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日本半導体産業の復活

2024年03月01日 | 日本経済コメント

 「現在の日本の株価を主導しているのは半導体産業だ」と言ったら、驚かれる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは紛れもない事実です。日本の半導体産業は駆逐されてしまったというのが一般的評価ですから。思い返しますと、

50年代;トランジスタ時代

60年代;IC時代

70年代;LSI時代

80年代;VLSI時代

 このあたりまでは日本の半導体メーカーが世界を席巻していました。89年の世界ランキングでは、

1位NEC

2位東芝

3位日立

5位富士通

7位三菱

9位松下

と、ベスト10に実に7社も入っていました。

 

 現在の半導体メーカーのランキングは以下のように日本のメーカーは一つも入っていません。

23年世界の半導体メーカー別ベストテン(百万ドル) ガートナー調べ

             23年売上 シェアー

1

2

Intel

48,664

 

9.1%

 

 

2

1

Samsung Electronics

39,905

 

7.5%

 

 

3

3

Qualcomm

29,015

 

5.4%

 

 

4

6

Broadcom

25,585

 

4.8%

 

 

5

12

NVIDIA

23,983

 

4.5%

 

 

6

4

SK hynix

22,756

 

4.3%

 

 

7

7

AMD

22,305

 

4.2%

 

 

8

11

STMicroelectronics

17,057

 

3.2%

 

 

9

9

Apple

17,050

 

3.2%

 

 

10

8

Texas Instruments

16,537

 

3.1%

 

 

 

 日本には半導体メーカーが全くないのではなく、過去の上位だったメーカーが連合体を作り、ルネサス、ラビダス、キオクシアなどがありますが、全くのランキング外になってしまったということです。

 80~90年代くらいまでは、日本が得意としたメモリー・チップとそれを動かすCPUという大きくは2つの区分でしたが、現在は半導体がより多くの製品に細分化されたため、単純には比較できません。

 たとえばSONYはCMOSと呼ばれる画像センサー半導体の分野では世界最大手で40%ものシェアーを有します。それはアップルなどを含む世界中のスマホ、デジタルカメラやセキュリティ用カメラ、車載カメラなどに搭載されています。それでも規模は小さいということです。

 上記のランキングで注目されるのは、生成AI向け需要の急拡大で絶好調のNVIDIAです。売り上げが前年比56.4%増と急成長を遂げていて、前年の12位から5位へと大きく順位を上げ、初のトップ5入りを果たしています。今やAIの旗手といわれるほどで、株価も猛烈に上昇し時価総額は2兆ドル、300兆円です。日本のトップはトヨタの60兆円ですから、なんと5倍。

 しかしこのメーカー・ランキングには半導体世界トップと言われる台湾のTSMCが入っていません。理由は、TSMCはブランド名を持たないファウンドリだからです。ファウンドリはブランド名を持つメーカーの下請け工場の役割を担っていて、それを加えるとダブルカウントになってしまうため、ランキングでは通常除いてカウントします。

 

 このような状況にありながら、今回の投稿タイトルは、「日本半導体産業の復活」としました。どこが?といわれそうですが、次にその理由を説明します。日本の半導体関連企業は上記メーカーなどに向けて非常に重要な半導体の材料や製造装置を作っているのです。つまり広い意味で半導体産業は復活し、現在の株高もそうしたメーカーが支えているのです。

 今週号のダイヤモンド誌は5,000号記念ですが、「一冊丸ごと半導体」という特集号になっています。その記事によれば、半導体部材製造の48%半導体製造装置の31%は実は日本のメーカーなのです。

 ではそれらの企業を現在株高に沸く上場企業時価総額ランキングで見ていきます。半導体関連は注書きを入れてあります。

2月29日の日本株時価総額ランキング

1位 トヨタ

2位 三菱UFJ銀行

3位 東京エレクトロン・・・半導体製造機器メーカー

4位 キーエンス・・・・ファブレス

5位 NTT・・・・半導体

6位 SONY・・・CMOSメーカー

7位 ファストリテーリング

8位 三菱商事

9位 ソフトバンクグループ・・・半導体設計アームなどの大株主

10位 信越化学・・・フォトレジストと言われる感光材をウエハーに塗布

 

 半導体に関わる企業はトップ10社中7社を占めます。驚くべきランキングです。これが株高を演出している日本企業の現在の姿で、要はのき並半導体関連銘柄が注目を集め市場を席巻しているのです。

 上記のランキング外でも半導体の部材や製造装置で名を馳せるメーカーを挙げておきます。

・大日本印刷(フォトマスク制作)

・TOPPAN(フォトマスク制作)

上記2社で世界の5割強

・SCREEN HD(旧大日本スクリーン、フォトレジスト塗布)

・フジミインコーポレーテッド(シリコンウェハーの鏡面研磨材世界1位9割)

・アドバンテスト(完成品検査)

 

 コロナによるパンデミックの最中世界は半導体不足となり、いまや半導体の塊である自動車のメーカーは製造をストップせざるを得ない状況にまで追い込まれました。ところがそれが終わると一転。半導体の市況はまさにシリコンサイクルのダウントレンドに巻き込まれ、23年の世界の半導体売上が前年比でマイナスにまで落ち込みました。しかしその最中から今度はAIのブームが始まり、AI関連の企業は世界的に注目を浴びています。その旗手がNVIDIAで、実は裏方でサポートしている日本のメーカーが、したたかに復活しているのです。

 そして特記すべきは研究開発中の量子コンピュータとNTTの光電融合デバイスです。演算スピードが飛躍的に高くなる量子コンピュータは世界中が競争していますが、NTTの光電融合デバイスはおそらく独自の開発で、電力消費量を劇的に下げる大きなメリットを持っています。その概要を、新会社であるNTTイノベーティブデバイス株式会社のHPから引用します。


引用

光電融合技術とは、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術のことです。NTTは新中期経営戦略「IOWNによる新たな価値創造(構想から実現へ)」の一環として電力負荷問題を提起しており、それにつながる解決策として「光電融合技術」の研究・開発に取り組んでいます。

引用終わり

以上が「日本半導体産業の復活」というわけです。

 

 私は日本の製造業の専門家でもなければ半導体の専門家でもありませんので、投稿の内容中に不備があるかもしれません。専門家の方で間違いなどにお気づきでしたら、どうぞ遠慮なくご指摘、訂正をおねがいします。

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日本人の窮乏化 ― 8月の実質賃金、5か月連続のマイナス

2023年09月08日 | 日本経済コメント

 実質賃金とは、賃金の上昇率から物価上昇率を引いたもので、マイナスとは物価上昇に負けている、ということです。

 私は今年の1月11日に「物価上昇4%だって、冗談じゃない!」という投稿をしました。実感の物価と公式発表の物価が大きく違うからです。その原因の一つは帰属家賃というなじみのない仮想家賃を計上し、それが上昇率を薄めていることによると説明しました。二つ目は物価水準の議論をする政府や経済の専門家は、「コア指数」というこれまた実感とはなんの関係もない指数を金科玉条のごとく使用しているからです。コア指数とは主に食品と電気・ガス・ガソリンなどのエネルギーを除いた仮想数値です。

 今消費者が一番困っているのは食品とエネルギー価格の上昇です。ものによっては10%~20%は当たり前。にもかかわらず何故そのような無意味な数値を大事にするのか。理由は、食糧・エネルギーとも価格変動が大きいので、それを加味すると長期のトレンドを見誤るからというもの。我々一般人が困るか否かなど眼中にないのです。

 そしてこれだけ物価上昇が続くと、一番の問題点は物価上昇が賃上げを上回り、実質賃金が目減りしている、つまりは窮乏化することです。9月7日のロイター電をみてみましょう。

引用

 厚生労働省が7日公表した8月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比1.7%低下となり5カ月連続の減少となった。マイナス幅は7月の1.8%から小幅縮小した。所定内給与などの現金給与総額は前年比が7月より拡大しており、消費者物価指数の上昇がそれを上回った格好だ。

引用終わり

 しかしちょっと待てよ、今年の春闘の結果はベースアップと定昇を入れて3.58%だったのに。日経新聞ニュースを見ましょう。

「連合が5日発表した2023年春闘の最終集計結果(3日時点)によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)に定期昇給を合わせた平均賃上げ率は3.58%(1万560円)と、3.90%だった1993年以来、30年ぶりの高水準を記録した。」

 であれば物価が3%上昇しても実質はプラスになるのでは?

 マイナスの理由は、連合に参加している企業の従業員数は全労働者の2割を切っているからです。8割の労働者にとって賃上げ3.58%など夢のまた夢。私を含む年金受給者も全く無関係です。今一度申し上げますが、7月の物価上昇率は3.1%でしたが、同月の労働者全体の給与はそれを1.7%も下回っていたのです。これが物価上昇率を差し引いた実質賃金がマイナスとなってしまうカラクリです。

 ついでに1月の投稿で私は年金受給額についてもこう述べました。

「これだけ物価が上がっている中で 日本の厚労省は年金支給額を減らす老人いじめもしています。老齢年金満額支給の月額は令和 2 年度の 65,171 円に対して今年度は 65,075 円。わずかですがマイナスで、「マクロスライド」という訳の分からない政府のごまかし政策により減らされているのです。一方私自身は、金額は少ないですがアメリカ合衆国から年金をもらっています。 毎年12月に翌年の年金額のお知らせが来るのですが、今年はなんとプラス 8.7% です。アメリカの物価上昇率をきっちりと反映してくれますので、納得の数字です。」

 ちなみに日本の年金受給者は一昨年度で6,700万人にもなっていて、日本の半数の人々は、賃上げなど全く関係ないという状態にまでなっているのです。

 最近よく「賃上げでも消費が伸びない」と言われていますが、消費には消極的にならざるを得ない年金受給者への手当をよほどしっかりとしなければ、全体の消費など伸びるはずがないのです。

 もう一つ話題にすべきことがあります。それは、

 家計はこのように厳しいのに、原油価格は一昨日のサウジの減産継続の発表によりまた跳ね上がりました。ロシアも減産を続けているため、原油価格の高止まりは続きそうです。それに加えて日本の場合は、政府・日銀の政策的円安も加担しているため、ガソリン価格はさらに高騰が見込まれます。

 日本政府は補助金政策によりガソリン価格を抑えにかかるとのこと。価格が抑えられることは歓迎ですが、長期的に見た場合正しい判断かはかなり疑問です。73年の第一次オイルショック時の物価はこんな生易しい上昇ではなく、1973年は11.7%、74年にはなんと23.2%まで急伸しました。政府も打つ手がないほどで、GDP成長率も74年にはマイナス0.5%にまで陥ったのです。

 そのため企業は必死に自助努力して克服。それがその後日本が原油価格に左右されない発展の礎になりました。逆にバブル崩壊以降、政府による莫大な公共投資や補助金漬けは企業や消費者をナマケモノにしたきらいがあると私は思っています。

 現在の政府の政策はどうか。23年度の労働白書の案ではつぎのようなアイデアが示されています。9月3日の日経ニュースを引用します。

「全労働者の賃金を1%あげるとおよそ2.2兆円の経済効果があると試算した。他国に比べて給与が伸びていない状況を踏まえ、離職率低下など企業側のメリットを前面に出し、賃上げを促す。賃上げ分は主に小売りなどの商業や不動産業で消費されるとみる。新たな需要に対応するため、雇用は16万人分増える。」

 計算はそうでしょうが、実現性は皆無。日本の全労働者の賃金を1%上げるなど、役人の幻想にすぎません。

 では1%で10兆円の効果を上げられる策を私が伝授しましょう。それはほんの数人の決断で可能です。日銀がいまの政策金利をマイナスからプラスにして銀行預金の金利を1%に上げるだけで可能なのです。なにせ家計の金融資産は2千兆円、うち現預金だけでも1千兆円あるので、預金金利たった1%で家計は10兆円の金利収入を得ることができます。

 というより、いままでクロちゃんの愚かな政策により「家計は10年で100兆円も損失をこうむった」というのが正解でしょう。そして実は残りの金融資産も、例えば保険資産や債券などの資産でも政策金利が上がれば、10年で数十兆円のプラスは見込めます。

 しかしそれらはすでに逸失利益。それを取り戻すには10年物米国債で年に4%もらうのが一番です。

 今後もし本当に金利が上昇すれば、日銀を始め日本中はひっくりかえるほどインパクトを受けざるを得ません。それへの保険にもなる米国債投資こそが決定打なのです。

 

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「日本には世界に冠たる製造業がある」ってか?

2022年09月10日 | 日本経済コメント

「企業不正リスト」とwikipediaで検索すると我々がよく知っている大企業だけで驚くほどの不正事件の一覧が示されます。

主に単独企業の事件

 

  私はこのトピックを取り上げようと以前から思っていたのですが、今回遂にそれに踏み切ったのは、今週キリンビバレッジのニュースを見てからです。

9月6日の時事通信ニュースを引用します。

「ジュースの商品パッケージに不当表示があったとして、消費者庁は9月6日、キリンビバレッジ(東京都)に対し、景品表示法違反で再発防止などを求める措置命令を出した。メロン味の「トロピカーナ」に100%と表示していたが、実際に含まれていた果汁は約2%だった。対象となったのは、「100% MELON TASTE」や「厳選マスクメロン」などと表示し、原材料のほとんどがメロン果汁であるかのように表示していた。実際は、ぶどうやりんご、バナナの果汁が約98%を占め、メロン果汁は2%ほどだった。現在はパッケージの表示を変更して販売を続けている。

引用終わり

 販売を続けている???

飲料大手のキリンが、なんと恥知らずなと思ったしだいです。

 

  このところの大企業の不祥事は目に余るものがあります。この企業はおとり潰しにする以外ないと思われるほどひどい最近の例を上げます。

日刊工業新聞9月5日「日野自動車製造停止」から引用します。

日野自動車のエンジン不正問題の影響が、トラックの国内販売台数に大きく表れてきた。8月の普通トラック(積載量4トン以上の大型・中型トラック)の国内販売台数は、前年同月比69・1%減と大きく下落した。日野自は8月22日までにトラックほぼ全車種の国内出荷を停止。トラックを販売できない事態に陥っている。長期化することで物流への悪影響が懸念されている。 2021年に普通トラックの国内販売台数で4割近いシェアを握った日野自が窮地に立たされている。トラック業界関係者がまとめた、8月の販売台数は大型が同73・9%減、中型が同62・1%減だった。日野自のエンジン性能試験の不正をめぐっては、対象車が拡大している。3月、データ偽装が4機種で見つかり、型式指定を取り消す処分を受けた。8月には外部の特別調査委員会の調べで、生産する13機種でも不正が判明。中大型トラックなどの出荷を止めた。残る小型エンジンも国土交通省の立ち入り検査で不正が発覚。同月、小型トラックの出荷も停止した。」

引用終わり

 

  ほぼすべての車種で製造停止とは、驚く以外ありません。会社ぐるみの悪事を長期にわたり製品全体に行っていたとは、あきれてものが言えません。おとり潰しの理由をご理解いただけると思います。そして昨日、9月9日遂に国交省は日野自動車に「是正命令」を出しました。昨日の時事通信を引用します。

「日野自動車によるエンジン試験不正問題で、国土交通省は9日、同社に道路運送車両法に基づく是正命令を出した。また、新たに4機種のエンジン生産に必要な型式指定を取り消すことを決めた。是正命令は、相次いで発覚した自動車メーカーによる完成検査不正を受け、2019年の同法改正で導入された。適用されるのは初めて。」

引用終わり

 

  そもそも日野自動車はトヨタの連結子会社です。いったい親会社のトヨタはなにをしているのでしょうか。

  こうした不正は日本では圧倒的に強いブランドネームである三菱系の企業、三菱電機や三菱自動車でも起きています。

日経ニュース21年9月 三菱電機不正

2021年6月に長崎製作所で、鉄道車両用の空調設備などについての検査不正が明らかになったのを皮切りに、さまざまな不正の事実が明るみに出た。なかには20年、30年続いていた不正もあり、「不正の連鎖」は常態化していた

三菱電機は29日、鉄道車両向け空調装置の一部機種で「不適切な検査」を行っていたと明らかにした。製造を担う長崎製作所(長崎県時津町)で架空の検査データを顧客に報告するなどしており、不適切な検査は1980年代から30年以上続いていた疑いがある。

この不正の根は深く、なんとシステム上に不正をさせるプログラムがあることまで発覚している。

東急など鉄道各社が、車両のブレーキ設備を点検する。三菱電機がブレーキに使う空気圧縮機で不適切な検査をしていたことが発覚し、国土交通省が1日までに鉄道会社に対して一斉点検を要請した。三菱電機は「安全性に問題はない」と説明するが、不適切検査の全体像は依然判明せず、今後の対応について鉄道各社が頭を悩ませている。

引用終わり

  30年以上の不正とは、あきれるばかりです。

  また同じく三菱ブランドの三菱自動車も多数の不正がありすぎるので、燃費不正問題の例だけ取り上げます。しかも以下は三菱自動車のHPからの引用です。

引用

燃費不正問題の概要

  1. 内容

車両の燃費値測定試験において、当社は長年にわたり以下のような不正な取扱いを行っていました。当社は、これらの事実を真摯に受け止めるとともに、会社全体に関わる重大な問題として認識しております。

(1)法規で定められた惰行法※1によらない走行抵抗※2の測定

遅くとも1991年12月頃から、ほぼすべての車種について、法規で定められた惰行法※1を用いて走行抵抗※2を測定せず、さらに測定期日や場所などについて事実と異なる記載をして、型式指定審査を受けていた。

(2)走行抵抗※2の恣意的な改ざんおよび机上計算

遅くとも2005年12月頃から、燃費目標を達成するために、実測値、あるいは合理的根拠のある数値を用いることなく、恣意的に走行抵抗※2を引き下げて使用していた。さらに、過去の実測値をもとに、仕様の変更等に合わせて机上計算した数値を補正して、型式指定審査※3の際の走行抵抗※2として使用していた。

(3)eKワゴン/eKスペースに関する走行抵抗※2の恣意的な算出と引き下げ

2013年6月以降発売のeKワゴン(カスタム類別含む)、eKスペース、eKスペース カスタムは、いずれも燃費目標を達成するため、走行抵抗※2の恣意的な算出と引き下げを次第にエスカレートさせた。

(4)不正発覚後の走行抵抗※2再測定の際にも、測定方法の趣旨に反する取扱いがあった。

燃費不正問題が明らかになった後の再測定においても、国の確認試験と同様の方法を行わなかった。

(5)(1)~(4)に対して自浄作用が働かず、「測定現場における法令遵守意識の欠如と、経営陣のチェックの欠如」により、1991年から25年にわたりその是正を行えなかった。

 引用終わり

 もう一度申し上げますが、これはHP上の文章です。おいおい、どうなっているんだ、としか言いようがありません。

 次は東レです。これまた30年以上前からの不正です。 NHKニュース22年4月12日を引用します。

「製造している樹脂製品で第三者機関の認証を不正に取得していた問題をめぐり、弁護士でつくる調査委員会がまとめた報告書を公表しました。30年以上前から不正が行われていたと指摘しています。

東レは、家電製品や自動車などに使われている樹脂製品で、燃えにくさに関する第三者機関の認証を得る際、製品とは別のサンプル品を提出し、基準を満たしているように見せかける不正を行っていました。
この問題について、会社は22年4月12日、原因について調査を行った弁護士による調査委員会の報告書を公表しました。それによりますと、不正な対応は30年以上前から繰り返され、認証を取得した410の品種のうち122の品種で不正が確認されました。

引用終わり

 

東レはカーボン繊維では世界最大のシェアーを持つグローバル企業です。それがこの不始末とは、いったいどうなっているのでしょう。

 

これ以外にもいくらでも日本の製造業の不祥事があり、いずれも会社ぐるみの不正ばかりです。これでは「世界に冠たる製造業」どころではなく、「世界に冠たる不祥事のデパート」に成り下がっています。この投稿をお読みになった方の中には、多くの製造業出身の方がいらっしゃると思います。どのような感想を持たれるでしょうか。

 

  こうしてみると円安も単なる金融市場だけの問題ではなく、株式会社ニッポンの劣化問題が集約されているのかもしれません。

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円安、値上がり、円安、値上がり、そしてまた円安、値上がり

2022年06月08日 | 日本経済コメント

  円安が再び高進し始めましたね。どこまでいくのか、心配されている方もいらっしゃると思います。というのも、円安による物価上昇が常態化してきているからです。

  毎日のようにメーカーから値上げのアナウンスがあり、例えば6月1日の値上げは数千品目に及ぶというようなニュースが流れています。しかもそれが最初ではなく、最後でもなさそうです。こんなことは数十年ぶりです。

  総務省が5月20日に発表した4月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く指数が前年同月比2.1%上昇しました。食品も含めた我々の実感に近い総合物価は2.5%もの上昇です。消費増税の影響があった15年3月の2.2%上昇以来、7年ぶりに2%を超えました。クロちゃん、よかったですね、おめでとうございます。

  もともと為替レートとは関係のない資源高で電気代やガソリン価格などエネルギー関連が大きく上昇、流通コストの上昇もプラスされました。それに円安がさらに拍車をかけることになります。そればかりではなく、愚かなロシアのウクライナ侵攻による原材料高で食料品の値上がりに拍車がかかっています。

  私は月の半分くらいは、キャットシッターをしている家内の代わりに買い物に行きますので、ものの値段には敏感です。幸いにも我が家は「Everyday Low Price」のOKストアの旗艦店まで歩いて5分で行けるため毎日がバーゲンセールですが、そうでないところにお住まいの方はさぞ大変でしょう。

  昨日のニュースでは安い衣料の代表格であるユニクロが、度を超える値上げを宣言しました。秋からフリースは1,990円が2,990円と50%もの値上げ、ダウンジャケットも50%、極暖肌着も同様の値上げ予定です。この値上げ率、赤字でもないユニクロにしては上げ過ぎに思えます。私はこれがすんなり受け入れられるとは思いません。これからはワークマン・プラスなどとしっかり比べないといけませんね。

  日銀は2%をインフレの目標としてかかげていますので、4月の2%上昇にとりあえず満足かと思いきや、まだまだというコメントを出しています。日銀の思惑は、物価がこのペースで安定して上がると、企業収益の拡大や賃上げにつながり、経済が活性化する好循環が生まれるというものです。そのため必死に金利上昇を抑え込み、それが過剰な円安を招き消費者を逆に苦しめています。

  そんな中でクロちゃんから一般人の理解を超えた発言が飛び出しました。6月6日の発言ですが、「家計の値上げ許容度が高まっている」というものです。ところが批判が沸騰すると翌日の国会の財政金融委員会では「必ずしも適切な言い方ではなかった」と翻し、さらにその後は謝罪にまで追い込まれました。一般人の我々は収入も伸びない中での物価上昇など安易に受け入れる気にはなれません。

  しかしクロちゃんが謝罪してもメーカーや小売り側の値上げ攻勢は収まりそうもありません。日本の消費者がすぐ買いだめに走る心情を持っているのと同様、メーカーもここぞとばかり横並び値上げに走っていると思われます。いつも「みんなで渡れば怖くない」がニッポン人の標語です(笑)。

 

  一方、私が不安に思うのは、現在の円安は決して現在の物価上昇に反映されていないという現実です。為替変動を含む原材料価格の変動が実際の小売価格に反映されるには時間がかかるのです。

  最も早く原料値上がりが小売価格に反映されるのは、ガソリンです。原油は実際には輸送、精製などのプロセスを経て最低でも約1か月後に消費者の元に届きます。しかしそれを見越した元売りが早めに卸売価格を変動させます。

  ではその他の原材料と小売価格の変動の時差はどの程度か。総務省のスタディーによると、一般的時差は6か月から9か月だとのこと。ということは、このところの円安は今後少なくとも半年を経て本格値上げとなります。

  ではドル円レートを振り返ります。21年4月~10月は概ね110円近辺でした。その後11月から2月半ばまで115円程度となり、2月24日のロシア侵攻を境にさらに130円へと一気に円安が進みました。

  ということは、最近の値上げは原材料価格上昇に加えて過去の110円から115円への円安を反映していて、このところの円安の小売価格への反映はこれからだということです。ユニクロが秋冬物の値上げを宣言したのも、それを見越したアドバルーンなのでしょう。

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日銀包囲網

2016年08月10日 | 日本経済コメント

  それにしても暑い。きっと「こんなに暑い日は外に出ず、オリンピックでも見ていろ」ということなんでしょうが、お仕事のある方はそうはいきませんよね。

  おとといは5時前に起きて、男子の体操団体競技を見ました。目をこすりながら順位を見ると、えっ、サイテー。やっぱり予選の通りかと思いました。ところがコーヒーを準備して飲むころから日本チームはどんどん順位を上げ、あと二つを残して1位に立つという驚きの追い上げ。観戦に力が入ってきて、着地が成功するたびについつい選手と一緒にガッツポーズをしてしまいました。

   「金メダル、オメデトウー!」

   私のブログも遂に200万アクセスを超えました。最初の100万アクセスには3年9か月かかりましたが、次の100万アクセスは約半分の1年8か月で達成することができました。みなさまのご支援のたまものと、大感謝いたします。今後も最低限、このペースが守れるように努力いたします。みなさまからのご支援をお願いします。

 

  さて、今回は日本です。日銀に包囲網が築かれつつあるようです。凶暴なるクロちゃんも、今年に入ってからは手を打つたびに市場から逆襲され、さすがに打つ手がないことがバレつつあります。いったいいつまでファイティング・ポーズを取り続けるのでしょうか。残念ながら彼は進むことも引くこともできず、最後は弁慶のような立ち往生以外に道はないと私は思っています。

  マイナス金利を導入して以来、経済団体のトップ金融関係者、そして学者・研究者などからも日銀に対する批判の声が大きくなってきています。そうした意見は政権内部日銀内部でも出ていることが、漏れ伝わってくるまでに至りました。

  そして今朝のニュースでは個人もマイナス金利の恐ろしさを感じマインドが委縮しているとのこと。マネックス証券による最近のアンケートによると、去年より消費を抑えている人が昨年同時期の4倍にも上っているとのこと。批判の声を上げているのは著名な有力者や団体だけでなく、声なき個人や中小企業も日銀のマイナス金利に悪影響を受け、ネガティブな反応を示しているという報道がなされていました。

  一方、当のマスコミでも日銀批判が次第に顕在化しつつあります。どちらかと言えば大政翼賛会寄りの日経ですが、8月7日朝刊トップ記事のタイトルは「ほころぶ鉄の三角形」で、政府・日銀・銀行間に築かれた鉄のトライアングルが崩れてきていることを記事にしていました。

   根本原因は黒田日銀総裁の「2年、2倍、2%」の宣言通りにことが進まないからですが、今回の批判のきっかけは1月のマイナス金利導入宣言以降、これまでとは逆に株式や為替相場が言うことを聞かなくなったこと、そして銀行収益が悪化したことです。さらに銀行界からの反発を象徴しているのが三菱UFJ銀行による国債入札プライマリー・ディーラー返上です。

  記事には三菱UFJ側の返上理由が詳しく述べられています。かいつまんで述べますと、三菱は会計士から「マイナス金利の国債を引き受けてはすぐ日銀に売却し損失を回避しているが、すぐに売るというのは短期保有であり、長期保有の会計処理とは異なる処理をする必要がある」。つまり保有国債の値洗いをする必要があると指摘されたのです。

  国債を償還まで保有するのであれば、途中の相場変動は会計上無視できますが、短期保有だと金利が上昇すると評価損を計上しなくてはいけないのです。だからといって、マイナス金利の国債を償還まで保有することは損失が確定してしまうため絶対にできません。

  プライマリー・ディーラーであるかぎり強制的にマイナス金利の国債を買わなくてはならず、一方では会計上損失を計上する可能性が生じる。その板挟みで出した結論が「資格返上」というごくまともな反応でした。

  会計処理は三菱UFJだけでなく、他のメガバンクを含め銀行一般に言えることで、今後こうした動きが他行でも出る可能性があります。

  この三菱UFJに対し財務省は猛反発して、日経記事の小見出しには財務省側のコメントとして「入札資格返上は裏切りだ」とまで書かれています。

  アベノミクスを金融面で支えてきた政府・日銀・メガバンクの運命共同体とも言うべき「鉄のトライアングル」にほころびが生じたというのが記事の主旨です。

  もちろんそのとおりですが、私は三菱UFJはすでに数年前から生き残りをかけたポートフォリオの見直しをしていたため、今に始まったことではないとみています。彼らは長期国債の金利が低金利になり始めたころから、国債のポートフォリオを残存期間が短いものにシフトしてきました。短期化ということは国債の信用力に疑義を感じ価格の暴落に備えていたということです。

  もちろんこうした自己防衛の動きは他行にも見られることです。別の報道によれば、みずほやりそなは、保有国債の3分の1を4-6月の3か月間で売却したとのこと。貸し出しや証券業務の収益力に自信のある比較的大手の銀行は国債から距離を置き始め、国債以外に大きな収益源のない地銀などは国債と心中を決め込んでいるというのが現状です。

  その国債も少なくとも金利がプラスでないと、すべての銀行にとり新規保有する意味はありません。経済性だけでなく、ガバナンスの観点からもマイナス金利国債の保有は株主に説明がつかないものになっています。しかし国に頼る以外に道のない地銀などはどうするのでしょう。

  最近、地方にお住まいで商売をされている方からひどい話をうかがいましたので、警告の意味でそれを書いておきます。その方の会社の税理士から聞いたそうですが、「地銀がもうけを確保するために、中小企業に株式などのファンドに投資するための資金を融資している」というのです。融資でもうけ、ファンドの販売手数料でもうける、一粒で2度おいしい商売です。

   しかし顧客にリスクの高い商品を借り入れで買わせるということは、結局相場が崩れると自分にはねかえることになります。バブル時代の二の舞です。80年代の終わりころには、中小企業だけでなく個人に対しても、株式投資やワラント債投資というとてつもない高リスク商品の投資用に、都銀が融資をすることがはやりました。

  日銀がマイナス金利などと言う無理な政策を押し進めると、大手銀行からは見放され、地銀はとんでもない融資にのめりこむことになり、意図したデフレの克服などには一切つながりません。マイナス金利は国債に頼るゆうちょ、かんぽや民間の生損保などの収益も直撃します。

  日銀は7月末の決定会合でETFの買い入れ額倍増という追加緩和策を発表しました。しかし直後に為替は円高に大きく振れ、肝心の債券相場は日銀の意図に反して暴落し、市場関係者は肝を冷やしています。今度からは日銀の決定会合ごとにカラウリをしておいて儲けましょう(笑)。

  一方政府はそれと同時期に公称28兆円規模の経済対策を発表しています。それらに対する海外メディアなどの主な反応をお知らせしておきます。まず政府の経済対策については、

ブルームバーグ;日本政府の対策は「Just the same old thing」 単なる使い古した策だ。真水は4分の1以下しかない

ロイター;90年代から行われ続けた政府の経済対策の真水と公称分をしっかり示し、「これまで続けてダメなものは今後もダメ」

  そして日銀の追加策に関しては、

ブルームバーグ;日銀の黒田氏は「はだかの王様だ」

日経;市場は追加策に国債の暴落で応えた。日経センターが行った計算によると、日銀が16年一年間で買うマイナス金利の国債の損失が10兆円になるとのこと。そのツケはいずれ国民に回ると指摘している。

  日銀は今回の発表の中で、9月の政策会合で現在の緩和策の「総合的な検証」を行うと表明しました。日銀包囲網が敷かれている中でのこの発表が、様々な思惑を呼んでいます。

  日銀を巡る話題については、「ヘリマネ」に関する話題とともに、アメリカシリーズの後にじっくり書いてゆくつもりです。

 

  明日は初めての「山の日」ですね。みなさんはすでに夏休みをお取りですか。それとも山の日やお盆にかけてでしょうか。うちは今年は夏の間に長い旅行はしません。以前お知らせしたとおり家内がキャット・シッターという仕事を始め、夏が一番の書き入れ時のためです。

  私自身は自分の頭を休め読書をするために、すこしばかりブログの更新をスローダウンさせます。どうかご承知おきください。

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