ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

その3. 働いて、円高にして大ハッピー(修正です)

2011年10月27日 | 資産運用 
コメントでUnkownさんから意味不明と、ご指摘をいただきました。

確かにわかりずらいので、その部分を訂正します。

元の文章は以下の通りでした。

 『一方、逆サイドにいるアメリカを見てみましょう。超ドル安です。それでも製造業は、かつては日本、今は中国などの輸出に押されて、海外へ雇用を奪われています。ということは、この先多少円安になったところでアメリカと同じ道を歩まない保証はありません。何故なら、人件費でいえば中国はかつて日本人の100分の1、今でも10分の1です。つまり、円は800円くらいの円安にならないと均衡がとれません。』



訂正分

為替レートの比喩を使うと意味不明となるので、数字のはいった部分は削除することにします。

 『一方、逆サイドにいるアメリカを見てみましょう。超ドル安です。それでも製造業は、かつては日本、今は中国などの輸出に押されて、海外へ雇用を奪われています。ということは、この先多少円安になったところでアメリカと同じ道を歩まない保証はありません。』


 
 
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その3. 働いて、円高にして大ハッピー!

2011年10月26日 | 資産運用 
ここまでをちょっと復習します。

その1のお話は、こうまとめました。

1. 働いて円高にして首を絞め
2. 預金しかしない日本のマネーが円に滞留し円高を昂進させ
3. 政府はそれをもとに財政を破綻の淵に至るまで借金を積み上げ
4. 解決策であるはずの成長路線はさらなる円高を招く


それに対して、その2のお話は1のまとめをなぞると、こう改めることになります、

1. 働いて、円高にして大ハッピー
2. 預金ばかりせず、海外に投資してより高いリターンをえられたかも
3. 政府は無制限に国債発行などできず、健全な財政運営をせざるをえなかった
4. 経済成長が円高プレッシャーを高めても、円高をエンジョイ(消費・投資)すればプレッシャーは緩和された


1をちょっと解説します。円高は海外の資産をとても安く買えるので、多くの原材料や食糧、エネルギーを輸入に頼る日本にはとても有利に働きます。また、資産運用でも割安な金融資産を買えることになります。

これに対して「やすさん」から以下のコメントをいただきました。

引用
企業の海外移転などで職に就くことすら困難になってしまったというマイナスの影響 の方が大きかったと言えます(現実に限らず理論的にも、マイナスの方が影響が大きくなることは、かなり緩い仮定の下で示され頑健です)。それがまさに、多 くの人が円高でハッピーになれていない理由です。円高とは別に輸出企業だけが苦しむものではありません。本当の問題点は、労働力や設備と いった円建ての生産資源が割高になることにあります。企業は当然、そのようなものの使用を控えるようにし、それが結局は雇用や投資収益を圧迫します。その 問題に比べれば輸出企業がどうのというのは取るに足らない問題です。とても皆がハッピーになれるものではないのです。
引用終わり

 私はこのことは、いまでこそ言えることだと思います。もし円高になっていなかったら、つまりは輸出競争力を持てず、細々とした内需に頼っていたなら、バブルどころか戦後の大繁栄・高度成長もありませんでした。最近の中国や東南アジアの国々も同様で、輸出に頼って高度成長をしています。それは必要なかったのでしょうか?

 一方、逆サイドにいるアメリカを見てみましょう。超ドル安です。それでも製造業は、かつては日本、今は中国などの輸出に押されて、海外へ雇用を奪われています。ということは、この先多少円安になったところでアメリカと同じ道を歩まない保証はありません。何故なら、人件費でいえば中国はかつて日本人の100分の1、今でも10分の1です。つまり、円は800円くらいの円安にならないと均衡がとれません。

 マスコミや世の中は、常にネガティブな面のみを大きく強調し、自分もその罠に嵌まっていくように私には見えます。私が円高について「自縄自縛」と表現したのは、そうした意味も込めています。


つづく
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超うれしいお知らせです! 初めての書評が出ました

2011年10月24日 | 資産運用 
遂に念願の書評が出ました。

資産運用の世界で私が間違いなくこの方が日本の第一人者だと思い尊敬している山崎元氏が、週刊ダイヤモンド誌上で氏のコラムのフルページを使って、「米国債を買え」の書評を書いてくれました。それも極めて好意的な書評で、私としては光栄の至りです。

ダイヤモンド誌はオンラインサイトでも山崎氏のコラムを解放していますので、本屋さんで立ち読みはしなくて済みます。

そしてもちろんこのブログの読者の方には、以下にコピペし、トラックバックも付けますので、是非お読みください。
http://diamond.jp/articles/-/14544

注意;筆者(山崎氏)と著者(林敬一)という言葉が輻輳しますので、ご注意ください。勝手ながら著者は太字にして判別しやすくしてあります。
それと褒め言葉もついでに太字にしました(笑)


<引用>

タイトル;「米国債券で投資の基礎を固める」

 結論に全面的に賛成するわけではないが、読んでよかったと、他人にも薦めたい本がある。林敬一著『証券会社が売りたがらない米国債を買え!』(ダイヤモンド社)。特に、高齢のお金持ちにお薦めしたい。

 この本は、かつてソロモン・ブラザーズで債券を扱っていた著者が、米国債を題材に投資と債券の基礎をわかりやすく語った良著だ
 債券の解説として はデュレーションまで踏み込まない絶妙のレベルで、数学に伴う苦痛をほとんど感じることなく投資において大切な心得のざっと8割が印象的に頭に入るよう に構成されている。

 まず、筆者がこの本の結論のどこに不賛成かをはっきりさせておこう。この本は、ストレスのない有利な資金運用法として通常の利付き債ないしはゼロ クーポンの米国債に投資することを勧める。米国はたぶん破綻しないし、金利差があれば長期では為替リスクが十分吸収できるだろうというのが著者の見立てだ が、筆者は、政府というものは米国であってもそんなに信用できるものだとは思っていない。為替レートの長期の変動が「意外なほど大きくなる」ことは十分あ りうると思う。ブラック・スワンが為替市場にも飛来する可能性は十分あるのではないか。

 また、日本人の稼ぎを国債(公務員)や社債(民間サラリーマン)にたとえる比喩は秀逸だが、キャッシュフローにはライアビリティ(負債)もあるので、リスクも考えなければならない。

 これらのことを考えると、単一通貨、米ドルのリスクに集中投資(より正確には集中投機)するのは気が進まない。いざというときの「流動性」の重要 性は、著者が説くとおりであり、現在、米国債こそが資産の王であることを認めるにやぶさかではないが、筆者は、「絶対を信じる集中」よりも「疑いに基づく 分散投資」を取りたいと思う。また、為替のヘッジはぜひ考えたい。

 論理と算術で考える限り、分散投資の優位は動かないはずだ。ただ、分散投資は地味だし、この本が語るようなシンプルさの魅力に欠けるうらみがある。

 投資家は米国債に何を学ぶべきか。第一に大きいのは、手数料の影響だろう。米国債は、為替の手数料こそ1ドル当たり25銭程度かかるものの、20 年、30年と保有し続けても、投資信託の信託報酬のようなムダなコストを払う必要がない。しかも、米国債は、おカネが必要になれば1000ドル単位でいつ でも換金することができる。

 著者は投信を「ショバ代を取られ続けるバクチ」とし、毎月分配型投信は「これだけは買ってはいけないリスト」の筆頭に挙げたいと述べるが、まった くそのとおりだ。ETFを含むインデックスファンドの中に、少数の「許せるショバ代のバクチ」があるように筆者は思うが、対面営業の証券会社や銀行が売る 大半の投信は、著者が言うように「論外!」の商品だ。

 著者の林氏は外資系証券に勤務されたご経験がある。おそらくは、「悪いやつ」を具体的によくご存知であるがゆえに、EB債(他社株転換債)や仕組 み預金のような詐欺的商品に厳しい。読者には、ぜひ、立ち読みでもいいので、166ページの「これだけは許せない! 買ってはいけないEB債」というコラ ムを読んでほしい。林氏の良心が伝わってくる

 加えて、金(新しい価値を生まない)や不動産(流動性に疑問)が資産運用にあって、なぜ不適切なのかという点についても、この本はわかりやすく教えてくれる。
 広くお薦めしたい一冊である。


<引用終わり>

ということで、あの厳しい評論で名高い山崎氏のコラムで、これだけ褒め言葉が連続するのは驚くばかりです。

感謝、感激、感涙!


驚くことに、山崎氏には行間をすべて読んでいただいています。それは、

1.タイトル。「米国債券で投資の基礎を固める」これが今後の資産運用では一番重要なポイントだと私も思います。

2.冒頭にある「特に、高齢のお金持ちにお薦めしたい。」
  内輪の話をしますと、実は本に私が付けたオリジナルタイトルは、「ストレスフリーの資産運用」、サブタイトルは「リタイアしたらトレジャリー・アイランド(米国債の島)で寝て暮らそう」。つまりもともとリタイアした方に向けた本でした。それをダイヤモンド社の編集者が、「折角なので、もっと広い層に向けて発信しましょう」ということとで、若い方向けの内容を書き加えたのです。

 山崎氏はそれをお見通しですね。恐れ入りました(ペコ)

ブログの読者の方とともに、この喜びを分かち合いたいと思います。






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その2 もし円高トラップにはまっていなかったら

2011年10月21日 | 資産運用 

2回目は、これまでの日本経済をちょっと振り返ります。

自国通貨が高くなる=すべての人が金持ちになる。

日本人は円高をきらいますが、これは本来あまり議論の余地のないことのハズです。
産業界は大変だとはいいながら、日本は依然経常黒字(貿易収支と所得収支の合計)を保つほど競争力を持っています。

ですので、ほんとなら

「働いて、円高にして大ハッピー」

のはずが、なんでアンハッピーになってしまったのか?

この単純な事象をそのまま実現できなかったところに、どうやら日本の間違いの始まりがあったように私は思っています。

一体何が原因だったのでしょうか。私の分析では、バブルを経験してあつものに懲りてなますを吹くのが、原因だったようなきがします。つまり

① 株式・不動産・ゴルフ会員権などの投資に失敗した個人が、委縮して投資をやめた
② ついでに消費も控えて、貯蓄に励み、預金を積み上げた
③ 「好景気」の定義をバブル時代に求めたため、いつまでも景気が悪いとしか思えず、政府もカンフル剤を打ち続けた
④ 外貨投資はいつも為替に負け続けると誤解して、超安全な米国債投資すらしなかった(これは手前みそです)。つまり、「金利差は為替に勝てない」という思い込みがあった。


もしみなさんが預金の一部で私の言う「米国債を買え!」を過去に実行していたら投資結果はどうなったでしょう。昨年のサイバーサロンや著書でもお示しした米国債の投資結果を思い出してください。

米国債へ複利で投資した結果を、元利合計で丸い数字で示しますと、

  ・30年間で23倍になった。為替は3分の1になったが8倍勝った(1980年に米国債30年物のゼロクーポン債を買い複利で運用し、2010まで保有したとすると23倍になる。為替は240円が80円に3分の1になったが、それにもめげずに8倍の投資収益になった。以下同様)
 ・20年で5倍、為替は半分になったが2.5倍勝った
 ・10年で2倍、為替で3割負けたが6割勝った

もちろん、米国債という投資対象は、私が外貨投資の象徴として使っているもので、投資対象はいくらでもありました。ただ、絶対的安全性と圧倒的流動性をもつ資産でさえこうした実績をもたらしたのです。

 そして、もし日本のマネーがある程度の規模で海外投資に向かっていたら、円高はかなり緩和されていたはずです。ということは、米国債というリスクフリーの、つまりは保証された最低限のリターンでさえ、円換算ではもっともっと大きなものになっていたにちがいありません。(例えば90年にドルが150円のときに米国債を買って、2010年までに5倍になった。為替がそのまま150円だったら、5倍の儲けがそのまま得られた。)

 また、日本にマネーが滞留しなかったら、政府は国債発行を思うにまかせず、財政をこれほどまで簡単に拡大することはできないので、破綻の淵へと追い込まれることもなかった。

 マイルドな円高であれば産業の競争力も追いつくはずで、非正規雇用もここまでひどく拡大はしなかったかもしれません。であれば若年層はもっとやる気を出し、生産性もあがり、所得の増加で内需も拡大させることができた。競争力がつけばもっと輸出をして外貨を稼ぎ、それが貯まればまた積極的に外貨資産へ投資も行う。もちろん企業業績の向上で、日本の株式もリターンをもたらすことになったでしょうし、日本国債・社債などへの債券投資もいまよりはるかに高い金利と言うリターンをもたらしたかもしれません。

こんなに都合よくいくかって?

うーん、そこんとこはちょっとねー

つづく
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その1.円高トラップとは?

2011年10月19日 | 資産運用 


 日本のバブルが崩壊したあとの95年、円が突然買われだし、一瞬ですが79円台をつけたことがあったのをみなさんも覚えていらっしゃると思います。そのころとても面白い川柳を詠んだ人がいました。それがあの句です。

 「働いて、円高にして首を絞め」

 この川柳、いまだに通用するような気がします。その後10数年を経て、今なお円高に絞めつけられながらも産業界は頑張り続け、経済全体は巨額の財政支出というモルヒネを打ち続け、ここまでもたせることができました。

では将来の警句を一句、

 「円高の自縄自縛で、自爆かな」

 ヘタな句ですみません、解説します。

 円高は日本の投資家という投資家を自国に縛り付けています。バブル崩壊後、株式や不動産の暴落で懲りた個人は、外の世界がどれほど魅力的でも決して日本から出ることなく、ひたすら超安全と信じている円預金を積み上げています。機関投資家である銀行・郵貯や生保も個人から預かった金で国債ばかり買っています。それをいいことに政府はひたすら借金を積み上げる。

 一方で、破綻に向かいつつある財政問題や年金問題を解決する唯一の方法は経済を成長させることだ、と政治家・経済学者・マスコミも叫び続けます。高齢化が進み若年層の低賃金が定着してしまった日本では、内需の拡大は見込めません。元気な女子力の「自分へのご褒美贅沢」くらいでは、とてもとても力不足です。本格的に経済が上向くには、製造業もサービス業も農業でさえもさらに競争力を付け、成長するアジアなどの新興国に向けた輸出を拡大する必要がある。

しかしそれが進めばまた円高を招いてしまう。

まとめますと、
1. 働いて円高にして首を絞め
2. 預金しかしない日本のマネーが円に滞留し円高を昂進させ
3. 政府はそれをもとに財政を破綻の淵に至るまで借金を積み上げ
4. 解決策であるはずの成長路線はさらなる円高を招く


 これが『円高トラップにはまり込んだ日本』全体が陥っている状況だ、と私は分析しています。

そして、この状態で財政バブルが破裂することを私は「自縄自縛による自爆」と表現しました。

では、どうしたらこの円高トラップから抜け出すことができるか?

自爆することなく抜け出す道を、残念ながら私は見つけることができません。そんな道があれば、きっととっくに本にでもして経済戦略家として世に出ています(笑)

それにもめげず、少しずつでも解決策を見出していくため、みなさんと議論を重ねたいと思っています。

つづく
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