ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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アメリカの長期金利はどうなるか

2014年08月19日 | 2014年の資産運用
なんだかんださんから、以下のご質問をいただきました。

>夏休みが終われば、秋~年末相場。改めて林さんの皮膚感覚をお聞かせ頂ければ、有り難いです。

またただの個人投資家さんからも、質問らしきコメント(笑)をいただいています。

>ダウはこの先人工の増加やシェールガスオイルのエネルギーIT分野で延びていくのは確実でしょうが、もう調整という調整が4年以上有りません。FRB議長が 変わった年や利上げを匂わす頃になってきて、一度株の調整と共に景気停滞が来るのではと思っており、米国債をちょこっと追加すべきかドルで待つべきか検討中です!中間選挙も有り秋は混沌とするのでしょうか~?(^-^;

 皮膚感覚は鈍いので、よく考えた結果をお知らせすることにします(笑)。私の金利や為替の予想が的確に当たるとは思えませんが、なんだかんださんはそれを承知の上で、とのことと理解します。

 私の回答は、これまでの述べてきたことと方向性に変化はありません。アメリカ経済の強さは、コンセンサスより若干強くみており、従って金利のレベルもコンセンサスより強めに見ています。レベル感は10年物で年末までに3%程度のコンセンサスより強目の3.5%くらいという見方です。もっとも足元は2.4%すら割り込むほど低レベルだし、年末まであと4カ月に迫ってきています。大丈夫かな・・・(笑)

 金利にとって最も大切な要素は物価と雇用です。アメリカの物価は落ち着いてはいますが、デフレの懸念はありません。雇用はコンセンサス予想以上の回復を続け、むしろスピードが速すぎることを心配するくらいです。雇用はいずれ賃金に跳ね返りそれが消費を押し上げ、一方コスト高を通じて物価にはねかえります。雇用の強さの裏付けはもちろん経済成長にあります。季節要因を除けばアメリカの国内経済はコンスタントに上昇を続け、国内要素はこの先も大きな問題なしと思われます。

 最近になって心配が出てきているのは、アメリカにとっての海外要素です。欧州の景気後退懸念が顕在化し、日本の成長率も4‐6月期は予想以上に低下。そして中国も低下傾向にあります。海外の大どころがスローになると、さすがにFRBも世界経済の後退を促進させるような政策、つまり利上げは多少やりづらくなるでしょう。しかし元々巨大な国内市場を有し海外経済への依存度が低いため、それだけを理由に金融政策を判断することはないと見ます。

 もう一つの海外要素は地政学的リスクです。今後もそのリスクはますます高まるでしょうが、アメリカやロシアのこれまでの対処策に現われているように、世界を大混乱に巻き込むことは最後まで避ける対処策が取られています。従って市場もひと頃ほど地政学的リスクに大きな反応を示さなくなっています。大きな心配はいりません。

 
 では今後をどう見るか。FRBは出口戦略をより鮮明にし、テ―パリングは予定通り終了させることで、世界を安心させるでしょう。むしろ中断したら、そのショックの方が大きいと思われます。そして来年年央と見られている利上げの確実性が増してくれば、年内にも長期金利は上昇とみています。

 一方、日本の長期金利やドイツの長期金利がこのところアメリカの金利と同調して低下しています。3つが同時並行で低下すると、いよいよ「世界の日本化か」というような文字が踊り始めますが、これらが同時並行で動くことが長く続くとは思いません。各国の事情はそれぞれ大きく異なるからです。日本はクロちゃんが頑張っているし、消費増税で実質所得の低下から消費は今後も低迷は避けられないでしょう。再度増税すれば不況に突入の恐れありと見ます。域内輸出に大きく依存するドイツは周辺国に足を引っ張られ、欧州中銀が何らかの手を打つ可能性もあるでしょう。
 その点先ほども指摘しましたが、国内市場が巨大なアメリカは海外要因に左右されにくい体質を持っていますので、他の国・地域よりはるかに強目の展開を予想します。

 以上、簡単に私の現在の見方を述べさせていただきました。一つの意見として参考になればと思います。

コメント (16)
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