ディベート翌日、アメリカでも欧州でも多くのオンラインニュースはヘッドラインで「バイデンの勝ち、トランプの起死回生ならず」、という見出しで結果を報じていました。
私が見た例外はFOXニュースのサイトで、なんとディベートの結果をトップニュースに取り上げていません。トランプ寄りが鮮明なFOXは、「トランプ勝利」とは書けなかったからヘッドラインニュースでの報道を避けたのでしょう。実に姑息ですが、報道の偏向問題については後ほど。
すでに今回のディベートの勝敗の世論調査をした反トランプ色が鮮明と言われるCNNの発表では、バイデン53対トランプ39と大差でバイデンの勝ち。そして政治マターだけを取り扱う偏向しているとは言われていない「Politico」の世論調査結果はバイデンの勝利54%、トランプ勝利39%、どちらとも言えない8%で、CNNとほぼ同じでした。Politicoはワシントンをベースにし政治に特化した独立系の調査報道会社です。
日本のニュースでも「起死回生を図ったトランプは、バイデンを負かすことはできなかった」というトーンが多かったと思われます。それでも日本の事情通の解説者やコメンテーターはトランプの逆転はありうると予防線を張り巡らしている人がほとんどです。
私に言わせればそういう人たちは「あつものに懲りてなますを吹く」なのです。そして11月3日の投票後はトランプが訴訟などの手に出て、なかなか決まらないだろう、というトーンがほとんどです。
混乱が起こる可能性はありますが、それは投票結果がきわどかった場合に限られ、圧倒的な差であれば、裁判所はトランプの訴訟を受け付けません。そしてすでに上下両院で、「トランプは負けたらスムーズにホワイトハウスを去るべし」と全会一致の決議までしています。わざわざ両院がそれほどの決議までしてトランプの無法な所作は許さないとしています。民主党だけの決議ではなく、共和党員を含む全会一致であることが重要なポイントで、トランプと違い共和党議員はいまだ良心を持っていると言えます。
2回目のディベートはトランプが「やり方を変えるのは気に食わん」として拒否しました。これでわめくチャンスを失ったトランプですが、最後のディベートを前にしてこんなおバカなことを言っていました。
「2分間マイクを切るのはフェアーじゃない!」
おいおい、「おまえさんが前回バイデンの発言を73回もさえぎったから公平を期してマイクを切るのに、それをフェアーじゃないだと。おまえ頭の中はどうなってるんだ」。ときっとディベートの主催者CPDは中指を立てたに違いありません(笑)。今の若者風に言えば、「ザケンナヨー!」、です。
もっともディベートで勝利したからと言って選挙に勝つわけではありません。前回もディベートはヒラリーの勝利でしたが、選挙結果はトランプの勝利でした。
では最後のディベートを受けた選挙結果予想の世論調査などはどうなっているのでしょう。各種世論調査のおまとめサイトであるRealClear Politicsの10月24日までの平均値によれば、バイデン勝利予想50.8%、トランプ42.8%とほとんど変わらず、トランプ岩盤支持層以外にトランプ支持は拡がっていません。
世論調査ではなく、ディベート結果などをすぐ反映するオッヅはどうなっているか、これまでの推移を含めて見てみましょう。
バイデン トランプ 差
トランプの感染前9月末 ; 55 45 10
トランプ感染後10月11日 ; 67 33 37(最大差)
トランプ復帰遊説開始後 ; 60 40 20(最小差)
ディベート後10月25日 ; 62 34 28
9月頃にはバイデンとの差が10ポイントだったのが、感染で差が37まで拡がってしまったトランプですが、感染後の遊説復帰でバイデンとの差を20まで回復しました。しかしフェアーな形式で行われた今回のディベートではあまり見るべき結果を残せず、逆に8ポイント拡大してしまいました。
大事な選挙区で負けそうなトランプは最後の悪あがきで、前回勝利したフロリダ、ペンシルバニア、ノースカロライナ、ウィスコンシンなどを執拗に繰り返し遊説しています。この行動、いつものようにすべてが顔に出てしまうトランプの焦りが頂点に達していることを示す確たる証拠です。相変わらずかわいいね、トランプちゃん!
では選挙結果を予想する同じくRealClear Politicsの別の角度からの統計を紹介します。それは、州別の選挙人獲得予想の集計です。この集計ですが、接戦州をいまだ白黒付けられないとする慎重な予想1と、接近していても数字で差があれば白黒をつけてしまう統計2の2種類があります。選挙は過半数の270人を獲得したほうが勝ちです。
バイデン トランプ 接戦
1.接戦州を除いた選挙人獲得予想 232 125 181
2.接戦でも予想確率が高い方が選挙人を獲得 357 181 0
2の少しでも差があればウイナー・テイク・オールで集計する予想では、圧倒的にバイデン有利で、もしこうなったらいわゆるランドスライド、地滑り的勝利と言われます。このケースではトランプが何を叫ぼうが無駄。訴訟などしても無意味で受け付けられることはありません。
ついでに最近とみに激しさを増すトランプのウソと報道の偏向についてです。
最近「アメリカの大手メディアは反トランプで偏向している」という意見を見かけるようになりました。それに対する反論です。
まず、アメリカのCNNや大手報道機関は偏向報道だという方のご意見は、「トランプの言っていること、やっていることは全くもってまともだ」という前提に立たれていると思います。
もしそうでなく、トランプの言っていること、やっていることが常人ではなく狂人の所作だとすればどうでしょう。そこでウソの回数が問題になります。
では就任以来20年8月までの発言を分析した9月のワシントンポストの報道を見てみます。「就任以来のウソまたは真偽がさだかではない発言回数は2万回に上る」と書かれています。
これを日数で割ると、20,000÷1330日=1日平均15回・・・ウッソー!!!
ほんとです。ちなみにワシントンポストはアマゾンのジェフ・ベゾスがオーナーを引き継いだ反トランプ(?)のメディアで、昔からアメリカでも随一のクオリティー・ペーパーと言われています。この数字を掲げたからと言って、それは事実を述べたまでで、偏向などでは決してありません。
ではもし日本の首相が毎日1回でも明らかなウソをついたらどうなるでしょう。上を下への大騒ぎで、すべてのメディアは非難の大合唱になります。それは偏向報道ですか?
アメリカ大統領が毎日15回もいい加減なことを言い続けている指摘を毎日続けるのは、至極当然でしょう。しかもそのウソがコロナに関するいい加減なデマをそのまま書いて大きな影響を与えるとしたら、報道は事実を書くだけでなく大統領を非難するのが当然です。
コロナには消毒薬を飲めば効くとか、マラリアの薬がいいとか。最近は選挙結果が芳しくないとみるやいなや、郵便投票はインチキだ、負けと結果が出たら、インチキを暴くため訴訟で勝ってやる。最後のディベートでは、バイデンの息子はウクライナで数千億円も儲けたなど、報道が大きなウソを否定し非難するのは当たり前だと思うのです。
以上、選挙予想とウソツキトランプ、偏向報道についてでした。