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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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米国債の格下げニュース

2025年05月19日 | 米国債への投資

 トランプ政策の支離滅裂さに金融市場全体が「NO!」を突き付けていましたが、今回は一国の信用力全体を詳細にウォッチしている格付け会社からも「NO!」を突き付けられました。

 まず格下げに関するブルームバーグのニュースを引用します。

 引用

見出し;米国格付けを最上位から引き下げ、債務膨張を懸念-ムーディーズ

 2025年5月17日、長期発行体格付けと無担保優先債格付けを「Aa1」に引き下げた。フィッチとS&Pに続き、世界一の経済大国がトリプルA格付けを失う。

 米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは、米国の信用格付けを最上位から引き下げた。世界で最も信用力の高い国債発行国の信認に一石を投じる象徴的な動きとなる。

  米国の債務と財政赤字の急増により、国際資本の投資先としての優位が損なわれ、政府の借り入れコストが増大するとの不安が格下げの動きに反映された。

  ムーディーズは16日、米国の長期発行体格付けと無担保優先債格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAクラス)」に1段階引き下げたと発表した。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングに続き、世界一の経済大国がトリプルA格付けを失った。

  ムーディーズは1年余り前、米国の格付け見通しを「ネガティブ」に変更したが、今回の格下げ後の見通しは「ステーブル(安定的)」とした。

  格下げの理由については「米国が持つ経済・財政の著しい強さは認識しているが、これらの強みだけで財政指標の悪化をもはや完全に埋め合わせることはできない」と認識を示した。

 これに対しホワイトハウスは、「ムーディーズによる米国の信用格付け引き下げを政治的決定だ」と強く非難した。

 トランプ政権と米議会は、2017年に時限措置として成立した「トランプ減税」の恒久化を含む税制パッケージの協議を進めているが、歳出ペース抑制は見通せない状況だ。グローバルな「関税戦争」の影響で米景気が減速すれば、政府支出の増加に伴い財政赤字はさらに拡大が見込まれる。

 ベッセント米財務長官は今月に入り、『連邦財政が持続不能な軌道にある』と指摘。下院歳出小委員会での証言で、「債務の数字は実に恐ろしい」と述べ、危機に陥れば「経済が急停止し、信用が消失する」と発言。「それが起きないよう力を注ぐ決意だ」と語った。

引用終わり

 財務長官が自国の信用力にウォーニングを発すること自体かなり異常なことですが、ウォール街出身のベッセント長官は、いずれその時が来るだろうとみこしていたようです。

 他の格付け会社であるS&P社がダウングレードしたのは、私の一冊目の著書が出た時期で、2011年8月。次にフィッチ・レーティングスがダウングレードしたのはS&Pに12年も遅れた23年8月でした。ムーディーズはさらに2年後ということになります。

 これらを考慮すると、今回の私の見方は「すでに3大格付け会社のうち2社がダウングレードをしている中、よくぞムーディーズは最上級のまま頑張ったな(笑)」というものです。

 市場がどう反応するかは明日のNY市場の様子をみてみないとわかりませんが、日本の関係者が声高に心配するほど私はドルや米国債が暴落するとは思っていません。 

 むしろ心配すべきは日本です。ちなみに3社の日本国債の格付けは、ダブルAをすべて通り越したシングルAしかないのですから。

 

  • ムーディーズ(Moody's)A1(安定的)

  • スタンダード&プアーズ(S&P)A+(安定的)

  • フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)A(安定的)

 

 以上、とりあえずの投稿です。

 

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米国債、「中国売りで金利が上昇した」は本当か?

2025年04月11日 | 米国債への投資

 折角株式相場が反転上昇したと思ったら、本日はまた暴落ぎみとなってしまいましたね。昨年新NISAが導入されたことで株式投資を始めた人はかなり多かったようで、その人数は60万人前後だそうです。その人たちは昨年8月の大暴落を乗り越えたと思ったら、今回はトランプ暴落となり、息つく暇もないことでしょう。


 もちろんNISAの仕組み上、長期投資をすると決めている方は多いので、短期間の暴落には目をつぶろうとするのでしょうが、日米いずれの暴落も下落幅は非常に大きいため、精神的ストレスはかなりのものと想像できます。特に若い方々で貯えがさほど大きくない方ほどショックは大きく、夜も寝られずとなると、いったい何のために投資をしているのか分からなくなっていることでしょう。

 今回は債券投資のお話です。

 「中国による米国債売りが原因で米国債金利が上昇している」という話が流布され、ブログのコメント欄にもそうした話をされている方がいらっしゃいます。では中国売りで金利が上昇しているのは本当かどうかを数字で検証してみましょう。

 中国の最大保有額は2013年11月に1兆3,167億ドルでピークに達しました。それ以降の中国の保有額を約5年ごとに追っていくと、

13年;1兆3,167億ドル
18年;1兆1,650億ドル
23年;7,696億ドル
2025年1月:7,608億ドル

1月以降の統計はまだ出ていません。しかしこれを見ても明らかなように、2013年以降一貫して中国が売却を進めていました。その間、コンスタントに金利が上昇していたわけではありません。

 2024年の年末時点で米国債の総発行残高は約35兆ドルです。そのうち外国勢が約7.5兆ドルを保有していますが、中国の米国債保有額は約7,590億ドルで全発行残高35兆ドルのわずか2.1%にすぎません。およそ「中国の売りなんて関係ない!」と言えるような少額でしかありません。

 ではそれを米国債の1日の取引量とも比較しておきましょう。SIFMA(米国証券業金融市場協会)の統計によれば、2024年の米国債の平均日次取引量は約1兆220億ドルです。中国が1か月=20日営業日で全保有量を売却したとします。一日の売却量は、7,590憶ドル÷20=379.5・・・約380億ドルです。それは一日の取引量の何%に相当するか?

380憶ドル÷1兆220億ドル=0.037・・・わずか3.7%

 中国が全量をたった一ヶ月で売却したところで、相場に影響などない量です。米国債の最大の強みは世界で最も流動性の高い金融資産であること。つまり取引量が莫大なため、いざという時に価格にさほど影響を与えずに、いくらでも売買が可能なことが強みなのです。日本国債のように1日全く取引のない日が年に何日もあるようなことがない資産なのです。

 私はたびたび流動性の重要性を述べますが、日本では証券のプロですら流動性の高さを問題にする人は少なく、米国債のセールストークで証券会社からそれを聞いたことのある方はほとんどいないと思います。

 SNSなどで流布されるウワサにすぎない中国売却による暴落論などに振り回されることの無いようにしましょう。いつも申し上げますが、「経済・金融は数字がすべて」。数字で納得できない空論は相手にしないことです。


 ちなみに日本政府の米国債保有状況はどうなっているか、見ておきましょう。

 2024年9月時点で約1兆1,200億ドルを保有しており、これは日本政府が米国債の最大保有国であることを示しています。それが 2024年12月時点で約1兆600億ドルとなり同年9月より若干減少しました。
 
 トランプは4月2日を「解放の日」と称して、全世界に向けてパネルを使い関税率の値上げを宣言しました。すると株式は暴落し、逆に米国債は爆買いとなり、4月4日に米国債10年物金利が4%を切りました。世界の債券アナリストは、「金利の急低下は世界的な株の暴落が招いた資本の逃避」だと断定しています。私もその解説は正しいと思います。金利の下落とは、債券が猛烈に買われ価格が上昇したということです。

 そしてその後反転して金利が上昇したのは、米中の関税戦争がますますエスカレートして税率が100%を超えるほどとなり、いよいよアメリカでのインフレが確度を増してきたから金利が上昇したのだと思います。中国売却論に関しては少なくともアメリカのまともな報道には出て来ていません。

 今後米国債に投資を考えている方は、金利が上昇したらニッコリ笑って投資しましょう。すでに米国債に投資されている方は、途中での評価損など気にせず、償還まで持ち切ることに徹しましょう。最後には必ず100で償還されるのですから、途中の評価損など全く関係ありません。

 以上、「中国売りで金利が上昇した」はウソだ!(笑)でした。

 

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米国債の買い時は続く・・・金利優先

2025年03月26日 | 米国債への投資

 米国債投資を考えている方にとって、米国債金利が4%をコンスタントに超えている好ましい状況が続いています。一方でドルレートは150円近辺に上昇し、投資タイミングを見ている方は踏みとどまっているかもしれません。


 しかし両方が好ましい状況、つまり米国債金利が高くドルが安いという状況を期待するのは無理があります。ドルは金利に比例して動くからです。

 そこで私がいつも申し上げているのは、「金利優先」です。債券投資はいったん投資をすると、買った時の金利は最後の償還まで継続します。利付債であれば、決まった利金を年に2回もらえます。例えば利率4%の米国債であれば、2%ずつ半年ごとにもらえることになります。ゼロクーポン債は金利はもらえませんが複利運用でき、買った時の利回りが最後まで保証され、投資元本が大きく増えて償還されます。

 

 では今の為替レート150円で米国債10年と30年のゼロクーポン債に投資した場合どうなるかを見てみましょう。そしてドル円のブレークイーブン・レートを簡単に計算しましょう。ブレークイーブン・レートとは、そこまでドルが安くなっても、損はしないというドル円レートです。

 1万ドルの米国債10年物を買うとします。為替が150円なのでちょうど150万円です。金利を現状の4.31%として複利運用すると、10年後には約15,300ドル、つまり1.5倍に増えます。

ブレークイーブンの計算は、払った円額をもらえるドル額で割り算すると計算できます。

150万円 ÷ 15,300ドル = 98円・・・ブレークイーブン・レート

 検算しますと、10年後にドル円が98円になったとして、その時にはドル額で元本が15,300ドルに増えているので、

15,300ドル X 98円 = 1,499,400円 約150万円・・・投資額とほぼ同じ

つまり為替レートが100円を割るところまで進んでも、損はしないという計算になります。まあ、こんな円高にはならないでしょう。

 同じく30年債ではどうか?

1万ドルの米国債30年物を買うと10年物と同じく150万円必要です。金利を現状の4.66%として複利運用すると、30年後には約39,800ドルになります。ほぼ4倍です。

ブレークイーブンの計算は10年債同様に、
150万円 ÷ 39,800ドル = 37.7円

検算しますと、30年後にドル円が37.7円になったとして、その時ドル額は39,800ドルに増えているので、

39,800ドル X 37.7円 = 1,500,460円 約150万円・・・投資額とほぼ同じ

 どうです。37円などなりっこありませんよね。金利の威力は抜群で、円高なんて恐くないことがわかります。
 30年後のドル円レートがたとえ現状と同じ150円でも元金は約4倍に増えます。逆にもし円安が進み200円になっていたら、

 38,900ドル X 200円 = 778万円

 150万円が約5.2倍と、とんでもないリターンを実現できます。

 この計算ですが、実際には証券会社のサイトで米国債のリストを探すと、ブレークイーブンのドルレートの計算結果が出ていますので、ご自分でする必要はありません。ただし捕らぬ狸の皮算用は上記の計算方法で、どうぞご自分で計算してみてください(笑)

 では今後為替レートをどう見ているか?アナリストと私の見方を紹介します。

 24年の海外との資金のやり取りのうち、いわゆる経常収支は史上最高の約29兆円の黒字でした。これは大きな円高要因です。しかし実際には円高には進みませんでした。その理由を簡単に記せば、「貿易を中心としたお金の表面上の計算は大きな黒字なのですが、実際にはその分の資金フローはなかったためにドル高のままだった」ということです。

 そして今後はトランプがメチャクチャやってきますので、例えば車が輸出できないと、ますます現地生産へとシフトします。するとまず設備投資が必要となり、日本からアメリカへの資金移動が起り、円安ドル高に貢献することになります。車以外でも基本構造は変わりません。ちなみに24年の対外直接投資は約30兆円もありました。

 ではそこで儲けたメーカーは資金をどうするか?
1.日本へ戻す
2.現地で設備に再投資する
3.金利の高いアメリカで運用し、次の投資に備える

 現状ではその多くが海外、特にアメリカに留まったままであると言われています。正確な数字は算出されていません。滞留資金がアメリカドルの場合、リスクのほとんどないドルのMMFに置いておくだけで年に4%前後のリターンがあります。日本に送金して円にしてしまうと、1%を切るようなささいな金利しかもらえませんので、合理性に欠けます。これがまず企業の投資のフローです。

 それにプラスして昨年来個人が新NISAでの海外投資を増やしています。これまたそのうちの半分以上がアメリカへの投資で、年間では10兆円弱の額になっています。これも日本への還流はせずそのままアメリカを中心とした海外に滞留しています。

 従って、こうしたキャッシュフロー上のアメリカへの流失が大きく、円高に戻ることは難しい状況なのです。

 24年1年間の日本の経常収支は約29兆円の黒字でしたが、個人の対外投資が年間で10兆円以上流失し、企業も30兆円近く海外に投資してそのまま滞留させているため、キャッシュフロー上は大幅な赤字が継続しています。これがドル高円安の正体といってもよいほどなのです。

 ということで為替レートの予測は非常に難しいものの、為替変動の大きな要素は「経常収支という机上の数字ではなくキャッシュフローだ」と言うのが実態を見ているアナリストの分析で、私もそれに賛成です。従ってドル安は見通しにくいというのが結論です。

 そして多くの方は今後日本が成長軌道に乗ったり、財政が正常化されることはなく、大きな財政赤字を垂れ流し続けると考えていますので、「円の保有はリスクあり」とみていることでしょう。


 相変わらず金利がほとんど付かない円にしておくのは「チョーもったいない」のです。

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今後の米国債投資をどうすべきか、その2

2024年08月29日 | 米国債への投資

 7月末から8月の初旬は、株式と為替の相場が激しく変動しましたね。

その間に8月1日の投稿で私は以下のようなことを書きました。

引用

 米国債への投資を検討されている方にとってドル安はチャンスですが、一方で金利の低下は不利に働きます。ではどうすべきか?

 私は常々みなさんに「為替より金利優先で考えるべきだ」と申し上げています。もちろん米国債金利が高くてしかもドルが安いのが一番好ましいのですが、それはいわば「ない物ねだり」です。為替と金利はある程度連動しますので、米国債の金利が高い時にはドルも高くなってしまうし、いまのようにドルが安くなった時には金利も低下してしまいます。

 もちろん為替も金利もその他の要因でも大いに動かされますから、これがすべてと言うわけではありません。では「為替より金利優先で考えるべきだ」というのは何を根拠にいっているのか。それを説明します。

 そもそも米国債投資を考える方の基本スタンスは、10年以上、30年近い超長期投資がほとんどです。そしてこれまでの投資結果をみると、「金利は為替に勝ってきた」のです。

引用終わり

 今回はこれに加えてもう一つ大事なことをみなさんにお知らせします。

 このところ米国債の指標である10年物金利がだいぶ低下しています。昨日のレベルは3.83%。そして30年債も4.12%になっています。金利が高いレベルで投資タイミングを狙っていた方のうち、大部分の方は今年に入って私が何度かゴーサインを出していましたので、買われた方が多かったと思います。

 ではこのタイミングでの投資はどう考えたらよいのでしょうか。一つ大事なポイントをお知らせします。

 ある程度の年齢の方で、「金利収入を目指して投資をされる方であれば、今の金利レベルでも何も心配はいらない」ということです。金利収入の欲しい方は、複利運用可能なゼロクーポン債を買わずに、当然利付債を買うことになります。その利率は市場金利には連動していないからです。

 もちろん投資する際の価格は高くなる分、最終利回りは低下しますが、それを気にする必要はありません。20年~30年後にドル円レートが超円高に動くことなどありえないからです。残念ながら国力の差は埋めがたいどころか、開く一方ですので。それよりとにかく高い金利をエンジョイしましょう。

 私が個人相談を受け付けている方のうち多くの方は、リタイアが近い世代、あるいはすでにリタイアした方が多いのですが、そうした方々は当然複利で将来の償還額が多いことより、投資からの金利収入をコンスタントに欲しいという方です。

 現在でも証券会社によってはクーポン金利が4.75%と、かなり高いレベルの債券が売られています。市場金利が低下している中では、こうした債券の価格は高くなっています。しかし一方で市場金利低下に伴い、ドル円レートは買いやすいレベルに低下しています。ひところの160円台、あるいは150円台からみれば、現在の144円程度のレートは相当買いやすいレベルです。

 

 最近の相談者の方の例では、65歳の方が金利収入をコンスタントに得るために米国債を買いたいとのこと。その方に20年から30年近い債券をお勧めしたのですが、「私はそんなに長生きしませんよ、長すぎます。」とおっしゃいました。

 

 しかし私は「長いと当然金利レベルは高いものが多くなり、収入は増えますよ。ご自分の年齢に対して長すぎるということは考えなくてもいいんです」とお答えしました。

 その理由は単純です。私がブログや著書などで何度も申し上げていることで、「米国債は定期預金などと違い、期限前に売却しても何のペナルティーもありません。急に必要な資金が出てきたら、いつでも売ればいいんです。また余命〇年などと言われたら、売ればいいだけです。そして全額売らなくても、必要な金額だけ自由に売れます」とアドバイスしました。

 その言葉に納得され、早速購入に進まれたようです。どうかみなさんもこのことを間違わずに頭に入れておいてください。

 では再度復習します。

・市場での米国債金利が低下しても、利付債の金利は同じレベルを保っている

・償還期限は定期預金と違いそこまで保有しないと損失が出るというものではない

・従って高齢の方でもクーポン金利が高い超長期のものを買うべきだ

以上のことを念頭に入れて投資をしてください。

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金利低下は恐くない

2023年12月22日 | 米国債への投資

 年末が迫ってくる中で米国債金利が大きく低下し、10年物が4%を切ってしまいましたね。

「4%台は買いだ」と何度かこのブログに書きましたが、投資チャンスを待っていた方々は、しっかりと投資できたでしょうか。今年の8月初めに4%台に乗せて以降、先週まで約4か月半も続きましたので、多くの方は目的を達成できたと思います。

 では3%台後半での投資はどうか?

 もちろん為替レートによるところもあり、ドル円レートはなかなか140円台を切るところまでいかずに140円の大台を維持していますので、投資しづらいと思う方もいらっしゃると思います。

 先日も書きましたが、私が前著を出版した2011年8月以降の12年間を振り返ると、3%に乗ったのは実に瞬間的で、しかも2回だけでした。それと比べると依然として投資チャンスは継続していると考えるべきです。

 

 そしてさらに視点を変えてみると、別の景色が見えてきます。それはみなさんの中である程度お年を取った方で、ゼロクーポン債ではなく利付債への投資を志向している方の投資です。「年2回の利子収入を得るための投資であれば、現在の金利低下は恐れるに足らず」ということになるのです。

 何故か説明します。年金の補完的収入を目的に米国債投資をされる方の利回りは低下していないからです。市場の金利低下は債券価格を上昇させるため、最終利回りを低下させますが、証券会社のサイトで、既発外債一覧にある米国債の「利率」と表示されている利付債の金利は変動しないからです。利率とは発行時に決めた年間の利子の率で、償還まで不変です。ただし金利の低下時にはこうした高い利率の債券価格は100を大きく超えていて、例えば115%台になっています。ですので、約30年後の償還時には115で買ったものが100でしか償還されず、15%の損失が出ます。

  もし30年債に投資をする方の年齢が定年を迎えた60歳だとすると、償還時には90歳。その時に投資した元本が減ったか増えたかを気にする必要などない年齢だ、と割り切ることができる年齢です。

 

 例えば直近11月に発行された30年物のクーポン利率は4.75%です。年限はたぶん29.9年と表示されていると思いますが、その債券は金利が低下した今でも、依然として年に4.75%の金利を払ってくれます。

 じゃ、いったいどの債券が4%を割り込み3.8%台の市場金利なのか?それは発行してすぐの10年債で価格100近辺の債券、あるいは過去に10年以上の長期債券として発行され、年限を経て残存10年となった債券の利回りが3.8%に低下したということなのです。「利回り」とは、毎年もらえるクーポン金利と、償還時に返済される元本の変動を加味し計算された「最終利回り」のことです。

 話が込み入ってしまいましたので、付いていけないと思われる方もいらっしゃると思います。この辺りの複雑さが「債券投資は難しい」と言われるゆえんでもあります。

 しかしもっと単純に考えましょう。

・若い年齢の方が満期を迎えるまで複利で運用し、元本をしっかり増やしたいと思うのであれば、ゼロクーポン債の「利回り」をしっかり見て買いましょう。

・ある程度の年齢で高い利子の付いた債券を買いたいと思う人は、価格が100を超えて高くとも、ハイクーポンの債券を買って利子収入をエンジョイする。

 それだけのことです。

 

以上、「金利低下は恐くない」でした。

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