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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

米国債の買いチャンスは拡大した

2025年04月22日 | 投資は米国債が一番

 トランプ政権を批判しまくっている私ですが、価格の下がっているアメリカ国債の現状をどう見ているか?

 現在アメリカ国債は金利が上昇、つまり価格は下落しています。債券は株と違い、価格がどこまでも下落するということはありません。何故なら企業の株は将来倒産して価値がゼロになるかもしれませんが、アメリカ国債は必ず100%で償還されるため、一定の価格以下には下がらないからです。ですので金融市場では最後の逃げ込み先、「資本の逃避先」としての地位を確立しているのです。

 では何故債券価格が下げているのか?

私の見立ては、「債券相場もトランプ政策の愚かさを批判しているからだ」となります。FRBのパウェル議長を「解任してやる!」と息巻くトランプに、債券相場も鉄槌を下していると見るのが妥当でしょう。

 現状のアメリカ国債長期物の代表である10年物金利は4.41%です。一方通常金利高の時にはドル高になるはずが、なんと4月22日現在は140円そこそこの円高と、まさに投資チャンスが拡がっています。

 そうした時に投資チャンスを計るのに金利と為替のどちらを重要視すべきかという判断に私は常に、「金利優先」と申し上げてきました。

 

 前回私が「米国債の買い時は続く」という投稿をしたのは3月25日でした。その時の10年債金利は4.31%で、ドル円レートは150円ちょうどでした。
それが現在は金利が4.4%、ドル円レートは140円程度になり、よりよいチャンスが到来しています。

 3月時点で10年後の将来のブレークイーブン=損益分岐点のドル円レートは98円でした。この計算の前提はゼロクーポン債で複利運用をした場合の計算です。

 ではそのブレークイーブン為替レートは現時点ではどうなっているか、計算してみます。

10年物金利は4.4%、ドル円は140円として計算しますと、

 1万ドルの米国債10年物を買うとします。為替が140円なのでちょうど140万円です。金利を現状の4.40%として複利運用すると、10年後には約15,435ドル、つまり1.54倍に増えます。

 ブレークイーブンの計算は、払った円額を償還されるドル額で割り算すると計算できます。


140万円 ÷ 15,435ドル = 90.7円・・・ブレークイーブン・レート

 3月時点よりさらに安心できる状況になっています。

 では同じく30年債ではどうか?


1万ドルの米国債30年物を買うと10年物と同じく150万円必要です。金利を現状の4.93%として複利運用すると、30年後には約43,105ドルになります。ほぼ4倍です。

ブレークイーブンの計算は10年債同様に、
150万円 ÷ 43,105ドル = 34.8円  

 ドル円レートが30円台などになろうはずはありません。

 

 日本人としては残念ですが、30年先の日本とアメリカの経済規模や国の借金の多寡を考えると、その差は覆い隠せないほど大きいに違いない。
 
 このところコメント欄には米国債を保有している方から、「評価損が出ているが、今後どうなるのか?」という心配の声をいただいています。

 私からは、「途中の評価損など気にする必要は一切なし。最後に価格は100で償還されるのですから」と返答を差し上げました。これはたとえばゼロクーポン債でも同じことです。

 ゼロクーポン債は買った時より元本額は時間を経るに従ってどんどん上昇するので、マイナスにはなりにくいのですが、それでも心配されている方はいらっしゃるかもしれません。その方々にもはっきりと申し上げますが、「ゼロクーポン債も償還時には必ず100で返ってきます。心配はご無用です」と申し上げます。

 以上、「米国債の買いチャンスは拡大した」でした。

 

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アメリカは何故日本より豊かなのか? by 野口悠紀雄

2024年10月22日 | 投資は米国債が一番

 9月3日トーハンの週間ベストセラーが発表され、新書第1位は野口悠紀雄著『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』でした。著者の野口氏は私も尊敬する経済学者の一人です。

「トーハン」とは書籍卸売の寡占2社のうちの一社で、出版社もその力に一目置いている存在です。トーハン、ニッパンの2社抜きに本屋への書籍の流通は不可能です。ではそのニュースの内容を見てみてみましょう。

引用

1位に初登場の『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』は一橋大学名誉教授で経済学者の野口悠紀雄さんの新著。同書で野口さんは先端分野に強く賃金も高いアメリカと、世界から取り残され衰退が進む日本の現状をあげ、「国民の能力に差はないのに、国の豊かさとなると、なぜこれほどの違いが生じてしまうのか?」と嘆く。そしてアメリカの豊かさの源泉は「異質なものへの寛容と多様性の容認」にあると述べる。古い産業構造にしがみつく日本と、移民の力を活かしイノベーションを何度も起こしてきたアメリカ、両国の社会システムや文化の違いを具体的にあげながら、日本が豊かさを取り戻すために必要な施策について語っている。またアメリカの強さの源泉である「寛容性」を否定するトランプ前大統領が復活した場合のシナリオについても言及されている。

 

 次に出版をした幻冬舎のプロモーション・サイトを引用します。

 『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』野口悠紀雄[著](幻冬舎)

  国民の能力に差はないのになぜ給料が7.5倍!?

 その理由を知れば、日本は現状から抜け出せる! メリカと日本の国力の差は、縮まるどころか広がる一方だ。いまや一人当たりGDPでは2倍以上の差が開き、専門家の報酬はアメリカのほうが7.5倍高いことも。国民の能力に差はないのに、国の豊かさとなると、なぜ雲泥の差が生じるのか?  その理由は「世界各国から優秀な人材を受け入れ、能力を発揮できる機会を与えているかどうかにある」と著者は言う。実際に大手IT企業の創業者には移民や移民2世が多く、2011年以降にアメリカで創設された企業の3分の1は移民によるものである。日本が豊かさを取り戻すためのヒントが満載の一冊。

(幻冬舎ウェブサイトより)

 さらに日経新聞10月20日に出た当該本の広告文句を引用します。

・グーグルのトップエンジニアの年収は4億円

・アメリカの金融専門家の初任給は、日本の7.5倍

・世界の時価総額ランキング100位以内にアメリカ61社、日本1社

・デジタル化を進めるほど、赤字が増える日本

アメリカで賃金が上昇するのは、技術革新で生産性を挙げているから

日本は低金利政策により、企業の生産性が低下した

アメリカの最先端分野の強さを支えるのは、大学の水準の高さ

 

 以上、野口氏はアメリカの強さを幅広い視点からまとめています。いずれの項目も的を射ていて、私もそのとおりだと思います。

 

 そして私が著書で強調したのは、「アメリカの安全性」です。アメリカ国債の安全性を説明しました。そのポイントは

上記と重なる部分もありますが、(P.45)

  • アメリカ経済の潜在成長力の高さ
  • 産業競争力の高さ
  • 金融競争力の高さ
  • 食料・エネルギーの自給力の高さ
  • 世界一の軍事力
  • 日本の半分しかない政府債務の対GDP比率

 そして別の項目を設けて説明したのは、

「多様性を飲み込む包容力こそが強さの秘密である」としました。(P.51)

 

 昨日のニューヨークと本日の東京の外為市場で1ドルがふたたび150円を突破しました。その解説で語られていることは、「アメリカは利上げをしても不況には至らず、ソフトランディングどころか、ノーランディングの可能性が強まっている」というものです。

 

 私が8月にラジオで対談したホストの方は、「年末までにドルが120円台になるとみているので、そうなってから米国債を買います」とおっしゃっていました。

 それに対して私はいつもみなさんに言っているように、「米国債投資をするのは為替の勝負ではなく、あくまで金利で稼ぐためです。買ったら翌日から日割りで金利が付くので、早い方がいいですよ」というコメントを差し上げました。

 ここにきてのドル高の裏には、当然米国債金利の上昇があります。そのことを念頭に、再度申し上げますが、

 

強いアメリカの高金利国債を買って、「ストレスフリーの資産運用」をエンジョイしょう!

 

 

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米国債投資のチャンスは続く

2024年10月08日 | 投資は米国債が一番

 米国債10年物の金利が7月以来再び4%台に乗りましたね。昨日のアメリカ市場では4.02%です。また30年債の金利は4.30%となっています。

 一方当然ですが、金利高を反映したドル円レートは148円台になりました。アメリカ経済がFRBの利上げによるハードランディングになるのではなく、うまい具合にソフトランディングに向かっている可能性が高くなっているのだと思われます。利上げによりインフレ率は低下しているのに、経済は成長が続き雇用も堅調が続くという理想的な状態です。何故そのような理想的状況が生まれつつあるのか。

 

 その理由の一つとして経済アナリストが挙げているのが、生成AIの急速な普及による生産性上昇です。

 かつて90年代はOA=オフィス・オートメーションの導入と、生産工程でのロボット導入による生産性向上などが、ニュー・エコノミーを生み出した、と言われました。2001年のITバブル崩壊までアメリカ経済はなんと120カ月、10年もの長期にわたり不況を経験せずに拡大を続けました。

 今回も楽観的なアナリストはそれに近い状況が到来しつつあると見ています。生成AIの代表選手エヌビディアの株価急伸もそれに裏付けられているという見方です。

 

 では話を戻し、米国債投資の環境を見ておきましょう。先ほどの金利レベルと為替レートの関係を簡単にシミュレーションし、ブレークイーブンの為替レートを計算します。

 まず10年債です。4.02%を複利で10年運用すると、1,000ドルの元本は10年後に単利の1,400ドルではなく、1,489ドルになります。

 

当初の日本円投資額は、

1,000ドル X 148.0円  =  148,000円

ブレークイーブンの為替レートは、

148,000円 ÷ 1,489ドル = 99.4円

検算しますと、最後に1,498ドルもらえるので、ドル円が99.4円になっても、

1,489ドル X 99.4円 = 148,000円・・・当初の投資額

つまり1ドルが100円を下回るまでは、損失はないという結果です。

 

では同じように30年債を見ておきます。

4.30%を複利で30年運用すると、1,000ドルの元本は30年後に3,583ドルにもなります。

当初の投資額は、

1,000ドル X 148.0円  =  148,000円

ブレークイーブンの為替レートは、

148,000円 ÷ 3,583ドル = 41.3円

こんなレートには、「なりっこない」、と言えます。

 

 私はむしろ日本経済とアメリカ経済の成長力較差に加え、日本財政のとてつもない危うさから1ドルが200円に向かう可能性の方がよほど高いと見ています。

 リスクが高いのにリターンを生まない円にオカネを置いておくより、大きなリターンがあるのにリスクのない米国債に置いておくことが賢い投資術です。

 

 しかし、私の持論は為替レートなどに期待せず、「確実にもらえる金利収入をエンジョイすべし」、です。4%台の金利を10年~30年も継続してもらえるのですから。

 それこそが「ストレスフリーの資産運用」なのです。

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米国債の売買スプレッドとその妥当性について、「ぽむ」さんの質問と私からの回答

2024年09月05日 | 投資は米国債が一番

まずは9月4日、コメント欄にいただいた「ぽむ」さんの書き込みをそのまま引用します。

 

引用

私も50歳を超え、超長期の利付債という選択もあるのだな、と感じましたが、途中売却の際に、どの程度、元本が目減りするのかについて確認したく、SBI証券で試してみたので、皆様とシェアできれば、と思います。

SBI証券

米国債 4.75% 2053年満期(利回り4.05%)

100ドル購入時
単価 111.89
支払経過利息 1.47
購入金額 113.36

100ドル売却時(購入の翌日)
単価 109.02
受取経過利息 1.51
受取金額 110.53

経過利息は、そのまま計算しているようなので、結局、元本は中途売却時には、

109.02 ÷ 111.89 = 約97.4%

となり、約2.6%をスプレッドの差として、証券会社に支払うことになるようです。

なので、中途売却する可能性のある場合は、このことを頭に入れておく必要があると思いました。

日本の証券会社の外債売買の問題点は、購入時には、購入単価しか示されておらず、いくらで売却できるかは、
全くわからない、ということだと思います。

もう日本人は購入できなくなってしまったようですが、IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ証券)だと、米国債の購入時にも、外国為替のように、売値と買値が明示されているので、スプレッドの差による手数料も明確でした。

日本の証券会社の場合、正直、売りと買いの単価をどのように決定しているか明示されておらず、全くブラックボックス?になっている気がします。

今回、SBI証券は、約2.6%のスプレッドの差による手数料でしたが、この差を、5%にされても、10%にされても、購入者は何もわからない感じがして、少し怖い感じがしました。

このことに関して、お時間があれば、林先生のコメントをいただければ嬉しいです

よろしくお願いいたします

引用終わり

 

以下は私からのコメントです。

 まずはコメント欄にも書きましたが、ぽむさんの行動に感謝いたします。

 

>途中売却の際に、どの程度、元本が目減りするのかについて確認したく、SBI証券で試してみたので、皆様とシェアできれば、と思います。

経過利息は、そのまま計算しているようなので、結局、元本は中途売却時には、
109.02 ÷ 111.89 = 約97.4%
となり、約2.6%をスプレッドの差として、証券会社に支払うことになるようです。
なので、中途売却する可能性のある場合は、このことを頭に入れておく必要があると思いました。

 

購入の翌日の売却であれば、市場がよほど動かない限り、価格変動は無視できそうですね。売却に要するスプレッドが2.6%とのこと。

私からの回答はまず、

 

「2.6%の数値自体は個人投資家の方の少額な取引額では、妥当な水準だと思います。」

 

 実は同様なことを私は義理の弟に依頼して、ある大手証券会社に直接聞いてもらったことがあります。そこでの目安は往復という前提で4%程度と言われたとのこと。売りと買いで半分だとすれば2%ずつです。小さい差はありますが、おおむねこうしたスプレッドを要求しているものと思われます。

 実際にはみなさんの投資年限はとても長い年限で、例えば20年物に投資して10年経過したところで部分売却の必要が出た、というようなケースを想定しましょう。すでに金利だけで年に3.5%として10年間で35%を得ている時点での売却だとすると、2.6%はあまり苦にならないパーセントだと思います。

 

この手数料率の妥当性をどう判断するのかを説明します。

在庫を保有する証券会社にして見れば、

・保有のためのファイナンスコストがかかる(通常は借入金で在庫投資をしますので、その金利がコストになります)

・価格変動に備えるヘッジコストがかかる(債券価格は毎日市場金利で変動しますので、それを先物を売ってヘッジをしています)

 

 特にヘッジするのは簡単ではなく、至難の技です。

理由は、たとえばSBI証券の在庫が30本あり、それぞれ年限、あるいは利付債とゼロクーポン債がミックスしています。それを一本一本ヘッジするのはコストがかかり過ぎてしまうので、ある程度の年限ごとに大きなまとまりとしてヘッジします。

 専門用語では、ポートフォリオ全体のデュレーションを計算し、その集合体ともいうべき塊に対するヘッジをするのです。もちろん現在はポートフォリオをインプットすれば、妥当なヘッジ手段はこれだ、という計算をコンピューターがしてくれますが、完ぺきではありません。ヘッジと在庫にはブレが内在してしまうため、かなりの程度のリスクを取ることになります。

 こうした2つのコスト、「ファイナンスコストとヘッジコスト」を考えると、スプレッドの2.6%は「妥当過ぎるほど妥当だ」、というのが債券市場のプロとしての私の意見です。

 

 私が扱っていた債券は、社債や政府関係機関が発行する債券で、資本市場部で引き受ける単位は最低でも1億ドル程度でした。今なら円貨で145億円程度です。発行体が発行した債券を引き受けると、瞬間的にヘッジします。例えば1億ドルの債券は機関投資家に1千万ドル単位(10億円単位程度)で売却する必要があり、売却完了までの間価格変動をヘッジして、損失を出さないようにするのです。

 1社での引き受けはリスクが大きすぎる場合は、いわゆるシンジケート団を組んで引き受けをします。

 それと今回のケースを比較すること自体妥当性は薄いのですが、基本原理は同じです。SBIは100ドル単位で扱っていますので、「まことにご苦労様」という以外ありません。

 

 顧客との取引単位は100ドルでも、在庫は一本の債券でたぶん数十億円単位で保有していると思われます。全体ではそれを数十本保有しているはずです。それらをヘッジなしで裸のまま保有すると、価格変動によりデイリーで数百万円単位の損得が出てしまいます。それは放置できない金額のため、必ずヘッジが必要です。

 

 以上、あまりに専門的過ぎて、理解に苦しむレベルの話になり、申し訳ありません。たとえなんとなくでも、証券会社も保有するだけで大変な苦労とコストがかかるということをみなんさんに理解いただくために解説してみました。

 

 従ってぽむさんのご質問への回答は先のとおり、スプレッドは「妥当過ぎるほど妥当だ」となります。

 

 以上、売買スプレッドとその妥当性についてでした。

 

 

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これがFlight To Quality=質への逃避だ!

2024年08月06日 | 投資は米国債が一番
 株式市場や為替市場が大混乱した今、本当に安全な投資対象は何なのか、しっかりとあぶり出されました。米国債金利は大きく低下し、米国債の価格が暴騰しています。世界中のマネーが「質への逃避」に向かう現象が起きています。

 この一か月程度金融市場は大荒れで、特にこの1週間はひどい相場でした。日米の株式、金、ビットコインの直近高値と昨日終値を以下に比較してみます。

        高値         8月5日現在  差%
日経平均   42,224円(7月11日)  31,458円   ▲25%
NYダウ    41,198ドル(7月17日)  38,703ドル  ▲ 6%
NASDAQ   18,671ドル(7月10日) 16,200ドル  ▲13%
金(オンス) 2,382ドル(7月11日)   2,443ドル + 3%
ビットコイン 66,784ドル(7月31日) 53,898ドル ▲19%

米国債10年  4.40% (7月11日)   3.84%    価格上昇

(注)上記の数値は8月5日とそれぞれの直近高値との比較です。市場により日付は多少のずれがあります。

 日経平均は大暴落。NYダウは6%下落ですが、NASDAQは13%の下落で、アメリカではここまで大きく買われたマグニフィセント7と呼ばれる銘柄が大きく下げていることがわかります。
 株式などの代替手段と言われる金は若干上昇していますが、ビットコインは大暴落で、全く代替になどなっていません。

 そして価格を示すことはできませんが、アメリカ国債だけは暴騰しています。何故価格を示すことができないかと申しますと、債券は10年物が指標銘柄にはなるのですが、10年物はしょっちゅう発行され、そのたびごとに利付債のクーポン金利が変化し、価格もそれに合わせて変化してしまうからです。つまり一月経つと別の物との比較をすることになり、意味がなくなるためです。

 この変動の激しい相場にあって、久々に世界のマネーが「質への逃避」をしています。こうした逃避は過去にもリーマンショック時、ITバブル崩壊と9・11暴落時。やさらに遡ると、87年のブラックマンデーの時にも生じました。
 
 アメリカは経済が過熱していたため、それを抑えるべくFRBが金利を非常に高いレベルまで誘導していて、いまだに高いままです。なんとしてもインフレを抑えるべく高金利時代を長く続けることのできるアメリカとはなんと余裕のある国なのでしょう。今後アメリカをはじめ世界景気がスローダウンしてインフレが収まると、アメリカは経済が冷えすぎないよう、何度でも利下げという手段に打って出ることができます。今政策金利は5%程度なので、例えば0.25%の利下げなら20回、0.5%という大幅利下げでも10回も可能なのです。

 一方、日本は今後アメリカをはじめ欧州を含む世界経済が低迷し始めても、日銀が金利がほとんどない世界に放置してしまったため、欧米のように利下げと言う手段を持ち合わせません。

 そしてもちろん日本国債などとてもじゃないが危なくて逃避先などに選ばれることはありえません。

 以上、「Flight To Quality=質への逃避」でした。

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