トランプに100%当てはまります。

 引用

サイコパス(psychopath)とは、精神病質を持っている精神病質者の事を指します。

精神病質とは、一般的に正常とされている人格から逸脱しており、その人格が原因で自分自身や社会を悩ませる人と考えられています。具体的には、他人に対して冷淡、共感することができない、良心を失い罪悪感が全くない、自分の行動に対して責任を持つことができない、嘘をつくことが当たり前、非常に自己中心的、口が達者で表面だけで見ると魅力的に感じられるなどといった特徴があります。

また、サイコパスの多くは男性であり、脳の働きを調べると共感性を感じる部分の働きが低いことが多いことがわかっています。現在、日本では精神病として考えられてはおらず、パーソナリティー障害として考えられています。そのため精神異常としての位置づけではなく、名称も反社会性パーソナリティー障害と呼ばれています。

 サイコパスになってしまう原因が明確に分かっていない以上、現状ではサイコパスの治療は極めて困難となっています。脳の異常や欠陥、生育環境や社会・心理的な要因が複雑に絡み合ったものとして考えられていますので、決定的な治療方法はありません。

 引用終わり

   彼は自分が悪いとか間違っているとは絶対に認めず、偏執狂的に相手を非難し続けます。オバマ元大統領への恨みやマスコミへの恨みも、病的なまでに攻撃を繰り返しています。

   そのトランプを支える大統領府の報道官の取った姿勢を私はこう見ました。「トランプのツイッターでの暴言・失言の火消しは面倒なのでやめにした」。何故なら、事実を突きつけるマスコミに勝てっこないからです。

  初代ジョージ・ワシントンは「正直」で大統領になった。

  45代トランプは「ウソ」で大統領になった。

  じゃ、これからも救いはないのか。

 

  そんなことはありません。報道官の反省を含め、これからいくつもの救いの手が出てきます。

 その1.トランプの大統領府スタッフや閣僚から、トランプにあきれて逃げ出す閣僚が出る

 ではトランプ支持者の離反はどうか。ウソもホントだと楽しむ人ばかりなので、あまり期待できません。毎日、いや、毎時トランプのツイッターを見ないと気が済まない依存症の人たちだからです。

その2.2018年の中間選挙でトランプでは勝てないとみて、議員から離反者が出る

 もともと貿易に対する保護主義は民主党、自由化は共和党の専売特許でした。保護主義で雇用が増えなかったり、株価が上昇しなかったりすると、選挙民から突き上げられ、トランプより目の前の選挙ということで離反者が出る可能性があります。

  オバマの8年で雇用は最悪時点から1,500万人増加していますが、「オレ様はもっと増やす」ということで2,500万人を掲げました。しかしオバマのスタート時点の失業率は8%、その後半年で10%まで行き、現在は5%を切っていて、失業者が枯渇しているので、達成は無理です。ちなみに現在の全米の失業者数は約2千万人です。

  ということで、お先真っ暗ばかりではないことを、しっかりとお伝えしておきます。

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「初心者」さんの米国債投資について

2017年01月22日 | 米国債への投資

ハンドルネーム「初心者」さんから、米国債投資への質問がコメント欄にありました。

投資初心者の方みなさんへも参考になると思い、本文にて取り上げさせていただきます。

まずご質問から。

引用

初めて書き込みをさせていただきます。
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。

米国国債を購入しようと考えております。
目的は、円の預金のみでは将来の日本に対応できないと考えているからです。
ゼロクーポンで満期まで保有し、そのまま預け金とするか外貨MMFで運用しようと考えております。

トランプ政権となり色々動いており、購入のタイミングが分からなくなってしまいました。

私の場合は、為替相場のみ気にすれば良いのでしょうか。

よろしくお願いします。

引用終わり

  適切なアドバイスをするために、私から以下の質問をさせていただきました。

引用

以下の質問はどの方へも質問させていただいている標準的質問項目です。なるべく答えいただけますでしょうか。

・年齢
・家族構成
・職業の安定性
・年収
・現在の運用総資産
・そのうち、米国債に投資する割合
・運用の期間

それと、私の著書はお読みいただいていますか。米国債の理解度を知りたいためにうかがっています。

あとコメントの以下の部分の意味が理解できないため、再度解説ねがいます。

>ゼロクーポンで満期まで保有し、そのまま預け金とするか外貨MMFで運用しよと考えております。

そのまま・・・の部分は、満期後のことを言っているのでしょうか?

以上、回答をよろしくお願いします。

回答しづらいものは結構です

引用終わり

 

 

  それに対する「初心者」さんからの回答は、

引用

・年齢:32歳
・家族構成:独身
・職業の安定性:普通でしょうか。公務員や大企業ほどではありませんが、中小企業よりは安定してるかと思います。
・年収:480万円
・現在の運用総資産:預金のみ1000万ほど。
・そのうち、米国債に投資する割合:現在はゼロ。今後は年間50万ほどをアメリカ国債にふりあてる予定です。
・運用の期間:10年を予定。

そのまま・・・の部分は、満期後のことを言っています。

著者は拝読しました。投資の本は30冊ほど読みましたが、納得したのが先生の本のみでした。


引用終わり

 

  私の回答を端的に申し上げれば、

「ヘッジが優先目的であれば、現時点の為替114円、10年金利2.4%でも、順次投資を開始すべきだ」です。

 

順次とは、毎月、隔月、四半期、半年、1年ごと、いずれでもかまわないと思います。今後の人生設計に合わされたらよいと思います。

ではすぐに始めてもよい理由を順に述べます。

1.年齢が若いので、時間軸での分散が十分に可能だから

2.50万円は全体の5%にすぎないので、少額分散投資だから

3.1と2にもかかわりますが、為替と金利のリスク分散も十分に図れる

  これだけだといいことずくめのようになってしまいますが、必ずしもそうではありません。考慮すべきリスクをあげておきます。

  「日本財政と円のリスク」です。

  つまり、例えば50万円を半年に一度ずつ投資したら、終わるまでに10年もかかります。すると投資し終えるまでに日本に大破綻が起こった場合、残額のヘッジをし損ねるというリスクです。

  

4.もう一つのヘッジ方法=借金と組み合わせる

  現在の超低金利を大活用し、自分で住む住宅を購入。もしすでに持ち家アリなら無視してください。聞くのを忘れました。

  1,000万円の金融資産をドルでヘッジすると同時に、円建ての借金を例えば2,000万円すると、消極的ヘッジではありますが、ヘッジ量は3倍にもなります。しかも全額ドルヘッジよりも分散が図れることになります。

  簡単なシミュレーションをお目にかけます。

設問;2,000万円、35年、金利1.5%のローンの価値が金利変動でどうなるか

例えば5年後、残存期間30年、ローン残高1,800万円と想定

30年物金利が2倍の3%に上昇したとすると、ローンの価値はいくらか

これは債券価格の計算と同じです。我々が借りるローンとは、銀行つまり投資家側から見れば債券投資と同じなのです。

計算結果は、現在価値が7割になる、つまり1,260万円になる

インフレの結果金利が上昇すると、ローンの実質価値は減り、上のケースでは3割も減るのです。

  もしさらに金利が上昇して5%になったらどうなるか。すると現在価値はわずか46%に減ってしまう。つまりローンの実質価値は54%も減るのです。

  厳密には借入れ額が毎年減価していくため計算は異なりますが、わかりにくくなるためそれを無視します。

今一度銀行サイドから見ると債券と同じですから、1.5%しか金利をもらえないローンを、金利が3%に上昇したときに売却すると、残存1,800万円のローンが1,260万円でしか売れないのです。


ついでに言えば、こんな超低金利ローンをしこたま抱える邦銀のリスクは、とてつもなく巨大だということです。日本国債から逃げおおせたとしても、そのかわりの資産が超長期住宅ローンだと、こういうリスクを抱えるのです。

  以上が私の回答です。不明な点などあれば、遠慮なくご質問ください。

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トランプの本質 オバマへの恨みと意趣返し

2017年01月20日 | トランプのアメリカ

  一昨日まで4日間、蔵王温泉スキー場にいました。好天に恵まれ山頂近くの樹氷モンスターをたっぷりと堪能することができました。

  今晩、トランプは大統領就任を迎えますが、あえて寸前のタイミングで記事をアップします。

  「トランプの政策には一貫性も整合性もなく、思い付きで言ったことをそのまま政策として掲げている」、と言う専門家の分析に違和感を覚えていました。そして私自身は「彼の政策上の支離滅裂さは、政治家ではなくビジネスマンだからだ」と申し上げていました。しかし就任式を直前にした今、謎が解けました。彼を突き動かしていたのは、

「オバマへの恨み」

それがすべての原動力だったのです。

  昨晩のテレビ朝日の「報道ステーション」の分析が謎を解いてくれました。私は夜10時以降ほとんどテレビを見ないのですが、昨晩たまたま見ていると、ワシントンで取材する小林彩佳キャスターが、「トランプのツイッター34,000をすべて読んだ」と言って、その分析結果を示したのです。TV朝日のHPからニュースの概要を引用します。

引用

「トランプ氏のツイッター徹底分析」

20日にアメリカ大統領の就任式が行われる。就任前から注目が集まっているトランプ氏のツイッター。これまでのツイートは3万4000回以上。今や2000万人がフォローしていて、過激であればあるほどトランプ氏の主張は拡散していく。新聞やテレビなどとは対立し、指先から放たれる言葉で世界を翻弄するトランプ氏。これまでのツイートを独自に徹底分析。すると大統領になるためのち密な戦略が見えてきた

引用終わり

  番組は選挙に勝つための戦略がメインテーマだったのですが、私はむしろ何故彼が大統領を目指したのかの部分に興味を持ちました。そこに支離滅裂な政策の謎を解くカギが隠されていたからです。

  TV朝日によれば、ことの始まりはオバマ大統領を囲むパーティーでの出来事です。いつだったのか、何のパーティーだったのか私は内容をよく覚えていません。しかしそこに出席していたトランプをオバマが5分間も冗談ぽくおちょくったのです。理由はトランプがツイッターで「オバマの出生地はアメリカじゃないので、大統領の資格がない」とつぶやき、オバマが出生証明書を示し彼に反論したのが始まりです。パーティーのビデオでもオバマのおちょくりにトランプが苦笑いする様子が映っていました。

  彼はその直後からオバマに対する攻撃をツイッターで開始。人生のすべてにおいて負けるのが嫌いなトランプの本領がそこから発揮され始めました。しかししょせん大統領に対する一民間人ですので、初めはさしたる注目も集められなかったのですが、一国の大統領に過激な言葉で攻撃を繰り返すうちに次第に注目を集め、ツイッターのフォロワーが増えたと分析されていました。

  彼は自分を攻撃する人間には「100倍返し」をすると公言しています。CNNやニューヨーク・タイムズに対する攻撃も同じ。事実を事実として報道しても自分に都合が悪ければ相手が音を上げるまで徹底的に攻撃する。オバマ大統領は当然彼のツイッターなどに反応などしないので余計に腹を立て、100倍を1000倍にして攻撃を続け、そのまま大統領になることで意趣返しをするに至ったに違いありません。意趣返しの完遂とは、大統領に当選しオバマの成果をすべて否定し去ることだと考え、選挙に勝利することを至上命題にしたのです。

  オバマの成果、あるいはレガシーとは、

・オバマケアー

・「核なき世界」でノーベル平和賞受賞

・TPP合意

・環境問題でパリ協定批准

・キューバとの国交回復

・人種や宗教などの多様性を大事にする

  などがあります。

  オバマケアーやTPP、パリ協定は初日に廃棄すると言い、核なき世界などありえず軍拡競争には負けない、キューバとの国交回復は間違いだ、などと宣言しています。さらにロシアを封じ込めたオバマに対抗するためわざわざプーチンの友人であるティラーソンを国務長官に選んでオバマに当てつける。

  そして黒人初の大統領であるオバマが最も大事にしたのはアメリカという国の本質である人種や宗教の「多様性」ですが、それを白人至上主義の彼が完全否定することで意趣返しする。その一環がメキシコ移民の送還であり、壁を作ることなのです。

  さすがに黒人に出て行けとまでは言えないので、矛先をメキシカンとイスラムに絞り、徹底的に叩きまくることにしたのでしょう。黒人叩きの本音は、最近「トランプは違法大統領だ」と言った有力黒人議員をツイッターで叩きまくる様子からも理解できます。

 

  というように見ていけば、彼の政策は意趣返しによる「反オバマ政策」で見事に一貫性を有していることが理解できます。

  「反オバマ政策」を掲げて大統領に当選することで、オバマへの意趣返しは相当程度達成できています。ではこれ以上何をしようと言うのか。

  それについてテレビ朝日の分析に返りますと、以下のような分析をしていました。

「取材を受けた元トランプの選挙参謀曰く、トランプ氏は選挙という勝負に並々ならぬ意欲を見せ、その後は野となれ山となれというスタンスではないか。」

  つまり、勝つことが至上命題だったため、あとのことなど考えていなかったというのです。これもきっとかなり当たっているのでしょう。

  これでトランプ最初の記者会見のバックグラウンドもよく理解できます。会見では政策の披露など一切なく、言い訳会見に終始し、特定メディアへの攻撃ばかりでした。

 

  一方、相手方のオバマの反応を見ておきましょう。レガシーをすべて否定され巻き戻されることを、決してよしとは思っていないはずです。それが証拠に、オバマはトランプに二つの反論をしています。

その1、昨年12月26日オバマは、「もし3選目の選挙に出ることができたら、勝利できた」と述べています。もちろんトランプは、「ありえない」と反論しました。

その2、オバマは今週最後の記者会見で次のように言っています。

「もしアメリカがおかしくなれば、大統領をやめても私は黙ってはいない」

  大統領職を去る人間としては、異例の態度表明です。トランプの言うことがどんなに面白くなくとも、大統領にいる間は無視を決め込んでいた。しかしいったん市井の人となればトランプに反撃するぞという宣言をしたのです。

  すでにトランプ就任前の支持率は40%と異例の低さで、支持しないが54%に達しました。就任演説の中身も、本当に彼だけがドラフトするのであれば、言い訳と攻撃、中身のない「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」に終わるでしょう。

以上

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世界の10大リスク  

2017年01月14日 | トランプのアメリカ

  前回、トランプの初記者会見についてコメントしました。多くの報道がありましたが、会見の中身を最も的確に言い当てていたと思われる解説がありましたので、引用します。私が常に耳を傾けるうちの一人、慶応大学教授でアメリカ政治が専門の渡辺靖氏がNHKニュースで行った解説です。

1.言い訳がほとんどだった

2.商務長官の会見だった

3.後ろ向きの防戦一方で、将来なにをしたいのかわからない

  まったくそのとおりで、実に的確に言い当てていると思います。彼は選挙中も数多くテレビ出演していましたが、かなり早くからトランプの確率はヒラリーと互角だと言っていました。

  吠えまくるトランプのせいで陰が薄くなっていますが、閣僚候補のヒアリングが継続しています。その中でかなり重要なことが起きていますので、一言触れます。前回の記事で触れたことにもかかわりますが、トランプと閣僚候補の発言内容の齟齬についてです。私は大きな齟齬として以下の2点をあげました。

1.国務長官候補がTPPに反対しないと言った

2.司法長官候補(法務長官はあやまりですね)が、イスラム教信者の入国禁止は誤りだと言った

それに加えて新たに一昨日、

3.「狂犬」マティス国防長官候補が、ロシアとプーチンの危険性に言及した

4.CIA長官候補ポンペイオ氏はトランプに従わないこともあると言明した

これについては昨日のロイター記事を以下に引用します。

「必要があれば次期トランプ大統領に従わない覚悟があるとし、CIAの活動を政治利用する動きから職員を守ると表明。大統領に厳しい尋問手法を再び使用するよう命じられた場合は、命令に応じない姿勢も示した。」

  重要閣僚が公聴会のたびに反トランプ姿勢を取ることもありうるとはっきり言明していることは、実に注目に値します。いずれも今後の上院での採決を有利に運ぶための布石とみなせなくもありませんが、しっかりと記録に残る公聴会でこれほど鮮明に反対意見を表明するのは、尋常ではないと思います。

  ということは、各候補とも心の内はトランプに必ずしも従順ではなく、彼の極端な考えに全面賛成ではないと言えます。わずかな光明を見る思いで今後も公聴会を注目していきましょう。

  これらの発言に対するトランプのつぶやきが笑わせます。

  「みんなすきなことを言っていいんだよ」

 

  では毎年恒例のユーラシアグループによる「今年の世界10大リスク」についてです。

  私が尊敬する政治学者、イアン・ブレマー氏が主催するリスクアセスメント会社によるリスク予想です。彼は数年前から世界がアメリカ一極のG1からGゼロの世界になることを予想し、オバマの中東撤退政策を持ってそれが正しい予測だったと結論づけています。そして今回トランプの掲げる「アメリカ・ファースト」でそれが決定的になったとみています。

  今年の予想の中心は他でもない「トランプリスク」です。10大リスクの記述の前に、「まえがき」があるのですが、その内容もほとんどが「トランプのアメリカ」でした。そしてもちろん10大リスクのトップも「わが道を行くアメリカ」と題し、トランプの独自路線の危険性を大きく取り上げています。全部で24ページからなる「10大リスク」のプレゼン資料の3分の1にあたる8ページがトランプのアメリカのリスクに割かれています。トランプインパクトがいかに大きなものであるかの証左でしょう。

  まえがきを少し省略しながら引用します。英語版も日本語版も、長たらしくてとても読みづらい文章ですが、ちょっと我慢してください。

「衝撃的なドナルド・トランプの米国大統領当選を以て G ゼロの世界が本格的に到来した。世界唯一の超大国において「アメリカ・ファースト」が外交の主たる原動力として勝ちを収めたことは、何十年にもわたる米国のリーダーシップが不可欠であることに対する確信との決別を意味する。それによって、グローバル化と米国化が密接に結びつき、安全保障、貿易及び価値の推進における米国のヘゲモニーが世界経済の防護壁として機能していた「パックス・アメリカ―ナ」の 70 年にわたる地政学的時代も終わりを迎えることとなった。  2017 年、世界は地政学的後退期に入る。」

  最後の地政学的後退期という難解な言葉を、以下のように解説しています。

「大規模な国家間の軍事的衝突や主要国における中央政府機構の破綻を引き起こすような地政学的後退期に発展していくとは限らないが、そのような成り行きが、国際的な安全保障及び経済取引それぞれの枠組みの弱体化及び世界最強の国々の政府間の不信の高まりの「テールリスク」として、今や想定可能になっているのだ。」

  簡単に言いなおしますと、「テールリスク」と言う可能性の低いリスクではありますが、大規模な国家間の衝突も起こり得ないことではないと言っています。いつもと違い、かなり恐ろし気なことを指摘しているのが今年の特徴です。

  彼は政治学者で地政学上のリスクの専門家ですから、常にそのリスクを強調するのは当然なのですが、今回ばかりはいつにもまして説得力が大きくなっていると思います。

  かくいう私自身も11月の講演会のメインテーマが極めて政治寄りになっていて、講演会も経済問題そっちのけと言ってよい状態でした。


  では、「10大リスク」の項目を番号順に上げておきます。

1.    わが道を行くアメリカ

2.    中国の過剰反応

3.    弱体化するメルケル

4.    改革の欠如

5.    テクノロジーと中東

6.    中央銀行の政治化

7.    ホワイトハウス対シリコンバレー

8.    トルコ

9.    北朝鮮

10.  南アフリカ

 

  項目のタイトルには、見慣れない、あるいはわけのわからないタイトルがいくつかあります。それについて内容を引用しながら簡単に触れておきます。

 

2 中国の過剰反応

習近平は万人の目が自分のリーダーシップに注目している時に、国益に対する国外からの挑戦があることに対して極めて敏感になっているので、外交政策上の挑戦に対して中国の国家主席として強硬に対応する可能性がいつにもまして高まることになる。そこで米中関係が急激に悪化する可能性が高い。

4.改革の欠如

先進国、新興国ともに政権を担う政治家たちが構造改革を回避し、成長及び投資家たちの新しいチャンスへの期待を損なうことになる。

5.テクノロジーと中東

アメリカでのテクノロジーの発達=シェール革命は中東諸国の収入源をもたらし、政治状況を悪化させる。インターネットはテロリストの武器となり、不満を持つ者同士を結びつける。テクノロジーの発達は教育水準の低い若年人口が多い中東諸国では雇用機会を奪い、不安定化に結び付く。

6.中央銀行の政治化

中央銀行が新興国だけでなく米国、ユーロ圏及び英国で も攻撃に直面している。政治家たちは、そもそも中央銀行に独立性を与えるに到った論理的根拠をさしおいて、ありとあらゆる政治的、経済的問題を中央銀行のせいにするようになっている。こうした攻撃は、金融及び経済の安定を提供するテクノクラート機関としての中央銀行の役割を覆す恐れがあり、それが 2017 年における世界のマーケットにおけるリスクとなっている。

   以上、わかりずらそうな項目を引用しながら解説してみました。

  再度申し上げますが、全ページの3分の1がトランプのアメリカのリスクになっています。それにもかかわらず、「本当にアメリカ大丈夫か?」と聞かれれても私の回答は従来と同じで、

「アメリカそして世界の地政学上のリスクが高まれば高まるほど、米国債の威力が増すことになる」

以上です。


  明日からまたスキーです。今回は3泊4日で初めての蔵王に行きます。スキー大好きなのに、蔵王だけは今まで行くチャンスがなかったので、楽しみです。

  先週までは蔵王のゲレンデの積雪が80cmと少なくて少し心配でしたが、この寒波と大雪で一転。むしろ雪が多すぎることを心配しないといけないくらいになっています。山形新幹線は大丈夫そうですが、山形駅から30分ほどかかるホテルまでの道のりがちょっと心配です。と言っても雪に慣れた雪国のこと、きっとしっかりと道路を確保してくれるでしょう。

では行ってきます。

コメント (6)
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