ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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Puffinさんの投資指針 その5

2015年08月31日 | Puffinさんの投資指針

  Puffinさんの投資指針も、いよいよ核心部分に入ってきました。

今回の【Ⅲ】(1)銘柄選びの指針は、かなり長い文章のため、2回に分けて掲載させていただきます。


【Ⅲ】長期保有を目的とした国内外の株式投資

ここからは、少しリスク(変動の幅の意味)が増えますが、その分リターンの期待値も高くなります。十数年のスパンで、こちらも基本「バイ・アンド・ホールド」で、現物株を買ったらそのまま放置しています。

 

(1)銘柄選びの指針

株式の長期保有銘柄の選定条件は、米国の機関投資会社バークシャー・ハサウェイ社(莫大な投資成績を常に上げ続けることで、50年間で200万%会社資産と株価が上昇)を率いる世界第2位の大富豪ウォーレン・バフェット氏が公開してくれた投資指針に、日本固有の独自条件を自分で加味したものを用いています。主な条件は、以下の通りです。

①  株主優待銘柄:これは、個人株主が多く優待取得が目的なので、株価が少々下がっても機関投資家のように機械的に売ったりしません。実際には、例えば2702日本マクドナルドは、あれだけの不祥事頻発や大幅減収・赤字転落があっても、あまり下がっていません。私の場合は、現在の時価評価額が買値より20%以上高い状態です。株主優待は、バーガー類・サイドメニュー類・ドリンク類1セットで何を頼んでも無料のセット券が、最低単元100株でも年12セット、500株だと60セット。セットをバラしても使えます。

②  業界で絶対的に優位に立っている銘柄:例えば、4839 WOWOW。私が購入した当時は赤字企業で株価低迷していました。しかし、当時業界唯一の有料BS放送で、電波周波数帯の割り当ての関係もあってなかなか新規参入が難しく、3チャンネルも周波数帯を持つ独占的地位にあるので買ってみました。その後、テニスの4大大会やサッカーのヨーロッパリーグなどを独占放送したり、音楽ライブやオリジナルドラマなど、多彩なラインナップで、黒字化に成功。最近は「錦織効果」もあって加入者数が史上最高になって、株価は約6倍になり、更に「株式分割」で保有株数が2倍になったので、半分売って投資額の3倍以上の資金を回収、残り半分は保有中です。「株式分割」とは、株価が高騰し過ぎて売買し辛くなった時に行われます。流通株数が増えて株価も理論上分割割合に応じて下がるので買い易くなり、燃料投下されて更に株価が上昇します。会社はコストがかかるだけで、純粋な株主還元策です。株主優待もあって、長期保有で毎年4か月間無料で視聴しています。更に配当利回りは投資資金の8%相当です。

あと、米国株ですが、ティッカーV  VISA。ここが倒産するときは資本主義の終焉の時で、何に投資しても同じこと、と思い、米NY市場のIPO時に購入しました。その後、株価は7倍になり、こちらも株式分割で保有株数が4倍になりました。やはり半分売って投資金額の約4倍を回収、残りは保有中です。株価は右肩上がりで上場来最高値を更新中。配当は、年4回も出ます。

③  損を出しにくいビジネスモデルを構築している銘柄:例えば、8136 サンリオ。世の中にキティグッズなどが溢れていますが、あれを製造販売しているのは全く別の他所の会社です。サンリオは、期間限定でキャラクターの使用権を貸し出しているだけで、製造に必要な設備投資も製品在庫を抱えるリスクも、一切負うことがないので、本業では損を出す要素がありません。こちらは株価が一時、購入時の3倍までいきましたが、配当利回りが3%あるのでホールド。今は購入時の1.5倍程度で下げ止まっていて安定しており、貯金したと思って保有続行中です。こちらも株主優待があって、株主限定の非売品(キティグッズなど)・ピューロランドのフリーパス券(約6000円相当)が最低単元100株でも年6枚、1000株で年16枚(今回からポイント制に変更になりサンリオショップ割引券も選択可能に)・その他毎回色々違ったものが送られてきました。最近、自社株買いを発表、流通株式が減って1株当たりの資産価値が上昇する株主還元策なので、更なる株価上昇が予想されます。

 

林より、④⑤は次回に続きます。

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Puffinさんの投資指針 その4

2015年08月29日 | Puffinさんの投資指針

【Ⅱ】投資信託

(1)投資信託の選び方

私が行っているのは、投資信託の定期購入です。投資信託と言っても、それこそ無数にあって次々と新しいものが販売されていますが、私が買うのは、購入手数料が0円(一般に「ノーロード」と呼ばれます)のもので、株価指数・債券指数などの指数に連動する、パッシブ・インデックスファンドと呼ばれるものです。いわゆる市場全体に投資するので短期間であまり大きく値動きする事は少なく、また個別株式のような倒産リスクもありません。市場の成長に合わせて徐々に基準価額が上昇していくことが多いです。一方、特定の銘柄を恣意的に運用会社が選んで保有するアクティブファンドと呼ばれるものは、証券会社が派手に宣伝して熱心に勧めますが、大体最初に払う購入手数料が3.24%以上取られる(その分、購入金額が少なくなり、手数料分を取り返すには時間がかかります)上に、運用管理費の信託報酬も高く、コストだらけです。しかも運用成績は常に激しく変動しており、購入時は好調でも翌年には暴落、を繰り返すので長期保有には向きません。10年間の運用成績上位10ファンドは、同じファンドが顔を出したことがかつて一度も無いのが証拠です。

投資信託の手数料は、①販売手数料、②信託報酬、③信託財産留保金、の3種類があります。①は、購入時に全額が販売した金融機関(証券会社や銀行など)に入ります。これを取られると上述のように最初から損をした状態で始まってしまうので、ゼロが望ましいです。私はノーロードのものしか購入しません。インデックスファンドは、殆どがノーロードです。なお、この販売手数料は、運用会社は上限を決めるだけで、実際にいくら徴収するかは、販売する金融機関の裁量に任されています。従って全く同じ投資信託なのに、販売する証券会社によって、ノーロードのところもあれば、数%取るところもあるので、注意が必要です。②の信託報酬は、一見運用会社に全額入るように思われますが、実際は販売した金融機関に約2/3もキックバックされています。これは投資信託を保有し続ける限り毎年支払うものなので、各金融機関が血眼になって販売合戦を繰り広げるのもこうしたカラクリがあるからです。長期にわたって保有するとわずかの差でも大きなパーフォーマンスの違いになってきますので、これもなるべく安いものが望ましいです。③は、投資信託を中途解約する場合に徴収されます。あまりたくさん解約が続くと、安定した運用に支障が出るので、一部を残る投資家の為に残しておくことが慣習になっています。

何れも、限りなくゼロに近いものが理想です。インデックスファンドは指数に連動するべく設計されているものなので、基本的には銘柄による違いはあまりありません。ただ、純資産総額が少ないものは、指数に近い動きをするためにはほぼ全部の個別投資対象を購入すべきところ、投入資金が不足することがあって、指数の動きに対して乖離した動きをするものもあるため、避けた方が良いかもしれません。

こうした、各投資信託の比較には、総合金融情報サイトのモーニングスター社の投資信託サイトhttp://www.morningstar.co.jp/fund/ が定評あります。投資信託は各金融機関によって扱う銘柄数が大きく違い、逆に、ある銘柄が欲しい場合、当然買える金融機関は限定されます。すべての金融機関を自力で調べることは不可能です。ここのスクリーニング機能は非常に充実していますので、参考にしてください。

 

(2)投資信託の買い方

投資信託は、購入申し込みをした営業日の終了したのちに基準価額(実際の購入価額)が決まります。従って、多くの投資信託は、購入総額を先に支払って購入申し込みしたあとで何口買えたかがわかります。大体、1万円から購入できるところが多いです。

買い方は、1回大金を纏めて払って購入するのではなく、毎月できれば日を決め一定金額を定めて口座引き落としなどで自動的に購入し続ける「ドルコスト平均法」と呼ばれるやり方が、一番利益になります。基準価額というファンドの価格が高い時は自然と購入数が少なく、安い時には購入数が多くなります。価格がひたすら下がり続けると損になりますが、いわゆる市場平均に投資するので、資本主義の原理である、常に主役は代わっても拡大し続ける仕組みが機能する限り、最終的には利益が出るはずで、それが駄目になったときは何に投資しても無意味です。ただ、指数の対象が今後発展する要素の低いものは避けるべきで、今後の状況を鑑みると、日本国内の指数よりも、海外先進国の株価・債券などの指数に連動するファンドが望ましいと思います。日本の証券会社で買う場合は当然日本円で売買しますが、海外指数が対象ならば投資対象が外貨建てになるので、前述のように確実に円安の進行が予想される場合、為替差益も乗ってより利益が大きくなります。指数が下がる不況時にも買い続けるのは勇気が必要ですが、その分安く変えるので、むしろ今が買い場の好機と考えて、より多くの口数を保有しておくと、好況になった時に大きく利益が出ます。景気は必ず変動を繰り返すので、こちらも目先の利益にこだわらず、数十年先を見越したスタンスで臨むことが大切です。例え万一、自分が必要とする期間内では、景気がただ循環するだけで一定の幅を行ったり来たりするだけに終わったとしても、安い時により多い口数を購入しているので、その分が利益となって沈殿していきます。景気が右肩上がりにならなくても、利益が積み上がるところが「ドルコスト平均法」の真骨頂です。

投資信託の購入は、かつてはSMBC日興証券の子会社の投信スーパーセンターという投信専門会社があって、豊富な品揃えとノーロードが多いので私はよく使っていました。今は本体に吸収されて投スパ支店となっていて、本体では買えないのにここでのみ買える投信も多いのですが、投スパ支店の新規の口座開設はできなくなっているので、そのうち消滅すると思います。現在私は、投信専門で全世界を対象にするノーロードのバランスパッシブファンドのみに特化していて信託報酬などの手数料も非常に安いセゾン投信と、ノーロード投信の多いマネックス証券、IPOの裁量配分を時々くれるSMBCフレンド証券もお付き合い程度、でノーロードの投信購入に利用しています。

 

(3)投資信託の売り方

 投資信託には、債券同様に満期償還日が設けてあるものと、無期限運用のものがあります。満期償還日があるものは、その時期が来ると自動的に、その時点での基準価額に保有口数をかけた金額が償還されます。満期償還なら、先程の(1)の③信託財産留保金は、不要です。ノーロードのインデックスファンドは、殆どが無期限運用ですので、現金化する際には解約申し込みを行って中途売却することになります。還ってくる金額は、上記の金額と同じ計算ですが、こちらは信託財産留保金を取られるものが多いです。インデックスファンドの場合は安くて、大体0.1~0.3%程度です。

 税金に関しては、特定口座扱いになっていれば、現行では源泉分離課税されますので手続き不要ですが、やはり2016年1月からは、特定口座でも「申告分離課税」20.315%になります。

 

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中国経済統計の信頼性について その1

2015年08月28日 | Puffinさんの投資指針

  このところ世界の金融市場は中国問題で大いに揺れています。揺れる大元をたどると、中国の経済統計の信頼性に突き当たります。今回はその話題です。

  中国の経済統計、特にGDPの統計については、従来から信頼性が薄いと言われてきました。その事に関して私なりに解説を試みます。まず直近のデータ、15年4-6月期から見てみます。最初はロイターニュースからの引用です。(中略あり)

引用

[北京 7月15日 ロイター] - 中国国家統計局が15日に発表した第2・四半期の国内総生産GDP伸び率は前年同期比7.0%となった。第1・四半期から横ばいだったが、アナリスト予想の6.9%は小幅ながら上回った。

同時に発表された6月の経済指標も、市場予想を軒並み上回り、回復の兆候が示された。なかでも鉱工業生産は5カ月ぶり高水準だった。統計局は、指標の内容について「苦労して達成した成果」としたが、景気回復を確実にするためには、一段の措置が必要、と指摘。

中国経済が全般的に低迷している兆しがみられるなか、最近発表された経済指標が比較的良好な数字となっていることから、当局データの正確性を疑問視する声も上がっている。ただ、統計局はこの日「GDP統計は正確で、数字が意図的に引き上げられたことはない」と強調した。

引用終わり

  みなさんがこのニュースを見て一番驚くことは何でしょう?

中国経済に関心のある方であれば、きっと7.0%という数字でしょう。政府が目標にしている新常態の目標数字である7.0%を、あまりにも正確になぞりすぎていることに驚かれたのではないでしょうか。しかも1-3月期の7.0%に続いて、目標通りの同じ数字が2四半期並んでいますのでなおさらです。

  私は日本経済研究センターでエコノミストの卵をしていたので、GDP統計 にはある程度精通しているつもりなのですが、プロ的に見ると一番驚くのは発表スピードの速さです。日本の同時期、4-6月期のGDP数値は速報値が8月 17日に発表されました。中国に比べて1ヶ月遅れです。そしてさらに1か月後には確報値として改定されます。

   GDP統計とはそもそも様々な一次の経済統計数値が出そろって、それら を統計的に解析・推定したり、季節調整なども済ませてから2次統計として発表されるものです。つまり消費は百貨店・スパー・コンビニの売上から、生産は製 造業の生産から、輸出入は物やサービスの通関統計などを集めることから始め、不足分は推定したりするのです。ところが中国は1次統計の発表が終わらぬうち に2次統計であるはずのGDP数値を発表できる魔法の杖を持っているのです(笑)。要するにいい加減な数字を集計し、中央政府のお気に入り数字にお化粧し て発表しているため、「2期連続で目標どおり7%でした」と発表しているとしか思えないのです。

   ちなみにアメリカは日本より早いタイミング、4-6月期GDPは7月 30日に速報値として発表しましたが、次の改定で毎度結構大きく改定されます。4-6月期は速報でプラス2.3%であったものが、昨日8月27日にプラス 3.7%と大幅な上方修正が発表されました。統計手法の発達したアメリカでも、それほど速報は難しいということを示しています。

  これだけでも中国のいい加減さと恣意性は十分に理解できると思います。こうしたいい加減さを本格的にスタディーしたレポートがいくつか公表されています。そのうちでアメリカの研究機関のレポートのサマリーを紹介します。機関名は、

US-CHINA ECONOMIC AND SECURITY REVIEW COMISSION、

そのSTAFF REPORTとして13年1月28日に発表されたものです。タイトルはそのものずばり「中国の経済統計の信頼性について、GDP統計の分析」。英語で数十ページにもなるため、要旨のみ簡単に並べます。

・中国の経済統計は欧米と比べ信頼性に欠ける

・統計手法は旧ソ連方式を採用し、近年改良はしつつあるが国際標準とは異なる

・数字の集計は公的部門と製造業に偏り、民間セクターやサービス業の集計はダメ

・ダメな証拠の例として、各地方のGDPを合計すると全体のGDP数値を大きく超える。これは地方の役人が大きな数字を出すインセンティブを持っているため

・逆に企業の数値は課税を逃れるため過少に申告される傾向がある

・GDPは経済の調子が悪くなった時は特に大きめの数字が出される。98年のアジア危機、09年の金融危機の時などが好例

   ではどの程度数字を偽っているかについてですが、非常に大雑把に言うなら「悪い時は1~2%プラスされ、逆にいい時は1~2%マイナスされる傾向がある」としています。以上がこのレポートの概要です。1~2%なら、さほど大したことはないという印象を、私は持ちました。

   この他にも様々な矛盾を指摘する分析レポートは枚挙に暇がありません。例えば中国発表の輸出入統計と、海外各国発表の対中国輸出入統計の集計数字が全然違うとか、有名なものでは「李克強指数」とも呼ばれる電力消費・貨物輸送・銀行貸出の数字との整合性などです。この3つのうち私は石平という批評家の話として「電力消費と貨物輸送の数字がGDPの統計と大きく乖離している」という例を先頃の中国に関する記事で引用しました。

つづく

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Puffinさんの投資指針 その3

2015年08月27日 | Puffinさんの投資指針

 各論―具体的手法

 

私は、長期保有と短期売買に分けて行っています。

 

長期保有は、ローリスク・ミドルリターンの投資が特徴です。投資対象は、【Ⅰ】外貨建て外国債券、【Ⅱ】投資信託、それに少しリスクは上がりますが【Ⅲ】長期保有を目的とした国内外の株式投資、です。現在は、こちらが資産の大部分を占めています。手法としてはかなりのんびりしたものになっています。基本は「バイ・アンド・ホールド」です。

一方、短期売買は、ミドルリスク・ハイリターンになります。数日から数週間のスパンでの株式投資を、全損しても構わない程度の資金を投入して、回転売買にて行っています。こちらは、「呆け防止の頭の体操」を目的としたものです。株式投資で陥りがちなリスクを極力排除しようとして、なるべく手間・暇の不要な方法を、8年間毎日夜就寝前の1時間だけを使ってネットなどで勉強して、試行錯誤を続けた結果です。主な手法としては、【Ⅳ】会社四季報を利用した国内株投資、【Ⅴ】新規上場株式(IPO)投資、の2つです。

 

何れも、日々の記録をノートにつけていて、15冊目になりました。記録をつけることは、自分の考えをその場で整理するうえで必要になると思います。また、後で振り返ってみて、例えばなぜうまくいかなかったのか、などの検証にも役に立ちます。今から始めるなら、ネットのストレージサービスを使えば、いつどこからでもアクセスできますね。始めた当時はそんなものはなかったので、今も紙ベースです。かつ四半期ごとに、保有全資産について詳細なリストも作っています。国内だけでなく海外の証券・銀行口座もあるので、全部のIDとパスワードを書いて、私が呆けたり死んだりした時は妻がそのノートを見れば全てがわかるようにして、居間に置いていつでも自由に閲覧できるようにしています(仕事柄、認知症者に接する機会も多く、痛感するのは、その時が来たらもう本人にはそれがわからない事です)。家族は夫婦と犬1頭だけなので、私が守らないと誰も守ってくれませんから。

 

まずは、長期保有から。

 

 

】外貨建て外国債券投資

(1)米国債

私の投資の基本は、資産の大部分を占める米国債などの外貨建て資産です。私は序論で述べた2020年問題を想定して、3年前の円高の時代に金融資産の多くを外貨建ての米ドル建て米国ストリップス・ゼロクーポン債や豪ドル・ニュージーランドドル建てディスカウント世界銀行債、米国株・NY市場上場投資信託ETFにシフトさせました。今も一定額ずつを毎月購入しています。大手証券会社の例えば野村・大和・三菱など、及び中堅ですがSMBCフレンド証券など、それとネット証券のマネックス証券などなら、国内口座に加えて外国口座を開設すれば、誰でも日本円を使って簡単にそうした外貨建て商品を購入できます。

日本国債破綻時に資産を守る手段として一番のお勧めは、世界最大の流通量(=流動性)と信用度を持つ、米国債でしょう。世界の資本主義の総本山ともいえる米国経済の信頼度・健全性は他国の追従を許さないもので、その債券元本の安全性は世界にあふれるすべての金融商品の中でダントツの高さを誇っています。たとえ満期償還前でも市場で自由に換金が可能でしかも米ドルで返ってくる、という絶対的な流動性の高さに加えて、債券の持つ安定した確実な利息・利回りを得ることが出来、償還まで持ち切れば、満期時には額面金額が償還されます。日本経済の破綻などが発生した場合に超円安となったならば、大きな為替利益も得られます。特に、ゼロクーポンと呼ばれるストリップス債は一種の割引債で、購入と同時に、満期償還時の最終利回りがドルベースで確定します。ディスカウントされた金額で1単元1,000米ドル単位での債券購入が可能なので、購入資金が少なめの方でも、より多い額面金額を購入できます。

一般に、有事の際には米国債が真っ先に買われます。この事を象徴する出来事は、2013年に「財政の崖」と呼ばれる、米国が直面する経済の下振れリスクを“米国経済が崖の上に立っている”と喩えた問題が生じて、米国格付け会社が米国債の長期発行体格付けを格下げしたことがありました。そこで起こったことは、米国債の市場債券価格の暴落ではなく、むしろ上昇でした。つまり、全ての投資対象商品の中で最も信頼性の高い米国債が格下げされるということは、それ以下の信頼性しかない他の投資対象はもっと信頼性が下がる、と看做されることで、最も信頼性の高いものへと投資対象を移す「フライト・トゥ・クオリティ」(質への逃避)と呼ばれる現象が生じた結果です。米国債の磐石性を象徴する出来事だと思います。

以上の利点から、日本経済破綻の場合の保険として、米国債は大変有効だと思います。

 

(2)スーパーソブリン債

その他の外貨建て外国債券としては、「スーパーソブリン債」と呼ばれる、世界銀行債などの国家を超えた国際機関発行の債券類もあります。こちらも信用度は高く、安全性も一般には高いと言えます。ただ、いま日本で購入できるこうした債券は米ドル建て以外のものが多く、米ドル建てに比べると単位通貨の流動性が低くてその分ボラティリティー(価格変動の度合い)が高いため、為替に注意が必要になります。豪ドルやニュージーランドドル建てはまだしも、最近では南アランド建てやブラジルレアル建て、トルコリラ建てのものも発行されており、そうしたものは高金利ですが為替リスクが高いので、お薦めできません。

一時期、0.5%利付ディスカウント債が好まれて日本で流通していましたが、これは、日本の税制の盲点を突いた債券で、現行税制では償還前に売却した場合の譲渡差益が「無税」となることを利用したものです。しかし、2016年1月に「社会保障と税の一体改革」が施行され、こうしたものも全て特定口座の対象として、「申告分離課税」に変わるため、無税の恩恵を受けるには2015年中の売却が必要で、これからは無くなると思われます。私も、一部この豪ドル建て・ニュー時ランドドル建て世銀債を保有していますが、2015年中に売却予定です。

 

(3)外国債券の買い方

では、その買い方です。代表として米国債ゼロクーポンを挙げてみます。外国債券は一般に、販売する証券会社の得る利益が少ない傾向にあるので、実は殆ど積極的な宣伝活動は行われていないのが現状です。初心者の方は、どこでどういう手続きをする事で買うことが出来るか、迷われる方も多いと思います。

まずは、証券会社選びです。日本株と違って、どこの証券会社でも売っているわけではありません。米国債の扱いが多く色々な償還期限の中から選ぶことが出来る証券会社は、限られています。

 

一般に、証券会社は、大きく分けて、店頭型証券:古くからある、証券マンのいる支店が中心の大手証券が主。野村証券・大和証券・SMBC日興証券・みずほ証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券・SMBCフレンド証券など、と、ネット証券:全てがネット上で完結する取引中心。SBI証券・マネックス証券・松井証券・カブドットコム証券・楽天証券などに分かれます。各種手数料が安いのは、圧倒的にネット証券です。店頭型証券も今はどこもネット上からも口座開設が可能になり、ネット注文も可能ですが、各種手数料が約10倍と高く、ネットでは取り扱い商品に少し制限があります。ネット証券は、株式と投資信託のみの扱いが殆どになります。今では、各証券会社のほぼ全てが口座開設・口座管理料無料です。例外は、野村證券および大和証券の店頭支店で口座開設をした場合は口座管理料が発生し、国内口座に年間3,248円、外国口座の開設で更に同額の料金が発生します。

 

米国債ゼロクーポンを買うのなら、大手証券会社の野村證券・大和証券・SMBC日興証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券です。特に品揃えが豊富なのは大和証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券。野村も、かつては豊富でしたが、このところやや少なくなっています。同じ償還日の米国債でも、各社によって微妙に販売価格が違います。

口座開設後にかかる年間口座管理料は、前述のように野村と大和は普通に支店で開設するとフルサービスが受けられますが国内口座+外国口座で年3240円x2取られます。しかし、抜け道があって、野村はネット取引のみのホームトレード口座をネット申し込みで無料になり、米国債などの外国債券預かりも出来ます。米国債購入は電話注文で対応します。大和もネットからの口座開設申し込みが可能で、ネット中心のダイレクトコースを選択して「eメンバー」になると国内株式預かりは無料ですが、外国債券預かりは年3240円かかります。但し3000万円以上の預かり資産があると、外国口座も無料になります。大和はネット上から米国債購入注文が可能です。他は、店頭型証券でもネット証券でもどこも口座管理料は無料です。SMBC日興証券は、大手にしては外国債券の扱いが非常に少ないです。三菱UFJモルガンスタンレー証券は、米国債購入はやはり電話注文です。中堅のSMBCフレンド証券は、米国債の扱いが殆どなく、世界銀行債などになります。こちらは書面でのやり取りが必要になるので、店頭に行くか、郵送でやり取りします。

 

なお、米国債はどの証券会社で購入するのでもほとんどの場合、既発債の購入になります。購入手数料は、提示価格に織り込み済みですので、別途必要になることはありません。

 

購入方法は、自分が口座を持つ上記の証券会社で日本円を米ドルに為替交換してそのまま直接購入する買い方が、一番簡単です。各証券会社への出入金手数料は、自分が口座を持つ都市銀行のオンラインサービス契約をしておけば、そことの出入金は無料です。入金後に今度は為替交換しますが、米国債を扱う大手証券会社で為替交換に必要なスプレッド(基準為替レートと買い・売りの為替レートとの差分で、その分が手数料になります)は、米ドルの場合50銭くらいかかります。為替レートも約定タイミングが決まっています。1日に数回決まった時間までに集まった注文をまとめて、その時刻に証券会社が決めたレートで為替交換されるので、約定した後でないと、実際の交換レートがわかりません。私は、為替交換はSBI証券の口座開設後に申し込んでいた系列子会社の住信SBI銀行を利用しています。こちらは、スプレッドが9銭(2015年8月17日からは15銭)と安く、しかも月曜午前7時から土曜日午前6時50分(サマータイム時は午前5時50分)までリアルタイムで為替レートが提示され、注文受け付け時点で為替レートが確定します。また、外貨普通預金取引からだと8日先までの期間連続しての「指値注文」が有効なので、自分の希望する為替レートになれば自動的に約定します。常に為替動向を見張ることが不可能な兼業投資家の方には最適だと思います。一方、こちらの欠点は、住信SBI銀行から他の証券会社への資金移動が必要となり、SBI証券以外の証券会社への資金移動に際しては、予め事前登録手続きが必要でそれが非常に煩雑で時間もかかることや、リフティングチャージと呼ばれる手数料がかかることです。1回の送金金額を170万円位にしないと手数料負けします。

こうして米ドルが証券口座に入ったら、買い注文を出します。野村と三菱は、電話でコールセンターにかけてオペレーターとやり取りします。ちなみに、電話注文の場合は先程の為替交換をせずに直接円貨を使う旨話せば、概算金額を言われますのでその金額の入金で直接買う事も出来ます。最終的な為替レートは、やはり決まっている約定タイミングでの為替レートになります。店頭型証券の口座、といっても億単位の預け資産がなければ、担当者が付かないネット取引の「零細口客」に分類されてしまうので、コールセンター職員が強引に別の商品の説明をする事などは一切なく、淡々と事務的に処理してくれますので、安心して「米国債だけ」購入することが出来ます。大和の場合は、ネットから直接購入できます。

私は現在、三菱が中心で野村でも米国債を買っていますが、今後大口購入では、大和でも買う予定です。

 このような流れで、各自のライフプランに合わせて任意の償還日の米国債を購入してください。

 

(4)外国債券の売り方

 今度は、買った外国債券の売り方について、やはり例として米国債を取り上げます。

債券は一般に、満期償還を待つか、中途売却をするか、の何れかで換金します。満期償還の場合は、その時期が来ると自動的に換金されます。換金額は、その債券の額面価額になります。米国債の場合は、1,000米ドル単位ですのでその金額が還ってきます。中途売却の場合は、預けている証券会社に買い取ってもらいます。中途売却の場合の買取り金額は、残存期間とその時点の金利水準によって変わります。実務上は、証券会社によって多少違うかもしれませんが、手続きに一定期間必要なので満期償還日の約1週間から10日くらい前までに申し出れば、中途売却が可能です。

 受け取りは、外貨でも円貨でもどちらでも選択可能です。何もこちらから申し出がなければ、その時点の為替レートで換算して円貨で還す証券会社が多いようです。引き続き外貨で保有するか、新たに別の外国債を購入する資金に充当したい場合は、外貨MMF(一日満期の外貨建て投資信託で、日々の分配金が繰り延べられて毎月の分配再投資日にまとめて自動的に再投資される)での受取り手続きを事前にすれば、外貨のまま受け取れます。

 

あと、重要なのが税金の話です。現行では、利付債(原則利率0.5%以上)は、(1)譲渡損益のうち、利益は非課税で、損失は他の利益と相殺できず「なかったこと」にされる、(2)償還損益は雑所得として総合課税、(3)利子は利子所得として税率20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉分離課税。また、割引債(原則利率0.5%未満)は、(1)譲渡損益が譲渡所得として総合課税、(2)償還損益は同上、ということになっています。

米国債ゼロクーポンの場合は、割引債に該当しますので、いずれの売り方をしても総合課税、ということになります。

これが、2016年1月からは、先程(2)のスーパーソブリン債の項で触れたように、「社会保障と税の一体改革」の実施で新税制が施行され、全て一律に特定口座の対象として、「申告分離課税」になりますので、注意が必要です。特定口座扱いになる利点は、自分の保有するすべての証券会社での株式などの他の投資商品の売買損益を、損益通算して相殺することが可能になり、さらにトータルでの損害は3年間繰り越せるようになる点です。私の持つ店頭型証券会社の担当者の話では、証券会社からは2015年秋頃に顧客に対して、特定口座扱いになる資産一覧が通知される手順になっているそうです。なお、同時期より、マイナンバー制度が稼働するので、もうお目こぼしは期待できません(税務署は年間3億枚の源泉徴収票を手作業で名寄せする事から解放されるので)。正直に申告しましょう(笑)。

 

 

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Puffinさんの投資指針 その2

2015年08月25日 | Puffinさんの投資指針

総論―如何にして戦いに臨むか


 第一に、本業を最優先しましょう。兼業投資家は、どんなに努力してもあくまでもアマチュアです。世界中に情報網を張り巡らし沢山のアナリストを抱えて豊富な資金力を持つ、年金機構や生保・投資会社・ヘッジファンドなどの機関投資家と同じ土俵で戦うのは、戦車に竹槍で立ち向かうようなもの。特に、2010年1月から東証のアローヘッドシステムが稼働、2014年には更にバージョンアップされて実測値で0.00004秒毎に約定が繰り返され、機関投資家は、自動アルゴリズム売買を行うスーパーコンピュータを使い40ギガbps以上の専用回線を引いて、更にほんのわずかでも敵より早く注文が届くように兜町周辺のビルを完全に占拠して本拠を構えて、同じビル内でも1ミリでも東証に近い場所にコンピュータを設置する、空中戦を通り過ごして究極の宇宙戦を日々繰り広げています。

自分がプロである本業こそが、最も効率の良い確実な利益をあげる手段です。

 

第二に、例えば株式投資のキモは、資金管理と売買ルールです。銘柄選びではありません。米コーネル大学経済学部(夜中にネットを使って英語の原著論文を流し読みしたので、大学名は記憶違いかもしれません。ご容赦ください。)の発表論文で、厳格な資金管理と売買ルールを定めて、銘柄は無作為に選んで6か月間投資運用したところ、統計学的有意差をもってトータルで利益が出た、というものを読みました。自分の総資産がいくらでそのうちどこまでどの程度のリスクを冒すことが許容できるか、そしてそれに基づいてきっちりした売買ルールを定めて何があってもそれを頑なに守る、これが実は一番難しい事です。これに時間をかけて、銘柄選びは定めたルールに従って短時間で機械的に行う事が肝心です。

資金管理と売買ルールは、その他の債券や投資信託などの投資においても、同様に重要です。一般に、総資産の50%を失うと、その回復は困難、とされています。その後頑張って大きな利益を上げて、それから50%増になったとしても、元々の75%になったに過ぎません。プロでも連戦連勝は極めて困難です。一時に大きな損害は、致命傷となることが多いのです。

大金とレバレッジを賭けて一発勝負をするのは、投資ではなく投機です。1回大儲けをする事よりも、最後まで生き残ることが大切です。

 

第三に、投資で最も重要なのは、流動性だと思っています。株式投資では、見かけ株価が上昇していても、1日の出来高が低い(俗に「板が薄い」と言います)と、思わぬ高値で買わされたり、ずっと安値で売らざるを得なかったり、最悪、売買そのものが成立しなかったりします。最終的に利確できなければ、たとえいくら含み益があっても、絵に描いた餅です。

一般に流動性が高いものとしては、最も多い流通量を誇る米ドル現金通貨や圧倒的な流通量と高い信用度をもつ米国債、があります。いざという時に自由に売り買いができる安定性こそが、本当の危機の際に最後の砦となり得るのです。

第四に、前述の機関投資家は鉄壁に思えるかもしれませんが、実は大きな弱点を抱えています。「機関投資家の欠点」=「個人投資家の利点」になります。

個人投資家の利点とは、その自由度です。個人投資家は、投資結果について誰に対しても説明責任を負いません。機関投資家のファンドマネージャーは、四半期毎(3か月間)で常に利益を生むことを求められます。結果が悪ければ、良くて売買裁量枠を減らされ勤務報酬は激減、最悪、解雇されます。そして機関投資家はその運用資金を募集するにあたって、投資方針を金融庁に届け出て明示することを義務づけられており、その投資方針によって、ヘッジファンドを除く全ての機関投資家は、株式や債券先物の信用取引によるカラ売りを行えずに「バイ・アンド・ホールド」オンリー(現物買いして保有し、高値を待って売却するのみ)の投資スタイルを厳守することを求められます。相場環境が悪い不況の真っただ中でも、ひたすら何かを買ってあとはそれが値上がりするのをお祈りするしかないのです。かといって何も売買しなければ、確実に解雇されます。一方、個人投資家は、相場環境が悪いとみれば3か月間一切売り買いしなくても、元々雇われていないので首にはなりません。相場が下落に向かうと判断すれば、株式でも債券先物でも信用取引でカラ売りから入ることも可能です。但し、信用取引のカラ売りは、価額が意に反して上昇した場合、その損害が理論上「無限大」になるので、「ロスカット」(【Ⅲ】の(2)で後述)の設定は絶対必須条件です。

決定的なのは、その投資範囲です。数兆円にも及ぶ資金力を持つ機関投資家は、「クジラが池に入れない」ように、例えば株式投資ならば投資可能な銘柄は、日本の場合、東証一部の株式発行時価総額が巨大なごく一握りの大型株に限定されてしまいます。中・小型株の売り買いを行おうとすると、大きすぎる投入資金の為に自分の出した売買で株価がとんでもない値になってしまい、誰も売り買いしなくなってしまうので、売れない株を大量に抱えて、自分の首を絞める結果になります。これを「板を壊す」と言います。株式投資に必要な証券会社の取る売買手数料は、多くの場合一般に1銘柄1回の取引額が1億円を超えると無料になる(証券会社は株式保管料を発行体企業から取れるので、無料でも利益が出るようになる)のですが、巨額売買を中・小型株で行う事は前述のごとく自殺行為なので、では細かく分割して買おうとすると売買手数料が発生してしまいます。元々機関投資家は運営するにあたって、莫大な人材コストと設備投資がかかる上に、更に売買手数料が多数発生すれば、どんなに稼いでもコスト割れして、破綻が待っています。

一方、個人投資家は、株式投資なら上場約4000銘柄の全てに投資が可能で、しかも途中結果を気にせずに長期にわたる保有が可能なので、今はまだ規模が小さくても将来性を持つ安値のベンチャー企業のようなものにも投資することで、機動的な投資行為も可能です。

個人投資家は、「クジラ」のようにふるまうのではなく、あくまでも「コバンザメ」に徹する事で、その利点を十分に生かすことが可能になるのです。

 

以上が総論の話です。

次は各論に入ります。

コメント (5)
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