ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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初歩の投資教室 39 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月22日 | 初歩の投資教室

  来週の月曜日からベトナム旅行に出ますので、今回が今年最後の記事になります。

  前回は最近の国際収支について、経常収支だけでなく、最後の帳尻の総合収支にも注意信号が出ている、というお話を差し上げました。

しかし、それがよくない、というお話では決してありません。本来円高なのですから、それをエンジョイし、海外投資するのは当たり前。そうすれば行きすぎは戻る。そうしなかったのでこうなった、それが「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」だということを私は長々と説明してきました。


  では本題に戻りドル円レート、私のレベル感についてです。簡単に言いますとこんな具合に見ています。

・70円台はドルを買うレベルだ

・75円の史上最高値を上回って推移することは今後しばらくはない
理由は、それ以上の円高はどんなに国際的非難を浴びようが、為替介入によって戻そうとするから。円高阻止に対する安部政権のスタンスは非常に強いと思われる

・経常赤字が定着する方向に向かうと、ドルが100円に向かう可能性は大いにある

・その時期は2015年、プラスマイナス1・2年

・財政が危機的状況を迎えると本格的資本逃避が始まり、100円を超える怒涛の円安が起こる

・財政が危機的状況になるのも2015年プラスマイナス1・2年


15年マイナス2年なら来年13年はそのレンジに入り始めることになりますね。

  プラスマイナス1・2年ということは最大で4年もレンジがあります。長過ぎると思う方もいるかもしれません。私のように投資というものをすべて長期で見ている者には、それくらいのレンジで長期トレンドを見ることが大切なのです。短期の振れの予想など、どうせ当たりません(笑)。

  長期トレンドを頭に入れておけば、例えば今回のような政策変更のアナウンスや海外のビッグニュースで一時的に相場が振れても、元の長期トレンドに戻ること多いと考えることができます。実際にこれまでの長期に渡る円高局面では、一時の振れはトレンドに戻ってきました。

  もちろん相手は相場ですから、トレンドと逆方向でもみんなが「そっちだ」と思ってトレードすれば「ハズミ車」が回ってしまい、いくところまで行く、ということは往々にしてあります。それでも私は「いずれ戻るさ」と考えておいた方がよいとおもっています。

  例えば今回の安部政権の政策でかなりの円安に振れても、揺り戻しが来る可能性が大きいと私は見ています。

  こうした見方に対して、金融機関などに所属するエコノミストやファンドマネージャーはすぐにも商品を売らないといけないので、今日の相場はどうなるとか、来月はどうか、せいぜい来年はどうなるというくらいの期間でしか物を見ていません。でないと商売にならないからです。

  ではそうした専門家で、安部発言が出る前に「今年の年末に向けドル円は84円台になる」などと言っていた人がいたでしょうか。そんな人は皆無です。しかも彼らの来年の見通しは、この円安ですっかり変化してしまいました。

  株式相場も同じです。安部発言前に「年末には1万円に乗せる」などと言っていたストラテジストはいたでしょうか。少なくとも彼らの言うコンセンサスではなかったと思います。


  みなさんもご自分の相場観・レベル感を持つなら、30年程度の長期のトレンドを頭に入れた上で持つことをお薦めします。

  そして今後は安部政権の政策がうまく実現した場合にどうなるかを考えておく必要があります。次の簡単な図式を頭に入れておいてください。

・大型補正予算=財政出動 → 金利上昇 ←日銀引受で抑え込む ⇒ 信任喪失
⇒ 格下げ ⇒ 外人売り ⇒ 金利上昇 ⇒ 財政破綻

・インフレ2% + 実質成長2% = 名目4%成長 ⇒ 金利上昇 ⇒ 財政破綻


  市場は、はしゃいでいる状態が終われば、すぐ次の一手を考え始めます。無理に焼けぼっくいに空気を吹き込んだら、火はついてもいずれ息切れします。するとさらなる大型予算、大型補正予算を要求することとなり、いつか来た道につながります。

  しかし本当の問題は、今度は「いつか来た道はもうない」ということなのです。行く末は「財政破綻への一本道」、それが上の図式です。



  本年も、私の長話にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

  今年は多くの方からたくさんのコメントや相談をいただき、様々な議論ができたことを大変嬉しく思っております。来年もまた、みなさんとそうした議論ができることを楽しみにしています。



  みなさんどうか、ストレスフリーのよいお年をお迎えください。


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初歩の投資教室 38 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月21日 | 初歩の投資教室
   これほど予想が難しいし、当たらないテーマはありません。それにあえて挑戦します。どうぞ、当たるも八卦くらいで、お読みください(笑)

  私はこのブログで昨年10月から約1年、為替を中心テーマのひとつにした「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」というシリーズを書き、私の考えを長々と述べてきました。ここに至ってもその時の基本的な考え方や長期的方向性の見方に変化はありません。

  そのシリーズで解説したのは、為替変動には様々な要素があり、例えば国際収支、金利差、インフレ較差、等などがある。そしてひとつひとつの要素ごとに解説しました。それらを簡単にまとめると以下のとおりでした。

1.為替相場は為替取引の結果であってそれ以外の因果関係ではない。つまり日本経済が強いとか弱いとかが要因ではなく、円とドルの実際の取引の結果だ

2.取引には動機があってその動機を調べると、一方的な長期の円高トレンドを作り出しているのは、外貨を得た輸出企業が外貨を売る取引と外人の円資産投資である。その対抗勢力は、日本人による外貨投資や最近は海外企業のM&Aなどだが、円高を相殺するほどの量ではない。

3.それ以外の様々な説や投機的取引はしょせん往復取引なので円高を説明するのには、あまり説得力をもっていない。

4.円安へのターニング・ポイントは経常赤字が定着しそうな2015年、プラスマイナス1・2年


  このまとめを書いていたのはちょうど1年前の11年12月で、国際収支の統計資料は11年第3四半期、つまり9月までが使用可能でした。

  その後この1年の国際収支に一つ変化が起こっています。それは上記2の点で述べている資本取引においてです。ちょっと面倒な統計数値になって申し訳ないのですが、大事なことなので解説します。

  国際収支の最後の帳尻は、経常収支に資本収支を加えた総合収支です。(厳密にはさらに追加すべき非常にマイナーな項目がありますが、無視できる程度です)

  経常収支は最近になって黒字幅が減少しつつあることでニュース種になっています。貿易収支の悪化が主な原因で、11月の結果もそうでした。しかし資本収支についてはあまり話題になっていません。理由の一つはわかりづらいこと、そして数値がさほど大きくなかったからだと思われます。そのため経常収支に資本収支を加えた総合収支も、あまり取り上げられていませんでした。

  今回ここにきて何故私が取り上げたかと申しますと、この総合収支がコンスタントにマイナスになる動きを示しているからです。

上記のまとめで3.に書いてあるのは、

>日本人による外貨投資や最近は海外企業のM&Aなどだが、円高を相殺するほどの量ではない

と書いていました。ところがこのところ買収の数とサイズの影響が大きくなり、少なくなりつつある経常黒字を相殺する規模になってきています。年間の総合収支の推移はこのところの3年間では以下の通りでした。

09年 マイナス5千億円
10年 プラス 2千億円
11年 プラス 10兆7千億円


暦年では09年は若干のマイナス、その後はプラス、つまり円高要素だったのです。

ところが4半期ごとに総合収支を見ますと、この1年では11年の第4四半期までのプラスが、マイナスに転じています。

11年10-12月期 プラス  7兆9千億円
12年1-3月期  マイナス1兆円
12年4-6月期  マイナス1兆9千億円
12年7-9月期  マイナス1兆1千億円


というように今年になってからはマイナスが3期連続し、このところの日本企業による海外企業買収の活発化から12年は暦年でもトントンからマイナスになる可能性が出てきているのです。

  もっともこの動きは、円安がさらに進むと日本企業は海外企業を買収しなくなるかもしれないので、トレンドが続く確証はありません。

  もう一度繰り返しますが、総合収支は経常収支に資本収支を加え、すべてをまとめた数字で、その数字の分為替の売買は必ず行われるのですから、長期的には円ドルレートに大きく影響します。総合収支は今後も追って行く必要があります。

つづく
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初歩の投資教室 37 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月18日 | 初歩の投資教室
あっ、誕生日だ、63歳だ!



  今回から、金利と為替の具体的レベル感の話に入ります。

  話の内容はちょっと難しくなるかもしれませんが、「極力易しく」を心がけます。難しいと思ったら、どんどん質問してください。まずは金利からです。

米国債金利のレベル感


  私は常に長い推移を見ながらレベル感を持つようにしています。長いと言っても約30年間くらいの推移です。

  米国債の長期債は30年債までありますので、30年を目安にするクセがついているのだと思います。世代も30年が一区切りですし、経済の推移もそのくらいのレンジを見るのが適当と思われます。では米国債30年物金利を80年代からサクッと見てみます。

  米国債の長期金利は1980年代の初めをピークに、30年以上の長期に渡り低下傾向にあります。チャートでそれを見るには、英語で恐縮ですが、Yahoo Financeを見てみます。

・googleで「historical treasury yield」とインプット

Treasury Yield 30 Years Index Chart-Yahoo Financeと出たらそれをクリック

・そのチャートは1Y(1年)となっていてハイライトされていますので、Max(最長期間)をクリック

すると77年から現在までのチャートを見ることができます。この歴史的推移のチャートは、是非みなさんも念頭にいれておいてください。ご自分の金利感を持つのに、役に立つと思います。Yahoo Financeのサイトは、金融関係のデータを見るにはとても役に立ちます。

  チャートを簡単に言葉で表します。78年くらいまで7%台で落ち着いていた30年物金利は、そこから81年まで一気に上昇し15%に跳ね上がりました。しかしその後反転し、2000年台初頭くらいまで約20年間にわたり徐々に低下していき、02年頃に5%前後になりました。

  2000年代は10年近くだいたい5%前後で落ち着いていました。しかし11年の夏、欧州問題と例の米国債デフォルト騒ぎからは一気に低下。2010年代はそのまま3%前後のレベルで推移しています。昨日のレートは2.96%です。これがおよその推移です。

  ちなみに77年から現在までの35年余りの平均値は7%半ば、2000年以降00年代を見ると平均値は5%前後です。

これほど金利が長期にわたり低下してきた理由は

・80年代初頭第2次オイルショックで、インフレ率が高謄。しかしオイルショックが収まった以降、米国のインフレは落ち着いたままであること


・米国経済が着実な歩みをつづけていること。つまり80年代後半にやっと米国経済がそれまでの低迷から再生し、90年代には世界をリードする産業を生み出し、00年代にはサブプライムでつまずいたがすぐ復活したこと

・製造業や資源産業まで米国内に戻りつつあること

・株式にも債券にも世界から「投資マネーと逃避マネー」が安全なアメリカに集まっていること

  こうしたことが、長期で金利レベルを低下させてきた原因です。

では、今後はどうみるか?

  私は今後数年の単位で30年物国債の金利レベルは、景気循環的な変動は2%台から4%台と見ています。

  米国景気の回復があっても、欧州、そして数年のうちには中国や日本を巡り世界的な資金逃避が繰り返される恐れがあることから、30年物金利が00年台の平均値5%前後を大きく上回り上昇する可能性は少ないと見ています。
  
  ということは、逆に超長期で見た低下傾向には歯止めがかかるということか?

はい、そう見ています。理由は、米国経済には日本経済とは違い、底力があるからです。

  10年物の金利で言いますと、30年物マイナス1%くらい。現状は1.7%くらいですが、循環的には1%台から3%台。2%台が居心地よいと思われますが、世界のどこかで危機的な状況が来るたびに1%台に戻される。

  こんなところが私の米国金利の数年レンジのレベル感です。

つづく
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初歩の投資教室 36 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月15日 | 初歩の投資教室
為替レートが円安に大きく振れ始めています。

早朝から円安を心配されているななしさんから、以前のコメントに再度コメントが付きました。

引用します。

11月19日のななしさんのコメント

(話全く変わりますが円安スイッチ入っちゃったのかな??)

林の返答は
ななしさんへ  2012-11-19  15:52:06
円安スイッチ、入っていませんよ。
安部氏に対する期待先行で、そのうち「はげ落ち」ますよ。
でもこればかりは、みんなが「そっちだ」と信じれば、行ってしまう可能性もないとはいえないのが相場です。
そのかわり「そっち」の方には日本破綻への崖がまっているのも忘れずに。


本日のななしさんのコメント、
2012-12-15  04:24:19
こんにちは。今日は2012年12月15日ですけど・・

>でもこればかりは、みんなが「そっちだ」と信じれば、行ってしまう可能性もないとはいえないのが相場です。
そのかわり「そっち」の方には日本破綻への崖がまっているのも忘れずに

なんかこっちの方が正解でもう円安スイッチ入っちゃってるような気がどうしてもならないのですが・・・
林様のおっしゃることを実行すべく米国債を買う予定ですが、私の場合まだ資産は全部円。
為替のタイミング・・これが一番難しい(^_^;)
為替リスクは長い年限で取り戻す・・っていうのも林様のブログでお勉強させていただきましたが、判ってはいますが、素人にはタイミング・・これが本当に難しい(^_^;)

引用終わり

ほんとですね。シロウトだけではなく、私を含めプロでも為替は当たりませんからご安心を(笑)。

  まず「円安スイッチ入っていませんよ」と私が言った根拠を説明しておきます。

  今回の根拠は、為替の投機筋に利用されるシカゴの先物市場の動きです。投機筋は安部発言が出始めてから円のカラ売りポジションを急激に積み上げました。これがまず円安を作り出したのだと思います。彼らは短期勝負ですから、売った円がさらに安くなったタイミングで買い戻しをする必要があります。そのためには日本のミセス・ワタナベに代表されるFXのギャンブラー達がくっついて来るのを待ちます。誰もついてこないと、自分達が買い戻さないといけない。つまり折角安くした円を買い戻して高くしたら往復しておしまい、何も儲かりません。

  そこで私の警鐘は、カモを待っている投機筋にネギをしょって行かないこと。つまり円売りドル買いをして、彼らのポジション解消=儲けの確定に貢献しないことです。

投機筋対ギャンブラーの戦いは、こうした筋書きになります。

  次は「みんなが『そっちだ』と信じれば、行ってしまう可能性も」の説明です。

  投機筋の筋書きをよくも悪くも狂わすのは、貿易や長期投資をする実需筋です。例えばドルを必要とする輸入業者が円安相場を見てあせってドル買いに走ったり、ななしさんのような長期の投資家が莫大な額をドル債に投資したら、投機筋を助けるだけでなく、もっと大きく「うーんとそっちの方」へ行ってしまう可能性もあります。なぜならそのドル買いは、すぐには売り戻さないからです。それが私の言う「そっちへ」の内容です。

  しかし今回の動きがどこまでいくか、私にはとてもそうした為替の読みはできません。毎日当たらない解説をしている為替のプロにお任せします(笑)。

  ただ私がはっきりとみなさんに表明していることは、「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」のシリーズでお伝えしたように、

① 経常黒字の解消から赤字に向けた流れが始まっていて、いずれは長期的円安へ転換する
② 財政赤字は支えられないほどに積み上がっていて、いずれ円からの逃避が起こる
③ そのタイミングは2015年を中心に、前後1・2年

こうしたことを申し上げてきました。このことは全く変化していません。


  さて、もともと今回のテーマは「現状の金利と為替レートで、果たして長期の米国債に投資する価値があるか」についてでしたので、そのまま続けながら、ななしさんへの返答を続けます。

  まず申し上げておきますが、私は1年の短期パフォーマンスなどほとんど気にしていません。長期のパフォーマンスだけを見ていますので、短期投資を目指す方の参考には全くならないことを申し上げておきます。年末のこの時期によくある『来年の推奨銘柄』のお話しではぜんぜんありません。

  米国債をはじめ外債投資を考えるには、「金利のレベル感」「為替のレベル感」を持つ必要があります。両方とも見通しを当てるなどという技を私は持っていません(笑)。
    
  ある時点で「米国債は買いか?」と聞かれますと私はいつも同じ話を差し上げていることにお気づきの方もいらっしゃると思います。最近では10月20日にモンドさんという読者の方からの質問に答える形で回答を差し上げています。

  「なーんだ、またそれか」と思われる方もいるかと思いますが、米国債への投資の判断の王道ですので、今一度それを繰り返します。その時点での円ドルレートは78円台でした。

引用します

「米国債はご自分で納得できる金利レベルでなかったら、無理に投資するのはやめて、気長に待つことです。このブログの読者の方で、待機中の方は多いと思われます。もし現在の円レートが十分に高いと思われるなら、以前にもお勧めしましたが、ドル建てのMMFを買って、ドルを確定しておくのも手です。」

引用終わり

  この回答ですが、春先に同様な質問をいただいた時も、また3・4か月前にコメントである方とやりとりをした時にも同様の回答を差し上げています。

実はこの回答の中に、重要なポイントがありますのでそれをしっかり押さえてください。それは、外債投資のやり方として、

1. 直接外債投資に踏み切る

2. 最初に為替投資をして為替を固め、債券投資のタイミングを計る



という2つのやり方がある、ということです。


  何故2段構えのやり方もあると言っているのか。その理由は

「為替変動のスピードと金利変動のスピードでは、一般的に為替変動のスピードのほうが早いし、変動幅も大きいから」
です。

  もちろん毎回そうとは限りませんが、今回の円安への振れも含めてみなさんの実感も同じだと思います。そうした急激な為替変動への対処はドルを買い持ちする以外にありません。70円台後半のレベルは十分円が高い、と考えればMMFでドルを買い持ちし、米国債金利が上昇するのを待つ。

  しかしいずれにしろこの回答、結局「タイミングはご自分で判断しなさい」と言って逃げていますよね。

  それだけではきっと満足されないベテランの方がいらっしゃると思いますので、もう一歩踏み込み、私の「金利感」と最近特に円安に振れ始めた「為替感」についてもお知らせすることにします。

つづく
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初歩の投資教室 35 来年に向けての投資対象、米国債

2012年12月13日 | 初歩の投資教室

  前回は私が著書でお薦めした4つの投資対象に投資されている方に、そのまま継続保有をお薦めしました。

ではその4つの投資対象に

「これから新規投資をするのはどうか」


これが今回のテーマです。まずは長期の米国債からです。

1. 長期の米国債・・・対象を10年-30年のゼロクーポン債にします

円ドルレートの現状を83円に仮定し、年限別に円高にどこまで耐えられるか、ブレークイーブンの為替レートを計算しますとおよそ以下のようになります。

10年物 イールド1.6% 価格85%(償還時には100%) B/E 71円
20年物 イールド2.5% 価格60%    同         B/E 50円
30年物 イールド2.8% 価格43%    同         B/E 35円


上の例を説明します。例えば10年物の米国債を買うとします。

まずはドル建てでの計算です。

10年物米国債の年の利回りは現在1.6%程度です。10年後に100%で償還される債券がいま85%で買えるので、最後まで持ちきれば年率1.6%で回るということです。簡単に計算しますと、

償還まで持ちきれば100-85=15のリターンがありますので、投資額85に対する比率は、

15÷85=17.6%

10年で17.6%の累積リターンを年率に直すと利回りは1.6%だ、ということです。

ではそれを円建てで考えるとどうなるか。

10年後の円ドルレートが83円で現状と同じなら、利回りはドル建てと同じ年1.6%だったことになります。

しかし円高に振れていくと円ドルレートがどこまでいくと損失がでるのかが気になります。それを示したのが B/E の円ドルレートです。現状10年物で金利が1.6%ですから、10年後の円ドルレートが71円でトントンになります。

20年物では金利が2.5%なので50円でトントン30年物で金利が2.8%なので35円でトントン、ということを最初のB/Eの数値は示しています。

金利がこんなに低くても、債券は長期では非常に強くて、円高耐久力があるのです。

  このブレークイーブンの計算をやってくれるサイトを紹介します。半年ほど前にも紹介しましたが、表示形式が少し変わっています。大和証券のHPにある外債のページで、「外債ハイパーマップ」というところでシミュレーションできます。「見方」も解説があります。

  ただし私の計算と違い、実際に在庫にある具体的債券を対象に計算しますので、ちょうど10年ではありません。むしろそちらのほうが現実的かもしれませんね。切りのいい年限の数値が知りたければ、私の計算を参考にしてください。ただし大和証券のサイトは数値をどんどん更新しますが、私の計算は円ドルレートや米国債金利が動いてしまうと違ってしまうので、注意してください。

  さて問題は、このブレークイーブンの円ドルレートを見て、果たして投資する価値があるか否かです。

つづく
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