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どうするプーチン3

2023年06月29日 | ロシアのウクライナ侵攻

  残念ながらプリゴジンはあっけなく進軍を止めて退却し、ベラルーシに亡命しましたね。ロシア軍のウクライナ侵攻の拠点基地をいとも簡単に制圧し、住民から歓迎を受けたにもかかわらず、何故モスクワまで200km地点まで行って進軍を突然停止したのか、徐々に真相が明らかになりつつありますね。200km地点はロシア軍の首都防衛線だったとのことですが、それはともかく、ベラルーシのルカシェンコが彼を説得したという話は彼自身による説明からしても信憑性が高そうです。

  そもそもモスクワに進軍してロシア軍と正面衝突した場合、勝利することは不可能でしょう。たった一つ芽があるとすれば、多数のロシア軍勢がプリゴジン側に付くということでしょうが、その見込みが立たなかった。それとFSB(元のKGB)がワグネル幹部の家族を殺害するぞという脅しをかけて進軍を止めさせたとも言われています。

 また途中まで多少の反撃しか受けずに進軍が可能だったのは、ロシア軍の最上層部でプリゴジンと通ずるものがいて、軍に反撃命令を出さなかったと言われています。NYタイムズは「プリゴジンへの内通者は例の狂暴なる指揮官スロビキンだ」と名指ししています。今後プーチンが上層部の誰を粛清するかでそれは判明するにちがいない。

 

 プーチンはとりあえずほっとしているでしょうが、彼の絶対的権力に陰りが出たことは事実として尾を引くに違いない。だからと言って来年の選挙で有力候補が出る余地はないでしょう。よしんば出たとしてもまともな選挙など行われないため、プーチンの一方的勝利で終わるに違いない。

 そもそもプーチン体制に反旗を翻せば、それだけで禁固15年という法律を作ったし、10年くらい前から報道管制が敷かれ、反政府的報道機関はすべて潰されています。つまり反プーチンの意見表明をする場すらない。それは先のトルコ大統領選と同じ。エルドアン以外の候補者の主張など一切報道されずにまともな選挙とはほど遠い選挙でした。

 プーチンはこれまでも反対勢力の有力者はすべて投獄、あるいは暗殺してきました。プリゴジンもいずれは同じ目に遭うでしょう。ベラルーシはロシア同様の独裁体制ですから、暗殺されても誰が暗殺したかなど調査のしようもないのですから。

 

 そして私の将来予想は、「オレ様独裁者は並び立たず」です。プリゴジンしかり、ルカシェンコもプーチンと並ぶオレ様独裁者ですから、いずれはぶつかり合うに違いない。

 

  気の毒なのはワグネルの軍人やプリゴジンと握手したり歓迎したロシア人です。動画で撮影された証拠があるので、いずれFSBによる投獄や拷問が待っています。

 

  それでも我々外部の人間が多少でも光明を見いだせたのは、そのような反プーチンの一般人が実は多数存在し、実際に行動に出たという事実です。それだけはフェイクなどではなく、厳然とした事実です。今後ワグネルを失ったロシア軍は徴兵を強化し、戒厳令すら出すかもしれません。それが逆に本格的反プーチン運動につながるかもしれません。それを首を長くして期待しましょう。

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どうするプーチン 2

2023年06月24日 | ロシアのウクライナ侵攻

  プリゴジンが牙をむき、プーチンが本気で怒っていますね。

いよいよ内戦かと思わせるほどのののしり合いが始まりました。そもそも日本で報道されているプリゴジンの枕詞、「プーチンの料理人」。そしてレストランの経営者で財を成した、という決まり文句は全くの間違いです。

 ちょっと考えれば、そんなことで5万人以上の軍人と武器を調達し実戦投入なんかできっこないことはわかります。実際には彼の経済力の源は、アフリカなど国内で混乱を極める国々の独裁者に軍事的支援をし、見返りとして資源の利権を得て莫大な財をなしているのです。

 今回の反乱は、私が5月4日の投稿で指摘したプリゴジンの反プーチン的言動がいよいよ言葉から実際の行動に移されたものだと思われます。

 そこでまず5月4日の投稿を再掲しておきます。

5月4日 投稿

タイトル;どうするプーチン、ワグネル・プリゴジンの驚くべき声明

再掲

やっと今頃になってロシアの民間軍事会社ワグネルのプリゴジン氏の「悲痛な叫び」が報道されるようになりました。

 私が最初にそれをTVで見たのは4月中旬テレビ朝日の番組ワイドスクランブルでした。日本ではそれ以外の報道はあまり見かけませんでしたし、欧米のメディアもプリゴジンの泣き言など信用できないとか、自己アピールのプロパガンダという評価が多く、報道はほとんどされていませんでした。

 しかし私はプーチンに反旗を翻したとも取れる声明を、ウソや冗談で語るとは思えず、いつかはこれを投稿しようとため込んでいました。その内容をサンケイニュース4月15日から引用します。

引用

ロシアによるウクライナ侵略で、露軍側で参戦している露民間軍事会社「ワグネル」トップのプリゴジン氏は14日、「プーチン政権は軍事作戦の終了を宣言すべき時だ」とする声明を交流サイト(SNS)上で発表した。同氏はまた、露軍は「東部ドネツク州全域の制圧」とする主目標を達成できそうもない上、ウクライナ軍の反攻で敗北する可能性があるとも警告した。

ワグネルの部隊は最激戦地の東部ドネツク州バフムトを巡る攻防で露軍側の主力を担当。プリゴジン氏は、露軍側の戦力低下を認識し、作戦の終結を求めた可能性がある。ただ、プーチン政権は「軍事作戦は目標達成まで続ける」としており、現時点で停戦に動く可能性は低いとみられる。

プリゴジン氏は声明で、ロシアはウクライナ領の重要地域を占領し、露本土と実効支配するクリミア半島を結ぶ陸路も確保するなど十分な「戦果」を達成したと指摘。侵攻開始から1年に当たる今年2月24日時点の前線を停戦ラインとすべきだと主張した。停戦しない場合、露軍はウクライナ軍の反攻で占領地域を奪還され、威信も失う恐れがあると指摘。「ウクライナはかつてロシアの一部だったかもしれないが、今は国民国家だ」とも述べ、「ウクライナはロシアの一部だ」とするプーチン露大統領の持論に暗に異を唱えた。

引用終わり

  この声明ではプーチンが侵略の根拠としている「ウクライナはロシアの一部だ」という歴史認識を事実上否定し、戦線の膠着は今後敗北につながるとまではっきりと言っていました。SNSテレグラムを使ったこの声明自体、国家反逆罪で終身刑に値する犯罪行為です。これを取り締まれないということは、「プーチンにはオレ様を逮捕する力はない」と言っているに等しいのです。

 彼は4月末になってさらに以下のような声明を出しました。4月30日、TBSのニュースサイトから引用します。

引用

東部の要衝、バフムトで激しい戦闘が続く中、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者は、「ロシア軍が弾薬供給で協力しなければ前線を離脱する」と述べました。
複数の独立系メディアによりますと、ウクライナへの軍事侵攻で戦闘員を送っているワグネルの創設者・プリゴジン氏は29日に公開された軍事評論家のインタビューで、「ワグネルへの弾薬供給の問題をめぐりロシアのショイグ国防相に対し最後通牒として手紙を送った」と明らかにしました。
4月28日までに問題が解決されなければ、ウクライナ東部の要衝バフムトを去るとしています。
インタビューでプリゴジン氏はワグネルについて「間もなく存在しなくなる」とも語っています。また、プリゴジン氏はウクライナ側の反転攻勢が5月15日までに開始されるとの見方を示したうえで、ロシアにとって「壊滅的な結果をもたらす可能性がある」と指摘しています。
プリゴジン氏は、今年2月にもワグネルに弾薬が十分に供給されていないとショイグ国防相らを批判していました。

引用終わり

 

  主力軍の司令官がこれほどの弱音を吐くというのは、プーチン政権に対する積年の恨みを込めた声明にも思えます。2度目の声明となると、さすがに日本のメディアも注目せざるを得なくなり、あわてて報道を始めていますね。一方アメリカではこうした流れに呼応するように、報道官から以下の声明が流されました。

5月1日のロイター電です。

引用

米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトでの戦いでロシア軍の死傷者は過去5カ月間で10万人に上るとする米情報機関の推計を明らかにした。

カービー氏は記者団に対し、このうち死者数は2万人を超え、その半数はロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員と見られると語った。その上で、ロシアは軍事備蓄や軍部隊を使い果たしたとし、「ロシア軍が主にバフムトで試みた攻勢は失敗に終わった」と指摘。「ロシアは実質的に戦略的かつ重要な領土を掌握することはできなかった」と述べた。

さらに、ロシア軍がバフムトで達成した一定の前進は「ひどい犠牲」を伴ったとし、10万人を超える12月以降の死傷者数については、第2次世界大戦のガダルカナルの戦いにおける米軍の死傷者数の3倍に相当すると述べた。

また、同地域におけるウクライナの防衛は引き続き強力としたほか、米政権が新たなウクライナ向け軍事支援パッケージを近く発表すると見通しとした。

引用終わり

 まさか太平洋戦争でのガダルカナル戦が比較として出てくるとは驚きです。そしてまた5月4日に3回目となるプリゴジンの非難がクレムリンに対して行われました。「ワグネルが消滅したら、クズ官僚のせいだ」。この悲痛な叫びともいえる牽制にプーチンは反論もせず、さしたる反応すら示していません。打つ手を持たない証拠でしょう。

 それとともにロシア国内ではテロ行為とおぼしきカフェでのプーチン支持派の爆殺や列車の転覆、そして燃料施設の爆破などが続いています。極めつけは、5月4日、遂に無人機でクレムリンを攻撃したとのニュースが入りました。ウクライナは犯行を認めていません。

 それでもクリミア半島セバストポリの軍事燃料施設を大規模に破壊したり、ウクライナに近いロシア側で貨物列車が別々に2回、爆発装置で爆破され脱線する大きな事故が起きています。すべてをひとくくりにはできないと思いますが、ロシアの占領地を含む内部構造は、意外にもろい可能性があります。

 クレムリンを2機のドローンで攻撃した件について、日本の軍事専門家は午前3時という時間を考え、またスピードの遅いドローンを早めに迎撃できていないことを理由に、ウクライナからの攻撃ではなく、自作自演、あるいはワグネルの実行説を指摘しています。5月9日第2次大戦の戦勝記念日にプーチンが姿を見せれば、自作自演説も有力になるでしょう。彼は暗殺を極端に恐れていますので、ウクライナ側、あるいはロシア国内の反プーチン派の攻撃であれば、出てこれないはず。クレムリンへのドローン攻撃が自作自演か否かが判明するかもしれません。

 今後西側からの最新型戦車やハイマース、ミサイルを迎撃するパトリオットなどの武器を支援してもらったウクライナの5月攻勢に期待したいところです。ゼレンスキー大統領も近日中の反転攻勢を語ってはいますが、5月2日のTV朝日のワイドスクランブルで解説していた東大先端科学技術研究センター講師の小泉悠氏は、「それほど簡単ではないはない」と解説していました。彼は昨年の侵略直後から頻繁にTVに出演していますが、海外からの情報を多くつかみ、いつも的確な見通しを知らせてくれます。反転攻勢が簡単ではない理由の一つは、戦車の台数が見込みより少なく、弾薬なども十分とは言えないからとのこと。

 いよいよ地面が乾いてくる5月に入ったため、私はウクライナの反転攻勢に期待したいと思います。

 さー、どうするプーチン?

再掲終わり

 

 いよいよ尻に火が付いたプーチンですが、はたして本当に内戦状態にまでなるのか、逆に雨降って地固まるのか。

 今回のののしり合いは単なる言葉の応酬だけではないように思われますので、しっかりとフォローしていきましょう。もちろん私の希望的観測はプリゴジン・ワグネルのモスクワ侵攻です。それで勝てずとも、プーチンに重大な危機をもたらすだけでもウクライナには大きな支援材料になります。

 

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株式暴騰への警鐘、日銀は株式売却のチャンスだ

2023年06月19日 | 株式市場へのコメント

 4月に来日したバフェット爺さんの日本株買い宣言が誘い水になり、株式市場がとんでもない相場を形成し、勢いを増しています。ニュースは「株価は今日もバブル崩壊後の高値を更新しました」と毎日言い立てています。

崩壊後の高値って、いくらのこと?

 不思議なニュースですよね。38,915円がピークなので、そこまではいつだって崩壊後の高値に決まってますよね。それを毎日更新だっていわれても、私には全くピンときません。ニュースを書いたり読んだりする人はそれに対して疑問を持たないのでしょうか。ピークを超えたら初めて「最高値更新」と言って欲しいですね。

 この相場上昇要因として指摘されているのは、①東京証券取引所による「株価純資産倍率が1倍を切っているのはけしからん」という改善要請と、②4月中旬に来日したウォーレンバフェットの「日本株買い宣言」、③日本企業の収益改善、とされています。しかしこのうち東証による指導は、大した影響を持たなかったと私は見ています。

 理由は単純で、2月の宣言から4月中旬のバフェット爺さん来日まで、株価はほとんど上昇などしていないからです。それに対してバフェット爺さんの「日本株をもっと買うぞ」との宣言後はほぼ一貫して上昇を続け、日経平均は2万6千円台が3万3千円台へ、たった2か月で25%以上上昇しました。

 その間の買い主体は海外投資家で、東証宣言後の3月には2.4兆円も売り越していたのが、バフェット爺さんが来日した4月は3兆円の買い越し、5月も3.5兆円の買い越しです。これを見ても爺さんのご託宣の威力を感じます。

 その間逆に売りに回っているのが個人投資家と信託銀行で、まさに逆張りをしています。相場の格言「人の行く裏に道あり花の山」を地で行っているのです。さてどちらが報われるか。

 一方、要注意は証券会社などによる個人投資家を対象とした悪乗り商法です。今回は特にこれまで株式投資など経験したことの無い若い世代を中心にワナを仕掛けています。投資に関するサイトから週刊誌、TVのワイドショーまで、新NISA導入をエサに株式投資を煽りまくっています。

 

 株式相場もう一つの格言は、「シロウトが株の話をし出したらピークだ」です。こんなに上昇している相場を見てこれから買いに入るのは愚の骨頂です。そんなことはいっさいかまわずに「さあ始めよう、新NISA使い方」と煽るのが銀行証券など、シロウト相手の商売上手です。先ほど指摘したとおり、これまでに株式投資を十分に経験した個人は、いまが売り時とみて売りに回っています。

 TV番組を見ていてもう一つ気になるのは、投資初心者への解説です。株価の変動要因などいくらでもあるのに、あーだこーだと言い立て、それがいつだって普遍の真理だと教えていることです。

 株式相場上昇の原因はほぼ経済金融要因ですが、下落要因は無限にあります。一番ありそうな経済金融要因は、ここまで保ってきたアメリカ景気が後退することによるアメリカ株の下落、そして確率は低くとも起こったら大ごとなのは日本財政の破綻です。しかしその程度の経済の内部要因だけでは済みません。ロシアがたとえ小さな核爆弾でも使用するか、あるいは中国が台湾に侵攻でもしようものなら大暴落間違いなし。特に台湾は日本の近隣ですから、上昇している日本の株価が世界で一番の大暴落になるかもしれません。そうしたことが投資のリスクだということなど、シロウト向け解説では聞いたことがありません。日本は地震国ですから、今年100年を迎えた関東大震災がまた起こるかもしれないし、30年以内の確率が6~7割もある東南海地震が起こるかもしれません。

 天変地異に戦争などの災害は保険屋さんのように、「それは免責です」などということは株式市場にはないのです。それに対して米国債投資は、そうした天変地異や戦争などで株価が暴落するたびに世界中から買いが集まるなんとも幸せな大災害特約保険付投資であることを忘れないようにしましょう。

 

 最後に私から日銀へ一言、

「上昇中の今こそ日銀は保有株を売るべきだ!」

じゃなかったら、いったいいつ売るんだ、今でしょ!

 

 もちろん日銀の株式売りは株価の下落につながりかねませんが、この調子だと売り時を逃すか、あるいは暴落に拍車を掛けるタイミングで売るしかなさそうなのが気になります。

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私の青春のアイドル

2023年06月14日 | エッセイ

 どなたも若い時にご自分の好きなアイドルがいただろ思います。みなさんのアイドルは誰でしたか?

 私のアイドルは中学高校で一緒だった森山良子ちゃんです。初めは2学年上でしたが、最後は1学年上になっていました。すでにセミプロとして歌に集中していたせいです。

 何故唐突にこんな話題について書くのかと申しますと、今年は彼女がプロデビューから55周年に当たり、閉鎖間近の渋谷オーチャードホールと出身校である成城学園のコンサートホールで演奏会がありました。私は両方とも人気があり過ぎてチケットを手に入れることができなかったのですが、今月NHKBSがオーチャードホールでのコンサートをなんと2時間半もの長丁場でビデオ放映してくれ、それを見て感激のあまり青春時代を回顧してみたくなったというわけです。

 

  私の高校時代はビートルズが出きて全盛時代を迎えた時と重なります。良子ちゃんのあと私はビートルズ一本鎗でしたから、私の永遠のアイドルは良子ちゃんだけです。私も良子ちゃんと同じように中・高とも成城学園で、彼女は有名になる前からいつもみんなのアイドルでした。フォークソング全盛時代だったので、学校でギターを抱えて歌っていたのはジョーン・バエズやブラザース・フォーなど英語のフォークソング。彼女は父親が日系2世のためか、英語はとても上手で、そういえば別名「日本のジョーン・バエズ」と言われていました。母親はジャズ・シンガー。父母ともにジャズミュージシャンという音楽一家で育ちました。

  成城学園は幼稚園から大学まで全校行事はいつも全員参加でした。運動会では全学年を縦に6組に分けて競い合います。ですので赤白2組ではなく六色6組。なかでも盛り上がったのはリレーです。2年保育の幼稚園児による50m走から始まり、大学生の400mまで、学年別に距離を決めて2+6+3+3+4=18人がバトンを渡すという、ほかでは見られない長いリレーをするのです。

 学園祭も同じで、大学まで同時に開催され、コンサートでは実力があれば高校生も大学生に交じって一緒に大ホールで演奏していました。良子ちゃんの透き通るような声は全学園でもピカイチでしたから、学園祭では「トリ」ではないけどメインイベントでした。トリはいずれも学生時代のビレッジ・シンガーズや黒沢明の息子の久雄が主宰するブロード・サイド・フォーで、なんとも豪華な学園祭でした。

 高校くらいからどの学年にもバンドの一つや2つはあって、当時はやっていたヴォーカルのいない「ベンチャーズ」のロックバンドのそっくりバンドが演奏し、大きな体育館で何百人もの生徒が一緒に踊るディスコ・パーティーも開かれました。中高は男女が同数だったため時々スローの曲になるとペアで踊ることも許されていました。学園の自由な雰囲気を満喫したことを思い出しました。

 

 さて、良子ちゃんの55周年コンサートに戻ります。私は今73歳ですから彼女は75歳。最近歌声をほとんど聞いていないので、どの程度歌えるのかちょっと心配だったのですが、歌い出してびっくり。高校生の時の透き通るような声と豊かな声量はほとんど変化していませんでした。どの演歌歌手でもオペラ歌手でも70歳を超えて変化がないのはありえない。彼女は奇跡というしかありません。

 今回のステージでは、彼女のデビュー曲となった「この広い野原いっぱい」などのフォークっぽい歌はもちろん、母親譲りの英語のジャズも昔のままの歌声で聞かせてくれました。YouTubeのURLを付けておきますので、懐かしい方は聴いてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=ek5-up9C2fs

 

 そして何より一番驚いたのは、プッチーニのオペラのアリアを歌ったことです。さすがに「今回のために高い声と声量を出す練習をしました」とステージで言ってはいましたが、練習したから出せるという代物ではありません。オペラ好きの家内ですら、「彼女はまだオペラで十分歌えるね」とほめていたほどです。

 

そして最後のほうで歌ったのは「ざわわ ざわわ ざわわ」という歌詞を何度も繰り返す「さとうきび畑」。10分を超える長い長い歌です。沖縄戦が終わった時に生まれた子が、まだ見ぬうちに戦死した父のことをサトウキビ畑で探すという悲しい歌です。

https://www.youtube.com/watch?v=v5BmM2bNIGE

 

 その歌の前に彼女が披露したのは母親の言葉でした。ちょうどイラク・イラン戦争の最中だったとのこと、「あなた、こんな時に愛だ恋だなんて謳わないで、あなたにはもっとふさわしい歌があるじゃないの」と言われたそうで、「そうだ私には反戦の歌がある」と思い出し、再び取り上げたとのこと。実は彼女はこの歌がヒットしてから、戦争を体験していない自分に歌う資格はないと30年も封印していたそうです。それを今回も引っ張り出して歌ってくれました。

 この歌のさとうきび畑を「ひまわり畑」に変えたら、今のウクライナ戦争の悲惨さを象徴する歌になりそうだと思い、私は青春の思い出とともに思わず涙がこぼれました。

 

ということで、「わが青春のアイドル」、良子ちゃんの2時間半にわたる感動のビデオは、うちでは永久保存版となりました。

  おまけ

 最近卒業式では「仰げば尊し」を歌わないそうですね。そのかわりしばらく歌われていたのが良子ちゃんの「いつまでも絶えることなく友達でいよう」の歌詞で始まる「今日の日はさようなら」。我々は学生時代にキャンプファイヤーでこの歌をさんざん歌っていましたし、今でも同窓会の〆には応援歌とこの歌を歌います。

https://www.youtube.com/watch?v=YNQT68uHpyg

 さらにもっと最近の卒業式では、良子ちゃんの息子森山直太朗の曲「さくら」だそうです。最近桜の花は入学式より前の卒業式の時に咲くので、ぴったりなのかもしれませんね。素晴らしい親子のリレーです。成城学園の街は全体が桜並木だし、校内を流れる仙川沿いの広い陸上競技場にも桜が並木をつくっています。

 直太朗が母校の桜をバックに歌うビデオもあります。タイトルは「さくら 日本百歌、母校」です。

https://www.youtube.com/watch?v=3EI8DaIpqUA

 

  というわけで彼女は中高時代からおっとりした能天気キャラと言われ、清水ミチコとのウィッグの宣伝に出てくるままのキャラクターです。

 

 誰からも愛された「私の青春のアイドル、良子ちゃん」でした。

どうかできれば彼女の歌声も聞いてみてください。

 

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ダム崩壊はどちらの仕業か

2023年06月10日 | ロシアのウクライナ侵攻

 ウクライナのダムの決壊問題が深刻かつ大きな問題になっていますね。ウクライナとロシア双方にとって直接の洪水被害は甚大だし、南部のロシア占領地帯に攻勢をかけるための支障にもなるため、とても心配です。

 お互いに責任のなすり合いをしていますが、ウクライナ側もロシア側も自分たちは真相を知っている可能性はあります。なぜなら自分たちが実行したかしないかはわかっている。であれば、自動的に相手がやったか否かもわかるからです。私自身はどちらが実行したのか、もちろんわかりませんが、一つ考慮すべきなのは、事故や老朽化による崩壊かもしれないということです。

 6月6日のダム崩壊以降、多くの報道で様々な角度から分析が行われていますので、それを参考にしながら分析を試みます。

 ダムの完成は1956年とかなり古いもので、貯水湖は全長が240㎞、幅は広いところで23㎞、面積はなんと琵琶湖の3倍もあります。貯水量は日本全体の1年分の水を賄える量だそうです。

 破損したのは水門部分、つまり発電所部分です。私が注目したのは、5月28日、決壊前の画像と、決壊前日6月5日一部分決壊の比較写真です。まだ6月6日の大きな決壊にはいたっていませんが、ダムの上にある道路が破損して道路は寸断、水が流れ込み始めていました。それがアリの一穴となり、翌日の大崩壊につながったとすると、自然崩壊説もかなりの説得力を持ちます。

 その後の西側の分析によると、ダムの崩壊時点で爆発によると思われる地面の振動を観測したそうですが、一方で発電機が爆発したという分析もでています。しかし最も確かなのは5月28日と6月5日の写真による一部崩壊ですので、私にはどうも自然崩壊説が有力に思われます。

 では、今回の浸水被害での損得はどうか。洪水による住宅地・農地の被害面積は、日本の全農地の10分の1にも相当するということですので、ウクライナという国の大きさに驚きます。ちなみに国の面積は60万平方キロ、日本は37万平方キロなので、1.6倍もあり、しかもほとんどがフラットな可耕地です。いわゆる豊かな黒土地帯の大きな部分を占めています。そのためか崩壊後一瞬、シカゴ市場で小麦の先物価格が上昇していましたが、さほど大きな上昇ではなく、むしろその後値を戻していました。

 衛星画像による分析では今回の洪水予想面積は、ウクライナ側1とするとロシアの占領地区はおよそ2~3倍で、影響はロシア側の方がかなり大きいのです。それとロシア軍部隊の一部が洪水に飲み込まれたという情報もありました。するとウクライナの仕業か?しかし一方、ウクライナの攻勢を防御するために、ロシアは占領地帯の外側を泥沼にして進軍を防ぐことは有効であるといわれ、ロシアの仕業かともとれます。

 どちらにしろ洪水で被害を受けている地域に住む住人にとっては大きな災害であることに間違いありません。

 

 そして絶対に許せないのは、ロシア軍がウクライナ側の洪水被災者の避難所を攻撃し、死者まで出したことです。まさにプーチンとその軍隊の残虐ぶりを体現する悪魔の所業です。

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