ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

ビットコインって、どうよ 2

2018年02月03日 | ビットコイン

  9月27日の記事で「ビットコインって、どうよ?」という問に、直接の回答ではなく、私なりに疑問をぶつける形でコメントしました。今回はそれを仮想通貨一般に拡げて、今後の展開について見解を述べることにします。なお、以下では仮想通貨とそのうちの一つ、ビットコインを言葉として使い分けていますので、その点にご注意ください。

   前回のブログの要旨を簡単にまとめます。ビットコインというものが世の中に出回ってきたときに、いの一番に感じた疑問は以下の点でした。

 疑問その1.ビットコインよりもっといいものが出てきたら、価値がなくなるんじゃないの

 疑問その2.銀行が自分の信用でビットコインBを始めたら、そっちがより安心だよね

 疑問その3.銀行が信用できないなら、中央銀行の日銀がビットコインNを始めたらどうなの

 疑問その4.それでも信用できないなら、世界銀行がビットコインWをはじめたらどうなの

 疑問その5.少なくとも特定の通貨価値とイコールのものが出てきたら、価格変動にわずらわされないで、実用性が増すんじゃないの。たとえば円連動のビットコインYとかドル連動のビットコインDとか

 疑問その6.世界各国がマネーロンダリングに悩みビットコインに規制をかけて流通禁止になったらどうなんの 

  上記の疑問はいずれももし実現したら、既存のビットコインをはじめとする仮想通貨が相手にされなくなる危険性があることを示唆しています。


  仮想通貨はすでに1,500種類もあるということは、一部を除きほぼすべてが将来は無価値になるのに、何故売ったり買ったりする人間がいるのか。早いもん勝ちのババ抜きゲームに決まっているのに、何故大事なおカネを突っ込むのでしょう。すでに仮想通貨全体の時価総額はピークから半減しています。

  ましてや14年のマウントゴックスに続き今回のコインチェックという取引所が現在閉鎖中で、投資したはずの仮想通貨が失われ、現金化できなくなっています。コインチェック社には本当に返済能力があるのか、立ち入り検査が行われていますので、近々結論が出されるでしょう。もしカネがあるのであればそれは儲けすぎです。今朝の日経には売買スプレッド、つまり取引所のもうけが10%もあると書いてありました。コインチェックで取引きされるNEMは取引コストが詐欺的にかかるナンセンス仮想通貨です。

 

  そもそも仮想通貨に対するとらえ方は、二つに分けて考えるべきなのに、ごちゃまぜなので一般の人にはわかりづらくなっています。二つとは

1.    投資対象資産・・・といってもババ抜きゲームなのでほとんどが無価値になる

2.    決済手段・・・安全で便利かつコストの安い代替通貨

決済手段として普及するためには、以下の条件が必要だと考えます。

①  日本でなら円に完全連動させる。でないと誰もが安心して保有できません。すでに有力銀行などがそうした円連動仮想通貨を開発しつつあります

②  仮想通貨の価値を保証しているのはブロックチェーン技術ですが、その技術がハッキングなどで破られないことが保証されること

③  保有の安全性と円貨などとの交換が保証されること。つまり取引所などがハッキングを受け、仮想通貨が消えないこと

④  安心できる銀行または国の機関などが上記の保証を行うこと

  しかしこうなると国際的に通用する仮想通貨とは言えないことになりますが、安全性を考えればしかたありません。

  もう一つ私のあたまをよぎる疑問があります。そもそもビットコインはマイニングをする業者がスパーコンピューターのような大掛かりなシステムでとてつもない電力を使って掘り出す非常に不経済なシステムです。

  それが我々消費者によって流通手段として使われ始めると、使用されるごとにブロックチェーンを更新する必要があります。その負荷がどの程度か、私にはわかりません。しかし世界中で多くの人たちが現金やカードを使うように仮想通貨を使い始めると、それが世界中のサーバーなどに大きな負荷を掛け、電力を消費します。個人にとって使い勝手がよく、振り込みなどのコストが安いとなればなるほど、社会的負荷が大きくなるという矛盾をはらんでいるように思えます。

  ここまで書いたときに、ある方から「それは正しい」とコメントがありました。すでに電力負荷の研究が進んでいて、

「世界中で決済に使われたら、現時点での世界の全電力消費量に等しいほど電力を食う」とのこと。実にナンセンスです。

  もっともすでにその対策としてビットコインなどで使われているブロックチェーン以外の省電力システムを開発しているところもあるとのことでした。それが普及するとビットコインの価値は無に帰します。

 

  まとめますと、私が「使うぞ」と宣言するための条件は、

1.円やドルなどの通貨に価値が連動していること

2.システムが現在のオンライン・バンキング程度の安全性を持つこと

3.社会的負荷がかからないこと

以上が「仮想通貨って、どうよ?」に対する私の回答であり、私の見方です。

   そしてさらに大事なことは、各国の中央銀行なりIMFなどが、果たして仮想通貨の流通を野放しにするかです。通貨当局からすれば野放しは、はなはだ危険です。通貨のコントロール権を失いかねないからです。通貨のコントロール権は経済運営に対するコントロール権でもあるため、政府もそれを野放しにするとは思えないのです。

「仮想通貨やブロックチェーンに明日はない」

それが仮想通貨システムに対する私の見解です。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビットコイン その2

2017年09月28日 | ビットコイン

  本日、9月28日の日経新聞朝刊にタイミングよくSBIホールディングスが独自の仮想通貨を発行する予定とのニュースが出ていました。

  内容で注目されるのは、まさに私が指摘した欠点を一部克服することを含んだものだと言う点です。それは以下の部分です。

 「Sコインは日本円との安定した交換レートを常に提供することで、決済手段として普及させたい」

   本日の日経電子版をそのまま引用します。

 引用

SBIホールディングスは独自の仮想通貨「Sコイン」を新たに発行し、小売店舗などでの消費者の決済手段として普及を目指す。独自の決済基盤システムを開発することで、送金コストをほぼゼロにするほか、決済代金の即日現金化などを可能にする。店舗側の決済コストを抑え、決済を目的とした利用者を増やす狙い。

 既存の通貨に基づくデジタルマネーとしてでなく、取引所で売買可能な仮想通貨としての発行を目指す。

 独自の決済基盤システムはブロックチェーン(分散型台帳)を応用することにより、決済する個人の特定や支払い、店舗側への即時入金などを可能にする。店舗にとってはクレジットカードや電子マネーなどの既存の決済手段に比べ、低コストで決済の仕組みを整えられる。

 「ビットコイン」をはじめとした仮想通貨は、値動きの大きさなどから投機目的の売買が中心となっている。

 Sコインは日本円との安定した交換レートを常に提供することで、決済手段として普及させたい考え。まずは来春から実験的に社員にSコインを配布し、本社の近隣店舗で利用できるようにする方向だ。

引用終わり

   まさに昨日私が上げた素朴な疑問への回答を含んだものです。それは、バクチに使えないよう、価値を円にリンクさせて安定させている点です。

  しかし、SBIホールディングスの信頼性について、私は安心だとは決して思っていません。すると、より信用のおける発行主体が出てきた場合、一気にしぼんでしまう可能性もあります。ただビットコインと違い、SBIが倒産でもしない限り、人気は離散しても一気に無価値になることはないかもしれません。

  以上、タイミングのよいニュースでした。

  

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビットコインって、どうよ?

2017年09月27日 | ビットコイン

  今回の解散については、自己保身解散、〇〇隠し解散、など様々な名前が付けられていますが、要は大義がないために論点がないというナンセンスな解散です。

   私に言わせれば、今回の解散は「解散の是非を問う解散だ」(笑)です。テレビなどを見ていると、一番の論点は解散の是非だからです(爆)。

   しかし私はおかげで溜飲を下げています。何故か。理由は「これで違憲行為連発首相の下での改憲がほぼなくなったからです」。どうみても与党連合あるいは改憲連合で3分の2は無理そうです。結局ミエミエの自己保身解散など、墓穴を掘るだけです。おかげで小池新党は求心力を大いに増し、もしかすると野党連合が成立するかもしれないところにきています。おもしろい選挙になりますね。注目しましょう。

 

  話題はガラッと変わります。今回は友人の何人かからもらった質問、

 「ビットコインって、どうよ?」

   という問に、回答ではなく、私なりに疑問をぶつける形でコメントしたいと思います。私はビットコインを最初からかなり懐疑的にみていますので、どう懐疑的なのかを示すことにします。

   私はフィンテックの専門家ではないし、「ブロックチェーンって何?」に的確な回答をできる専門家でもありません。なので、私のなりの見方しかできないのですが、私の発想法を理解していただけるチャンスだと思います。もしかすると間違ったことを言うかもしれません。でも一応、ビットコインのことをかなりの程度知っている友人に私の疑問をぶつけると、「うーん、回答に窮する」と言われ、的確な答えは出てきませんでした。従って全くの的外れではない、というくらいのことでお聞きください。

   ビットコインというものが世の中に出回ってきたときに、いの一番に感じた疑問は以下の点です。

 疑問その1.ビットコインよりもっといいものが出てきたら、価値がなくなるんじゃないの

 疑問その2.銀行が自分の信用でビットコインBを始めたら、そっちがより安心だよね

 疑問その3.銀行が信用できないなら、中央銀行の日銀がビットコインNを始めたらどうなの

 疑問その4.それでも信用できないなら、世界銀行がビットコインWをはじめたらどうなの

 疑問その5.価値が変動しないコインが出てきたらそっちがもっと支持されるんじゃないの

 疑問その6.少なくとも特定の通貨価値とイコールのものが出てきたら、価格変動にわずらわされないで、実用性が増すんじゃないの。たとえば円連動のビットコインYとかドル連動のビットコインDとか

 疑問その7.世界で共通の価値を実現させるんだったら、SDR連動ってのはどう

 そして最近は、

 疑問その8.世界各国がマネーロンダリングに悩みビットコインに規制をかけて流通禁止になったらどうなんの。トレードに消費税のような税をかけたら、一気にしぼんじゃうんじゃないの

 

  専門家にこうしたことをぶつけると、きっと上に示した私のアイデアは、ビットコインの範疇じゃない。発行主体やしがらみがないことに意義があるんだ、などと反論されそうです。しかし私のこうした素朴な疑問に対して、的確な回答は用意できるのでしょうか。

   私が言いたいのは、すでに1,000種類もあるということは、一部を除きほぼすべてが将来は無価値になるのに、何故売ったり買ったりする人間がいるのか。早いもん勝ちのババ抜きゲームに決まっているのに、何故大事なおカネを突っ込むのか。

   私のかつての上司、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは2週間ほど前にこう言っています。「仮想通貨は詐欺であり、崩壊する!」。ロイター日本語版を引用します。上司と言っても、実は握手を1回しただけです(笑)。

 引用

[ニューヨーク 912日 ロイター] - 米大手銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は12日、仮想通貨ビットコインは「詐欺であり、崩壊する」と語った。同氏の発言を受け、ビットコインBTC=BTSPは一時4%急落した。ダイモン氏は当地で開かれた投資家会議の席で「ビットコインは続いていかない。どこからともなく通貨を生み出せたり、それを購入する人が本当に賢いと思われているようなところでビジネスなど出来ない」と語った。さらにJPモルガンのトレーダーが暗号通貨を取引しているとしたら「即刻解雇する。その理由は二つで、第一に就業規則違反、第二に間抜けで、いずれも危険だからだ」とした。

引用終わり

   彼の発言を極端で仮想通貨を歪曲しているという向きもあるようですが、世界でもっとも権威ある銀行の一つであるJPモルガン・チェースのCEOが言う事ですから、重みがあります。

   彼がなんでソロモンにいた私のかつての上司なのか、ちょっと説明します。彼こそは金融界における世紀の風雲児なのです。

  彼は大学在学中の80年代に、のちのシティーグループ総帥となったサンディー・ワイル氏の下で丁稚をしていました。シェアソンという準大手の証券会社です。その会社はその後ワイル氏の手腕によりM&Aを重ねリーマン・ブラザーズをも飲み込み、シェアソン・リーマンという大手証券の仲間入りをしました。それをAMEXが買い取りましたが、買われたほうのワイルがアメックスのCEOになります。その後ワイルは放逐されますが、丁稚のころからずっと一緒にいたダイモンも放逐され二人で失業。

   二人で小さなクレジット会社を買い取り、その後はまた買収に買収を重ね、90年代後半にはスミスバーニーやソロモンブラザーズ、ついでに日興証券の法人部門を傘下に置き、最後はシティーと合併しました。と思ったらジョン・リードというシティーの顔であるCEOを追い出し、二人が支配者になっていました。まるで国盗り物語を地でいっています。

   しかしダイモンは、今度はワイルに放逐されまた失業。その後バンクワンという地方銀行のCEOになったと思ったらまた買収を重ね、いつの間にかJPモルガン・チェースを手に入れてCEOにおさまったのが2004年、若干48歳の時です。2度の失業をものともせず、なんという波乱万丈な人生でしょう。彼は今まだ61歳ですが、世界で最も影響力のあるバンカーとして金融界に君臨しています。

   そのダイモンが仮想通貨を「詐欺だ」と言っている重みは無視できません。もちろんフィンテックの何たるかも知り尽くした上での言葉です。

   確かにブロックチェーンという新たなテクノロジーは、今後のフィンテックもその他のIT産業においても大きな影響力を持つに違いありません。

   しかし私にはビットコインで代表される仮想通貨はただのバクチのネタくらいにしか見えません。絶対に手を出してはいけない。ついでに中国の影響が大きいものは、いつなんどき規制がかかってだめになるかわからないという別のリスクもあります。

   最後に、私がよく言う「金は金の卵を産まない」、バフェット流では「100年経っても100gの金は100gだ」。これはそのままビットコインにも言えます。「ビットコインは永久に1銭のコインも産まない」。価値を生まないものは、投資には値しません。

   以上、林流ビットコイン評価でした。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする