ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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米国債投資のチャンスは続く

2024年10月08日 | 投資は米国債が一番

 米国債10年物の金利が7月以来再び4%台に乗りましたね。昨日のアメリカ市場では4.02%です。また30年債の金利は4.30%となっています。

 一方当然ですが、金利高を反映したドル円レートは148円台になりました。アメリカ経済がFRBの利上げによるハードランディングになるのではなく、うまい具合にソフトランディングに向かっている可能性が高くなっているのだと思われます。利上げによりインフレ率は低下しているのに、経済は成長が続き雇用も堅調が続くという理想的な状態です。何故そのような理想的状況が生まれつつあるのか。

 

 その理由の一つとして経済アナリストが挙げているのが、生成AIの急速な普及による生産性上昇です。

 かつて90年代はOA=オフィス・オートメーションの導入と、生産工程でのロボット導入による生産性向上などが、ニュー・エコノミーを生み出した、と言われました。2001年のITバブル崩壊までアメリカ経済はなんと120カ月、10年もの長期にわたり不況を経験せずに拡大を続けました。

 今回も楽観的なアナリストはそれに近い状況が到来しつつあると見ています。生成AIの代表選手エヌビディアの株価急伸もそれに裏付けられているという見方です。

 

 では話を戻し、米国債投資の環境を見ておきましょう。先ほどの金利レベルと為替レートの関係を簡単にシミュレーションし、ブレークイーブンの為替レートを計算します。

 まず10年債です。4.02%を複利で10年運用すると、1,000ドルの元本は10年後に単利の1,400ドルではなく、1,489ドルになります。

 

当初の日本円投資額は、

1,000ドル X 148.0円  =  148,000円

ブレークイーブンの為替レートは、

148,000円 ÷ 1,489ドル = 99.4円

検算しますと、最後に1,498ドルもらえるので、ドル円が99.4円になっても、

1,489ドル X 99.4円 = 148,000円・・・当初の投資額

つまり1ドルが100円を下回るまでは、損失はないという結果です。

 

では同じように30年債を見ておきます。

4.30%を複利で30年運用すると、1,000ドルの元本は30年後に3,583ドルにもなります。

当初の投資額は、

1,000ドル X 148.0円  =  148,000円

ブレークイーブンの為替レートは、

148,000円 ÷ 3,583ドル = 41.3円

こんなレートには、「なりっこない」、と言えます。

 

 私はむしろ日本経済とアメリカ経済の成長力較差に加え、日本財政のとてつもない危うさから1ドルが200円に向かう可能性の方がよほど高いと見ています。

 リスクが高いのにリターンを生まない円にオカネを置いておくより、大きなリターンがあるのにリスクのない米国債に置いておくことが賢い投資術です。

 

 しかし、私の持論は為替レートなどに期待せず、「確実にもらえる金利収入をエンジョイすべし」、です。4%台の金利を10年~30年も継続してもらえるのですから。

 それこそが「ストレスフリーの資産運用」なのです。

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米国債の売買スプレッドとその妥当性について、「ぽむ」さんの質問と私からの回答

2024年09月05日 | 投資は米国債が一番

まずは9月4日、コメント欄にいただいた「ぽむ」さんの書き込みをそのまま引用します。

 

引用

私も50歳を超え、超長期の利付債という選択もあるのだな、と感じましたが、途中売却の際に、どの程度、元本が目減りするのかについて確認したく、SBI証券で試してみたので、皆様とシェアできれば、と思います。

SBI証券

米国債 4.75% 2053年満期(利回り4.05%)

100ドル購入時
単価 111.89
支払経過利息 1.47
購入金額 113.36

100ドル売却時(購入の翌日)
単価 109.02
受取経過利息 1.51
受取金額 110.53

経過利息は、そのまま計算しているようなので、結局、元本は中途売却時には、

109.02 ÷ 111.89 = 約97.4%

となり、約2.6%をスプレッドの差として、証券会社に支払うことになるようです。

なので、中途売却する可能性のある場合は、このことを頭に入れておく必要があると思いました。

日本の証券会社の外債売買の問題点は、購入時には、購入単価しか示されておらず、いくらで売却できるかは、
全くわからない、ということだと思います。

もう日本人は購入できなくなってしまったようですが、IB証券(インタラクティブ・ブローカーズ証券)だと、米国債の購入時にも、外国為替のように、売値と買値が明示されているので、スプレッドの差による手数料も明確でした。

日本の証券会社の場合、正直、売りと買いの単価をどのように決定しているか明示されておらず、全くブラックボックス?になっている気がします。

今回、SBI証券は、約2.6%のスプレッドの差による手数料でしたが、この差を、5%にされても、10%にされても、購入者は何もわからない感じがして、少し怖い感じがしました。

このことに関して、お時間があれば、林先生のコメントをいただければ嬉しいです

よろしくお願いいたします

引用終わり

 

以下は私からのコメントです。

 まずはコメント欄にも書きましたが、ぽむさんの行動に感謝いたします。

 

>途中売却の際に、どの程度、元本が目減りするのかについて確認したく、SBI証券で試してみたので、皆様とシェアできれば、と思います。

経過利息は、そのまま計算しているようなので、結局、元本は中途売却時には、
109.02 ÷ 111.89 = 約97.4%
となり、約2.6%をスプレッドの差として、証券会社に支払うことになるようです。
なので、中途売却する可能性のある場合は、このことを頭に入れておく必要があると思いました。

 

購入の翌日の売却であれば、市場がよほど動かない限り、価格変動は無視できそうですね。売却に要するスプレッドが2.6%とのこと。

私からの回答はまず、

 

「2.6%の数値自体は個人投資家の方の少額な取引額では、妥当な水準だと思います。」

 

 実は同様なことを私は義理の弟に依頼して、ある大手証券会社に直接聞いてもらったことがあります。そこでの目安は往復という前提で4%程度と言われたとのこと。売りと買いで半分だとすれば2%ずつです。小さい差はありますが、おおむねこうしたスプレッドを要求しているものと思われます。

 実際にはみなさんの投資年限はとても長い年限で、例えば20年物に投資して10年経過したところで部分売却の必要が出た、というようなケースを想定しましょう。すでに金利だけで年に3.5%として10年間で35%を得ている時点での売却だとすると、2.6%はあまり苦にならないパーセントだと思います。

 

この手数料率の妥当性をどう判断するのかを説明します。

在庫を保有する証券会社にして見れば、

・保有のためのファイナンスコストがかかる(通常は借入金で在庫投資をしますので、その金利がコストになります)

・価格変動に備えるヘッジコストがかかる(債券価格は毎日市場金利で変動しますので、それを先物を売ってヘッジをしています)

 

 特にヘッジするのは簡単ではなく、至難の技です。

理由は、たとえばSBI証券の在庫が30本あり、それぞれ年限、あるいは利付債とゼロクーポン債がミックスしています。それを一本一本ヘッジするのはコストがかかり過ぎてしまうので、ある程度の年限ごとに大きなまとまりとしてヘッジします。

 専門用語では、ポートフォリオ全体のデュレーションを計算し、その集合体ともいうべき塊に対するヘッジをするのです。もちろん現在はポートフォリオをインプットすれば、妥当なヘッジ手段はこれだ、という計算をコンピューターがしてくれますが、完ぺきではありません。ヘッジと在庫にはブレが内在してしまうため、かなりの程度のリスクを取ることになります。

 こうした2つのコスト、「ファイナンスコストとヘッジコスト」を考えると、スプレッドの2.6%は「妥当過ぎるほど妥当だ」、というのが債券市場のプロとしての私の意見です。

 

 私が扱っていた債券は、社債や政府関係機関が発行する債券で、資本市場部で引き受ける単位は最低でも1億ドル程度でした。今なら円貨で145億円程度です。発行体が発行した債券を引き受けると、瞬間的にヘッジします。例えば1億ドルの債券は機関投資家に1千万ドル単位(10億円単位程度)で売却する必要があり、売却完了までの間価格変動をヘッジして、損失を出さないようにするのです。

 1社での引き受けはリスクが大きすぎる場合は、いわゆるシンジケート団を組んで引き受けをします。

 それと今回のケースを比較すること自体妥当性は薄いのですが、基本原理は同じです。SBIは100ドル単位で扱っていますので、「まことにご苦労様」という以外ありません。

 

 顧客との取引単位は100ドルでも、在庫は一本の債券でたぶん数十億円単位で保有していると思われます。全体ではそれを数十本保有しているはずです。それらをヘッジなしで裸のまま保有すると、価格変動によりデイリーで数百万円単位の損得が出てしまいます。それは放置できない金額のため、必ずヘッジが必要です。

 

 以上、あまりに専門的過ぎて、理解に苦しむレベルの話になり、申し訳ありません。たとえなんとなくでも、証券会社も保有するだけで大変な苦労とコストがかかるということをみなんさんに理解いただくために解説してみました。

 

 従ってぽむさんのご質問への回答は先のとおり、スプレッドは「妥当過ぎるほど妥当だ」となります。

 

 以上、売買スプレッドとその妥当性についてでした。

 

 

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これがFlight To Quality=質への逃避だ!

2024年08月06日 | 投資は米国債が一番
 株式市場や為替市場が大混乱した今、本当に安全な投資対象は何なのか、しっかりとあぶり出されました。米国債金利は大きく低下し、米国債の価格が暴騰しています。世界中のマネーが「質への逃避」に向かう現象が起きています。

 この一か月程度金融市場は大荒れで、特にこの1週間はひどい相場でした。日米の株式、金、ビットコインの直近高値と昨日終値を以下に比較してみます。

        高値         8月5日現在  差%
日経平均   42,224円(7月11日)  31,458円   ▲25%
NYダウ    41,198ドル(7月17日)  38,703ドル  ▲ 6%
NASDAQ   18,671ドル(7月10日) 16,200ドル  ▲13%
金(オンス) 2,382ドル(7月11日)   2,443ドル + 3%
ビットコイン 66,784ドル(7月31日) 53,898ドル ▲19%

米国債10年  4.40% (7月11日)   3.84%    価格上昇

(注)上記の数値は8月5日とそれぞれの直近高値との比較です。市場により日付は多少のずれがあります。

 日経平均は大暴落。NYダウは6%下落ですが、NASDAQは13%の下落で、アメリカではここまで大きく買われたマグニフィセント7と呼ばれる銘柄が大きく下げていることがわかります。
 株式などの代替手段と言われる金は若干上昇していますが、ビットコインは大暴落で、全く代替になどなっていません。

 そして価格を示すことはできませんが、アメリカ国債だけは暴騰しています。何故価格を示すことができないかと申しますと、債券は10年物が指標銘柄にはなるのですが、10年物はしょっちゅう発行され、そのたびごとに利付債のクーポン金利が変化し、価格もそれに合わせて変化してしまうからです。つまり一月経つと別の物との比較をすることになり、意味がなくなるためです。

 この変動の激しい相場にあって、久々に世界のマネーが「質への逃避」をしています。こうした逃避は過去にもリーマンショック時、ITバブル崩壊と9・11暴落時。やさらに遡ると、87年のブラックマンデーの時にも生じました。
 
 アメリカは経済が過熱していたため、それを抑えるべくFRBが金利を非常に高いレベルまで誘導していて、いまだに高いままです。なんとしてもインフレを抑えるべく高金利時代を長く続けることのできるアメリカとはなんと余裕のある国なのでしょう。今後アメリカをはじめ世界景気がスローダウンしてインフレが収まると、アメリカは経済が冷えすぎないよう、何度でも利下げという手段に打って出ることができます。今政策金利は5%程度なので、例えば0.25%の利下げなら20回、0.5%という大幅利下げでも10回も可能なのです。

 一方、日本は今後アメリカをはじめ欧州を含む世界経済が低迷し始めても、日銀が金利がほとんどない世界に放置してしまったため、欧米のように利下げと言う手段を持ち合わせません。

 そしてもちろん日本国債などとてもじゃないが危なくて逃避先などに選ばれることはありえません。

 以上、「Flight To Quality=質への逃避」でした。

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今後の米国債投資をどうすべきか?

2024年08月02日 | 投資は米国債が一番
みなさんへ

ブログ運営側の理由と思われますが、フォントの大きさが小さいままで、調節ができません。
とりあえずテーマは急を要するため、このままで投稿します。


 日銀とFRBの会合の結果、株式、金利、為替が大きく動きましたね。特に株式投資をされている方は、日経平均が7月初めの高値4万2千円台からあっという間に3万6千円台まで6千円、約15%もの急落で、株式投資のリスクの大きさに驚いたことと思います。

 一方8月1日の日経新聞朝刊の一面の大見出しは、日銀の利上げで「金利ある世界へ」でした。日銀の政策金利(翌日物金利)はマイナスだった金利を3月にプラスの0.1%程度に上げ、今回はさらに0.25%まで上昇させました。

 同じ政策金利、アメリカは5.5%程度です。日銀の利上げにより日米の政策金利の差はこれまでの5.45が5.25になっただけです。それだけで円はドルに対して4円ほど高くなったのでしょうか?
今回の円の値上がりは両国の政策金利の動きによると説明されていますが、私はそれだけではなく、投機筋の動きが大きいと見ています。投機筋はいままで積み上げた円売りのポジションをかなり解消しているのです。

 為替の変動が大きいという理由で介入する政府に対して、私は「変動を大きくしている投機筋などは、必ず反対売買をするからほっておけ」と再三言いつづけました。この2週間余りの円高方向への動きは、シカゴIMMの為替ポジションを見るとわかるのですが、膨らみ続けたドル買い=円売りポジションを投機筋は解消しているのです。つまりドルを売って円を買う反対売買して、ポジションを解消したということです。政府の売り介入は一時的には効果があるものの、大きな相場の動きを作り出すものではない、ということです。そして投機筋による動きもまた、ドルを買った者はそれと同額を売る。でないと利益は出せません。これもしょせん中立です。

 米国債への投資を検討されている方にとってドル安はチャンスですが、一方で金利の低下は不利に働きます。ではどうすべきか?

 私は常々みなさんに「為替より金利優先で考えるべきだ」と申し上げています。もちろん米国債金利が高くてしかもドルが安いのが一番好ましいのですが、それはいわば「ない物ねだり」です。為替と金利はある程度連動しますので、米国債の金利が高い時にはドルも高くなってしまうし、いまのようにドルが安くなった時には金利も低下してしまいます。

 もちろん為替も金利もその他の要因でも大いに動かされますから、これがすべてというわけではありません。では「為替より金利優先で考えるべきだ」というのは何を根拠にいっているのか。それを説明します。

 そもそも米国債投資を考える方の基本スタンスは、10年以上、30年近い超長期投資がほとんどです。そしてこれまでの投資結果をみると、「金利は為替に勝ってきた」のです。
 例えば私が一冊目の著書を書いた2011年までの長期投資の結果を見ます。30年債だと投資開始は1981年で、その時のドル円はなんと240円でした。それが2011年にはわずか83円と約3分の1になってしまいました。では投資は失敗だったのでしょうか。81年の30年物米国債の金利は8%台でしたから、1万ドル=240万円の投資は複利だとなんとドルでは24倍の24万ドルにもなっていました。ということは、

償還時は、24万ドルx83円=1,992万円

償還時1,992万円÷投資時240万円=8.3倍

ドルが3分の1になっても円建てで8.3倍にもなり、とてもよい結果になっていました。

 では2冊目の著書が出版された2023年までの同じく30年前に米国債投資を行っていたら、結果はどうなっていたか。
それは本のカバーに大きな字で書かれていますが、100万円が768万円、つまり約7.7倍になっていました。

 この結果は今から10年後、30年後の将来を保証するものでは決してありません。しかし少なくともドルベースで考えると、確実な数字が導けますので以下に示します。

10年債の場合、
10年債金利を4.0%と想定し、1万ドルのゼロクーポン債を買うと今の投資額は150万円程度です。

10年後にドル元本は複利で約1.5倍になります。
1万ドルの投資だと複利で1万5,000ドル程度になります。

ブレーク・イーブンの計算は、
当初の投資額150万円 ÷ 償還額15,000ドル = 100円

当初の円建て投資額を、もらえるはずのドル建て償還額で割り算するとブレークイーブンが計算できます。ブレーク・イーブンの為替レートは100円です。

では30年物ではどうか。
30年債金利 4.30% で1万ドルを買うと投資額はやはり150万円程度です。
30年後にドル元本は3.5倍の35,000ドルになります。

先ほどと同様の計算をします。
ブレーク・イーブンの計算は、
150万円÷35,000ドル=43円程度になります。


10年債でも金利が4%前後であれば、かなりの円高にも十分に耐えうると思いますし、30年債であればなおさら安全度は高いと思います。

今後長期で見た場合のドル円相場は、決して投機筋の動きや政府介入の有無で決まるわけでなく、経済の実力しだいです。

ですので、現在の金利レベルとドル円相場でも、「米国債は買いだ」となります。




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ドル高での米国債投資はどうなの?

2024年04月16日 | 投資は米国債が一番

 ドル高が高進していますね。投稿時点では154円台です。最大の原因はアメリカ経済が好調でドルの金利が高いからです。

 

 多くの方から、「このドル高でも長期のアメリカ国債に投資しても大丈夫か?」というご質問をいただいています。

 私からの回答は、「もちろん大丈夫です」というものです。理由は単純で、ドル高に動いている時には、米国債の金利も高いからです。

 ブログのコメント欄でも「安全性第一」さんというハンドルネームの方からその質問をいただきました。私からは逆にブレークイーブンの為替レートをその方に確認していただきました。ブレークイーブンの為替レートとは、いくらまでドル安になった場合、投資元本がマイナスになるかを確認する計算で、そこまでは損することはないというレートです。

 

 ご質問は、「SBI証券のストリップス債は、1ドル153円超の本日ですと、17年~25年物で利回り4.5%を越えておりますが、153円の現在でも米国債購入はお勧めでしょうか?」というものでした。

 そこで私から「SBIのサイトで、償還時のブレークイーブン為替レートがあるはずなので、調べてください」と依頼すると、早速回答をいただき、

「ブレークイーブンは、45円~67円でした。」とのこと。

 1ドルが将来45円~67円になるとはとても思えません。17年~25年後には逆に200円~300円にもなっている可能性すらあると私は思っています。たとえ為替レートがいまのままであっても、ドル額では大きな利益が出ます。簡単に計算してみましょう。

現在の米国債の年限別金利をブルームバーグで確認しますと、

10年物;4.61%・・・複利運用で10年後に1,000ドルは1,577ドル

30年物;4.72%・・・複利運用で30年後に1,000ドルは4,053ドル

 

  為替レートが変化していなくとも、10年後には約1.6倍、30年後では約4倍にもなります。なにもせずにこれだけの利益が出る、夢のようなお話です。

ブルームバーグでは20年物の表示はありません。理由はアメリカ国債には20年物の発行はないからです。そこで簡便法で20年物の金利を10年と30年の平均値とすると、4.67%になります。

20年物(仮定);4.67%・・・複利運用で20年後に1,000ドルは2,517ドル

20年後為替レートが今と同じレベルだとしても投資金額は約2.5倍にもなり、金利を生む米国債の威力は莫大だという事が理解できます。

 

 では米国債投資の長期での投資実績を確認しておきましょう。

 私が最初の著書、「証券会社が売りたがらない、米国債を買え」を出版したのが2011年8月です。その中で2011年末までの30年間の実績をあげていました。1981年に米国債を買って2011年に償還を迎えた時、どのような実績をあげたか。

 81年当時の為替レートは1ドルが240円。それが2011年になんと3分の1の83円になってしまいました。ところが、81年時点の金利が非常に高く8%台でしたので、ドル建ての元本は複利計算でなんと24倍にもなっていました。

 ですので、24を3で割ると8。つまり為替で3分の1になっても、金利で24倍になったため、結果は円建ての元本が8倍にもなったのです。100万円の投資は800万円になりました。

 

 ではそれから12年後、昨年2冊目を出版した時におなじように計算すると、果たしてどうなったか。1993年に100万円投資すると、22年末で786万円になっていました。こちらも約8倍です。

 二つの実績はほぼ同様の倍率になる結果を生み出しました。これはもちろん偶然で、今後を保証するものではありません。

ではもう一つ、2011年出版の著書を読んで、そこから開始した投資の現時点での結果はどうか。

 その時点での30年債金利は4.37%で、ドル円は83円でした。そこで100万円投資すると、どうなったか。これまでにドルの元本は複利で1.75倍になっています。それにドルの値上がり分は83円が154円、つまり1.85倍ですので、両方を掛け合わせると、3.24倍。円建てでは100万円がすでに324万円になったということです。しかも今後20年近く毎年4.37%の金利をエンジョイできます。

 しかし何よりも大事なのは、先週に続き本日も暴落している株式投資と違い、戦争が起ろうが、石油価格が上がろうが、米国債は暴落などしないという安心感が得られ、しかもきっちりと成果が出る投資対象だということです。

 以上、「154円でも米国債は買いだ」でした。

 

蛇足;一平も、米国債には気が付かず(笑)

 

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