前回は、70歳以上の高齢の方が何故証券会社のセミナーに出席するのか、または投資を行うのかについて理由をうかがいたい、とお願いしましたが、回答をいただくことはできませんでしたので、Aさんのお話と、私の勝手な想像をみなさんにお知らせしたいと思います。回答は引き引き続き歓迎いたします。
これまでブログでも申し上げてきましたし、著書でも申し上げましたが、『高齢の方は運用などせずに使うことが一番大切で、それでこそ残りの人生を楽しく過ごすことができる。運用などでストレスを感じるのは、最も避けなくてはいけない』というのが私の考え方です。
一方、Aさんの出た証券会社のセミナーに参加されている方は、きっとこれまでも投資経験が豊富で、こう言っては申し訳ないのですが、ほとんどの方は損を積み上げられていると思われます。もし儲かっていれば、人の話など聞かずに、ご自分のやり方を進めればよいので、きっとそうではないのでは、と推定できるのです。
セミナーにコンスタントに出席されているAさんから、実はとても面白い話を伺いましたので、今回はそれをご披露します。
高齢の方にとって証券会社のセミナーに出席するのは、『同病相哀れむ』(失礼)ではないか、という推定です。
時間のたっぷりある高齢者は、病院にで1時間・2時間と待たされるのを意に介していません。繰り返し通ううちに知り合いも出き、話をするようになります。話の内容は「病気自慢」がメインだそうです。孫の話やペットの話もさることながら、同病の方同士が自慢ではなくても、病状や経過を報告し合い、他の病院の情報などを交換し、暇をつぶしながら同病相哀れむ。Aさんはこれと証券会社のセミナー出席者の行動がとてもよく似ているというのです。
断じてそうではない、と言う方がいらしたらごめんなさい。
特に支店のセミナーなど、ほとんど同じ様な話が毎月2度も3度も行われていて、目新しいことがないそうですが、飽きもせずに同じ様なメンバーがそろって出席する。もしかすると、投資で失敗をしていても、同じ様な仲間がいればそれだけでも安心し、癒されるのかもしれません。Aさんが言うには、どうやら証券会社に薦められた同じ様な投信や株を買っている方が多いようだ、とのこと。
Aさんのこのお話、妙に説得力を持つ話ではないでしょうか。
一方、私はどう見ていたかともうしますと、セミナーはなんといっても話し手が上手であれば「投資に一歩を踏み出すきっかけを作るための仕掛けになる」と見ていました。よくあるマルチ商法などの熱気で集団心理を煽るセミナーからの想像です。
投資話でももちろんマルチ商法と同様の手口はあります。例えば新商品を説明し、「今回出席された方から早いもん勝ちで購入可能、限定商品です」というアレです。特に名の知れた証券会社ではなく、限りなく怪しい投資顧問などのセミナーでは、こうしたクラシックな手口が相変わらず横行しているようです。
証券会社の場合は、もちろん怪しい投資話をしているわけではありません。証券会社にとって重要なのはセミナーの出席者同士が、『みんなで渡れば怖くない』という心理状態になってくれることなのでしょう。投資後にたとえ相場が思惑からはずれても、『みんな損しているんだから』という妙な安心感だけは得られます。それがまたAさんの言う『同病相哀れむ』につながるのかもしれません。
つづく