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ビットコイン その2

2017年09月28日 | ビットコイン

  本日、9月28日の日経新聞朝刊にタイミングよくSBIホールディングスが独自の仮想通貨を発行する予定とのニュースが出ていました。

  内容で注目されるのは、まさに私が指摘した欠点を一部克服することを含んだものだと言う点です。それは以下の部分です。

 「Sコインは日本円との安定した交換レートを常に提供することで、決済手段として普及させたい」

   本日の日経電子版をそのまま引用します。

 引用

SBIホールディングスは独自の仮想通貨「Sコイン」を新たに発行し、小売店舗などでの消費者の決済手段として普及を目指す。独自の決済基盤システムを開発することで、送金コストをほぼゼロにするほか、決済代金の即日現金化などを可能にする。店舗側の決済コストを抑え、決済を目的とした利用者を増やす狙い。

 既存の通貨に基づくデジタルマネーとしてでなく、取引所で売買可能な仮想通貨としての発行を目指す。

 独自の決済基盤システムはブロックチェーン(分散型台帳)を応用することにより、決済する個人の特定や支払い、店舗側への即時入金などを可能にする。店舗にとってはクレジットカードや電子マネーなどの既存の決済手段に比べ、低コストで決済の仕組みを整えられる。

 「ビットコイン」をはじめとした仮想通貨は、値動きの大きさなどから投機目的の売買が中心となっている。

 Sコインは日本円との安定した交換レートを常に提供することで、決済手段として普及させたい考え。まずは来春から実験的に社員にSコインを配布し、本社の近隣店舗で利用できるようにする方向だ。

引用終わり

   まさに昨日私が上げた素朴な疑問への回答を含んだものです。それは、バクチに使えないよう、価値を円にリンクさせて安定させている点です。

  しかし、SBIホールディングスの信頼性について、私は安心だとは決して思っていません。すると、より信用のおける発行主体が出てきた場合、一気にしぼんでしまう可能性もあります。ただビットコインと違い、SBIが倒産でもしない限り、人気は離散しても一気に無価値になることはないかもしれません。

  以上、タイミングのよいニュースでした。

  

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ビットコインって、どうよ?

2017年09月27日 | ビットコイン

  今回の解散については、自己保身解散、〇〇隠し解散、など様々な名前が付けられていますが、要は大義がないために論点がないというナンセンスな解散です。

   私に言わせれば、今回の解散は「解散の是非を問う解散だ」(笑)です。テレビなどを見ていると、一番の論点は解散の是非だからです(爆)。

   しかし私はおかげで溜飲を下げています。何故か。理由は「これで違憲行為連発首相の下での改憲がほぼなくなったからです」。どうみても与党連合あるいは改憲連合で3分の2は無理そうです。結局ミエミエの自己保身解散など、墓穴を掘るだけです。おかげで小池新党は求心力を大いに増し、もしかすると野党連合が成立するかもしれないところにきています。おもしろい選挙になりますね。注目しましょう。

 

  話題はガラッと変わります。今回は友人の何人かからもらった質問、

 「ビットコインって、どうよ?」

   という問に、回答ではなく、私なりに疑問をぶつける形でコメントしたいと思います。私はビットコインを最初からかなり懐疑的にみていますので、どう懐疑的なのかを示すことにします。

   私はフィンテックの専門家ではないし、「ブロックチェーンって何?」に的確な回答をできる専門家でもありません。なので、私のなりの見方しかできないのですが、私の発想法を理解していただけるチャンスだと思います。もしかすると間違ったことを言うかもしれません。でも一応、ビットコインのことをかなりの程度知っている友人に私の疑問をぶつけると、「うーん、回答に窮する」と言われ、的確な答えは出てきませんでした。従って全くの的外れではない、というくらいのことでお聞きください。

   ビットコインというものが世の中に出回ってきたときに、いの一番に感じた疑問は以下の点です。

 疑問その1.ビットコインよりもっといいものが出てきたら、価値がなくなるんじゃないの

 疑問その2.銀行が自分の信用でビットコインBを始めたら、そっちがより安心だよね

 疑問その3.銀行が信用できないなら、中央銀行の日銀がビットコインNを始めたらどうなの

 疑問その4.それでも信用できないなら、世界銀行がビットコインWをはじめたらどうなの

 疑問その5.価値が変動しないコインが出てきたらそっちがもっと支持されるんじゃないの

 疑問その6.少なくとも特定の通貨価値とイコールのものが出てきたら、価格変動にわずらわされないで、実用性が増すんじゃないの。たとえば円連動のビットコインYとかドル連動のビットコインDとか

 疑問その7.世界で共通の価値を実現させるんだったら、SDR連動ってのはどう

 そして最近は、

 疑問その8.世界各国がマネーロンダリングに悩みビットコインに規制をかけて流通禁止になったらどうなんの。トレードに消費税のような税をかけたら、一気にしぼんじゃうんじゃないの

 

  専門家にこうしたことをぶつけると、きっと上に示した私のアイデアは、ビットコインの範疇じゃない。発行主体やしがらみがないことに意義があるんだ、などと反論されそうです。しかし私のこうした素朴な疑問に対して、的確な回答は用意できるのでしょうか。

   私が言いたいのは、すでに1,000種類もあるということは、一部を除きほぼすべてが将来は無価値になるのに、何故売ったり買ったりする人間がいるのか。早いもん勝ちのババ抜きゲームに決まっているのに、何故大事なおカネを突っ込むのか。

   私のかつての上司、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは2週間ほど前にこう言っています。「仮想通貨は詐欺であり、崩壊する!」。ロイター日本語版を引用します。上司と言っても、実は握手を1回しただけです(笑)。

 引用

[ニューヨーク 912日 ロイター] - 米大手銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は12日、仮想通貨ビットコインは「詐欺であり、崩壊する」と語った。同氏の発言を受け、ビットコインBTC=BTSPは一時4%急落した。ダイモン氏は当地で開かれた投資家会議の席で「ビットコインは続いていかない。どこからともなく通貨を生み出せたり、それを購入する人が本当に賢いと思われているようなところでビジネスなど出来ない」と語った。さらにJPモルガンのトレーダーが暗号通貨を取引しているとしたら「即刻解雇する。その理由は二つで、第一に就業規則違反、第二に間抜けで、いずれも危険だからだ」とした。

引用終わり

   彼の発言を極端で仮想通貨を歪曲しているという向きもあるようですが、世界でもっとも権威ある銀行の一つであるJPモルガン・チェースのCEOが言う事ですから、重みがあります。

   彼がなんでソロモンにいた私のかつての上司なのか、ちょっと説明します。彼こそは金融界における世紀の風雲児なのです。

  彼は大学在学中の80年代に、のちのシティーグループ総帥となったサンディー・ワイル氏の下で丁稚をしていました。シェアソンという準大手の証券会社です。その会社はその後ワイル氏の手腕によりM&Aを重ねリーマン・ブラザーズをも飲み込み、シェアソン・リーマンという大手証券の仲間入りをしました。それをAMEXが買い取りましたが、買われたほうのワイルがアメックスのCEOになります。その後ワイルは放逐されますが、丁稚のころからずっと一緒にいたダイモンも放逐され二人で失業。

   二人で小さなクレジット会社を買い取り、その後はまた買収に買収を重ね、90年代後半にはスミスバーニーやソロモンブラザーズ、ついでに日興証券の法人部門を傘下に置き、最後はシティーと合併しました。と思ったらジョン・リードというシティーの顔であるCEOを追い出し、二人が支配者になっていました。まるで国盗り物語を地でいっています。

   しかしダイモンは、今度はワイルに放逐されまた失業。その後バンクワンという地方銀行のCEOになったと思ったらまた買収を重ね、いつの間にかJPモルガン・チェースを手に入れてCEOにおさまったのが2004年、若干48歳の時です。2度の失業をものともせず、なんという波乱万丈な人生でしょう。彼は今まだ61歳ですが、世界で最も影響力のあるバンカーとして金融界に君臨しています。

   そのダイモンが仮想通貨を「詐欺だ」と言っている重みは無視できません。もちろんフィンテックの何たるかも知り尽くした上での言葉です。

   確かにブロックチェーンという新たなテクノロジーは、今後のフィンテックもその他のIT産業においても大きな影響力を持つに違いありません。

   しかし私にはビットコインで代表される仮想通貨はただのバクチのネタくらいにしか見えません。絶対に手を出してはいけない。ついでに中国の影響が大きいものは、いつなんどき規制がかかってだめになるかわからないという別のリスクもあります。

   最後に、私がよく言う「金は金の卵を産まない」、バフェット流では「100年経っても100gの金は100gだ」。これはそのままビットコインにも言えます。「ビットコインは永久に1銭のコインも産まない」。価値を生まないものは、投資には値しません。

   以上、林流ビットコイン評価でした。

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大丈夫か日本財政17年版 その20 日銀保有の国債はどうなる 16

2017年09月21日 | 大丈夫か日本財政

  「解散」

   何という自分勝手なやり口でしょう。自己保身を日本政治の意思決定の中心に据えるとは。

   今一度、「奢れるもの久しからず」という言葉を彼に送ります。こうした国民をバカにする行為で、若干持ち直した支持率は下がるに違いありません。

  加計・森友隠しを追及するため、6月に国会議員の4分の1をもって臨時国会の召集要求がなされているにもかかわらず、召集せずに解散するのは憲法に反する行為です。

 憲法53条;内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

   違憲行為はこれだけではなく、おととしの違憲立法もしかり。そうしたことを連発する安倍首相に憲法を語る資格なし。

 

  もう一人のお騒がせ男トランプは、予想通り国連を愚弄するスピーチをやってのけました。北朝鮮のあのオバサンもびっくりするような口調で、世界に向けて脅迫をしています。国際的な連帯により世界平和を希求する国連の場で、「国を全滅させる」と言ってのけました。

  本当にそうしたことが起これば、韓国や日本も巻き込まれる可能性が大きく、北朝鮮の全滅とは韓国・日本の壊滅もやむなしだということを、トランプが考慮しているとは思えません。サイコパスのやることは衝動的であることが多く、それを受ける側もサイコパスであれば、突発的な衝突が全面戦争に至ることはなきにしもあらずです。

   国連でもまたアメリカファーストを繰り返し、パリ協定からの離脱、TPP離脱に象徴される保護主義一色の対外政策は、世界からの孤立を宣言したようなものです。それらを再度国連の場でトランプ自身が宣言しました。それに対してフランス大統領マクロンをはじめ各国の首脳のほとんどが、トランプ演説の内容を表立って非難しています。ついでにハリケーンもパリ協定離脱宣言のトランプに鉄槌を連発しています。

  国連ではまともな首脳は、だれもがはっきりとトランプを非難する中、わが安倍首相のみ彼の演説内容に対し一言も反論しませんでした。それ自体が世界の嫌われ者トランプを完全に支持していると国際社会はとらえています。しかも安倍首相は北朝鮮問題について「対話による問題解決の試みは、一切が無に帰した。必要なのは対話ではない。圧力だ」。「すべての選択肢はテーブルの上にあるとする米国の立場を一貫して支持する」と語っています。きっと北朝鮮はこの安倍発言になんらかの反応を返すでしょう。

 

  うちのマンションでは来週、世田谷区の危機管理室・災害対策課の担当者にきてもらい、Jアラートの説明をうけることにしました。都会では自治体によるスピーカーからの放送はふだんほとんど聞くことがなく、いったいどういう音声がどこから流れるのかを知る人すらいませんので、そこから説明がスタートします。北朝鮮のミサイルが飛んできた場合、Jアラートはどう作動するのか。スマホなどとの連携は。その場合どこへ避難すべきかなど、具体的に教えてもらうことにしています。そうした説明会を本気で開催するほど、マンションの居住者のみなさんは北朝鮮問題を真剣にとらえています。

  

  とまあ、かなりまじめな話を書きましたが、実は今私が一番面白そうだと勝手に思っているのは、金正恩を国連に連れてきてトランプとディベートをさせることです。金正恩がダメなら、あの劇画チックなオバサンのスピーチでもかまいません。見世物としてはかなり面白いですよ(笑)。

   そうだ、トランプも金正恩も、どっちも恐い顔が得意なので、

 「ニラメッコしましょ、笑うと負けよ、アップップ!」の勝負でもいいかも(爆)

 

  では真面目な話題です。FOMCの結果についてコメントします。詳細の解説はフェッド・ウォッチャーと呼ばれる専門家におまかせすることにして、私なりに金融市場の将来について、見通しを簡単に述べることにします。理由はもちろん、それが今後の日本の金融財政問題に大いに影響すると思われるからです。

   昨日のFRBの決定内容は市場関係者の予想通りでしたが、為替市場は12月の再利上げ予想にしっかりと反応して円安に振れ、112円台をつけました。そして何よりも、遂に資産圧縮という出口に踏み出したことが特筆されます。そレに対して市場は実に冷静でした。為替が反応したくらいで株価は若干の上げで終わっています。バーナンキが緩和の停止についてコメントした際には、バーナンキ・ショックが世界を駆け巡り、日経平均すら千円以上暴落したのですが、今回は用意周到であったため、市場は冷静そのものでした。

  イエレンおばさんに、座布団1枚!

  資産圧縮といっても、買い込んだ国債を売りに出すのではなく、保有する国債が償還を迎えた時に何もしないということだけです。これまでは量的緩和を維持継続するため、保有国債が償還を迎えた額と同じだけ市場から国債を買い入れ、FRBの保有資産額を一定量キープしていました。今後はその買い入れを行わないのです。

   このいわゆる出口政策は、長期金利の上昇圧力になることが特徴です。すでに短期金利は政策金利、つまり翌日物金利の引き上げにより上昇していましたが、これからは長期金利の上昇も許し、正常化への道を歩もうというのです。この発表に対して債券市場はそれなりに反応し、指標である10年物金利が2.27%へ0.03%ですが上昇しています。

   資産の圧縮ペースはスロースタートをして、あとになるほど圧縮ペースが大きくなります。その理由は、買い入れのペースが途中から拡大していったためです。では日本に対する影響はどうか。

  私は日本に対する影響は長期的には為替レートに表れることになると思っています。理由は円債の長期金利がゼロもしくはマイナスであるのに対し、米国の長期金利が一方的に高くなれば、米国債は我々個人投資家だけでなく日本の機関投資家にとって大きな魅力を持つ投資対象になるからです。機関投資家は日本国債という投資対象を失い、百兆円単位の余裕資金を保有し、安全な投資先を探しています。

   しかも今後日本国の安全神話が様々な面から崩れていくと見込まれるため、いよいよ本格的資本逃避も現実味を帯びてきます。

 

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大丈夫か日本財政17年版 その19 日銀保有の国債はどうなる 15

2017年09月14日 | 大丈夫か日本財政

  トランプ対金正恩のチキンレース、今回は金正恩の勝ちでした。まあ、プーチンの勝ちと言ってもいいかもしれません。前に申し上げたとおり、プーチンは自分に対し制裁を課しているトランプに、「制裁に参加しろと言われる筋合いはない」、と言っていましたが、アメリカはロシアと中国に妥協し、たいした制裁にはなりませんでした。もっともトランプに言わせれば、それも計算通りだと強弁するのでしょう。

   国連の北朝鮮に対する制裁合意の内容はおおかたの予想通り、石油の全面禁輸はなく、金正恩の個人口座も凍結されず、北朝鮮船舶の臨検もなしでした。つまり金正恩が本気で反撃する口実になるような制裁は発動されず、いつものようにアリバイとしての制裁に終わる可能性が強いものばかりです。

   それでも今回は中国が本気でやる気を表明していることなど、ある程度効果を上げるだろうと評価している向きが多いのですが、私はそうは単純に事は運ばないだろうと思っています。金正恩は核やミサイルの開発をやめるはずもなく、石油製品のある程度の輸出制限も、誰が実効ある見張りをするかといえば、当事者としての中国です。とても本気でやるとは思えないのです。

   ドル円相場は国連の合意をもって思い切りリバウンドしましたね。アメリカ株は最高値を更新し、市場参加者はめでたしめでたし。ではこれでおしまいかというと、そうとは言えないのがトランプと金正恩というサイコパス同士の争いです。今後もミサイルは打ち続けるし、核実験も行うでしょう。それに対しトランプはとんでもない反応をしかねませんので、まだまだ目が離せません。

 

  では本題です。前回は日本の今後を概観してみました。要点はオリンピックを迎える前、19年あたりに景気も株価もピークを付ける可能性が強い。日銀による国債の爆買いも、国債自体の枯渇から限界を迎えるのが19年あたりと見込まれる、というものでした。

   しかしコメント欄で、

2019年ですかー、すぐですね。

というコメントに対し私は、

「うーん、19年という示唆をしていますが、結論はちょっと早いと思います。」

 と返しました。

  実は19年の秋にはもう一つ大きなマイナスの要素、消費税値上げまであります。従って確かに19年から20年にかけては大きなヤマ場を迎えると思うのですが、それでもそのまま大幅な円安・金利上昇からインフレが昂進し、実質財政破綻に進む可能性は5分5分くらいだと私は考えています。

  その理由を示します。

 理由その1.国債の枯渇に対して日銀は買い入れ額の減少で延命をはかる

   日銀はもちろんこうした国債の枯渇シミュレーションをしていないはずはありません。単純な計算ですから。その証拠が16年9月の「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」と「オーバーシュート型コミットメント」、あるいは「長短金利操作付き量的・質的緩和策」の導入です。

   長たらしくわかりづらい名前なのは、苦しい言い訳をしているからです(笑)。エコノミスト達はこれを物知り顔で様々に解説していますが、私がクロちゃんの代わりに平たく言いなおしますと、

 「異次元緩和策の旗を降ろしたわけじゃないんだが、限界が見えてきし、162月に導入したマイナス金利の評判悪いので、ちょっと煙に巻いたのさ」

   これで毎年80兆円の爆買いが細って60兆円になろうが40兆円になろうが、「それはあらかじめわかっていたさ。だから長短金利・・・を導入したのさ」と言い訳をするのです。

   問題はこうしたミエミエの言い訳を市場がどう評価するかです。「ない袖は振れない、しかたないな」としてしまうか、「黒田を降ろせ」になるか、はたまた日銀の信頼性喪失までいくかです。

   一昨日日経新聞が安倍首相にインタビューしました。大きなニュースとなっていませんが非常に大切なことに言及しているので記事を引用します。

来春任期が切れる日銀の黒田東彦総裁については『実体経済で非常に成果を出しているし、デフレではないという状況を作り出してくれた。手腕を全面的に信頼している』と評価した。」

  たしかに日本経済は雇用をみれば非常に好調ですし、企業業績も好調で株価も上昇しています。それをもってデフレではない状況と言っているのでしょう。安倍首相は少しでも失敗のレッテルを貼りたくないので、自分をプロテクトする意味でも黒田氏をはずせないのです。そのため2%の物価目標についても堅持する」と述べています。

   こうしたことから、安倍首相が政権を担当する限り黒田氏が総裁を続け、二人は苦しい言い訳をしながらも崩壊の芽を必死に摘み取ろうとするでしょう。


 理由その2.経常黒字が継続している

   日本の経常収支はひところよりかなり黒字幅が大きくなり改善しています。2010年以降を2年ごとに振り返りますと、いったんは毎年黒字が減少を続け、およそ6分の1まで激減しましたが、14年をボトムに回復しています。数字を並べます。

 10年;2,210億ドル 12年;597億ドル 14年;365億ドル 16年;1,910億ドル

  そして17年の推定値は2,025億ドルの黒字です。

   このことはドルに対する円のサポート要因になります。経常収支の中身を貿易収支とサービス収支、それに所得収支に分解すると、サービス収支は常に小さな赤字。所得収支はコンスタントに大きな黒字。それに対して貿易収支だけが赤字になったり黒字になったりで大きく振れ、それら3つの合計数値である経常収支を左右しています。

   貿易収支が大きく振れる最大の要因は石油価格とドル円レートです。このところの石油価格低下と円高傾向が、貿易収支の黒字化に寄与しています。しかしいわゆるモノもサービスも輸出競争力が長期低落傾向にあることは確かで、ひとたび石油価格などで逆風が吹くと経常収支の黒字も怪しくなります。

   そうした経済ファンダメンタルズに対してマイナスのインパクトを与える要素は、短期的には19年10月に予定されている消費税値上げ、長期的には高齢化に伴うモノとサービスに対する需要の鈍化です。

   このうち消費税値上げについては前回の3%に対して今回は2%ですが、所得の伸びが見込めない高齢者の比率が大きくなっているため3%の時と同じくらい、つまりGDPが大きくマイナスに落ち込むほどのインパクトがあると私は見ています。

  それに対して政府は刹那的な対策を打つでしょうから若干は緩和されますが、高齢者は年金額が上がらない限り合計5%のマイナスインパクトを長期に受け続けるのです。

   みなさんもご自分のこととして考えてみてください。1千円のものを買うと100円、1万円の物に対しては1千円、10万円には1万円もの税金が課されます。私のような年金生活者にはとても大きな負担になり、その分他の買い物を減らさざるを得ません。若い方で賃金上昇の恩恵を受けたとしても、買い物をちゅうちょすることが多くなると思います。このことは間違いなく日本経済のファンダメンタルズを弱める方向に作用します。

   ここまで日本に関して様々な要素を見てきましたが、財政状況と金融政策は限界に達してしまうのは間違いないのですが、経常収支に代表されるファンダメンタルズ、つまり経済力はそれを必死に食い止める可能性を残しているというのが私の見立てです。

つづく

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大丈夫か日本財政17年版 その18 日銀保有の国債はどうなる 14

2017年09月07日 | 大丈夫か日本財政

  恒例のアメリカ財政の綱渡りサーカスは、綱を渡り始める前に幕となりました。とりあえずハリケーンのこともあり、3か月の先延ばしで決着です。もちろん3か月後もサーカスは開催されますが、結果が見えているためさほど面白い見ものにはならないでしょう。


  先週から今週にかけては北朝鮮のミサイルと核実験のニュースに翻弄されましたね。株価も大きく反応しました。その中でトランプは様々なジャブを繰り出しています。ほとんどが北朝鮮に対する直接のジャブではなく、中国とロシアに向けてです。トランプは、

  「オマエらが甘やかすからだ。もっと協力しろ。」と他人事にしています。はたしてそれで事は解決の方向に向かうのでしょうか。私には疑問です。

  その理由は、中国もロシアも北朝鮮のリスクなど日・米・韓ほど感じていないと思うからです。北朝鮮のミサイルはすべてアメリカと同盟国に向いているからで、きっと習近平もプーチンも、「トランプよ、ざまみろ」くらいに思っているのでしょう。

  それが証拠にプーチンは一昨日アメリカに向けてこんなことを言っています。「北朝鮮の制裁にロシアも協力しろだと。ロシアに制裁を課しているのはおまえらだろ。制裁を科している相手に制裁しろとはなにごとだ、ふざけんな」。

  まことにもって、ごもっとも(笑)。

  日本にとって北の脅威は「今そこにある脅威」で、決して笑い事ではないのですが、トランプのやることなすことは、なぜか笑いを誘うのです。

  

  そんな中9月3日の日曜日はクラブチャンピオン決勝戦の1回戦でした。私の予選通過は16人中16番目のギリギリだったので、マッチプレーで行われるトーナメント1回戦の相手は予選トップ通過の選手です。お伝えしたとおり彼は本当に300ヤードの飛距離を持つアスリートゴルファーでした。

  あの人は300ヤード飛ぶよ、という話はときどき聞くのですが、彼はめったにいない本物です。礼儀正しいナイスガイですが、飛距離を聞いてみると「平均は300ヤードです。飛んだときは330くらいです」とのこと。もちろんフェアウェーが平らで無風状態を前提にしています。決して下りの追い風などではありません。

  私がメンバーになっているコースには300ヤード前半のホールがいくつかありますが、その多くで彼はドライバーでグリーンサイドまで飛ばしたことがあるそうです。キャディーさんもそう言っていました。

   もっともそこまで飛ばすと危険がつきまとうため、予選でも今回の決勝戦でも半分以上のホールでドライバーを封印し、ティーショットは3番アイアンで打っていました。その飛距離は230ヤード。私のドライバーのナイスショットと同じくらいなので、ときどきアイアンでオーバードライブされました。

  前半の9ホールは取ったり取られたりを繰り返し、私の1ダウンで意外と善戦していました。後半に入り10番は一番長いパー4で、このあたりからは勝てないだろうと思っていたのですが、意外にも私がパーで彼はボギーとしてマッチ・イーブンに。

   11番は分けでしたが、12番から私のセカンドショットが乱れ始め、3ホール連続で負け。15番ホールは勝たない限り、引き分けても負けが決まるドーミーホールとなりました。そしてそれを取ることができず、あと3ホールを残して私の負けとなりました。

   もっと早く負けるだろうと予想していたのですが、15番まで来ることができたのは大満足です。涼しくて良い天気の中、年に一度のマッチプレーを楽しむことができました。

  ゴルフの専門用語ばかりですみません。これでゴルフのお話は終えます。

 

  さて本題です。前回は日本の財政と金融の将来を占うのに必要な世界の主要国の動向を取り上げました。アメリカはすでに金利引き上げから次のステップである中央銀行FRBが資産圧縮の段階に入りそうだ。欧州はアメリカには遅れるものの、テーパリングの段階に向かう可能性が出てきた、という内容でした。

  では日本はどうか。この先を展望しておきましょう。

  現在雇用は絶好調と言ってもよいのですが、そのひっ迫が逆に将来の経済成長の足かせになっています。そのため足元の成長率は高くても、先の見通しは楽観的になれません。雇用のひっ迫が強まっているのに、何故賃金が上昇しないのか。その理由についてはまた別途書くつもりです。

  日本国内のイベントでこの先注目する必要があるのは、もちろん20年のオリンピックです。以前私はオリンピック開催国の景気と株価の分析をみなさんに簡単にお示ししました。例にしたのは北京、ロンドン、そしてその時に進行中だったリオでした。「多くの投資家はオリンピックを頂点だと思っているが、実際にはその1年くらい前に景気や株価のピークが到来する」ということを数字で示しました。

  リオなどと違いすでにインフラ整備の進んでいる日本は、オリンピック景気に沸くようなことにはならないと私は思っています。64年のオリンピックは高度成長期にあったため、国全体でインフラを中心に整備が進められました。20年は東京都が主体ですし、大きなインフラ土木工事の必要性はありません。競技施設と選手の宿泊施設程度です。そのため直接的な経済効果はおおむね12兆円程度と試算されています。19年までにほぼすべてが整えられ、オリンピック特需もインフラ整備部分はピークアウトするでしょう。

  もちろんオリンピック開催中は外人旅行客が増え、東京のみならず日本中で宿泊客が増加し、買い物でおカネをおとしてくれるためある程度は潤うのですが、その分開催後には反動が来ます。

  すると世の中はオリンピック開催で沸き立っていても、先を見越す株価は19年くらいにはピークアウトし、その後実体経済もピークアウト。実際にオリンピックを迎える20年頃には、下降線をたどる可能性が強くなります。

  64年のオリンピックの時はインフラ整備の効果が大きく、すぐに不況にはならなかったのですが、その後2年目には「昭和40年不況」に陥りました。上場企業が何社か倒産し、山一証券に日銀特融が行われたため、証券不況とも呼ばれました。

  しかし60年代から70年代にかけてはなにせ高度成長期です。我々団塊の世代が巨大な塊として労働市場に参入し、大量消費を始めたのもその頃です。私はその世代の真ん中ですが、高校卒業が68年、昭和43年ですので多くの団塊の世代は73年には学校を卒業し終え、みな社会人になりました。日本経済が高度成長を続ける条件が整っていました。

  現在の人口デモグラフィ―はそうした後押しがないことを示しています。団塊の世代がすでにほぼ65歳以上となり労働市場から退出し、労働人口は確実に減少して潜在成長力を押し下げます。


  一方財政に目を向けると、来年度予算も概算要求では100兆を超え史上最高を更新するのは間違いなし。経済と税収が順調であれば、赤字を大幅に削り込んだ緊縮予算を組むのが当然のハズですが、そのような気配は全くありません。

  これまで20年以上にわたり効果のない「呼び水」と言われる財政出動を続けてきましたが、今年度も補正予算を組み、そして今後も「景気回復のため」と称する放漫財政が継続されます。

  税収以上の支出は、私はすべて景気対策のための財政出動とみなします。安倍首相はアベノミクスの成果を誇ってみせますが、誇れるほど成果が上がっているのだったらこれ以上の赤字垂れ流しはやめ、たまには黒字予算を組み、借金を減らしたらどうでしょう。もっともその提案に乗る政財官の人間は皆無でしょう。政治家という人種は、自分が貧乏くじを引くのがいやだから、タックスペイヤーのカネを使いまくります。

  19年末に策定される20年度政府予算では、「20年度財政赤字解消の国際公約」が果たせないことが見込まれるため、政府が言い訳をするハメに陥るでしょう。言い訳をすればするほど財政リスクの国際的注目度が高まります。

  そこにさらに、例の日銀の国債爆買いの限界が重なることになります。先日お伝えしたように、市場に出回る国債の枯渇です。その試算によると2019年が国債枯渇のヤマ場となります。

  つづく

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