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初歩の投資教室 24 リバランスについて

2012年10月30日 | お知らせ
 ちょうど、アメリカの友人の401Kのパフォーマンスを検証中に、初歩の投資教室14に対するコメントで、椿さんからリバランスについて以下の質問をいただきましたので、その回答をこちらでさせていただきます。

引用
運用を始めたばかりでリバランスについてよく分かっていないのですが、特定のアセットクラスが突発的なイベントで大暴落・大暴騰してしまった場合、定期的・機械的なリバランスの例外として、緊急避難的なバランス調整は行うべきなのでしょうか?
例えばブラックマンデーが再来して、保有している「株式」カテゴリの資産価格だけ50%も下落してしまった場合、当初想定した資産配分の割合を「再現」するために、50%分「株式」カテゴリを買い増す、といったことを念頭に置いています。
引用終わり

   ポートフォリオのマネージで言うリバランスを簡単に説明します。

例えば株と債券を5割ずつで投資を開始、その後株は値下がりして構成比が下がり、債券は値上がりして比率が上がった。経験的にはこのように逆相関になることは多い。そこで高い債券を売却し、安い株を買って5対5の比率に戻す。割高なものを買って、割安なものを売る、合理的な考え方に見えます。それを繰り返せば、なにもしないで放っておくよりパフォーマンスが上がるだろう、という戦略です。

   アメリカの友人の401Kのファンドマネージャーは、株と債券のファンドの構成比をチューニングしながら運用している、というお話を前回差し上げました。四半期ごとの運用レポートを見ますと、結構細かくシフトさせています。

   具体的には株のファンドでも2種(大型株と小型成長株)を大胆に入れ替えることがあります。全体に対する比率で言うと、20%くらいの入れ替えをしています。また債券と株式の比率ですと、全体に対して10%くらいの入れ替えをしています。

   では、こうした運用をはたしてシロウトの方がやるべきか、について私の意見を差し上げます。

  はっきり言いますが、「無理です」。アメリカのように株式も債券もかなり良好なパフォーマンスを示している場合でも、シロウト投資家の方がそうした入れ替えを的確に行うのは至難の技です。

   椿さんの質問はたぶんそうした細かチューニングではなく、「超長期運用の中で、大ショックが来た場合にどうすべきか」というご質問だと理解します。

   日本株のことを考えてみましょう。日本株の最大ショックは、90年代のバブル崩壊です。もしそれを機に株価が半分になったので、株式を大きく買い増して、株のバランスを回復させたとするとどうなったでしょう。そこからまた株価は半分になってしまいました。そして債券はものすごい値上がりをしています。
   そこまでひどくなくても、例えばリーマンショック後にリバランスしたとしても、さほど良好な結果は得られていないと思います。

   投資の教科書的には、安くなって減ってしまった株のポーションを買い増して、株のポーションを回復させるのがリバランスです。しかしそれでよい結果が得られるのは、①株価が循環的に上下するか、②長い目で見て成長する場合、に限られます。日本の場合はついでに債券は高値安定ですから、高い時に売っても安くならないので買い戻せません。

  リバランスがワークするのはどのような状態か、もう少し厳密に見ると
1. 最初のポートフォリオの構成比が理想な場合
2. 株や債券が、理想的に上昇するか、すくなくとも上下し、傾向的に下がり続けない場合

こうした状態が続く前提であれば、ワークすると思われますが、日本の現状はこれとはかなり違います。

   では、海外の株式や債券で為替変動まで考慮に入れて、理想のポートフォリオを組んで、それに合わせるリバランスを続けることができるか。

   私には理想のポートフォリオなど想定できませんし、リバランスをうまくやりきる自信もありません。

以上、とても否定的見解ばかりでもうしわけありませんが、回答になりましたでしょうか。
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初歩の投資教室 23 アメリカの401K、つづき

2012年10月29日 | お知らせ

  前回は彷徨さんのご質問に答える形で、日米のパフォーマンスの差について、広い視野から日米バブルの大きさの違いを含めて説明しました。
  
  今回はアメリカの401Kのパフォーマンスのよさを市場環境や商品性を含めて分析してみます。ついでにみなさんの参考になるかと思いアメリカの401Kについて、友人の例から簡単に見てみます。

  まず401Kに参加して年金運用をする場合の心得篇です。会社から来ている書類を見ますと、『投資の心得』が書いてあります。

  投資の心得の要点は、「投資は分散を旨とすべし。どんなに素晴らしい会社でも1つの会社に全資産の20%を超える投資をしてはいけない。また一つの産業セクターにも20%を超える投資をしてはいけない」と書かれています。これは株式だけでなく、社債についても同様です。

  運用に当たっては、お薦め投資対象として、様々なファンドがリストアップされています。その数は全部で30種類くらいです。
 各ファンドのパフォーマンスについて、1年、3年、5年、10年もしくは設定以来、の成績表が一覧になっています。またそのファンドに該当するベンチマーク(日本株投信ならTOPIXがベンチマーク)が比較対象として期間を合わせて示されており、ファンド選択のヒントになっています。さらに各々のファンドの維持費用が示され、常にコストを意識しろと書かれています。

  かなり懇切丁寧に社員のことを考えアドバイスをしていますが、実際にはアドバイスは会社が行っているのではなく、会社が指定したプロの投資アドバイザーが行っていて、社員はそのアドバイザーにいつでも問い合わせを入れることができます。

  日本でも401Kはかなりポピュラーになりつつありますが、どうもシステムに胡散臭さが残ります。何故かと申しますと、企業の401Kの仕組み作りとオペレーションは金融機関が当たることになっていて、従業員個人が選択するファンドなどの商品のお薦めは、その金融機関の作った商品が多いのです。

  その点、アメリカの場合はそうした利益誘導、かつ利益相反的なものは排除されますから、アドバイスは公正かつ透明度が高いように思えるのです。

  具体的に説明しますと、日本方式では401Kのオペレーション担当の金融機関は自社グループのファンドに誘導し、かつ手数料は高い方が金融機関にとって都合がよいのでそうしたファンドに誘導しがちになる。

  一方アメリカ方式では独立したアドバイザーが中立の立場からアドバイスするので信用できる。また、手数料の妥当性もチェックしながらアドバイスしている。


  要は投資というものに対するリテラシーの高さがアメリカにはあるということです。

  またちょっと横道に逸れたので戻します。

  アメリカの401Kに特別な秘密があるわけではありません。日米のパフォーマンスの違いは、

1. アメリカの年金資産の運用では、リスク資産である株式に対するポーションを大きく取って、それが功を奏することが多いので、全体のパフォーマンスがよくなる。日本ではリスクを取ると、そのまま単なる損失リスクになってしまうため成績が悪い。その根底は経済成長力の差である。

早い話、平均株価の差がそのまま運用成績の差になって現れるということです。

2.債券ファンドでも成績がよいのは、80年代初頭以降は金利が徐々に低下していて、金利プラスキャピタルゲインをコンスタントに得られた。

3.アドバイザーとファンドマネージャーの能力に、日米では大きな差がある。友人の選択している株式ファンドと債券ファンドは、いずれもベンチマークをコンスタントに上回る成績をあげています。これは、アドバイザーがよいファンドを選択する能力を持つとともに、ファンドマネージャーの運用もうまいということです。

  しかも個人の401Kポートフォリオはアドバイザーが一度投資対象を決めたらそのまま維持するというものではなく、株と債券の投資比率などをかなり細かくチュー二ングにしている様子が見て取れます。新しいファンドへの乗り換えではないので、初期コストはかかりません。

  何回か前の解説で、アメリカの投資アドバイザーの一番の仕事は、株・債券・現金の比率をアドバイスすることだ、と申し上げました。それを地でいっているのです。アドバイザーが中立で自由な立場にいるからできることかもしれません。


さらに付け加えますと、

4.日本人は私の言う『円高トラップに嵌まり込む』からです。これは例えばアメリカの友人の投資対象と同じものを日本人が買えば、実は為替リスクなど跳ね返して高いリターンを得られるのに、日本人は円高のトラップに嵌まり込み、そこから抜け出ようとはしない。外貨建ては為替で負けるものだと思い込んでいるからです。

こうしたことが日米の差の原因にあげられると思います。

  もっとも注意していただきたいのは、友人のアドバイザーがたまたま高い能力を持ち、選択が適切であった可能性もあるという点です。もちろん市場全体がよければ何をやっても成功確率は自然に高くなるでしょう。

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初歩の投資教室 22 アメリカの401K

2012年10月24日 | 初歩の投資教室


  10月23日の記事に、彷徨さんから以下のコメントが付きました。このテーマは、私としても興味がつきない大きなテーマなのです。みなさんも興味があることと思いますので、なるべく簡潔に私の回答を試みます。でも私が大好きなテーマのため、当然長くなります(笑)

<彷徨さんのコメント>
アメリカ人の友人の401Kの運用パフォーマンスが、日本の401Kよりよいのは何故なのでしょうか、アメリカ経済には失われた10年どころか、リーマンショックから2年程度で抜け出し、経済は順調な軌道に戻りつつあるのは何故なのでしょうか、疑問は尽きないところでです。
日本のバブル崩壊は間接金融下で起きたので、銀行の不良債権処理に10年も20年もかかったのに対し、 アメリカのそれは直接金融下で起きたので、サブプライム商品を主に買った欧州の銀行が被害を受けただけで、アメリカの銀行は安泰だった。だから、アメリカ 経済の景気回復も早く、株式市場も債券市場も戻りが早いということでしょうか。



回答です。

401Kのパフォーマンスがよいことの根本的理由は、彷徨さんも示唆されているようにアメリカと日本のバブルの違いによるところが大きいと思いますので、まずバブルについて見て行きましょう。


<アメリカのバブルの大きさ推定> アメリカのGDP、現在約 1,200兆円

  日本のバブルがすべての資産という資産に起こったのに対し、アメリカのバブルはサブプライムローンによる低所得者向け住宅と一般住宅の一部にすぎなかった。オフィス、リゾート、高級住宅などにはバブルはなかった。株式もバブルというほどではなかった。相場はすでに9割方回復し、ほとんど無傷にちかい。

  数字で把握すると、サブプライムローンの総額は大きく見積もっても150兆円程度。全部が不良資産となったわけではありませんが、ほとんどだとしましょう。
そのうち証券化され海外に売却されたものは約半分。欧州や日本の金融機関、機関投資家などが購入。ということはアメリカへのインパクトはわずか75兆円名目GDPとの比率ではGDPが1,200兆円なのでわずか6.25%です。ということは、実はカスリキズ。

<日本のバブルの大きさ推定>  日本のGDP、今も20年前も変わらず500兆円

  日本のバブルは住宅・商業ビル・リゾートなどほとんどすべての土地に発生。土地の時価総額はピークの90年で2,400兆円が、03年に半分くらいの1,200兆円、現在1,000兆円。そのうち銀行などで不良資産化した額は推定で100兆円程度といわれているが、それより大きい可能性大。しかもバブルの過程で外人は買っていないので不良資産を抱えたのは日本人のみ。

  国内のみならず日本人は海外の不動産に巨額の投資を行った。NYマンハッタンのビル、ロスやサンフランのビルなど、軒並み日本資本が買いまくった。きちんとした統計はないが10兆円単位の投資を行い、ほぼ撤退。売却時の損失は投資額の3分の1程度と言われる。海外リゾートには個人まで参入。

  ゴルフ会員権バブル時だけでおよそ5兆円の投資があり、価値はほぼゼロに。

  日本株式ピークで時価総額600兆円、92年に300兆円、03年240兆円が底で、現在260兆円程度。

バブル崩壊のインパクトとしては、土地(1,400兆円)と株(300兆円)の時価総額合計だけで1,700兆円とするとGDP対比では340%にもなる。回復は絶対に不可能。

  もっと額を絞り込んで、アメリカと同様のベースにすると、銀行・ノンバンク・住専(思い出すでしょう)などの融資の不良資産となったものだけの推定だと、不動産・株式で250兆円程度。

  これをGDPベースに引き直すと、日本の不良資産はGDPの50%程度。アメリカはわずか6.25%です。

これでインパクトの大きさがよく理解できると思います。

彷徨さんの質問

>アメリカ経済には失われた10年どころか、リーマンショックから2年程度で抜 出し、経済は順調な軌道に戻りつつあるのは何故なのでしょうか

日本の不良資産は低めに見てもGDP対比でアメリカのほぼ10倍なのです。アメリカ全治2年、日本全治20年、これが質問への回答、そして数字的裏付けです。

  日本のマスコミ、エコノミスト、果ては経済学者でもこうした数字をきちんと把握している人はほとんどいません。数字も調べずに『100年に一度の大恐慌』の文字に踊らされる。つまり日本人は数字オンチ、アメリカ人は数字大好き、この差が学習能力の差となって、日本人は何度でも間違いを繰り返すのです。

  現在学習能力のなさが端的に表れているのが財政のバブルです。1%を下回る金利が永遠に続くがごとく錯覚し、崩壊に向かってひた走るのが今の日本です。

彷徨さん、こんなところでまずは納得いただけますでしょうか。

もう1点、お答えします。質問は

>日本のバブル崩壊は間接金融下で起きたので、銀行の不良債権処理に10年も20年もかかったのに対し、 アメリカのそれは直接金融下で起きたので、サブプライム商品を主に買った欧州の銀行が被害を受けただけで、アメリカの銀行は安泰だった。だから、アメリカ 経済の景気回復も早く、株式市場も債券市場も戻りが早いということでしょうか。

  日本のバブルの原因ですが、実はバブル期に間接金融から直接金融へ移ったことによる部分が大きいのです。エクイティ・ファイナンス=ワラント債=増資⇒財テク、これが80年代後半に事業法人、金融法人を問わず盛んになりましたよね。自分でファイナンスして特金・ファントラで自分の株価を買って吊り上げ、株価が上がるとまたファイナンスして株、不動産も買い、ゴルフ会員権も買う、というのが横行しました。完全にネズミ講です。

(注)特金・ファントラとは企業向けのファンド・トラストなどで、実はかなりの部分が自社株買いに使われた。

  そしてこの流行には中小企業も乗り、個人も乗って、一億総不動産屋とか、投資家とか言われました。

  もちろん彷徨さんがご指摘のように、間接金融もバブルの一翼を担いました。日本の間接金融は土地の担保を裏付けになっています。しかし土地担保が実は無限連鎖のネズミ講であることを自覚しなかった金融機関が、永遠の地価上昇を信じ、貸し込みを続けバブルを大きくしました。まあ、アメリカでもホーム・エクイティ・ローンで、特に低所得者は同じ様なことをしましたが・・・。

  アメリカの銀行は全く安泰ではありませんでした。このホーム・エクイティ・ローンは銀行が出しましたし、サブプライムの証券化商品に投資を行いましたので。しかしアメリカの銀行は、収益力が日本の銀行とは桁違いです。過去の蓄積に加え、毎年数兆円単位で利益を出しているため、わずか2年で政府の支援をすべて返済し終えました。

  さて、今回は彷徨さんの疑問から、401Kのパフォーマンスの違いの根本原因を追及してみました。次回はそこまでさかのぼらず、もう少し表面的に見たパフォーマンスの違いがどこにあるのか見てみましょう。

つづく
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初歩の投資教室 21  現金比率をどうすべきか、その4

2012年10月23日 | お知らせ
最近、番号を間違えてふることが多くてすみません。19がダブっているようですので、今回は21回目です。


  ここまでポートフォリオの現金比率について、モンドさんとやりとりをしながら私の考え方をお示ししました。結論的には投資がひとわたりついた時の現金比率は0-5%程度という低い比率でした。

  では実際の運用の例で現金比率について見てみましょう。投資信託は別にすると、運用資産の内容を公表している例はあまり多くないので、ここでは二つの例を取り上げます。

例1. GPIF(日本の公的年金資産の運用); 3.25%

現金ではなく、短期資産となっていますが、ほぼ同じです。直近の運用資産に占める比率はわずかに3.25%です。

例2. アメリカ人の友人の401K(確定拠出年金)の運用; 0%
本人の許しを得て、定期的に届くレポートの何年か分を見せてもらいました。

このように、現金比率はかなり低いのが実態だと思います。

  みなさんは実際にアメリカの401Kの長期的運用の例を見たことはないと思います。運用はマネーマネジャーと呼ばれるプロのアドバイザーに任せていて、本人はシロウトのため口をはさんでいません。いわゆる一任勘定です。ご興味があると思いますので、お許しを得て内容を簡単に紹介します。

<投資全体の資産構成比>
アメリカ株式ファンド  44% (うち成長株66%、大型株33%)
海外株式ファンド     5% (アメリカから見た海外です)
債券ファンド       51% (国債含むAAA60%、その他33%、ジャンク・ボンド7%)

  
  きっとみなさんが一番興味を持つのは、運用のパフォーマンスでしょう。それを簡単に示しますと、手元にある報告書は3四半期分(9ヶ月分)が記載されていて、11年10月から12年6月までで、総資産の運用益はプラス13.4%と素晴らしいパフォーマンスです。株式も債券もかなり積極運用をしています。ですので、3回の四半期のうち1回は1.4%ですが、マイナスの実績を記録しています。


  どうしてそんなによいのか、それぞれ報告書の内訳に書いてある投資しているファンドのHPに行って、長期的パフォーマンスを見てみました。すると例えばアメリカ株の成長ファンドは、設定来38年間の運用益が年率13.2%。債券は同期間で8.26%と非常に良好なことがわかりました。

これらはもちろん米ドル建てですが、率の低いほうの債券ファンドでも38年で20倍になるため、その間にドルが4分の1になったとしても5倍が手元に残ったことになります。

つづく
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初歩の投資教室 19  現金比率をどうすべきか、その3

2012年10月20日 | お知らせ
  前回はモンドさんの質問に回答する形で、現金比率はどの程度が適当かについて、投資の国際標準から回答をさせていただきました。今回はその続きです。

モンドさんへの回答は、平時であれば現金比率は0%―5%くらい、かなり低めでした。

  誤解があるといけないので、注釈を付けます。比率が低い理由は投資目的に合わせたアロケーションを終わったからです。当然ですが、まだ買うべきものを買っていないとか、買いたいものがわからない状態であれば、話は別です。その分は待機資金として現金のままにしておくべきでしょう。それがかなり大きな額でも、初心完徹をおすすめします。もし思ったように買えなくても、それはそれで損しなかったと思えばいいだけです。

  モンドさんからは、追加で以下の追加質問がありましたので、それに私の追加コメントをつけます。

質問は、『レートと金利の二兎を追うことは難しいので、「外債:徐々に投入であまり投入時の為替と利率を気にせずに精神的にラク」+「国債:変動利率で現金よりマシ」といった作戦もアリでしょうか?』 というものです。

レートとは円ドルレート、金利は例えば米国債金利と解釈します。

私お勧めは、そんな時は  Wait And See!

その際、待機資金を個人向け国債の変動金利にしておくのは賛成です

  米国債はご自分で納得できる金利レベルでなかったら、無理に投資するのはやめて、気長に待つことです。このブログの読者の方で、待機中の方は多いと思われます。

  もし現在の円レートが十分に高いと思われるなら、以前にもお勧めしましたが、ドル建てのMMFを買って、ドルを確定しておくのも手です。

  米国債の金利の先行きを探るために、アメリカの最近の経済動向にちょっと横道します。

  日本にいて日本の報道ばかりに接していると、アメリカの評価を間違えます。何度も何度も申し上げているように、アメリカに失われた10年など来ません。

  日本の報道はアメリカに悪意か敵意を持っているとしか思えないほどかたよっています。経済や市場は、好き嫌いではなく数字だけで判断するのが私の方法です。数字をちょっと見てみましょう。

  まず経済の温度を測る一つの代表的数字はダウ平均でしょう。最高値にあと数パーセントのところで推移しています。

  これは根拠なき熱狂ではありません。アメリカ株は2000年前後のナスダックを除いて、企業収益の先行きを見ながら売買されています。企業収益はどうかといいますと、製造業の改善が著しく、四半期決算では今年の第一四半期には06年の第3四半期を抜いて、過去最高となりました。ダウ平均の高さは、収益の裏付けのある高さです。

  もう一つの大事な数字は住宅投資の回復です。リーマンショックを日本のバブル崩壊になぞらえた人達が見誤ったのは、あのショックが実は単にサブプライムローンという特殊な分野だけに生じたのに、全米不動産価格全体に生じたと誤解したからです。

  住宅価格はケースシラーという指数で見ますが、それがあきらかに回復しています。そしてもっと驚くニュースは、3―4年前にサブプライムローンを払えずに自己破産して抵当の家を取られた個人が、ローンを新たに組んで住宅を購入し始めたというニュースです。

  日本と違い、住宅をとりあげられたら、残ったローンは合法的に踏み倒せるのです。それをノンリコースローンと言います。住宅価格が下がっていて借金が返しきれなくても、それをかぶるのは銀行です。強制的に売却しても借金だけ残るというのは日本だけの特殊な事情です。

  製造業が高収益をあげ始め、リーマンショックの元凶までがなくなりつつあるアメリカをいつまでも悲観的に見る必要はありません。FRBが15年まで引き締めはしないと言っているのは、「雇用が回復しなかったら」の条件付で、回復したら金利は上がると見ておく必要があります。

  ということで、日本での報道よりアメリカ経済の実態ははるかに改善しており、金利も低水準がずっと続くことはないと見ておくべきでしょう。

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