ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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間違い発見!

2011年08月31日 | 資産運用 
「泣く子と地頭と格付機関には勝てぬ」に訂正です。
自分で読んだら間違っていました。

失礼!
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格付機関を批判する愚

2011年08月30日 | 資産運用 
格下げがあると、国でも企業でもついつい格付機関を非難します。でもそれは得策とは思えません。いわば審判のジャッジに文句をつけるのと同じだからです。それは最近のように権威に陰りがでてきていても同じです。「泣く子と地頭と、格付機関には勝てぬ」、というのが私の意見です。

その理由は「火のないところに煙は立たない」からです。債券の発行体の業績、信用状況や市場環境が変化していないのに、突然格下げをすることはありません。明らかな因果関係が必ずあります。だいたいはその程度問題です。米国債しかり、日本国債しかり。投資家はそうした材料に判断をつけてほしいのです。

  米国債の格下げにオバマ大統領は、「AAAに何の陰りもない」と反論しました。私が尊敬するウォーレンバフェット氏も、「米国はAAAAだ!」と反論しました。両者とも、「まー、ひとこと言っておこう」と言う程度で、どこかに提訴するというほどではありませんでした。

  オリンピックの審判なら提訴する先があるのですが、格付にはそうした先はなく、裁判をやっても文句を言う側が勝てないことを知って言っているのです。格付発表の資料には必ず、「これは我々が正しいと信ずる情報により判断した一つの意見に過ぎない」という但し書きがついています。

  じゃ、国にしろ企業にしろ、発行体は指を咥えて見ているだけかといいますと、そうではありません。国は格付を格付機関に依頼していませんが、格付機関は国との対話窓口を開いています。企業は格付を依頼していますから、もちろん格付機関と対話を重ねます。取得する時だけでなく、債券が存続し格付が存続する限り対話は継続され、発行体は一般への情報開示より踏み込んだ情報を提供しているのです。そうした対話をきめ細かくすることで、自分をよく見せる以外のやり方はありません。

今日はここまでです。
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格付機関、力の源泉

2011年08月28日 | 資産運用 

 格付機関は何故こんなにも力をつけたのでしょうか?今回はそのあたりのお話です。一問一答を続けます。

Q;格付機関どんな歴史を持っているの?

A;S&P、Moody'sともに、1900年年後からの歴史があります。
西部開拓時代の鉄道会社の発行する社債が、あまりにデフォルトを起こすため、
投資家に鉄道会社の社債情報を提供することからスタートしています。

Q;なんで今みたいな権威や影響力を確保出来たの?

A;信頼に足る格付けをつけていたからです。彼らは自分に対して厳しく採点をしています。例えばAAAを付与したあと、何年後にどれくらいの確率でデフォルトしたか、すべて細かくフォローして公表しています。その結果が信頼に足ると投資家が評価しているので、権威が保てるのです。
  債券投資は日本で考えるほど小さな世界ではありません。世界でも日本でも、投資証券の中で占める債券の大きさは株の2倍の規模ですから、投資の主流です。自分で会社の信用力を判断する力のない投資家は、非常に頼りにしています。債券の投資家は、格付けのない債券には投資しません。なので発行体は格付け会社にお金を払って格付けしてもらうのです。会社にとってはとても怖い存在です。

Q;どんなキャリアの人達が働いているの?

私が投資銀行にいた時代にMoody'sのNYで働いていた格付アナリストが、ソロモンの東京の私のいた部門に転職してきました。その人はアメリカ国籍の中国人で、アメリカの大学院でMBAをとり、Moody’sで長くアナリストをしていて、その後投資銀行のクレジット・アナリストとなりました。
また別の友人は、NYの連銀、Moody’s、投資銀行、債券投資ファンドと、転職は多いのですが、一貫してクレジット・アナリストとして活躍しています。働いている人達はとても優秀な人たちです。

Q;サブプライムローン問題の時は、彼らの「甘い格付け」がその原因の一端だったんでしょう?、彼等はどの様な反省しているの?

A;とてつもなく大きな批判を浴びました。大反省していると思います(笑)。ただし、格付け会社の言い訳はいつも同じで、製造物責任を逃れる文句が看板に掲げているので追及は無理です。
看板には、「これはわが社の意見に過ぎない」と書いてあります(笑)

今回、米国債をダウングレードしたS&Pは、米国政府の将来の債務残高を大きく(2兆ドル)計算違いをして、その後社長が交代する事態になっています。「社長交代は、責任をとったわけではない」とS&Pは言っていますが、投資関係者は誰もそうみていません。サブプライムに次ぐ大きなバッテンです。
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格付機関は、誰からお金をもらうのか?

2011年08月26日 | 資産運用 
そもそも格付機関は誰からお金をもらうのでしょうか。
発行体と格付機関の関係は?


こうした疑問に一問一答でいきます。

Q;格付は誰にとって必要か?
A;投資家が投資判断をするために必要です。

Q;誰が格付機関にお金を払っているの?
A;投資家ではなく、債券の発行体です。

Q;なんで発行体が投資家のためにお金を払うの?
A;発行した債券を買ってもらいたいからです。格付のない債券は買わない、という投資家がほとんどです。投資家としては安全を期しているのと、投資判断を誤った時に、だった格付機関が・・・と言い訳になるからです。

Q;じゃ、日本政府や米国政府も彼らにお金を払っているの?
A;企業は払っていますが、政府は払っていません。

Q;じゃ、なんで格付け機関は国に格付けをするの?
A;投資家からのニーズがあるからです。

Q;えーーーー??? わかんないよー。
A;はい、禅問答みたいですね(笑)

そうなんです。発行体・投資家・格付機関は実に不思議な関係にあるんです。

格付機関、これは厳密には機関ではなくただの株式会社ですが、日本語はきっとレーティング・エージェンシーという言葉を「機関」と訳したのでしょう。株式会社ですから儲けるために格付をしています。儲けの源泉は発行体としての企業からの献金じゃなくて、料金徴収によります。

Q;えっ、中立的機関じゃないの?
A;違います。営利会社です。

Q;怪しいな、リベート取っていい格付つけるんじゃないの?
A;1990年代の日本では格付会社間の競争がはげしくなり、ちょっと怪しい関係があったと、ある発行体企業から聞いたことがあります。

Q;いったい、利害関係はどうなってんの?
A;本来であれば、利害関係者を排除した第三者的機構でもつくるのが理想でしょう。
それが無理なら投資家が自分たちを守るために、自分たちで格付審査機構でも作るのがセカンドベスト。
でないと企業によっては悪い格付を食らうと、別の格付会社に依頼するということが起こります。監査法人と企業の関係にそっくりです。
監査意見が気に入らないと、監査法人を変える、最近は頻繁に見受けられ、非常に見苦しい限りです。会社の株主にしてみれば、厳しい監査法人を選んでほしいのに。

つづく
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日本国債のダウングレード、世界の見方

2011年08月25日 | 資産運用 
NYでほっと一息のつもりが米国債のダウングレード騒動があり、気分的には私もダウン気味。ただこれほど米国債が話題になったタイミングで出版できるなんて、話題性は抜群です。

その中で出版に続き、ダイヤモンド社が自社のオンラインサイトで、来週私に5回シリーズのコラム執筆の機会を設けてくれました。月曜日から金曜日の毎日です。執筆陣は有名な評論家やエコノミスト、教授などのため、ちょっとおじけずいています、なーんちゃって、喜び勇んで書き進めています。

ですので、ブログの書き込みが減っていましたが、ほぼ目途がついたので、再開させていただきます。今日の話題は日本国債のダウングレードです。世界はこれをどうみているのか、お伝えしていきます。


  今回のMoody’sのダウングレード、Aa2→Aa3は、これで他の格付け機関とレベルがそろったことになる動きです。ただしMoody’sは今後を「安定的」としましたが、その他の2社(S&Pとフィッチ)は今後を下向き方向で見ています。実はこのレーティング、中国と同じになりました。しかも中国は今後上向きとされているので、ちょっと悔しいですね。日本と中国、GDPの大きさのクロスが、格付けでも起きています。

  8月5日、米国債のダウングレード後の米国債は大きく買われましたが、今回日本国債はあまりうごきませんでした。どちらもダウングレードに対する債券市場の反応は、「たいしたことないよ、だからどうしたの」というものでした。
一方株式市場ですが、アメリカはその後数日間ジェットコースターになり、戻りはしましたが余震が続きました。日本株もそのミニ版になるかもしれませんが、史上初のアメリカの経験があの程度かということを見ていますし、日本では国債に対する信仰心が篤く、さほど大きなインパクトがあるとは思えません。
では、海外のメディアは今回のダウングレードをどう見ているか?

ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャルタイムス、ブルームバーグを見てみました。彼らの反応はMoody’sの発表をおおむね肯定し、以下のような捉え方です。
・日本政府の累積債務はGDP対比で200%と、先進国中最悪。米国は75%
・歳出の半分を国債発行でまかなうのは異常
・金利の低さが大きな助けになっている
・今後数年はMoody’sは、国債消化に支障はないと考えている見方に異論なし

  では債券市場の中で、プロだけの取引市場であるCDS市場(デフォルトに保険を掛ける)の動きを見てみましょう。

  先週は、日本国債の5年物保険料は年率1.05%前後でした。それが24日には1.12%に上昇しています。5年物国債の金利が0.33くらいなので、国債を買って保険をかけるとリターンはマイナス1%以上になってしまい、投資は間尺に合いません。要するにプロだけの市場と、債券の一般市場の見方が大きく異なっているということです。
  この保険期間の5年間というのは、結構きわどい年限なのです。Moody’sは「今後数年は国債によるファイナンスに危機的状況はこないだろう」としています。数年というのは4年なのか5年なのか6年なのか、実にビミョウです。CDSの市場はそうしたことを細かく見ていますので、1%を超えてきている事実は、今後に陰を落とすレベルです。ちなみに米国債の保険料は、ダウングレード前後で結局変わらず、0.5%前後をキープしています。CDSの市場は日本国債の先行きを占う最も大事な指標ですので、このブログでは動きをみなさんにお伝えしていきます。

  このあとは、このところ非常に大きな話題となった格付けについてみなさんにもう少し詳しいお話を差し上げることにします。
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