ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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芸術の秋 2 音楽編

2017年11月30日 | アートエッセイ

  先日家内と、佐渡裕指揮のケルン交響楽団によるコンサートを東京のオペラシティコンサートホールに聞きに行きました。

  演目は前半がワーグナーのジークフリート牧歌、シューベルトの交響曲「未完成」。後半がベートーヴェンの交響曲5番「運命」という極めつけのポピュラー曲です。昔のLPレコードやCDなどでは、「未完成」と「運命」がまるで同じ作曲家によるものであるかの如く表裏一体、A面とB 面になっていうものが多く見受けられました。両者に共通項などないのに、不思議です。いや、売れるものを並べるのは音楽出版社としては当然なのでしょう。

  コンサート会場で当日配られたプログラムに、おしゃべりな指揮者佐渡裕による「運命」の解説があました。その中にやけに気になる部分があって印象に残りました。

  それは、「運命の例の『ジャジャジャジャーン』という冒頭のフレーズは、実は八分休符から始まっている」という言葉です。そして彼は「わからないかもしれないが、あの始まりは『ジャジャジャジャーン』ではなく、『ん、ジャジャジャジャーン』なのだ」と解説しているのです。

  いやー、知りませんでした。当たり前ですね、交響曲のスコアなど見たことないのですから(笑)。

  何故八分休符から始めるのか。彼の解説は、「指揮者は冒頭で八分休符に向かって腕を振り下ろすが、振り下ろした瞬間に音は鳴らない。八分休符の長さの分だけ奏者は音を鳴らすことを待たなければならず、その分蓄積されたエネルギーがつぎの瞬間に放たれて、あの爆発的、衝撃的な『ジャジャジャジャーン』が生み出されるというわけだ」。なるほど、タメを作ることでより大きな爆発になるんですね。

  休憩時間が終わり後半の「運命」を聞くために席に着いた私は、冒頭の佐渡裕の指揮棒が振り下ろされる瞬間を見逃すまいと目を凝らし、聞き耳を立て集中しました。「ん」を見分けよう、あるいは聞き分けようとしたのです(笑)。

  彼は演奏の最中にしょっちゅううなり声をあげます。その日の席は10列目の中央と、指揮者にかなり接近していたので、彼のうなり声がよく聞こえるのです。もしかすると「ん」が聞こえるかもと耳をそばだてたのですが、もちろんなにも聞こえず『ジャジャジャジャーン』が始まってしまいました(笑)。しかし目は確かに指揮棒が降ろされるタイミングと音のタイミングのズレはとらえることができました。

  でもまてよ。指揮棒の動きと奏者の出す音は、常に微妙にズレていて指揮棒がわずかに先行しています。残念ながら目にとらえたズレは通常の指揮のズレなのか八分休符のズレなのか、素人目には全くわかりませんでした(笑)。


  今回の話題はベートーヴェンの「運命」というどなたでも知っているポピュラーな曲についての思い出です。私にとってはとても大事な友人の一人で、博多織の織元をしていたH氏との1980年ころの思い出です。彼とは私が博多に赴任していた時代、娘の幼稚園のパパ友でした。

  マッキントッシュ・マークレビンソン・インフィニティの組み合わせ、と聞いてピンとくる方は相当なマニアです。これはアナログレコード時代にレコードを鳴らすための、『世紀のオーディオ・コンポーネント』と言われた名器の組み合わせです。マッキントッシュのプレーヤーでレコードを回して音を拾い、マークレビンソンのアンプで増幅し、インフィニティのスピーカーで聞く。それが80年ころには世界最高のオーディオセットだと言われていました。H氏の自宅リビング兼織物のショールームは40畳敷の広さがあり、それがセットされていたのです。私が初めて自宅を訪ねた時のスピーカーはJBLのパラゴンという木造建造物でした。高さ90センチ、幅2メーター60センチもあり、80年当時は新品で200万円ほど。現在でも中古品が400万―500万もします。写真をご覧になりたいかたは、下記のサイトへ行くとみられます。特殊な形状ですが、内部構造の図をみると10個のスピーカーが組み合わされていて、「へー、そういう構造なんだ」と思えます。

http://audio-heritage.jp/JBL/speaker/paragon.html

  JBLのパラゴンでも十分にすごい代物でしたが、ある日彼から「遂にインフィニティのセットができたよ。日本で3台目だ。一番好きなレコードを持っておいでよ」と電話がありました。

  インフィニティの大型スピーカーシステムはすべて受注生産で、当時は納期までに半年かかりました。超巨大なため、普通の家に設置するのでは売ってくれません。音を出すのにふさわしい場所であるか否か、まず実地検分があるのです。彼の新築の家はそれにふさわしく作られていました。そして運び込まれてからオーディオセットとつなぎ、理想の音が聞こえるまでに専門家2人が様々な機器を使い3日間もかかっていました。スピーカーにつなぐためのコードの値段だけで1m当たり2万円もすると聞き、度肝を抜かれました。

  これも写真をご覧になりたい方は販売会社のHPに行くと、最近のセットの写真が見られます。IRSという機種ですが、昔も今も外見はほとんど同じものを売っているようです。

  http://audio-heritage.jp/INFINITY/speaker/index.html

  左右2X2、4台でワンセット。スピーカー数は54個、高さ2メーター30センチとマンションの天井近くまであり、幅は片側2つで1メーター50センチもあります。天井高のある広い部屋でないと、意味をなしません。価格はプレーヤー・アンプにこのスピーカーを含め〆て3千万円。80年当時の普通の家一軒分でした。

  私はオーディオマニアではありませんが、音を聞き比べるには最も聞きなれた曲で、しかも大きな音量で性能が試せる必要があります。そこで選んだのが「運命」だったのです。ベルリンフィルを絶頂期のカラヤンが指揮し、時代の最先端を行くPCM方式の録音レコードだったと思います。

  どんな音色だったかって?

  こればかりは文章では表現のしようがありません。でも一言で言うなら、「本物の音源に極めて近い音」ということでしょうか。

  今でもベートーヴェンの「運命」を聞くたびに、「世紀のオーディオ・コンポーネント」と、40代の若さで亡くなった友人のことを思い出します。

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トランプは何故支持され続けるのか? その3

2017年11月25日 | トランプのアメリカ

  世田谷市民大学の「アメリカ政治のゆくえ」という授業を受講されている方から、講座で使用した講義ノートを見せていただきました。講師は西川賢津田塾大学教授で、アメリカ政治の専門家です。現在進行中の当シリーズ、「トランプは何故支持され続けるのか?」にもかかわる面白い内容なので、みなさんにも要点部分を見ていただこうと思います。

  その第6回目の講義のタイトルは「トランプ支持の理由」で、まさにこのシリーズ記事にぴったりの内容です。その中からアメリカ人の専門家の意見などを引用させていただきます。

  まず「トランプは何故支持されているのか」に関する西川氏の主張です。

トランプが支持されている理由=人種・宗教・ジェンダー・学歴・年齢などの社会的アイデンティティー、あるいは権威主義的態度などによる集団帰属意識に基づき、共和党に強い帰属意識・同調傾向を持つ有権者が単に共和党の候補者であるトランプ候補を選んだから、ということになるだろう。

  ちょっと難解な言葉が並ぶ政治学者らしい学術的見解です。要は共和党支持者が共和党にふさわしい候補を選んだということでしょう。

  しかし日本人の私たちには「何故選ばれたのがトランプなのか」の疑問に対しズバリとは答えていない部分があるように思えます。氏は別のアメリカの政治学者の見解も引用されていますので、それらを見てみましょう。

プリンストン大学教授エイケンらの説=

トランプ大統領を支持する有権者の政治的洗練性は極めて低く、それら有権者は政策争点に関して限定的かつ散漫な知識・理解しか持たない非合理的存在。「無知で非合理的な有権者」である彼らは争点同士を関連させる明確な軸を持たず、首尾一貫した政治的信念体系を有していない。トランプ大統領の方も有権者の事情を考慮して政治目標を設定しない。彼の決定は共和党に近い利益集団や活動家の影響を受けたものになると予測される。

  かなり手厳しい言葉で決めつけているようですが、私にはこちらの説が具体的でよりピンとくる気がします。

ウィスコンシン大学教授 キャサリン・クレーマーの説=

トランプ候補が支持されたのは彼の政策やイデオロギーが支持されたからではない。彼を支持する人々にとって、政策やイデオロギーなどは二の次なのである。トランプ候補に熱狂する支持者が欲して止まないのは「物語」なのだ。それが真実に基づくものであれ、全くの虚構であれ、トランプ候補の支持者は自らのアイデンティティーに合致し、それを補強してくれるような「物語」を与えてくれる政治家に見返りとして支持・承認を与えるのである。

トランプ候補は自らの支持者に向けて次のようなメッセージを送ることで彼らが待望する指導者としてのイメージを作り出すことに成功したのである。

 「あなたたちは正しい。あなたたちは人生の努力の代価に見合ったものを正当に受け取っていない。あなたが怒るのも分かる。あなたたちは一生懸命働き、報われて当然なのに、受け取るべきものを受け取っていない。一方で、エスタブリッシュメントの政治家やメディアのような今この国を動かしている奴らは、移民やマイノリティ、イスラム教徒など、受け取る資格もないような奴らに何かを与え続けている。私を当選させてくれ。そうすれば、この国を再び偉大にして見せよう。あなたの人生の代価にふさわしいものを与えよう、あなたが欲して止まない人生をあなたに与えよう。」

  私にはかなり説得力がある説です。みなさんはいかがでしょう。

   このキャサリン・クレーマー教授の説を長々と引用したのは、私が考えているトランプの支持理由の有力なサポート材料だと思われるからです。ただしクレーマー教授の説はどちらかと言えば「トランプは何故当選したのか」であって、「何故いまだに支持され続けるのか」への明確な回答ではありません。

  

  私の今回のシリーズのタイトルをもう一度掲げますと、「トランプは何故支持され続けるのか?」です。実績らしい実績もなく、相変わらずウソをつきまくり、疑惑の渦中にいる。もっと言ってしまえば、最近アメリカでは過去のセクハラ疑惑で上院議員や映画のプロデュサーなどの有名人が続々とやり玉にあがり、社会的地位を失っている中で、セクハラでは誰にも負けない数と実績を誇る(笑)トランプの非を問う声がほとんど上がっていない。

 

  支持され続ける理由のキーワードは「ツイッター」です。

 

  なんだ、と思われる方も多いかもしれませんが、彼の支持者の数と内訳が変化していないのは、機関銃のような弾の量を誇る彼のツイッター攻撃によります。

 

  それがどれほどかは次のサイトで見ることができます。

https://www.trackalytics.com/twitter/profile/realdonaldtrump/

 

  このサイトの最初のページをスクロールしていくと、いくつかのグラフのあとに「Summary」という表が出てきます。中身は、

Donald J. Trump's Twitter Profile Summary

とあって、毎日のツブヤキの量的把握ができます。

 11月のツブヤキ数を累計から計算して見てみますと、

10月31日までの累計; 36,240回

11月24日までの累計; 36,442回

  その差202回 ÷ 24日 = 約9回

  ヒマ人ですね。いや、超ヒマ人です(笑)。

   11月はアジア歴訪中で、各地で公式行事が目白押しでした。その合間を縫って毎日いやほぼ毎時、なんと日に9回のツブヤキとは恐れ入った回数です。

   キャサリン・クレーマー教授は、トランプは「物語を与えてくれる」ので支持されていると主張しています。そのとおりだと思います。

   そして私は、

「トランプは選挙戦で物語を語り支持を取り付け、毎日のツブヤキにより支持者をマインドコントロールし続けているのだ」

と思っています。


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トランプは何故支持され続けるのか? その2

2017年11月20日 | トランプのアメリカ

    今朝のニュースです。

    アメリカ戦略軍司令官、「トランプの核使用命令には従わない」

    アメリカの戦略軍司令官からとても大事な発言がありましたので、まずそれをお伝えします。「トランプが核使用の命令を出しても、違法なら従わない」と明言したのです。CNNの本日の日本語版から引用します。

「米軍の核戦略やミサイル防衛を担当する戦略軍のジョン・ハイテン司令官は18日、トランプ大統領から核攻撃の命令を受けた場合、それが「違法」な命令であれば従わずに反論すると明言した。ハイテン氏はカナダ東部ノバスコシアで開催された「ハリファクス国際安全保障フォーラム」で講演し、核攻撃を命令された場合に何が起きるかを説明した。「私は大統領に助言し、大統領は私に命令する。この命令が違法だった場合は、私から大統領に違法だと伝える」と述べた。その先の展開としては、大統領が「ではどうするのが合法的か」と尋ね、一緒に選択肢を考えることになるという。「それほど複雑な話ではない」と、ハイテン氏は語った。同氏はまた、大統領には核兵器使用の権限があるものの、軍として従う義務があるのは合法的な命令だけだと強調した。」

    なんとも頼もしい司令官です。彼こそが本当に核のボタンを握る人間です。

  前回の記事の最後に私は、

「公約実現のできないトランプの支持率が何故落ちないのか、次回は私なりの分析をトライします。」と書きました。

  するとある方から、「トランプの公約や政策に何か一貫性はあるのか。いったい彼は何をしたいのか」という質問が入りました。支持率問題とも直接関係のある質問のため、今回はまずそれに触れます。

  トランプの政策には見事なまでの一貫性があります。

  と書くと、例えば共和党保守層の古くからの考え方だとか、ある主義主張に基づいているという印象をもたれるかもしれませんが、そんな高尚な主義主張など彼にはありません。選挙キャンペーンでの言動や就任後実際に実行したことを並べれば、実に簡単に理解できる一貫性です。

・TPPからの離脱;オバマの遺産

・NFTAからの離脱;オバマの遺産

・パリ協定からの離脱;オバマの遺産

・オバマケアの廃止;オバマの遺産;  まだできていませんが

・キューバとの国交回復への反対;オバマの遺産  キューバが一体何をしたというのか

・イランとの核合意の否定;オバマの遺産 イランが一体何をしたというのか


  反オバマ、実に首尾一貫しているではありませんか(笑)、支離滅裂ですが(爆)。

  子供のころから彼は負けず嫌いなので、大統領になってもオレは前任者には絶対に負けないというのが一貫とした姿勢です。

  なので、もっとやりたいのはオバマのノーベル賞剥奪です(笑)。

  そのためには世界を核戦争の危機に追い込み、核ミサイルの増強を世界的に煽り、「それみたことか!」と言いたいのです。

  ですので逆にトランプは自分もノーベル平和賞を得るためなら、北朝鮮をさんざん煽りに煽って危機的状況を勝手に作り出し、その後金正恩と会って、彼がどの相手にも使ういつもの言葉「彼はいいやつだ、素晴らしい指導者だ」と言って握手をし、ノーベル賞を狙うにちがいない(笑)。

  ついでに言うなら、地球温暖化への警鐘でノーベル平和賞を得たアル・ゴア元大統領に対しては、「でっち上げだ、剥奪すべきだ」と何度も明言しています。

  かわいいトランプちゃん、あんたの心の内くらい、とっくに見透かされていますよ!

 

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トランプは何故支持され続けるのか? その1

2017年11月15日 | トランプのアメリカ

  昨年11月8日の大統領選挙から1年がたち、トランプの1年を振り返る報道がたくさん流れました。その中で最大の話題だったのは、

  トランプは何故支持され続けるのか?

という疑問でした。もちろん支持は4割前後しかないのですが、底割れはしていません。それに対して明確な回答が示された報道は見当たらなかった、というのが私の印象です。

  多くの報道は大統領選挙で決定打となったアメリカ中西部のラストベルトのその後を取材。選挙から1年経ち、果たして投票者の支持に変化はないのかを探っていました。そして結論は、トランプがそこに暮らす白人労働者層の支持を依然として失っていないから、全体の支持率も下がっていない、という結論を述べていました。選挙中トランプは彼らの鬱積した不満を煽り、支持を得ました。「オレ様が石炭産業を復活させる」とか、鉄鋼業界で「海外に流失した雇用を取り戻す」という公約です。

  しかし実はこうしたラストベルトに対する公約のほとんどは実現できていません。その他の内政問題・外交問題を問わず選挙公約のほとんどは、いまだに実行できていません。

  TPPやパリ協定からの離脱はサイン一つなので、私は彼の実績のうちにカウントしません。単なる破壊行為です。支持者はそれも実績だと喜んでいるでしょうが、例えば予算の裏付けが必要な大幅減税などを実現しているなら評価してあげます。それは破壊ではなくある意味創造だからです。創造は全くできていません。


  では就任以来の支持率の推移を簡単に見ておきましょう。各種の世論調査を時系列で並べて見ることのできるおまとめサイト、リアル・クリアー・ポリティックスによる移動平均の推移です。移動平均とは、個々の世論調査は偏りもあり変動も激しいので、最新の調査10件の移動平均を取り平準化した数字です。もちろん個々の調査を見ることもできます。以下は平均値の推移です。

    1月27日  8月14日  9月24日  11月14日

不支持  44.3    57.4    52.4     56.8

支持   44.2    37.4    41.7     38.1

  就任直後の1月には不支持と支持が拮抗してスタートしました。これは投票率でヒラリーがトランプを若干上回ったことと符合します。しかしその後は一貫して不支持が20ポイント近く上回っています。

  8月14日は不支持が最高値57.4%に達しました。就任以来側近をどんどん首にし続けましたが、8月はあの首席戦略官バノンを首にした時で、政権内部の混乱がピークに達した時期です。

  9月24日は逆に就任時点を除くと支持率が41.7%とピークを迎えました。その時期は北朝鮮の挑発が激しくなり、トランプもそれに対して吠えまくった時期です。独裁者政治の常とう手段、「敵を作って支持率を得る」を金正恩同様、トランプが実行していました。

  そして現時点は支持率が38.1%と、最低の支持率に近い数字です。と言っても、実際には支持率はとても狭い範囲で動いており、彼が何をやっても支持率は低迷し続け、その逆で何をやっても不支持率は高位安定しています。推移のグラフを見たい方は以下のサイトで見ることができます。

https://www.realclearpolitics.com/epolls/other/president_trump_job_approval-6179.html

 

  選挙後1年の報道で多くのメディアが焦点としたのは、トランプの支持率が4割を若干割り込むところから、何故それ以下に落ちないのか、という点でした。理由として挙げていたのは、結局選挙での支持層が依然として支持を続けているから、ということでした。

  私にはその理由は理由になっていません。何故なら公約は全く実現できていませんから、失望があって当然。どの国の政権も公約を実現できなければ、時間の経過とともに支持率はじり貧になるからです。フランスのマクロンがいい例で、あの熱狂が覚めると支持率はまさにつるべ落としになっています。

  報道だけでなく、アメリカ政治の専門家もトランプの支持率安定に様々な分析を提示しています。その内容は例えば、アメリカの地方に脈々と根付く保守層である農民やブルーカラーが、都会的でITを駆使する高所得者のリベラル層を常々苦々しく思っている。それを今回トランプが代弁し、生意気なリベラル層を蹴散らしてくれた、というような分析。また、本来ブルーカラーの代弁者は労働組合などの組織票を支持基盤とする民主党のはずだが、アメリカ・ファーストを掲げるトランプに低所得の労働者は切り崩され支持に回ってしまった、などの分析です。

  しかしそうした分析は1年前の投票行動の分析であって、1年経った現在の支持率が低位ながらも安定している説明にはなりません。国内外のほとんどのマスコミが毎日のようにトランプの蛮行を非難し、国際社会からも批判されっぱなしなのに、何故支持率は激減しないのか。

  公約をまったく実現できないトランプは今でも時々ラストベルトに行って、選挙期間中と同じ赤い帽子をかぶり、「アメリカ・ファースト」と吠えまくっています。これは支持層が離反しないためのメンテナンスであり、またホワイトハウス内やマスコミへのフラストの彼なりの解消法でもあります。アメリカ大陸の真ん中にいて海を見たこともない多くの中西部の人たちは、北朝鮮問題など全く関心がないし、米中関係など知ったことかなのです。

  公約実現のできないトランプの支持率が何故落ちないのか、次回は私なりの分析をトライします。

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米国債は日本で買うかアメリカで買うか・・読者からの質問と読者からの回答

2017年11月09日 | 米国債への投資

  読者のお一人、ぽんきちさんから以下の問い合わせがありました。

  3人の読者の方らコメント欄にとても有意義な回答がありましたので、本文にて取り上げさせていただきます。今後の参考にしてください。

 

ぽんきちさんのご質問

 こんばんは

米国証券会社のお話を興味深く拝見しました。
いくつか質問がありますので、ご回答をいただけ
ないでしょうか。よろしくお願いいたします。

①米国証券会社とは具体的にどちらでしょうか。

②その米国証券会社には日本語が通じる方はいますか。

③口座開設手続きを具体的にご教示ください。

④その米国証券会社が仮に破たんした場合、米国債はどうなりますか。

⑤購入の注文は電話でするのでしょうか。それともネットでしょうか。


(私は毎月三菱UFJモルガンスタンレー証券で購入していますが、電話注文のみです。)


  以下は3人の読者の方からの回答です。 


海外の金融機関を使う・使わないの判断 (弥七)2017-11-05 15:06:00

ぽんきちさん
役に立たないかもしれませんが、私の場合を紹介させてください。私の知り合いに香港まで銀行口座を作りに行った人がいます。証券口座を作るためにベトナムまで旅行に行った人もいます。私も興味がないこともありませんが、私の方針:安全第一と合わないため、もっぱら日本の証券会社だけ使っています。


ぽんきちさんは外国の証券会社の破たんを心配されていますが、それより心配なのは口座の名義人が死んだり判断力を失ったときの対応です。人は必ず死ぬものです。事故などで突然死ぬ人もいれば、緩やかに判断力を失って死ぬ人もいます。外国の証券会社は名義人を複数登録して、万が一の場合に備える仕組みになっているようです。口座番号とパスワードをシェアできる、同じ程度のリテラシーがある配偶者・子供に恵まれた人は心配ありません。そうでない場合が問題です。例えば配偶者のリテラシーが低いのに代理人として登録してしまうと、当人が死んだりボケてしまったとき、配偶者はお金を取り戻すことが困難です。日本の銀行や証券会社であれば、配偶者が窓口に行けば必要な書類や手続きの説明を受けることができます。時間はかかってもお金を取り戻すことができるでしょう。外国の証券会社の場合、絶望的に難しい作業になります。


私の妻は成年後見を仕事としています。妻一人の事務所を持っています。身寄りのない認知症・精神障害者の後見人として、本人に成り代わって銀行や生保とやり取りをしています。日本の金融機関が相手なら、日本の法律に従い成年後見人が本人のためにお金を引き出せます。相手が外国の金融機関の場合、私の妻では手に負えません。海外の金融機関相手の仕事が得意な弁護士が必要ですが、普通の人が雇えるものではないでしょう。
===
海外の金融機関の手数料の安さは魅力ですが、私を取り巻く状況では私が死ぬとき・ボケたときの対応が万全とはいえないため使わないつもりでいます。
日本の証券会社で、そこそこ安い手数料で海外の債券ETFを買えます。買ったETFは特定口座扱いにできるため税金の手続きも楽です。分配金なし・超低コストの日本籍海外債券インデックスファンドもあります。2000年から証券投資を始めた私からすると、夢のような改善っぷりです。いずれ米国債も安く買えるようになると思いますよ。

 

ご参考まで (なんだかんだ) 2017-11-06 14:13:29

ぽんきちさん、
私が利用しているのはFirstade Securies Inc.というオンラインの証券会社です。口座開設はメールでFormをもらい、要求された書類のスキャンデータ(パスポート等)をアップロードするだけで出来たと思います。←郵送でも可


SIPC(Securities Investor Protection Corporation)という組織により50万ドル(内現金部分は10万ドル)まで、まさかの時は補償され、それ以上の部分は保険会社CAPC (Customer Asset Protection Company)が補償と理解しています。


日本語対応はありません、電話、メール、ライブチャットで対応してもらえます。(私はチャットを利用していますが日本時間の11:00~翌8:00で眠たい‼)
この頃やっと堅い文面の重要事項が記された英語に慣れてきたところです。


老いやボケ・・・対策はあまり年限の長いものは買わず、自信がある年齢までで償還させるつもりです。申告のややこしさもありますし・・。(とはいうもののクリックだけでいつでも日本に資金は還流させれます。)私は独身、子供もいませんので、急死の際にはどこにお金があっても所詮、国庫に入ってしまいます!(笑)

 

私の場合 (Puffin)2017-11-06 18:31:33

沖縄にダイビングしに行っていて、やっと戻ってきました。遅レス失礼!

実は米国には日本で言う「証券会社」のくくりに相当する会社はありません。大はゴールドマンサックスに代表される投資銀行(金融危機の際を境に全てが消滅や持ち株会社、銀行傘下の一部門など、となり、今日では事実上は独立した企業体ではない)から、小は個人が立ち上げたプラットホーム開発会社まで、様々な組織体が株式や債券などの証券その他の金融商品サービスを提供する仕組みになっています。

大きなところは原則、法人若しくは機関投資家・超富裕層(米国基準では資産約1億ドル超)しか相手にしないので、日本人の一般個人を相手にしてくれるのは基本的にオンライントレードのプラットフォームになります。

私が作った口座は、(1)なんだかんださんと同じFirstrade Sec Inc(tは一つなのに注意)の他に、(2)SogoTrade、(3)TradeStation、(4)Interactive Brokers、です。

元々米国にて口座開設した理由は、米国債購入ではなく、「恐怖指数」Vixの先物のETN(上場投資証券)の空売り信用取引が目的だったので、米国債取引に適しているかどうかはわかりません。いずれも債券取引には対応しています。

(1)・(2)は英語の他に中国語にも対応しているあたりは、国民一人当たりGDPが世界20位台へと転落している「落日の国」日本との力関係を表しているようで、少なくとも実際の取引では日本語サポートはないものと思って下さい。(3)は2011年に日本のマネックス証券に買収されて子会社となっておりますが、やはり日本語対応は無いですが口座開設はできます。日本人は日本のマネックスを使え、という事なのでしょうか。日本のマネックス証券の米国株口座では同じプラットフォームを使っていますが、日本のマネックスの米国株口座では債券の扱いはできません。

手数料は互いに競い合って刻々と変わるのでどれが有利、とも言えません。

日本と違い、口座開設時に一定額以上の入金及び維持が無いと口座がactiveにならない会社((3)は5,000USD・(4)は10,000USD)もあるので、注意が必要です。

売買注文は単純なネット取引なので専門用語さえ覚えれば言葉の問題はあまりないかと思いますが、サポートに関しては、電話・メール・チャットの方法があります。
日本人の場合は、なんだかんださんのおっしゃる通り、チャットが一番安全でしょう。PCにてスクリーンショットを取れば、会話内容も記録できるので確実だと思います。

会社の信用度については、米国での信頼度が高い、最適なクレジットカードの特典オファー、利率、当座貯金口座、総合口座、各種保険および金融商品を見つけることができる、一般消費者向けの金融ソリューションを提供するサイトNerdwalletでの2017年のBestOnlineBrokerの推奨ではhttps://www.nerdwallet.com/blog/investing/best-online-brokers-for-stock-trading/ (4)が挙げられています。企業の売上規模の参考になる Fortune ランキングでは、1,166位にランクされています。


ただ、米国債は米国だろうと日本だろうと、全てユーロクリア若しくはクリアストリームのいずれかの国際的証券保管機構にて分別管理されているので、どこで購入しても同じことです。

口座開設は英語にてやらねばならないですが、開設までならば日本語で紹介している個人のブログもいくつかあるので、お調べください。


記載が古いままだと意味が無いので、現在もactiveに更新されているサイトには、こんなものもありました http://www.avocado-fes-thought.com/ 。

参考になれば幸いです。


  以上が3人の読者の方からの回答でした。

今後の参考になさってください。

 

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