来週の月曜日からベトナム旅行に出ますので、今回が今年最後の記事になります。
前回は最近の国際収支について、経常収支だけでなく、最後の帳尻の総合収支にも注意信号が出ている、というお話を差し上げました。
しかし、それがよくない、というお話では決してありません。本来円高なのですから、それをエンジョイし、海外投資するのは当たり前。そうすれば行きすぎは戻る。そうしなかったのでこうなった、それが「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」だということを私は長々と説明してきました。
では本題に戻りドル円レート、私のレベル感についてです。簡単に言いますとこんな具合に見ています。
・70円台はドルを買うレベルだ
・75円の史上最高値を上回って推移することは今後しばらくはない
理由は、それ以上の円高はどんなに国際的非難を浴びようが、為替介入によって戻そうとするから。円高阻止に対する安部政権のスタンスは非常に強いと思われる
・経常赤字が定着する方向に向かうと、ドルが100円に向かう可能性は大いにある
・その時期は2015年、プラスマイナス1・2年
・財政が危機的状況を迎えると本格的資本逃避が始まり、100円を超える怒涛の円安が起こる
・財政が危機的状況になるのも2015年プラスマイナス1・2年
15年マイナス2年なら来年13年はそのレンジに入り始めることになりますね。
プラスマイナス1・2年ということは最大で4年もレンジがあります。長過ぎると思う方もいるかもしれません。私のように投資というものをすべて長期で見ている者には、それくらいのレンジで長期トレンドを見ることが大切なのです。短期の振れの予想など、どうせ当たりません(笑)。
長期トレンドを頭に入れておけば、例えば今回のような政策変更のアナウンスや海外のビッグニュースで一時的に相場が振れても、元の長期トレンドに戻ること多いと考えることができます。実際にこれまでの長期に渡る円高局面では、一時の振れはトレンドに戻ってきました。
もちろん相手は相場ですから、トレンドと逆方向でもみんなが「そっちだ」と思ってトレードすれば「ハズミ車」が回ってしまい、いくところまで行く、ということは往々にしてあります。それでも私は「いずれ戻るさ」と考えておいた方がよいとおもっています。
例えば今回の安部政権の政策でかなりの円安に振れても、揺り戻しが来る可能性が大きいと私は見ています。
こうした見方に対して、金融機関などに所属するエコノミストやファンドマネージャーはすぐにも商品を売らないといけないので、今日の相場はどうなるとか、来月はどうか、せいぜい来年はどうなるというくらいの期間でしか物を見ていません。でないと商売にならないからです。
ではそうした専門家で、安部発言が出る前に「今年の年末に向けドル円は84円台になる」などと言っていた人がいたでしょうか。そんな人は皆無です。しかも彼らの来年の見通しは、この円安ですっかり変化してしまいました。
株式相場も同じです。安部発言前に「年末には1万円に乗せる」などと言っていたストラテジストはいたでしょうか。少なくとも彼らの言うコンセンサスではなかったと思います。
みなさんもご自分の相場観・レベル感を持つなら、30年程度の長期のトレンドを頭に入れた上で持つことをお薦めします。
そして今後は安部政権の政策がうまく実現した場合にどうなるかを考えておく必要があります。次の簡単な図式を頭に入れておいてください。
・大型補正予算=財政出動 → 金利上昇 ←日銀引受で抑え込む ⇒ 信任喪失
⇒ 格下げ ⇒ 外人売り ⇒ 金利上昇 ⇒ 財政破綻
・インフレ2% + 実質成長2% = 名目4%成長 ⇒ 金利上昇 ⇒ 財政破綻
市場は、はしゃいでいる状態が終われば、すぐ次の一手を考え始めます。無理に焼けぼっくいに空気を吹き込んだら、火はついてもいずれ息切れします。するとさらなる大型予算、大型補正予算を要求することとなり、いつか来た道につながります。
しかし本当の問題は、今度は「いつか来た道はもうない」ということなのです。行く末は「財政破綻への一本道」、それが上の図式です。
本年も、私の長話にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
今年は多くの方からたくさんのコメントや相談をいただき、様々な議論ができたことを大変嬉しく思っております。来年もまた、みなさんとそうした議論ができることを楽しみにしています。
みなさんどうか、ストレスフリーのよいお年をお迎えください。