ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

定年退職さん

2023年02月19日 | ストレスフリーの資産運用

 昨日コメント欄でいただいた定年退職さんの資産運用の経験談を、そのまま本文に転載させていただきます。どうぞみなさんも参考になさってください。

引用

皆様、大変ご無沙汰しておりました。
ハンドル名「定年退職」と申します。
縁ありまして、林先生のご著書に辿り着きましたのは2017年の初め。
ストレスフリーの老後を見据えながら、紆余曲折の6年の歳月を経て、ようやく先日、念願だった林先生とのビデオ面談を実現することができましたので、私なりにその感想を記したいと考え、今回の投稿に至りました。

1 出会い

それでは、まずは私と林先生のご著書との出会い、ブログを通じて皆様方との出会いについて、少し触れておきます
2017年、平凡ながらも走り続けた40数年(役所勤務)、定年退職を間近に控え、これからの老後設計を如何にすべきかを考えながら試行錯誤していたこの時期、偶然にも書店で見つけたのが、林先生のご著書「証券会社が売りたがらない米国債を買え」でした。
小説も殆ど読まない私が、本当に夢中で読みました。
当時の私は、円に対するリスクなど、全くもって知識の範囲外。つまり何の知識もない状態でした。
(疑似国債、フィストインカム、キャピタルゲイン、インカムゲイン・・・何のこっちゃ?・・・円安、円高???・・・このような低レベルの状態でした。)
ほんとに目から鱗とはこのことでした。
ネットで電子書籍も購入し、意味も分らない部分は斜め読み(笑)に走りながらも、何度も読み返していました。
そして、時間経過とともに「ストレスフリーの老後人生」に自分も足を踏み入れたいと強く思うようになり、米国債購入計画を実践することにしたのです。
また、稚拙な知識では皆様方のご迷惑になるとは認識しながらも、本ブログにおいて、恥ずかしながらも低レベルな質疑を繰り返してしまい、お恥ずかしい次第です。
本当にご迷惑をお掛けいたしました。申し訳ありません。

2 資産の見直しと外貨投資(米国債中心)への移行

① 資産の見直し
当時、私の資産は、個人年金と貯蓄が主体でした。
まずは、個人年金に関しては、3種類。
1点目は「役所内の年金:実は生保年金(日本生命)」が1,600万円
2点目は「他の生保年金(スミセイ年金)」が700万円
3点目は「財形年金(これも役所内の年金:その実態は生保年金でした)」が500万円
このうち、金額が大きい1点目の「役所内の年金」(1,600万円)に関しましては、林先生のアドバイスを受けて見直し、即、全額解約し(少し損をしましたが・・・)、米国債投資へと資金移行といたしました。


② 外貨投資(米国債中心)への移行
退職金と併せて約4,000万円を投資資金とし、2017年4月上旬、まずは記念すべき米国債の初購入。
利率2.25%の利付債を為替約109円時に、10万ドル購入しました。
先生からは、分散投資を強く指導されていましたが、性格上、エイヤーでいきなり多額購入に踏み切ってしまいました。(笑)
その後は、インカムゲイン狙い目的なのは十分理解しておきながら、米ゼロクーポン債を購入したり、さらには証券会社の担当者の甘言に乗せられて投資信託に手を出したりし、当初の予定とはほど遠い経過を歩みましたが、現在では、何とか資産の約88%を外貨建て(米国債中心)の資産に移行することができました。

3 ビデオ面談を終えて

今回、外貨投資(米国債中心)への移行後、初めて2月15日に償還を迎えた米国債(ゼロクーポン:7万ドル)がありましたので、この時期を大きな節目として捉え、林先生にビデオによる面談をお願いいたしました。
当初から、購入した債券は償還まで持ち切りを基本と考えていましたので、これに関してはブレずに進めることができました。
途中、何度となく証券会社担当者から、プラス段階での利益確定と併せて、新興国(インド)の投資信託、株式投資等を進められましたが、その都度先生の教えとおり、のらりくらりと乗り越えて現在に至っております。
一部、NISAを強く勧められて投資信託を購入してしまっていますが・・・(笑)
今回のビデオ面談では、現在の投資状況を前もって先生にお伝えした上で、判断を仰いだ訳ですが、購入した債券は、為替が概ね110円前後の時にドル転しての米国債投資が実現できており、先生からは概ね安心の◎をいただき、安心・安堵感を深めたところです。


今まで、機会あるごとに、ブログへのコメント投稿で質疑応答を繰り返し、教示していただいておりましたが、やはりメールではお伝えきれない部分があり、今回先生と直にお話ししてご指導いただけたことは、本当に私自身良かったと実感しております。


今の心境を一言で表すならば、まさに文字とおりの「ストレスフリーの老後」を体感できているということです。
今後は、4月に上京いたしまして、先生に直接ご指導いただく予定にしています。
林先生、どうか今後ともよろしくお願いいたします。

引用終わり

 

林より

  定年退職さん、ご自分の資産から投資の経験をそのまま開示いただき、本当にありがとうございます。こうしてすべてを開示することは、匿名とはいえ勇気のいることだと思います。読者のみなさんもきっと定年退職さんの行く末がどうなるか、気にされていたと思います。   

  出会い以来6年のあいだにすっかり「ストレスフリーの資産運用」にシフトされ、奥様と楽しく老後を過ごされる準備がしっかりと整いましたね。私としてもとても嬉しく思っています。

みなさんへ

  今後、フェースブックにある私の相談窓口や相談方法・費用などを詳しくお知らせするつもりです。しばしお待ちください。

  

 

 

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ぽんきちさんへの回答、不動産と米国債投資

2018年09月24日 | ストレスフリーの資産運用

  お約束した日になりましたので、林の回答をアップいたします。

  ここまでに協力いただいたPuffinnさん、Genrechtさん、提案をありがとうございます。ぽんきちさんだけでなく、他の方も大いに参考になるアドバイスだと思います。

  ではぽんきちさんへの林からの回答です。

  ぽんきちさんのご質問を繰り返しますと、現在から19年後の2037年に向け建替え資金を米国債のゼロクーポン債で積み立て投資をしているが、次第に投資期間が短くなり、為替のブレーク・イーブン・レートが高くなってしまい不安を感じるので、何か代替案はないかというご質問です。

  私の提案は、「本当に時期が接近してきて不安を感じるなら、何もしない」というものです。たとえリターンがよさそうな投資対象であっても、為替のリスクは大きいので、損失の可能性はあります。それに対する対処の決定版は「なにもしない」ことです。

  私の著書をお持ちの方は、どうぞ「あとがき」の最後のページをご覧ください。そこには以下のとおり書いてあります。

  ウォーレン・バフェットの座右の銘は「すべてのボールには手を出すな」。私の座右の銘は「バッター・ボックスに立つな」です。

  バッター・ボックスに立つと、つい手が出てしまいますので、最初から立たないことがストレスフリーの資産運用の極意だと思っています。

   それではいったい建替えより何年くらい前から投資を停止すべきかと申しますと、金利状況により変わりますので、一律の回答はないと思います。高金利であれば数年でも投資しうるし、低金利だと数年では為替のリスクが高すぎることになるでしょう。以上がひとまずの回答です。

 

   でもこれだけではおもしろくもなんともありませんので、おまけの提案を差し上げます。ちょっと事を複雑にしてしまいますが、現在の投資方針にもかかわりますので、今後じっくりと考えるヒントにしてください。

おまけの提案1.例として10年以上の長期であれば不安を感じないとするなら、37年の償還にこだわらず10年後の米国債に投資し続ける

  たとえばあと5年であっても10年後償還の債券に投資するという意味です。その結果が吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、大きな意味でリスク分散になります。

  「37年という1時点だけに為替リスクを集中するのは、本当にそれでよいのか」、という根本的疑問から、分散の必要性を提案しています。ちょっと不安を与えることになり申し訳ないのですが、大事なことなのでストレートに伝えました。

  では償還1時点集中の為替リスクを分散する方策は他にないのでしょうか。いくつか方策はあります。それが提案その2です。

おまけの提案2.償還時期を37年より5年前から5年後までの10年くらいに分散する。

  これだと37年以前の償還はかまわないのですが、金利をもらい損ねることになります。でも金利分くらいならあきらめましょう。そして37年以降に償還される債券は、その時点の時価がキャピタルゲインロス・為替のゲインロス次第で売却することもあればしないこともあるとしておく。売却しないと資金が不足するケースが生じます。為替ロスのため、売却したくないというケースです。その場合、不動産と米国債を担保にして借り入れを起こします。年齢が若ければ不動産担保だけでローンは可能だと思いますが、19年後64歳だと、ローンが下りるか少し不安です。ちなみに銀行に聞いてみる価値はあるでしょう。明確な答えはないかもしれませんが。

   計算上はわずか5年の短期ローンで金額も小さいでしょうから、不動産担保だけでも十分可能ではないでしょうか。ローン後にキャピタルゲインが出たら、その時点で早期返済することも大いにあります。

  また、64歳じゃだめでも59歳なら大丈夫かもしれません。特に仕事を持っていて現役であれば。だとしたら、59歳時点での建て替えも検討する価値はあるでしょう。

  ぽんきちさんの方針のそもそものリスクの指摘から、いろいろ提案が錯綜しました。ただ大事なことなので、是非繰り返し読んで理解していただきたいと思います。

  さらにもう一つ、指摘をしておきましょう。

  それは、償還時期の短期化により、実はリスクは減少するという一般論です。

  そもそも金利自体は、期間の長期化に伴い高くなりますが、それは長期間だとリスクが増すからです。これは理解できますよね。為替も同じです。償還までの期間が短いとブレーク・イーブンは高くなりますが、同時に為替の変動リスクは低くなります。なぜなら短期だから変動幅は少なくなると考えられるからです。

   なので、実はぽんきちさんのご心配はかなり心理的なものだということなのです。絶対的ブレーク・イーブンは高い数値でも、そこまで行く可能性は短期間なので低くなるということです。

   混乱に拍車をかけてしまったかもしれませんが、よく考えていただけば理解できることだと思います。

 

まとめますと、

・一般的に期間が短くなると、リスクも低くなる

・1時点の償還にこだわらない方法も十分に検討の余地がある

・ローンという手段も考慮する

   ということで私の提案は終わりますが、ご質問があれば遠慮なく、なんなりとどうぞ。

 以上

 

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流動性喪失の悲劇

2018年08月19日 | ストレスフリーの資産運用

   8月10日付の「グローバリゼーションの行きつく先」シリーズの3回目で私は、世界に吹く怪しい隙間風としてトランプ政権の動きやイランの海上封鎖、そして欧州の右傾化などを取り上げましたが、すでに巷間では取り上げられていたトルコの危機問題には触れませんでした。ある方から何故取り上げないのという質問が入りましたので、簡単に回答します。

  要は世界の金融情勢に重大な影響を及ぼすほどの大ごとではないと判断したからで、その証拠に先週の株式市場は一時トルコ問題で下げましたが、あっと言う間に切り返しています。例えばトルコのエルドアンが一言「牧師を釈放する」と言えば終わってしまいますが、エルドアンはトランプ同様、オレ様が世界で一番偉く、オレ様が言うことはすべて正しいというサイコパス的人間なので、簡単には引き下がらないでしょう。もちろん長期的にはトランプのやり口は大きな間違いではあります。

  それはトルコが欧州とイスラム世界の間にある様々な問題の解決窓口の一つなのにそれを閉ざすから。たとえばシリア問題です。そしてトルコはNATOの一員であることから、欧州と敵対しつつあるロシアとの窓口の一つでもあるからです。もしNATOがトランプのせいでトルコを失ったら、世界のパワーバランスは大きく変化し、怪しい隙間風どころではなくなります。でもそのような風はいまのところ吹いていません。


  一方、本日取り上げるのは、トルコ投信の問題で、これは保有者にとっては大ごとです。私のブログの5月18日の流動性に関する警鐘記事で私はこう申し上げました。それはたまちさんからの「ドル一辺倒ではなく、台頭著しい中国ものなどにシフトするのはどうか」、という質問への回答の一環でした。私の次のように書きました。

>日本の証券会社は高金利通貨としていまだに南アランドやブラジルレアル、トルコリラ建ての投信を薦めていますが、リスクがありすぎて問題外です。

  わずか3か月でそれが現実になりました。8月17日の日経新聞はこう言っています。

見出し;「トルコ投信大幅値下がり」

記事の中の表では投信価格が平均40%下落、中には53%下落などとなっていました。そして一番重要な一文は、「一部の投信は815日から月末まで購入・解約を認めていない」という部分です。トルコの休日もあって保有者は売りたくても解約すらできないという最悪の事態になっています。これはこうした新興国のジャンク債は一兆事が起こると、売買が成立しなくなるからで、まさに私が指摘する「流動性の枯渇」という事態なのです。その上昨日は格付け会社がトルコ債券の格付けをジャンクの中でもさらに下げています。

  著書ではまえがきでまず初めに私はこう述べています。

「資産運用にとって最も大切なのは流動性だ」

  これが簡単なのにもっとも理解しづらいことなのかもしれません。このように売りたくても売ることができなくなって初めて、「流動性がすべてなのだ」ということが理解できますが、ときすでに遅し。

  投資の基本中の基本すら理解できずにジャンク投信を薦める日本の証券会社には、最大限の非難をしておきましょう。

  最後にあらためて申し上げておきますが、

「世界の金融資産でもっとも高い流動性を持っているのはアメリカ国債です。」

以上、流動性喪失の悲劇でした。

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たまちさんへの回答;流動性、そして中国債券への投資、金への投資

2018年05月18日 | ストレスフリーの資産運用

コメント欄に寄せられた、たまちさんのご質問とコメントに一問一答のかたちで回答いたします。

中国等々の台頭で、ドルの相対的な力は落ちています。

  中国経済は拡大を続けていますので、経済の規模が通貨の強さの源泉であれば、中国に比較すると相対的にアメリカの経済規模は小さくなっているのは事実ですね。アメリカの成長スピードは中国の半分ですから。しかし通貨の強さは経済規模だけではないと思います。スイスは極小国家ですが、通貨は強いですね、過去も現在もきっと将来も。

  中国は元の国際化を標ぼうし、16年にIMFの特別引き出し権=SDRの構成通貨、ドル・ユーロ・円・ポンドに加え人民元が採用されたりしましたが、その後は鳴かず飛ばずです。国際的にも、元を本気で買い進む国家も投資家もほとんどいません。

   IMFは世界各国の保有準備通貨を通貨別にまとめた報告を出しています。17年末の主要通貨の構成比は、以下のとおりです。

 米ドル  62.7%

 ユーロ  20.1%

 日本円   4.9%

 英ポンド  4.5%

 人民元   1.2%

   相変わらずドルとユーロが大半を占め、人民元はほとんど存在しないに等しい規模で、国際通貨としての存在感はありません。


 >仮に米中貿易戦争が悪化して中国が外貨準備のドルを一気に手放せば、ドル円は一気に30円円高に傾くという説もありますし、

   米中貿易戦争が悪化したら何故ドルを売るのでしょうか。ドル安でアメリカは貿易上有利になりますよ。どなたが何を計算根拠に30円の円高と言っているのでしょうか。ドル売り→人民元買いの流れと、日本円レートはどう関係するのでしょうか。あまり根拠のない説ですね。

   各国とも外貨準備は遊ばせておいてももったいないので、通常最も安全な資産で運用します。中国の巨大なドルリザーブは米国債で運用されています。日本政府もそうしています。


>米国債一点張りでなく、中国債(どうやってと思いますが)にも資産を分散させるのはどうでしょうか??

賛成しません。流動性に問題があるからです。

  資産運用で一番大切なのは著書の冒頭で述べたように、対象とする資産に十分な流動性があるか否かです。中国の人民元は規制により流動性に問題がありますし、債券には流動性がほとんどありません。流動性の重要性はむしろ株式投資をされている方のほうが理解できるかもしれません。

  ジャスダックあたりの小ぶりの株式は売買量がすくなく、売ろうとしても買い手がなく値が付かないことがしばしばあります。売ろうとすると足元を見られて買いの手が引っ込み、ひたすら気配値だけが下がっていくのです。しかし流動性の高い大型株でそのようなことはほとんどありません。トヨタの株ならかなりの暴落局面でも取引が成立し、値が付きます。

   中国の債券はまともに大量保有する投資家がいません。つまり売買がほとんどないのです。中国経済の存在感が大きくなっても、投資対象として相手にされていないのが人民元建ての債券です。一番の理由は、当局の規制です。それも通貨や債券に対する規制が突然変更されたりしますので、世界の投資家は信用していません。売るに売れなくなる可能性があるからです。なので元を保有したり、ましてや中国債券を保有したりしないのです。世界各国の準備通貨も同じです。

  このことは中国以外の新興国通貨にも言えます。日本の証券会社は高金利通貨としていまだに南アランドやブラジルレアル、トルコリラ建ての投信を薦めていますが、リスクがありすぎて問題外です。

 

>各国中央銀行も米国債ばかりを買い込むのではなく、一部資産を再び金にシフトさせているともいいます(最近の週刊エコノミスト誌の受け売りです)。

  個人が金を保有するのは通貨当局が保有するのとはわけが違います。私は著書で金投資に関して長々と書いていますので、その部分をお読みください。

   一言で言えば、「金は金の卵を産まない」ので、売るときに価格が下がっていれば損するだけです。バフェット爺さんも同じ意味で以下のように言っています。

 1オンスの金は100年経っても1オンスだ」

以上、たまちさんへの回答でした。


   みなさんへ

 私は連休にキャットシッターで忙しかった家内に合わせて休みをとっていなかったので、明日から来週末まで国内旅行とゴルフに出ます。コメントへの書き込みはできますが、記事はしばらくお休みします。

あしからず

 

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出版から5年

2016年08月17日 | ストレスフリーの資産運用

  リオでは嬉しいメダル獲得がつづいていますね。でも何故か銅メダルコレクターなのがちょっと残念!

   それでもメダルはメダルだし、世界に誇れると思うのですが、銅メダルを取った日本選手の多くが泣きながら「申し訳ありません」というのがちょっと気になります。

   それにしても台風一過の暑さは尋常じゃありませんね。4年後は今より暑くなっているでしょうから、とても心配です。リオよりもっと深夜に競技をやればいいのではと思ってしまいます。


   私の著書が出版されてから今月で5年が経ちました。購入していただいた方に、お礼申し上げます。

  その間の出来事を簡単に振り返りながら、著書に書いてあった林の見立てはどうだったのか、検証してみることにしました。

  著書のタイトルは「証券会社が売りたがらない、米国債を買え」という長たらしくて、ちょっとヘンなタイトルでした。私の案である「ストレスフリーの資産運用」は却下され、ダイヤモンド社がつけてくれたタイトルです。もっとも出版後は、刺激的だし満足できるタイトルだと思っています。

  資産運用対象としてアメリカ国債というのは世界標準の代表的リスクフリー資産なのですが、5年前の日本ではそういう認識はほとんどなかったようです。みなさんは最初どう思われたでしょうか。

   再三申し上げますが、私は日本が大好きな日本人で、この先も日本から出て海外に暮らすつもりなど毛頭ありません。ただ、このお粗末な日本政府とは心中したくない。そのための方策としてアメリカ国債の投資が安全でよいと、みなさんにお薦めしているのです。

  「備えあれば憂いなし」、ストレスフリー投資の神髄が米国債への投資です。

  著書の主旨に対して最初に巻き起こった議論は、「アメリカはこの先何十年も本当に安全なのか」という議論でした。不安の理由の第一は、アメリカがまだリーマンショックから立ち直る最中だと見られていてたということです。

   2011年、世の中では「アメリカにも日本と同じ失われた10年が来る」という意見が支配的でした。私がそれを聞いて思ったのは、「バブル崩壊以降の日本の凋落を悔しく思っている人たちが多いな」、ということでした。バブルの後始末で後れをとっている日本をしり目に、アメリカは先端技術やIT分野で世界をリードし先進国では珍しいほどの成長を遂げていました。ところが、いい気になってサブプライムの証券化商品でバブルを作ってしまい、それがはじけた。言葉は悪いですが、ざまーみろ、なのでしょう。

   そこに拍車をかけたのが理由の第二、いわゆる「財政の崖」というアメリカ議会内の「政争」です。それが日本から見ると単なる政争ではなく、アメリカ財政が深刻な危機を迎えていると誤解されたのです。その後も何度となく崖はやってきて、アメリカは落ちる寸前に回避しています。あたりまえです。財政問題なのではなく、共和党と民主党の政争にすぎないからで、何度か崖の淵を見た後は、さすがに単なる政争だと市場も理解したようです。

  現在は、アメリカ経済が失われた10年の中にいるとか、財政の崖から落ちるかもしれない、などと言う人はいなくなりました。

   そうした見当違いの議論がどこから起きるのかと言いますと、私が常々申し上げているように、金融・経済問題を数字で見ていないで、好き嫌いの感情や当て推量だけで見るからです。リーマンショックのマグニチュードも財政の崖問題も、数字でしっかり検証していれば深刻な問題などでないことはすぐわかったはずです。

   もっともリーマンショックはいまだに「100年に一度の」という枕詞がつく大金融恐慌だったという論調が支配的です。1930年代の大恐慌時の失業率は25%、リーマンショック時は10%。数字だけみれば、半分以下でしかありません。しかもリーマンショック後は、わずか数年で5%という絶好調レベルに回復しています。大恐慌のときは10年後、第2次大戦がはじまる寸前まで15%程度の失業率が続いていました。だから真正100年に一度の大恐慌なのです。

   では、アメリカはこの先も本当に安全なのでしょうか。今一度検証してみましょう。

 著書では将来を見るのに、以下の点をもって日本よりアメリカの方が遥かに安全だと言っていました。

 1.日本の安全保障はアメリカに依存

これはトランプが大統領にでもならない限り、ずっと有効です。彼は日米安保の主要目的の半分は、日本がアメリカに刃向かわないための歯止めだということを知らないのです。凶暴なアベチャンと核武装が持論の防衛大臣コンビの恐さを知らないのです。

 2.国債の格付け ムーディーズとS&P

アメリカ Aaa、AA+ で変化なし。  日本は11年時点でAa3、AA-であったものが、現在はダウングレードされてA1、A+。要するにダブルAがシングルAになってしまった。ちなみに累積債務の対GDP比率の5年間の変化はOECD統計によると、

      11年  16年

アメリカ  108%  111% +3

日本   209%  232%    +23

日本のひどさは留まるところをしりません。

3.日本の人口は減り、アメリカは増加

こんなことを言うと嫌われそうですが、少子高齢化対策が最高うまくいったとしても、効果が出るのは30年後、それが数字から見える不都合な事実です。

4.日本の若者の就職人気企業ランキングは1973年も2011年も、2016年もほとんど変化なし

あきれるほどの保守性を若い人が持っているのは、嘆かわしい限りです。

5.産業の未来を占うベンチャーキャピタル投資額の日米較差  

著書にある08年の調査では、日米のひらきは60倍と推定された。現在も継続する別の調査(Field Management Capital)では11年時点での30倍が、14年の時点では50倍にひらいている。投資額の数字は定義によって異なるため正確な比較はできませんが、同調査の08年では20倍のひらきがありましたので、それがどんどん広がっています。

6.アメリカ人は英語を話すが日本人はダメ、という状況に大きな変化はない


   こうした比較は実に単純な比較ですが、将来の経済成長力や安全性を予見するには有効です。それでもアメリカより日本が安全だという方がいらっしゃれば、どうぞコメント欄でご指摘ください。数字で議論しましょう。


  では、11年時点の将来見通しと決定的に違った、あるいは私が完全に見通しを誤った事項があるかないかを見てみます。

   自己申告しますと、11年時点で私が最も予想できなかったことは、12年年末の「アベノミクス」導入です。その結果が円安と株高につながりました。これについてはもちろん誰もが予想はできなかったし、新たな要素なのですが、問題はその後の展開です。

   私は導入当初は長続きしないと思っていましたし、異次元の金融緩和などという無謀な緩和策は打上げ花火の効果だけで、長期的に続けられないし日本財政の破たん時期を早めるだけと思っていました。

   確かに政策目標であるデフレの克服はできなかったし、今後もできそうにありません。しかし、円安が株高を呼び込んだため大歓迎され、財政は金利低下のお陰で長持ちしています。

  もちろん財政問題は解決したわけでもなく、ひたすらマグマを溜め込んでいるだけなので、破たんの威力は大きくなるのですが、今はその端緒も見えてきていません。

 以上がたぶん最も間違った部分だと思います。

 つづく

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