バイデンの支持率が下がりっぱなしで、一向に改善しませんね。
私がトランプ大統領時代いつも引用していた世論調査のおまとめサイト、RealClear Politicsの最新調査では、平均支持率38%、不支持率57%と、不人気だったトランプの大統領と同じような数字です。政権スタート時に56対36だったものが、去年8月のアフガニスタンからの撤退で一気に不人気化し、8月22日は不支持率が支持率とクロス。あとは徐々にその差が拡がる一方となり、発足当初とは逆の数字になってしまいました。このまま11月の中間選挙を迎えると、民主党は上下両院で過半数を割るとまで予想されています。
日本の場合、内閣支持率が3割を下回ると、政権交代が起ると言われていますが、アメリカは誰もそうは思っていません。大統領が直接選挙で選ばれているため、4年間を全うするのが当たり前だからです。しかし中間選挙での敗北は大統領の残りの2年のレームダック化を予想させます。レームダックとは足の悪いアヒルを指しますが、最近は差別用語であるとして使用を控えることも多くなりました。
バイデンの不人気のきっかけは昨年8月のアフガン撤退問題でしたが、最近は何といってもインフレの高進が最大の要因です。先月発表の5月の数値は前年比8.6%ですから、かなりの高率です。その最大の原因はガソリン価格で、なんと48.7%上昇。そして食料品が10.1%でした。あいかわらず車社会のアメリカでは、ガソリン価格は消費者の懐を直撃します。それに加えて実はサービス価格が上昇率をプッシュしています。サービス価格は人件費と直結していて、雇用情勢が依然としてタイトであることから、当分この傾向は続くと見られています。
ではバイデンの再選予想はどうか。それを見るにはまずは相手となりそうなトランプを見てみましょう。同じくおまとめサイトの最新の情報では、トランプが好ましいは44%、好ましくないは52%で、全国での人気は決してよくはありません。別の要素で見ると、共和党内だけのことですが、中間選挙の議員候補を選ぶ共和党予備選で、トランプが支持している候補が勝った勝率は9割に達していて、党内では影響力を依然として保持しています。
しかし彼にはアキレス腱があります。それは去年1月6日のトランプ支持者による議会乱入を指令したという教唆疑惑です。現在その直接の被害者となった議会で公聴会が開かれていて、続々と新しい証言が集まりつつあり、全米ではゴールデンタイムにライブ中継され、注目の的となっています。
下院の公聴会ではディック・チェイニー元副大統領の娘で共和党下院議員のリズ・チェイニー氏が副議長を務め、トランプによる乱入教唆を証明しようとやっきになっています。再度言いますが、彼女は共和党議員であるにもかかわらずです。
すでに何人もが証言台に立ち、トランプが「議会へ行進しよう。われわれは強さを示さなければならない」などと檄を飛ばした事実があきらかになっていますが、さらに当日トランプが自分も議事堂に行くと言い張り、運転手からハンドルを奪い取ろうともみ合ったとか、ホワイトハウスにいろ、と側近から言われながら「どうしても行く」と言って側近に食べ物を投げつけたとか、トランプの狂乱ぶりが補佐官などの元側近から暴露されています。
しかし公聴会はトランプ訴追の権限を持たず、司法省が持っているため結果の予想はつきません。もし訴追となれば、彼は大統領選に出馬はできません。
ではバイデンに戻ります。世論調査だけでなく、民主党内ではバイデンの年齢が大統領再選時に82歳となるため、不安視されていることも大きな問題となっています。
ところで副大統領カマラ・ハリスはいったいどうしているのでしょうか。就任時は年老いたバイデンの次の大統領候補だろうとまで言われていましたが、移民問題を担当させられ問題解決にはほど遠いためか支持率を落としています。同じ世論調査のおまとめサイトでは、ハリス支持39%、不支持53%とバイデン同様の体たらくです。
中間選挙の結果予想は、インフレがこのままで推移し、ウクライナ戦争で膠着状態、あるいはロシアの優位が続くと、民主党の負けがほぼ決まりそうです。本来なら政権与党の敗北は経済に悪影響を及ぼしそうですが、アメリカ経済が秋の中間選挙により左右されるという論調は少ないのです。実際に敗北したとしても、株価は大きく反応するとは思えません。一つは共和党が経済・金融界寄りであること、そして相場はすでに織り込み済みということでしょう。
従って、ドルの強さも当分大きな変化はなさそうと見ておくのが無難でしょう。
ということは、アメリカ経済はバイデンに関わらず、大丈夫。政治の影響は受けづらいというのが結論です。