今世界ではやり始めた危険な病気に「独裁者」という流行病があります。昨年私はすでにはやり始めていた独裁者を以下のように定義しました。
・言論統制を行う
・任期を延長する
・反対者を力で制圧する
・国家主義を標榜する
そして該当者には次のような政治家を上げました。最近のニュースを交えアップデートしておきます。
習近平;3月の全人代で永久独裁の権利を憲法上で確保し、『中華民族の偉大な復興』と『中国の夢』を実現すると宣言。
プーチン;大統領から首相を経てまた大統領なり、3選禁止という憲法の精神を捻じ曲げ、永久独裁の方法を確立した。世界はロシアを敵視ていると国民に信じ込ませ、対決色を強めることで支持を取り付ける。今回の選挙では選管を自在にたぐり映像に残るほどの明らかな選挙違反を繰り返した。反対者を毒殺するのはKGB長官時代から継続する彼独自の独裁的手法。当選後は「栄光ある大ロシアを再び実現する」と主張。
安倍;党総裁の3選禁止を延伸。目に見えない形で言論を弾圧し、国境なき記者団による言論の自由度ランキングで在任中に日本を11位から72位におとしめた。内閣法制局を使って憲法解釈を捻じ曲げ、三権分立を踏みにじるなど、国家主義的路線にまい進する。
金正恩;すべての条件を有する独裁者の見本。国民の弾圧は言うに及ばず、自分の保身のためなら少しでも怪しい者は親類縁者でも処刑することをいとわない。恐怖政治を国全体を統治する根本原理にしている。
エルドアン;トルコを欧州型民主主義への道からイスラム型独裁国家へと、見事に変貌させ、反対者を数万人も拘束し、かつ政権に批判的メディアをすべて閉鎖し、言論を弾圧。
トランプ;オレ様型人間の常として、気に入らない部下をつぎつぎ首にして独裁色を強め、報道はフェイクニュースと決めつけ、自分に都合の悪い客観情報は顧みない典型的独裁者の色彩を強めている。さらに海外への圧力を強めることが選挙民の支持率向上につながると信じ、対外的強硬策を実行しようとする。標語は「Make America Great Again」から「Keep America Great」に。
エジプト、インド、フィリピン、ポーランドにも同様に危険な芽が出てきています。
こうした独裁者が共通して主張する困った問題は、自国の版図が最大だった時代を再現すると言う公約です。独裁者たちはそうした過去の栄光の時代を追い求めるため、危険極まりないのです。各国がそんなことを言い出したら、とんでもないことになります。幸いアメリカには大アメリカ帝国時代はありませが、極端な例を挙げると、例えばイタリアはローマ帝国時代の版図だとか、ロシアはソヴィエト時代の版図、トルコはオスマントルコ帝国時代の版図、イギリスは大英帝国の版図などと言い出したら、収拾がつかなくなること必定です。
日本の場合、まだ「大東亜共栄圏をもう一度」までいっていないのが救いですが、最近の月刊誌の宣伝で記事のタイトルを見ていると、極めて危うい言動が幅を利かせるようになってきています。Voice、Hanada、Wedge、Willなど、いつの間にか右寄で国家主義を標榜する、アルファベットネームの月刊誌が多くなっています。みなさんは気付かれていますか?要注意ですよ。一方で左翼系の雑誌はほぼ死に絶えたようです。何故日本でこんなことになっているのか、私は深く観察したことがないのでわかりません。でも今後どうしたらこうした危険な右傾化と独裁主義志向を防げるか、真剣に考える時が来ていると思われます。念のため繰り返しますが、私自身は右寄りでも左寄りでもなく、リベラルな中道だと思っています。
では何故独裁者という病が流行するのでしょうか。大きな原因は、世界的に国家間のグループ化があり、それが国家主権の一部を制限するため一般国民に受けないからだと思われます。EUやASEAN、自由貿易協定であるTPPなどにもそうした傾向があって、反対する人が多いからでしょう。さらにNATOなどの軍事協定も含まれるかもしれません。一国が地球上に存在する限り、孤立無援でよいはずがなく、相互依存こそ繁栄と安全への道ですが、そのために拠出金もあれば義務的な割り当てもあります。たとえばEUは難民受け入れという強制割り当てへの反発から分裂の危機に立たされています。
それを打ち破るということを標ぼうするのが、国家主義に凝り固まった独裁者たちです。例えばトランプはTPPやパリ協定を目の敵にすることで支持を取り付け、北朝鮮をめぐる6か国協定を無視し、イランの核合意も破棄同然です。プーチンも同様にNATOを目の敵にし、旧CISを中心にロシア帝国を築こうとしています。
独裁者たちは敵を作ることで国民の支持を得ようとするため、今後国家間の対立が先鋭化するように思えます。でも私はあまり悲観的に見ていません。というのは、彼らは一方で暴言を吐きながら、本気で戦争をするはずもなく、ブラフをかまして世界を混乱に陥れながらも微妙なパランスを取ろうとしているからです。たとえ金正恩でも、さすがに戦争で得るものはないことだけは理解しています。しかし周辺国はいい迷惑です。
すいぶんと乱暴な世界観と展望を書きましたが、今の世界を見るには、こうした自分なりの整理をしておく必要があると思い、書いてみました。はたしてみなさんから賛同が得られるか、自信はありませんが。
以上、「独裁というはやり病」についてでした。