ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

投資の専門家は、今後2年をどう考えているか

2012年01月30日 | 資産運用 
ブルムバーグという金融専門の情報会社があります。
ご存知の方も多いと思います。
この会社の情報サイトのうち、一般に無料で公開されているサイトにも、大変有効な情報が多く含まれ、私の本でも何度も引用されています。

何故私が特にこの会社の情報を引用しているかと言いますと、「債券」の情報が載っているからです。日経マネーなど日系のサイトは債券を無視していますので、私には参考になりません。何度か申し上げているように、日本では「投資は株」だから、参考にならないのです。全世界、そして日本でも、証券の総額で言うと株は債券の半分しかないマイナーリーグです。勘違いしているのは日本、そしてその代表選手「日経」だけです。

今日はブルムバーグの非常に面白い記事を紹介します。ブルムバーグの有料端末(毎月何10万円かします)は世界で30万人のプロが見ています。そのうちの1200人から、今後2年のスパンで市場をどう見るか、アンケートを取った結果です。とてもたくさんの項目があり、ネットでやる「ポチッ」、程度のアンケートではなく、深堀しています。


http://www.bloomberg.com/data-visualization/bloomberg-global-poll/

投資環境をどうみているか、株・商品・債券など投資対象をにどうみているか。グローバルな視点から市場を俯瞰しているので、とても参考になります。

例えば、

投資機会;アメリカ ○、欧州 ×、日本 ×(無視に近い)、中国 △

その他、地域別の株・債券や、各国政府・中央銀行の政策への賛否など、興味はつきません。

「世界の投資関係者は世界をどう見ているか」


私たちもそうした視点を持つことが、投資の道を誤らないことにつながると思います。

英語のサイトで恐縮ですが、アンケートなので難しくはないと思います。

是非、参考にしてみてください。

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円高トラップに嵌まり込む日本  その18.じゃ、結局どうなるの?

2012年01月26日 | 資産運用 


 一昨日から昨日にかけて、日本がついに年間を通じて貿易収支が赤字になった、というニュースでもちきりでした。それに反応してか、円レートは78円を一瞬付けましたが、その後は77円台に戻しています。冷静になれば、経常赤字にはまだほど遠いということでしょうか。

 そしてニュースの解説として、今後の国際収支について、エコノミストなどの見通しがたくさん出されています。大方の予想は、10年代の半ばから後半、とりわけ15年辺りがターニング・ポイントになりそうだという見通しでした。15年くらいという経産省の見通しとも大差はないようです。

 では今後の資産運用の方向を見定めるため、これまで私が述べてきたことをちょっとまとめてみましょう。

 大事なポイントはまず以下の2点です。

1.2015年前後に日本は経常赤字に陥る可能性がある・・・その先は円安

2.2015年前後に、日本国債はスムーズな消化ができなくなる可能性がある…その先は財政破綻

そして次に、

これまで実は、「望ましくない円高とデフレの継続」が日本国債を支えているが、1.2によりその構図が崩れる可能性が強い。

構図が崩れる、つまり「円高トラップに嵌まり込む日本」がトラップから抜け出すと、そこには一番恐ろしい円安、財政破綻、インフレが待ち受けている。

 今後の資産運用は、以上を『想定内』に入れたうえで考えるべきです。
大震災や大津波のあと、『想定外』という言葉が言い訳としてたくさん使われましたが、円安・財政破綻は『想定内』です。個人も企業も年金も、想定内の将来を無視した資産運用は、許されません。大災害の想定には、保険をかけるべきです。もしその保険が掛け捨てでなく、ある程度のリターンを約束してくれるのであればなおさら。

  では個人の資産防衛はどうすべきか?

今後はしばらく資産防衛の具体策について述べて行こうと思います。
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円高トラップに嵌まり込む日本 その17.じゃ、結局どうなるの?

2012年01月20日 | 資産運用 

U3さんとのやりとり、みなさんの参考になりましたでしょうか。
  
 では本題に戻ります。前回は日本とアメリカの状況を、数値で比較してみました。まとめますと、

・金利は両国とも非常に低いレベルで安定している

・CDSスプレッドは、アメリカが50bpくらいでこの1年何が起ころうとびくともしていないのに対して、日本は世界に一朝事がありそうになるとすぐ反応し、150bp程度になっている

・財政状況の数値比較ではアメリカに比べ日本は非常に悪く、格付け会社にいつ打たれてもおかしくない

というものでした。

 そこで将来の見通しですが、これまで述べてきましたように私は

・2015年プラス・マイナス1年程度を目途に日本の経常赤字化がある


と見ています。

・その時点では財政状況の極度の悪化が重なり

・円高から円安への転換も起こる可能性大

これが私の見方です。市場はそうした状況が見えてくると、さらに半年から1年くらいは前倒しで反応を始める可能性もありそうです。すると円高への転換点は早いと13年くらいにもありそうだということになります。消費税値上げについては、のちほど触れますが、シナリオを大きく変えるものではないと思います。

 日本が大好きな私は決してこのような状況を望んでいるわけではありません。両方が同時に起こり始めると、日本は大混乱になる可能性があります。住みにくい日本はいやですからね。

 そしてもうひとつみなさんは頭に入れておくべき重要なことがあります。

 「デフレの克服」についてです。みなさんもよく耳にする言葉だと思います。デフレの克服は政府、民間企業、一般国民の悲願のように言われています。そして「円高がデフレを助長しているので、それを克服しろ」。円高を克服するのが先か、デフレを克服するのが先か、それとも同時進行か。

 はたしてそうすればすべては解決するのでしょうか。これははなはだ疑問です。デフレ脱却は財政がここまでひどく逼迫していなければ、脱却するにこしたことはないのですが、今となっては最後のパンチを浴びせることになる可能性があるからです。
デフレの脱却は、金利上昇につながります。金利上昇のインパクトとはどの程度のものなのか、およその計算をお目にかけますので、結果の数値だけでも頭に入れておいてください。

 国債の中で10年物国債は非常に大きな構成比を持っていて、その金利は現在1%弱程度です。では、残存する日本国債残高全体を見てみると年限・金利はどんな具合でしょうか。財務省の発表資料を見ますと、

残存国債平均金利;1.3%   
 同 平均残存年数; 7年 

 
というのが全体像です。この平均数値を使って、金利上昇のシミュレーションをしてみます。

その1.金利がイタリア並みの7%になったらどうなるか
   まず、新規に発行される国債の金利はそのままコスト増になります。来年度の新規の発行量は174兆円です。その金利が現状の1.3%だと仮定して、もしそこからイタリア並みの7%に5.7%上昇すると、年間金利支払いはいくら上昇するか?

174兆円 X 5.7% =9.9兆円


 約10兆円増えます。これは新規発行分だけです。既存の分は影響なしです。国の予算上の金利支払いは既発債全体の金利分ですが、それがちょうど10兆円くらいですので、7%への増加分が加わると、金利支払いは2倍になります。

一方、銀行・郵貯・保険会社などの金融機関が保有する国債は700兆円くらいです。金利上昇はこれら既発国債の価格を下げます。どれほど価格を下げるのか。この計算はいわゆる債券計算をするので、簡単ではありません。みなさんには結果だけを示しますと、約30%の価格下落になります。

700兆円 X 30% = 210兆円


 これは国内すべての金融機関の全資本を何倍か吹き飛ばす威力があります。「国債のほとんどを国内で消化しているから問題はない」ということの裏返しで、その負担は国内の金融機関がほとんどかぶるのです。

 これがアメリカだとサブプライムの時同様、「半分は外人が保有しているので、マイナスも半分外人が負担してくれる」ということになり影響は緩和されます。

 ここで想定した金利上昇は、イタリア同様の7%としました。これは、かなり危機が進行した状況と思われますが、デフレを克服して金利が7%までとはいわず、マイルドに上昇したとして、別のシミュレーションをしてみましょう。

その2.金利上昇して3%程度になるとどうなるか
新規発行国債の金利負担は1.7%増加(=3%-1.3%)なので、

174兆円X1.7%=3兆円

3兆円のコスト増です。現在の金利負担は年間10兆円くらいなので、3兆円は大幅増加になりますが、壊滅的ではありません。

一方、金融機関保有の既発債の価格は債券計算をしますと、10%程度低下します。ということは、

700兆円 X 10% = 70兆円

もちろんすべての金融機関の資本は吹き飛びます。
金利上昇とは、なんと恐ろしい結果をもたらすのでしょうか。1.3%の金利がたった3%になっただけなのに・・・・。

 デフレが克服され実質GDPが2%程度の成長軌道に入り、2%程度のマイルドなインフレが起こると、長期金利の3%くらいはおかしな数字ではありません。しかし累積債務をここまで積み上げた日本は壊滅的打撃を受けます。

 首相をはじめ政治家全員、そしてエコノミスト、経済評論家、およそ国家財政や経済問題を論じる方々は口をそろえてデフレ脱却を第一目標に掲げます。しかしそうした人の中に、この債券計算の結果を知っている人はいるのでしょうか。いるとはとても思えません。もしいたら今の日本で「デフレの克服」などという恐ろしいことを国家の最高目標にするはずはありませんので(笑)

つづく
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読者のU3さんとのやりとり、「米国債を買え」の批判ブログをめぐって

2012年01月18日 | 資産運用 
 U3さんという読者の方から、1月10日付の記事、「その15」にコメントが付きました。U3さんはある方(仮にB氏とします)が私の著書「証券会社が売りたがらない、米国債を買え」の内容を検証し、「林の話の内容に疑義あり」、と書いているが、それに対してどう考えるか、とのこと。私がB氏の主張の内容に回答をしています。そのやりとりがちょっと長いですがとても面白いやり取りになっていますので、私の著書を読まれたみなさんの参考になるかと思い、本文に転載することにしました。やりとりは1月14日から昨日1月17日まで何回かにわたり行われました。


「著作に対する検証結果の記事を読みました。 (U3)」
2012-01-14 23:20:23


以下の記事です。
(1)、(2)を見たからといって債券投資について
気持ちは揺らぎませんが、(3)については少し
ぐらついています。ブレークイーブンが変わってきてしまいます。
先生はどのようにお考えですか。

http://blog.livedoor.jp/tsurao/archives/1702450.html


林 敬一 (U3さんへ)
2012-01-15 18:54:11


著書のコメントのお知らせをいただき、ありがとうございます。

まずこのブログを書いていらっしゃる方の初回のコメントでは、私の著書をたいへんほめていただき、その方にお礼を申し上げます。

2回目のコメントでは、以下の3点の批判的記述がありますので、それに簡単にお答えしたいと思います。

引用
(1) 都合がいいその1: パフォーマンス測定の終点が2010年末
さて、2007年までに林氏はこのようなことを言えたのでしょうか?
2010年末といえば、株式市場が1930年代以来の大幅下落に見舞われた後です。この時期は1930年の大恐慌以来、最も債券に有利な時期です。その時に債券が勝っているからと言って株式より債券が有利は言えません。
引用終わり

私の著書は2011年秋の発売で、本文の内容は10年から11年にかけて書きました。従って、10年・20年・30年のパフォーマンス検証で2010年末を使うのは、ちょうど丸い数字でもあり直近でもあり合理的だと思います。
ちなみにそれ以前3年間を含めてS&P500の年末価格を記しますと、08年末、09年末はもっとひどい数字です。07年末は非常にいい数字ですが、11年の出版でこれを使うのはとても不自然です。

2010年末;1,257 
2009年末;1,115 
2008年末;903 
2007年末;1,468


1981年から30年間で米国債は23倍、S&Pは11倍。それが例えば07年末と言うピークで比較しても、10年末とはたった17%しか違いませんので、S&Pが13倍になるだけです。

引用
(2)都合がいいその2: 配当を無視
株式には配当がありますが、林氏は株式の配当を無視しています。ところが、配当無と配当有では以下のように大きくパフォーマンスが異なります。
2011年11月末まで30年間の円建S&P500(配当込)のパフォーマンス
 ・配当無し指数: 100⇒354 (+254%)
 ・配当込み指数: 100⇒805 (+705%)
100円投資して354円と805円では全く違います。
引用終わり

私はこうした配当込のインデックスがあるのは知りませんでした。バッフェト氏のバークシャーハサウェー社の年次報告書も一般的インデックスで比較しているので、それを使用しました。

もし配当込のインデックスの数字が正しい数字とすれば、確かに米国債の818とS&Pの805でほとんど同じですね。しかし500種の株に配当があるとそのたびに同じ株に再投資するのでしょうか。そのような運用は一般の人は可能でしょうか。インデックス投信でそのような運用をしているのがあれば可能ですね。

私の著書の最重要点は私のブログ同様、「ストレス・フリーの資産運用」です。かたやリスクフリーの確定利回、かたや半分になるかもしれない株式運用、リスクを取ってリスクフリーと同じでは、私は投資に踏み切れません。

引用
(3) 都合がいいその3: 将来の受け取り金利額を現在のレートで計算

『証券会社が売りたがらない米国債を買え! 』では、将来の受け取り金利額を現在の元本レートで計算するという致命的な過ちを犯しています。
引用終わり

この方のブログにある数字の検証は、おおむね正しいと思います。編集段階でこの部分の数字をどう表現するか、かなり検討をしました。
しかし結論は、「事をこれ以上複雑にするのはやめて、注書きに書こう」ということになりました。
著書では数字欄の下に、以下の注意書きがあります。
「このシミュレーションは簡便化のため円ドルレートを固定していますが、実際にはこの通りのことは起こりえないことに注意してください」
この方はその注意書きを引用せずに批判をされています。

もちろんそれがミスリーディングだということであれば、改訂版で再検討することはやぶさかではありません。しかし円高のスピードをどう想定するか、シミュレーションを何通りも本に盛り込むのか、などの問題は残ります。

以上が3つのポイントに対する私のコメントですが、回答になりましたでしょうか。


「ご回答ありがとうございます。 (U3)」
2012-01-16 00:04:30

先生、ご回答ありがとうございます。
このブログの方の指摘、そしてなにより
先生の回答で著作について、より理解が進みました。

1点目は2010年末が一番債券に有利とは言えない点が分かりました。
2点目は投信で再投資する方法で可能かもしれませんが、これは信託報酬が毎年かかりますから
コスト面を考慮すると債券に軍配がありそうです。
3点目は本書で但し書きあり、ということで注意深い読者なら分かるということですね。

以下のように、同じ方が追加で著作に対する検証をされていました。
ドル安、米国債金利の低下のトレンドを強調されているようですが、前回ほどの力を感じませんでした。
そして締めくくりは有用な本である、としていました。

http://blog.livedoor.jp/tsurao/archives/1702759.html


U3さんへ (林敬一)
2012-01-16 09:39:17
ブログの方の追加検証について。

引用
●2004年4月に利回り4.3%の米国債を1ドル=109円で買って「為替で損をしていても全体では利益が出ているはず」
林氏は「お見事の一言です」と褒めています。

では、本が出版された2011年8月までの約7年半で、その見事な投資はどうなっているのでしょうか?

引用終わり

この米国債に投資をされた方とのやりとりは、私が著書に書いているように10年10月くらいのサイバーサロン内でのやりとりです。出版より1年前です。

市場は当然動きますので、2年前のお話をもって今はだめだ、と指摘されても困りますね。

それと、もし今の極端な金利低下時点で比較するなら、高いクーポンの付いた元本の債券は、大きなキャピタルゲインがでていますので、それを加味しないといけません。この方の保有債券はとても高いクーポンがついています。現時点での評価をするのに、キャピタルゲインを入れないで元本は円に直すと減っていると評価するのはいかがでしょう?

書籍は一定の時間で区切って論旨を展開せざるをえません。それはこのブログの方もわかっているはずです。

そこで私は本を買われた方が、のちのち数字の検証がやりやすいように、様々な引用データのURL記して、「ご自分でフォローしてください」と案内しています。是非U3さんもその後の数字はご自身で検証されることをお薦めします。

もう一つ引用します
●最後に
最初に本を紹介したエントリーでも書きましたが、『証券会社が売りたがらない米国債を買え!』は王道の債券投資を勧めている点で、非常に素晴らしい着眼点の本です。
同じような投資信託の分散投資の本ばかりを何冊も読むくらいなら、その中の1冊とこの本を入れ替えておいた方が価値があります。
ただし、米国債を過剰に持ち上げている記述が見受けられるので、3割引きくらいで読むことをお勧めします。
引用終わり

ブログのB氏におほめをいただき、大変ありがとうございます。評論家の山崎元氏とは論旨に違いはあれ、合格点をいただき感謝いたします。

今後もU3さんがもし疑問な点などをお持ちでしたら、どうぞ遠慮なく指摘・ご質問ください。


Unknown (U3)
2012-01-16 20:48:10
先生、どうもありがとうございました。
納得できました。
ブログの方は7割の合格点を付けながらもそれを認めてしまうと、自身で展開しているインデックス投信による分散投資が音を立てて崩れてしまうからか、そういったバイアスから株の優位性を無理やり捻り出している印象を受けました。

遠慮せずにいくつか質問させて頂きたいのですが、ゼロクーポン債を国内証券会社で買おうとすると、ある程度の為替手数料と売り買いのスプレッドを覚悟しなければいけません。残存20年超のゼロクーポン債を持つ覚悟があるならこれくらいはコストとして甘受すべきでしょうか?あるいは外国のブローカーに口座を作って、とことんコストにこだわって取引すべきでしょうか?

もう一点、現在のドル円の水準と米国債の金利水準ですと、前者は魅力的ですが、後者は魅力的でないので、外貨MMFでドルを買って待機していようと思っています。
現在の米国債の水準は買うに値するでしょうか?


U3さんへ (林敬一)
2012-01-17 18:28:03

すみません、「先生」は私にふさわしくないので、ただの林さんにしてください(笑)

ブログの方の株式相場への援護射撃は、そういう理由もあるんですか。

イ ンデックス投信自体は、個別株の分析などできない一般の方にとって有力な投資手段だと私も思います。ところが投資の専門家でも債券の実力をみくびって いるので、元本を増やすには株式だ、と思い込んでいる人がほとんどです。その思い込みから、みなさん債券をしっかりと評価したことがないのだと思います。

債券投資のパフォーマンスを計るのにも、やはりインデックスを使用することが一般的です。でもそこに最も大きな落とし穴があります。そのお話はいずれ本文でみなさんにさし上げるつもりです。

U3さんの検討されている米国債のゼロクーポン債ですが、たしかに今の為替はとても魅力的ですが、金利はとても低いですね。MMFでの待機は賛成です。

債券を買う場合に、売買のスプレッドは証券会社の利益がそこにしかないので、回避はできませんよね。為替手数料は最近証券会社によってはほとんどかからないようなことも聞きますので、外資系も含めて研究されることをお薦めします。たとえ両者がかかるとしても、償還まで持つ長期投資であれば売却時のスプレッド はかからないので、ほとんど無視できるレベルだと思います。


「ありがとうございます。 (U3)」
2012-01-17 20:40:42

お言葉に甘えて、早速林さんと呼ばせて頂きます。
ゼロクーポン債の手数料について、と為替、金利についてのヒント、ありがとうございます。
MMFをコツコツ積み立てて金利上昇を待ちたいと思います。
豪ドルなどもMMFで積み立ててみます。

債券投資におけるインデックス使用の落とし穴の記事、とても楽しみです。

私はインデックス投資に興味を持って始めようとしたものの外債のインデックスファンドが株安、円高時に逆相関せずに一緒に下落しているというのを目にして疑問に思うようになりました。
ネットを調べているうちにゼロクーポンを利用している方を見つけたりして、米国債への投資に少し興味を持ち、その中で林さんの著作を手にしました。読み進むうちに、そして、Googleで著者のブログはないものか、と検索して3日前に辿り着きました。
これからブログもじっくり読ませて頂きたく思っています。
そんななか駆け足で見させて頂いた中で、「日本人の預金好きの理由」という
エントリーで書かれている以下の記述はまさにそうだと思いました。
債券投資をこれから身に付けていきたいと思います。

引用はじめ

「日本人の金融資産の9割がリスク資産には投資されていない。逆に投資を果敢にする人の8割が株に投資している。」
ということでした。

何故こんなに偏った投資行動をするのか、謎を解いてみましょう。

私の分析による答えは、「日本人は債券投資を知らないからです。」

引用終わり

また、「リスクの好きな日本人」というエントリーで、投信を買っているような投資家は、
・外貨のリスクを42%も取っている
・株式のリスクを83%も取っている、
という言及を見て本当にそうだと思いました。




以上がU3さんと林やりとりです。
  

今後、「円高トラップに嵌まり込む日本」のシリーズが終わったら、半年を経た著書の検証を行うと同時に、今後の投資のヒントをみなさんにお伝えしたいと思っています。
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円高トラップに嵌まり込む日本 その16.じゃ、結局どうなるの?

2012年01月16日 | 資産運用 


 前回はちょっと横道にそれて、リスクオン・リスクオフという最近よく言われる議論に、私なりのコメントを加えてみました。
 
 今回から元の議論、「じゃ、今後円レートはどうなるの?」に戻ります。
ここまで述べてきたのは、

 「貿易収支の赤字が定着しつつあり、それが所得収支の黒字も飲込んでしまう可能性が出てきている。経産省の見通しでは2015年くらいが経常収支赤字転換の目安と見ている」というものでした。それが現実の問題として認識され始めると、当然ドル円レートは赤字になる前に動き出す可能性があります。

 2015年前後は、実はもう一つ非常に大事な時期でもあります。それは家計の金融資産と財政の累積赤字がクロスする時期と計算されるからです。累積赤字は12年度末(2013年3月末)に予算ベースでは937兆円とされていて、この10年間年率3%で増加しています。一方、家計の金融資産は11年9月末で1,470兆円程度ですが最近はあまり増加していません。1,470兆円のうち株式などの投資分を除いた額は約1千兆円です。このままの増加ペースだと、累積赤字は2015年3月にちょうど1千兆円程度となり、家計の資産分とクロスするのです。その間に、団塊の世代が預貯金をそのまま使わずにお国のために残してくれたとしてのお話です。また消費税の10%への値上げは、社会保障などの増分と国債費の増分でほぼ消えます。財政のプライマリーバランスの実現など夢のまた夢、消費税35%でやっとです。

 (注)プライマリーバランス;税収と支出が収支トントンになることです。大本営はこれでバランスが取れると発表していますが、日本の場合プライマリーバランスが実現しても赤字の累増は止まりません。国債の利子が計算から除外されているからです。日本の国債の利子支払いは来年度予算でも10兆円を少し超え税収の4分の1が消えますが、その分をノーカウントにしての話です。政府の支出のうち国債費全体(金利プラス一部償還)はなんと税収の半分を占めています。


 経常収支の赤字化と、国債の国内消化の限界が同じ様な時期に来そうだというのは、とてもシンドイ話です。為替レートの決定は、1国、つまり日本の状況のみでなく、相手の状況も把握する必要がありますので、すこし米国の最近の様子に触れます。

1.米国債金利
  昨年8月、米国債がダウングレードを受けて株式相場が大暴落したとき、私は米国債はビクともしないだろうと申し上げました。その時の10年債の金利は2%程度で、ビクともしませんでした。その後、欧州問題が世界に激震を走らせた秋から年末にかけてもビクともせず、今は1.9%くらいまで低下し、世界の金融資産の中での安定性は際立っています。

2.米国債のCDSスプレッド
(米国債の保険料率)
やはりダウングレードのときに、ピクリとだけした米国債のCDSスプレッドは、先週12日に49bpと非常に低く、日本の152bpやドイツの101bpには比べようもありません。ちなみにフランスは210bp、イタリアは492bpと危機的レベルです。

3.米国の財政、日本との比較

GDPに対する債務残高の比率;日本 2.1倍、米国 1.0倍
ここで言うGDPは名目です。何故実質GDPでなく名目なのかといいますと、税収の源泉は名目のGDPだからです。消費税はインフレ率込の名目価格の5%です。デフレの日本の税収は、この意味でも伸びません。アメリカは健全なインフレ率を保っているので、実質GDPが伸びなくても税収は伸びます。
年間税収に対する債務残高の比率;日本 24倍、 米国 6倍
消費者金融の限度は、年収の3割まで。
家を担保にした住宅ローンでも限度は年収の5-6倍までが目途。
アメリカはその範囲に収まりますが、日本は絶望的です。

実はこの税収に対する債務の比率というのは非常に大切で、格付会社が見ているのは
第一に収入と金利支払いの比較(カバレッジレシオと言います)
第二に収入と累積債務の比較
  という具合です。

 米国財政はひっ迫しているというニュースばかりが流れますが、実際の数字をちょっと比較しただけでも日本との差は際立って安定しています。逆に、日本国債はいつ格付会社から打たれてもおかしくない状況だということがわかります。

つづく
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