前回の山崎元氏の3千万円のポートフォリオの数字に間違いがありましたので訂正させていただきます。間違いは個人向け国債1,200万→1,000万、国内株式400万→600万です。ストーリーに変化はありません。
正;預金800万円、個人向け国債1,000万円、国内株式600万円、先進国株式300万円、新興国株式300万円
誤;預金800万円、個人向け国債1,200万円、国内株式400万円、先進国株式300万円、新興国株式300万円
これにより、安全資産に60%、リスク資産に40%となります。
山崎氏のお薦めは、超安全な資産からいきなりリスクの高い株式に飛んでしまう、と私はコメントしましたが、正しい数字はリスクをより大きく取れと言っています。本当にリタイア世代に適合するか、ちょっと不安です。
さて今回は、安全運用のお手本とも言うべき、私たちの年金の運用ポートフォリオの紹介です。
日本の公的年金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と呼ばれる運用機関が2012年の時点で約108兆円を運用していて、その性質上非常に慎重な運用をすることが半ば義務付けられています。ポートフォリオの配分が公表されていますので、慎重な運用の例としてご覧にいれます。
基本ポートフォリオは
国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%、短期資産5%(預金など)
7割を安全資産に、3割をリスク資産にという割合です。この比率は他の例よりかなり安全志向が強いと思われます。
GPIFのホームページには運用成績の公表数値があります。これまでお示しした各ポートフォリオの運用実績と比較できるととても面白いのですが、他の2つの例は仮定の話ですので残念ながら実績はありません。
GPIFは10年ほど前から運用を開始していますが、その間の平均利回りは1.3%であると公表しています。
なんかヘンだと思いませんか。年金はそもそも非常に長期に渡る運用をしますので、例えばすべてを20年以上の長期国債だけで運用しておけば、少なくとも2%以上の運用実績が簡単に出せるはずです。
年ごとの実績を見ると、マイナス5%、マイナス7%などという年が散見されるため、こんなみじめな結果になっているのです。11年間のうちマイナスは5回もありました。
ということは多分、「国内債券以外のポートフォリオの成績はとても悪い」と想像できます。もしかすると国内株式は11%しか構成比がないので、個人投資家並みの成績、つまり半減なのかもしれません。でないと1年で全体をマイナス7%にするのはとても実現不可能です(笑)。きっと東電なんかは公的年金が最も好きな運用先でしょうから、しこたま入っていたんでしょうね。
これは運用が下手だというよりも、今の日本の運用環境では誰がやってもしょせんこの程度だ、ということなのです。この機構はとてつもなく大きな組織で、たくさん人件費をかけて専門家を雇い、超一流の金融関係者からアドバイスを受けています。でもこの程度なのです。
だったら私が言うように初めからすべてを超長期国債だけ買って人件費もかけずに放っておいたら、ネットの収益で2%を超えているはずです。一体、運用のための経費がいくらなのか証券会社に払った手数料を含めて公表してほしいものです。みなさんや私の分も入っているのですからね。
公的年金は、毎年いくらオカネが入ってきていくら出て行く、というのが超長期に渡って見通せます。ファンドのように突然オカネが流出してしまいこともないので、超長期国債による運用が最も適しているはずです。もしかすると国債にリスクを感じているのかも、と勘繰りたくなります。
ということで、この安全第一のはずのポートフォリオ、あまり役に立たないことが判明しました。