ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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初歩の投資教室 14 ポートフォリオの組み方、その3

2012年09月26日 | 初歩の投資教室

  前回の山崎元氏の3千万円のポートフォリオの数字に間違いがありましたので訂正させていただきます。間違いは個人向け国債1,200万→1,000万国内株式400万→600万です。ストーリーに変化はありません。

正;預金800万円、個人向け国債1,000万円、国内株式600万円、先進国株式300万円、新興国株式300万円

誤;預金800万円、個人向け国債1,200万円、国内株式400万円、先進国株式300万円、新興国株式300万円

これにより、安全資産に60%リスク資産に40%となります。

  山崎氏のお薦めは、超安全な資産からいきなりリスクの高い株式に飛んでしまう、と私はコメントしましたが、正しい数字はリスクをより大きく取れと言っています。本当にリタイア世代に適合するか、ちょっと不安です。



  さて今回は、安全運用のお手本とも言うべき、私たちの年金の運用ポートフォリオの紹介です。

  日本の公的年金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と呼ばれる運用機関が2012年の時点で約108兆円を運用していて、その性質上非常に慎重な運用をすることが半ば義務付けられています。ポートフォリオの配分が公表されていますので、慎重な運用の例としてご覧にいれます。

基本ポートフォリオは

国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%、短期資産5%(預金など)

7割を安全資産に、3割をリスク資産にという割合です。この比率は他の例よりかなり安全志向が強いと思われます。

  GPIFのホームページには運用成績の公表数値があります。これまでお示しした各ポートフォリオの運用実績と比較できるととても面白いのですが、他の2つの例は仮定の話ですので残念ながら実績はありません。

  
  GPIFは10年ほど前から運用を開始していますが、その間の平均利回りは1.3%であると公表しています。

  なんかヘンだと思いませんか。年金はそもそも非常に長期に渡る運用をしますので、例えばすべてを20年以上の長期国債だけで運用しておけば、少なくとも2%以上の運用実績が簡単に出せるはずです。

  年ごとの実績を見ると、マイナス5%、マイナス7%などという年が散見されるため、こんなみじめな結果になっているのです。11年間のうちマイナスは5回もありました。

  ということは多分、「国内債券以外のポートフォリオの成績はとても悪い」と想像できます。もしかすると国内株式は11%しか構成比がないので、個人投資家並みの成績、つまり半減なのかもしれません。でないと1年で全体をマイナス7%にするのはとても実現不可能です(笑)。きっと東電なんかは公的年金が最も好きな運用先でしょうから、しこたま入っていたんでしょうね。

  これは運用が下手だというよりも、今の日本の運用環境では誰がやってもしょせんこの程度だ、ということなのです。この機構はとてつもなく大きな組織で、たくさん人件費をかけて専門家を雇い、超一流の金融関係者からアドバイスを受けています。でもこの程度なのです。

  だったら私が言うように初めからすべてを超長期国債だけ買って人件費もかけずに放っておいたら、ネットの収益で2%を超えているはずです。一体、運用のための経費がいくらなのか証券会社に払った手数料を含めて公表してほしいものです。みなさんや私の分も入っているのですからね。

  公的年金は、毎年いくらオカネが入ってきていくら出て行く、というのが超長期に渡って見通せます。ファンドのように突然オカネが流出してしまいこともないので、超長期国債による運用が最も適しているはずです。もしかすると国債にリスクを感じているのかも、と勘繰りたくなります。

  ということで、この安全第一のはずのポートフォリオ、あまり役に立たないことが判明しました。

  
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初歩の投資教室 その13 ポートフォリオの組み方、その2

2012年09月22日 | 初歩の投資教室
前回の記事では、証券会社の言うモデルポートフォリオがどのようなものか、例を挙げて説明しました。

「リスクをあまり取らない」方針としたのに、お薦めは

預金;10% 国内債券;35% 国内株式;35% 外貨建資産;20%

 元本リスクのない預金と国内債券が45%、価格変動や為替変動のリスクを取る資産が55%という結果でした。しかも実際の投資対象は投資信託のみのため、債券も価格変動リスクにさらされっぱなし、ということになります。


 では証券会社を離れて、その他の例を見てみましょう。

私の本に書評を書いてくれた経済評論家の山崎元氏のお薦めをみてみます。

  週刊ダイヤモンド誌にコラムを持つ経済評論家で、私は日本の資産運用アドバイスの第一人者と思っています。山崎氏が12年6月のコラムに退職金3千万円の推奨アロケーションを書いていました。内容をそのまま引用しますと以下のようになります。

  3千万円のうちからまず元本がマイナスにならない超安全な資産に6割の1,800万円を置きます。すると退職後30年間、毎月5万円ずつ取り崩すことが確保されます。投資対象は8百万円の預金と1千万円の個人向け日本国債、10年物です。

  残りの1,200万円は、リスクを取った運用を行います。半分の600万円を国内株式、あとは300万円の先進国株式、300万円の新興国株式です。いずれもインデックス投信ですので個別銘柄の検討は不要ですし、手数料を低く抑える工夫がなされています。

  山崎氏の「お薦め」をまとめますと、3.000万円の配分は
   
預金800万円、個人向け国債1,200万円、国内株式400万円、先進国株式300万円、新興国株式300万円

安全資産に67%リスク資産に33%で、外貨建は全体の20%という比率になります。

  先ほどの証券会社のお薦めと比較してみます。

証券会社;預金;10% 国内債券;35% 国内株式;35% 外貨建資産;20%

山崎氏;預金;27% 国内債券;40% 国内株式;13% 外貨建資産(株式);20%


 山崎氏のお薦めは、超安全で元本が確保された資産に3分の2を置くので、「退職金の運用はリスクをなるべくとらない」という原則に即しているようです。

 そして30年間、毎月5万円ずつ取り崩していける、という実用的アドバイスを含んでいます。公的年金の将来に不安を感じる方には、もってこいのアドバイスです。

  しかし私は少し不安を感じる部分もあります。それは、超安全資産の次に国内海外を含めいきなり株式となり、相当なリスクを取るポートフォリオになっていることです。3分の1ならまあいいか、という気がしないでもないのですが、中間的リスクである外貨建ての債券は投資対象に入っていません。

  昨年、私の本が出版された時の山崎氏の書評のタイトルは、「米国債で投資の基礎を固める」というもので、安全な外債に投資の基礎を置くということに一理も二理もあるというニュアンスでした。どうもそのコラム記事は忘れてしまったようです。

次回はさらに別のモデルをご紹介します。
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U3さんのコメントへの回答です

2012年09月18日 | ニュース・コメント

U3さんからコメントが付きました。

U3さんのコメントは他のみなさんも疑問を感じていらっしゃることかもしれませんので、本文で引用させていただき、回答させていただくことにします。

U3さんのコメント

<引用>


ご無沙汰しております。
ドルは仕込んだものの、米債金利が上がらず(最近はやや上昇傾向ですが)手持ち無沙汰な日々です。

ご無沙汰している間、岩田規久男氏や高橋洋一氏の書籍や高橋是清の事跡などを読んで
現在の日本の金融政策の異様さを認識しました。

英、豪、加、ニュージー、スウェーデン、ノルウェー等はインフレターゲット政策で目標インフレ率へのコントロールはもちろん、デフレはなんとしても防ぐ政策を
推進していると知りました。
米国は物価の安定と雇用の最大化の二大目標を掲げていますが、インフレターゲット採用国と見てよいでしょうかね。
(ユーロ圏はよく分からないのです・・・)
そんな中で、日本はコアインフレ率がなんと98年以来マイナスで推移する
デフレターゲットではないかと疑うような金融政策を推進中です。現在の日米の実質金利差もかなり開きがあると知りました。(3~4%日本が高いかも?)

http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/2444329/

このように金融政策が豪や米と真逆の日本において、外債投資する場合、金融政策の大転換があってから行動しても良いのではないか、と最近思い始めています。日本も確かに今年の2月、1%のインフレを目途とすると宣言しましたが、これには何の責任もない形だけのもので、下のURLの通り、4月以降、実質金利はマイナスで推移しています。

http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html

野党の間で日銀法改正が話題になっているのは喜ばしいことかもしれません。

<引用終わり>


U3さんへ、林の回答です。


  中央銀行の役割については、私自身こうあるべきだ、という確固たる意見を持ち合わせてはいませんが、その一方で、中央銀行が経済にどの程度影響力を持つことができるのかについては、むしろ限界があると見ています。

  まず実質金利の話からいきましょう。「日米の実質金利差は4%もあって円高になっているので、実質金利を下げろ」という田村氏の議論ですが、今ほぼゼロもしくはゼロの金利を3-4%も下げる手立てはどこにあるのでしょうか。田村氏の議論を引用しますと、

>日銀はどうすべきか。日銀は当座預金利息をまずゼロにして名目金利を文字通りゼロ金利に誘導すべきだろう。

とありますが、彼も書いているように、もともと0.1かそれ以下の金利をどう下げてもたいした変わりはありません。マイナス4%にしろというのでしょうか???


>さらに、インフレ率をプラスにするまで、お札を継続的に増量する「量的緩和政策」をとると宣言する。日銀にだまされてはいけない。

とありますが、オカネをどう増量するのか、具体策は書いてありません。彼もどうしてよいか手立てがないので書けないのでしょう。


  インフレ宣言にしても、2月の宣言はちょっとしか効果がありませんでした。声量を大きくしても、声が涸れるだけです。

  ということで、田村氏の議論は有効性に疑問があります。

  岩田規久男氏の議論については、以前もこのブログでふれたことがありますが、日銀に積極的役割を担わせ、クルーグマンなどが言っているようにオカネをばらまいてインフレ・マインドを作り出せ、という議論ですね。しかし田村氏同様、具体的な手段に目ぼしいものはありません。

  せいぜい

・株や債券、投信、REITなどを市場で買いまくる

・国債を無限に買い入れることにして、政府の財政を積極化させる

・円を安くするために為替市場に徹底介入する(実行は政府ですが)



実際にはすでにどれも使い古された手で効果はなく、それを大規模にするかどうかだけの話だと思います。

  実行にはオカネが必要で、自己資金がほとんどない日銀の資金調達は、オカネを刷るだけです。

  兆円単位のテコ入れはすでにやって効果ゼロなので、数十兆円単位が必要でしょう。それによって株価の高騰がはじまったら、U3さんはどうしますか。ヘッジファンドはにっこり笑って高値で売って儲けます。保有株がなければカラウリでもいい。日銀には出口が必要です。その出口を狙ってカラウリをしておき、さらに儲けを大きくする。

  簡単な儲け手口が見えているのに、日銀はバカではないのでヘッジファンドを儲けさせるためのオペレーションはしないでしょう。もし日銀が十兆円単位の損失を出したら、中央銀行が債務超過に陥り、取り返しがつきません。

  こうしたことを数字で検証しますと、日銀の総資産は139兆円(うち国債87兆円)、自己資本3.2兆円。自己資本比率たったの2.3%です。

  これを見れば、10兆円単位の株式投資など無理だというのは一目遼然です。国債も短期物しか買っていません。長期債を保有したりすると、価格はあっと言う間に数%動きますが、国債価格が3.7%下落したら自己資本はすべて吹っ飛びます。

  政治家にしてもエコノミストにしても、こうした数字を捉えて議論をしている方はあまりいないようです。数字で見たら、怖くてものは言えなくなるのです。それでも言っている人は、この数字を知らないか、数字の見方を知らないのでしょう。

  ということで、日銀の大胆な政策変更は不可能でしょう。口先を使って、インフレターゲットを標榜する各国に並ぶポーズくらいはとるかもしれませんが、もともと日本の物価は高いので下落は続くでしょうから、デフレの流れは変わらないと思います。その底流は、潜在成長力を失ってしまったことにあると思います。

  なんか、暗い話ですね。投資のチャンスを探っているU3さんにはあまり助けにならない話ですみません。

  しかし経済・金融は数字がすべてですので、私は「気合い」で物を言っている方には疑問を感じるだけです。

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ECBとFRBの決定をどうみるか

2012年09月15日 | ニュース・コメント
このところ相次いで国際金融市場に関わる大きなニュースがながれました。項目を順にならべますと、

11日 Moody’sの米国債に対する警告
12日 ECB(欧州中銀)の無制限国債買入れ
13日 FRB(米連銀)のQE3

3つのニュースに対してまずNY株式市場の反応ですが、いずれも上昇して引けました。数字は以下のとおりです。

11日 Moody’sの米国債に対する警告     ← +70
12日 ECB(欧州中銀)の無制限国債買入れ  ← +10
13日 FRB(米連銀)のQE3            ← +206

  まず11日のMoody’sの警告ですが内容は、米国が「財政の崖」に近付きつつある中でも、『来年度の財政赤字のGDP比率を落としていく具体的政策がとられない場合、ダウングレードするぞ。しかし逆に中期的に赤字比率を下げる政策を打ち出せれば、現在「弱含み」としている見通しを「中立」に戻す』という内容です。

  昨年の8月のことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。私の著書「米国債を買え」が9月に出版される寸前に、S&Pが米国債の格付けを1段階引き下げました。理由は、「財政赤字が大きくなり、政治が赤字をコントロールできていない」でした。同時期にMoody’sも格付けの将来見通しを「弱含み」にしています。

  私のその時点のコメントは、「財政を巡る政治的混乱で、もし瞬間的にデフォルトしてもそれはスリップダウンだ。株式相場が暴落しても米国債相場はビクともしないだろう」というものでした。実際の市場もその見通しに沿った動きをしました。

 では今回の警告とその後の動きをどう見るかです。

  その前に最近よく使われる用語「財政の崖」について説明します。今年末(12月)になると、ブッシュ政権以来の個人所得減税などが期限切れとなる一方、来年初めには政府歳出の強制削減が始まるということで、財政による経済のテコ入れが崖っぷち立たされていることを指しています。

  断崖から落ちないように積極財政政策を打ち出すと、赤字が膨らみ格下げになる可能性が高い。どうしてよいかわからないように見えます。

  13日のFRBによる量的緩和QE3(住宅ローン債券などの買入れ)の発動は、断崖からの落下を金融面から支える動きなのです。しかも今後毎月買入れるが、購入量やいつまでという期限を付けない無制限ともいえる大胆な決定でした。それを好感してNYダウは200ドルも上昇しました。

では私の見方です。

  これら一連の動きの根本にあるのは、「米国は雇用のみが回復していない」ということに尽きます。先月の失業率は0.2ポイント回復して8.1%となりました。もしそれがあと0.2ポイント低下して7%台になっていると、オバマの再選も確実なものとなり、FRBも市場の声に押されたQE3の発動など不要だったでしょう。

  私は相変わらず実は米国経済は言われるほど悪くないと見ています。08年の奈落の底からたった1年半で金融セクターは回復し、政府から借りた金は返し終わった。製造業もリーマン以前よりも回復し、自動車は売れまくっていますし、シェールガスの開発に沸いている。それが証拠にNYダウはリーマンショック以前の高値を抜いて、いつ史上最高値を更新するかという段階になっています。日本のように失われた10年・20年など来ません。

  その中で、雇用だけが十分に回復していません。このカギを握るのが、住宅建設です。全米の住宅価格はすでに今年の初めに回復を始めていますが、新規着工はまだまだレベルが低い。それをFRBの住宅ローン証券買入れで金融面から補おうとしています。住宅産業は雇用の吸収力が抜群に高いので、雇用テコ入れにはもってこいなのです。

  こうした動きが重要なのは、世界のリード役をもう一度アメリカに担ってもらう必要があるからではないでしょうか。欧州ダメ、中国ダメ、アジアもそのとばっちりを受けている。世界3位の経済大国日本は話題にも上らない。アメリカは資源大国としても見直されつつあり、結局は頼らざるを得ない存在なのです。イスラム問題など起こしている場合じゃありませんよ。

  そうだ、ECBのことを忘れていました。ECBは南欧諸国の国債を無制限に買うという政策を発表し、ユーロ問題も一山越えた感があります。欧州はこれまでも指摘したとおり、決定的破綻はしませんが大きなリカバリーも望みにくい。統合ではしゃいだツケを払い終わるのに時間がかかります。それが終わると、各国がバラバラだった時代より少しはましな状態に戻るのではないでしょうか。しかししょせん弱者連合をドイツだけが引っ張る図式は変わらないと思います。

以上が3つのニュースの解説でした。

コメント、質問、歓迎です。

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初歩の投資教室 その12 ポートフォリオの組み方

2012年09月13日 | 初歩の投資教室
  
  9月1日の記事の最後で私は、「次からはポートフォリオの組み方についてお話をしていきます」と書きました。今回はその1回目です。

  さて投資初心者のAさん、証券会社からはポートフォリオの組み方などという基本を教えてもらうことはなく、いきなりリスクの大きな商品を次から次へと紹介されました。証券会社でも、一応世代別ポートフォリオの組み方をHPで紹介している会社もあります。そのサイトに行ってみましょう。

  ある証券会社は自社のホームページで年齢やリスクの許容度など一定の条件を入力すると、コンピューターがシミュレーションしてふさわしい資産の構成比を算出してくれます。

  例えばリスクの許容度をインプットする選択肢の中から試しに『元本重視、リスクはあまり多くは取りたくないが、多少は取れる』という程度に設定すると回答は以下の通りとなりました。

  預金;10% 国内債券;35% 国内株式;35% 外貨建資産;20%

  元本重視といっているのに、元本リスクのない預金と国内債券が45%、価格変動や為替変動のリスクを取る資産が55%という結果でした。

  この構成比、私から見ると、けっこうな比率でリスクを取っているな、という印象の配分です。そして試しにもう少しリスクを取る選択肢に変更すると、株式と外貨資産の比率がどんどん増えることになります。やはり基本的に投資とはリスクを取るものだ、というやり方がやはり日本の証券会社のやり方なのでしょう。

  私の感覚で「リスクを多少は取れる」というのは、せいぜい全資産の1-2割、どんなに多くても3割以内とおもうのですが、みなさんの感覚はいかがでしょう。

  このシミュレーションのサイトはこれだけでは終わりません。当然『売らんかな』の仕掛けが付いています。配分に従うとして、実際何に投資をしたらよいかの回答を用意しているのです。

  例えば国内債券の商品であれば「商品説明」のボタンがあり、それを押せば商品リストが出てきます。債券であろうが株であろうが、出てくるのはすべて『投資信託』です。個別の債券リストや株式は一切出てきません。投資信託とは、買ったときに払う手数料だけでは終わらず、保有期間中ずっと信託料収入が証券会社に入り続ける仕組みです。

  せっかくシミュレーションしてくれたのですが、

「リスクを多少は取れる」と言えば、すぐに全資産の5割以上をリスク商品に配分」

  債券であろうが株であろうがすべて投資信託へ誘導する。

  結果として債券も投資信託を購入してしまえば価格変動リスクにさらされるので、実はこの誘導装置に乗るとリスク商品の範囲は預金の10%を除く90%ということになるのです。

  初心者の方はそうしたリスクの意識をもたないまま、とんでもないポートフォリオを組まされる。それが日本の証券会社の正体であることをみなさんは是非お忘れなく。

つづく
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