ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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オリンピックと株価

2013年09月28日 | 2013年からの資産運用
先日の予告どおり、オリンピックと株価が今回のテーマです。

 アベチャンが政権を取ってから、いろいろな局面で良好な循環が始まっているようです。オリンピックの東京招致成功もその一つでしょう。オリンピック開催をアベノミクス第4の矢にするというのも当然のこととうなずけます。

良好な循環は決して「運」がもたらしたというわけではなく、彼の政策や行動が時宜を得ていることが大きな理由だと思います。今回のNY訪問でも国連のほか、NY証券取引所やハドソン研究所でアベノミクスに関する演説を行いました。もっともアメリカのメディアでほとんど報道がなかったというオマケもついていますが。

 では数字ヲタクの私が過去を例に「オリンピックと株価」を単純に比較分析してみます。比較する対象は64年の東京オリンピック、最近では北京、先進国の例として12年のロンドン、そして新興国代表であるブラジルのケースを取り上げ、価格変動を比較します。比較はオリンピックの開催決定時点、開催時点、1年後の時点、そして顕著なピークとボトムとします。

 初めは前回64年の東京です。これは経済評論家の西野武彦氏が日付まで詳しく調べていますので、氏の文章から引用します。

        決定時点   ピーク   開催時点   開催後ボトム
東京64年  59年5月  61年7月    64年10月    65年7月
         786円     1,829円     1,206     1,020

 前回の場合は高度成長期でもあり、新幹線や首都高速建設などの大型公共投資をともなったため、バブル景気の状態となりました。株価は59年の開催決定後2年の61年7月に決定時の2倍程度でピークを付け、開催時にはピークからすでに2割下落、その後65年7月にピーク時より半分近く安くなり、いわゆる「いってこい」の状態となりました。このボトムが「昭和40年不況」です。記憶に残っている方もいらっしゃるかもしれません。山一証券が破綻し日銀から特融を受け、それをきっかけに政府は戦後初めて国債を発行しテコ入れに乗り出しました。

 次は北京、ロンドン、そしてブラジルのリオですが、開催決定日などが特定できないので、9月とし株価のレベルを表示します。

 まず中国はどうだったか。

        決定時点  ボトム   ピーク    開催時   ボトム2   現時点
北京08年 01年9月 05年11月 07年10月  08年8月  08年10月  13年9月                  2,065     1,100    5,954     2,400   1,728    2,160


 中国の株式相場(上海コンポジット)は日本より激しい瞬間湯沸かし器型バブルでした。決定時点でおよそ2,000だった指数がオリンピックの開催3年前には逆に半分の1,000になってしまい、それが開催前年07年10月に超ピークの約6,000と6倍になり、そのわずか1年後、つまりオリンピックが終わって2カ月後の08年10月にはピークの3分の1以下に下落して決定時点以下の1,728となりました。そして現在は2,160と依然として低迷中です。


 次は先進国でしかも老大国というイメージの英国、ロンドン(FT100指数)ではどうだったでしょう。

         決定時点  ピーク   ボトム    開催時     現時点
ロンドン12年 05年9月 07年10月  09年3月    12年8月  13年9月
           5,500     6,700    3,900    5,700    6,500


 開催決定からピークまでは22%上昇、リーマンショックで09年3月にピークから42%下落、開催時には決定時と同レベルに戻し、現時点は開催よりさらに14%上昇です。決定時点から振り返ると、東京よりマイルドな上昇、しかしリーマンショックで大きく下落、そこから立ち直り開催時には決定時を回復し、1年後である現状は若干の上昇です。

 最後は新興国イメージの強いブラジルです。

       決定時点  ピーク    ボトム   現時点
リオ16年  09年9月  10年11月  11年3月   13年9月
        60,500      72,000    52,000   53,700


 ブラジルはオリンピックのほか、次のサッカー・ワールド・カップも開催します。その割には09年の決定時から10年のピークまでわずか20%の上昇、そこから11年のボトムまで28%の下落。そして現時点でも開催決定時より11%下落したレベルのまま低迷と意外な展開です。その前に日本のバブルのような超ピークでもあって低迷しているのかともうしますと、そうでもないのです。オリンピックと関係なく08年5月に史上最高値をつけそれが72,593と10年のピークとほぼ同じレベルなのです。同じ新興国でも中国の熱狂相場とはたいした違いがあります。

 さて、こうして見てくると、オリンピックが株価に与える効果というのは、どうも単純にいいことばかりではなさそうです。ブラジルの開催はまだ先とはいえ、何故か共通するのは「開催決定後にピークを付け、開催時にはむしろ低迷期に入る」。株価の実体経済先取り機能の面目躍如という感があります。

 もちろん株価は国の発展ステージに相当程度左右されますから、日本の60年代、中国の00年代、英国とブラジルの10年代を横に並べるのは無理があるのですが、それでも共通項を探すと若干見えてくるものがありそうです。

 では次の東京のケースはどうなるのか?

それはみなさんの予想にお任せし、私は予想はよそうと思っています(笑)。
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FRBのサプライズ

2013年09月23日 | ニュース・コメント
  旅行に行く前のブログでは、次回は「オリンピックの影響について書きます」と申し上げていました。忘れてはいませんよ。しかしこのところ次期FRB議長の人選問題と先週のFOMCの結果がサプライズとなっていますので、今日はそのことについて私のコメントを書くことにします。

  まず彷徨さんからこの2つの点に質問というか、私の趣味の一環として(笑)予想のリクエストをいただき、私は以下のように回答しました。

>私はこうしたことにあまり確たる予想はしないのですが、FRBの出口へのステップは始まると思っています。今回なくても次回には。

>次期議長候補はサマーズだと新聞辞令が出ていますが、まあそんなところかと思う程度です。イエレンかサマーズか、エコノミストや報道は騒ぎ立てますが、経済・金融市場の客観情勢からすると、いずれが議長になってもそれ程違う政策などないと思うからです。


いい加減な回答ですみません。

  先週から今週初めの相場はそれらを材料に多少忙しく動きました。しかしNYダウでいえば先週の初めと終わりではレベルはほとんど一緒です。「FOMCで緩和が先送りされた」のニュースに一応歓迎の反応は示したものの、週末にはその分くらい下げて、元の黙阿弥に戻っています。
  米国債10年物金利は先週初めが2.8%台だったものが若干買われて2.7%になり一応敬意を表していますが、1週間での変化として0.1%は大きな変化とは言えません。
  円ドルの為替も多少上下はありましたが結局99円台であまり変化していません。日本株だけは400円程度上昇していますが、NYの週末の下げを見て本日月曜日が休みですので、火曜日はどうなるか。

  とまあ、こうしたニュースは瞬間的には「サプライズ」となり各相場は反応するものの、長い目で見るとファンダメンタルズに本格的に影響があるわけではないため「行ってこい」になるケースが多いのです。

今回の場合長い目で見るということは、

・議長が誰であれ、政策の裁量余地は大きくない

・FOMCもいずれは緩和を縮小する


というような長期的視野に立つことを指します。

  株屋さん達はエコノミストを含めて株価が動く材料探しに余念がないため、こうしたイベントを大きな材料として騒ぎ立てるのです。そして予想がはずれると批判を始めます。「バーナンキは市場との対話がなってない。5月に出口を考えると言ったじゃないか」といった具合です。彼は5月に出口について触れていますが、9月と言ったのは株屋さんと報道です。私にはこうした批判も、むなしい言い訳にしか聞こえません。

  私がいたソロモンブラザーズという投資銀行には、80年代に金利の神様と言われたアナリストがいました。ヘンリー・カウフマンという人です。その人の金利予想はかなり当たって、当時は「神のご託宣」とまで言われました。その時代、ソロモンの米国債トレーダーは莫大な利益を上げ続けたのです。

  当局はそれに目を付けて、「きっとトレーダーはあらかじめカウフマンからご託宣を聞きこんで先回りしているに違いない」と見込み、捜査に入りました。しかし結果はシロ。何故だかわかりますか?

  トレーダーは相場の正反対を行ったのです。つまりカウフマンが上がると言って相場が上がったらそこで逆張りをして売り、下がると言って下がったらそこで買う。決して相場の先を行ったのではなく、相場の行き過ぎだけを読んで逆張りをして儲けていたのです。

  もちろんこうした戦法はいつでも通用する戦法ではなく、本格的に大きな転換点となる場合には通用しないかもしれません。大きな転換点とはやはりファンダメンタルズに大きな変化がある場合でしょう。

  みなさんも是非株屋さんたちの出す雑音に振り回されず、じっくりと長い目で相場を見るようにしてみてください。
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クラブ選手権の結果です

2013年09月16日 | 日記
きのうのクラブ選手権の結果です。マッチプレー1回戦は同世代のハンディ1の強豪と対戦。18ホールで決着せずサドンデスの「プレーオフ。20番ホールまでもつれ込み、私のバーディーで決着。やっと1回戦ボーイを脱却し、8人に残りました。ハンディ8の私がハンディ1に勝つ番狂わせ、超ウレシー!

2回戦は同日に行われ、ハンディ5の40歳バリバリのアスリート系、でもとてもナイスガイ・ゴルファーです。飛距離は平均で40ヤードくらい差があり、プロと対戦している気分、とてもかなわぬ相手でした。なんとか15番ホールまで来ましたが3ホール残して決着。

一日2ラウンドは結構こたえますね。最後はめずらしく両足がツリ気味。
でも、自分としてはとても楽しくラウンドできたことに大変満足の一日でした。

セミファイナルに残った4人はいずれも片手シングルで、誰が勝っても納得の実力者です。

きのうは台風接近で豪雨のためスタートが2時間も遅れましたが、実はスタート時から晴れてよいコンディションでした。しかも一般ゴルファーは全員キャンセルで、予選突破の16人でゴルフ場を独占し、すいすいと気分よくラウンドできるというおまけつきでした。

今日の東北地方への旅立ちは見合わせです。でも夕方になって台風が去ったらでかけるつもりです。特に今日は予定をいれていない日だったので、様子を見ながら安全第一でいきます。

以上、ご報告でした。
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株価と為替のカップリング

2013年09月12日 | 2013年からの資産運用
 株のお話しの続きです。前回の最後に私はこう書いています。

「昨年11月以来、為替が常に株価を動かしている重要な要素であることは事実だと思いますし、カップリングは今でも続いています。では、為替は何によって動いているのでしょうか。それがわかれば株価の先行きが予想できる?」

  本来、為替も株も独立した相場を作っていて、それぞれの参加者のニーズや思惑で動きますますが、同時にそれぞれが常に影響を与えあっています。今回の株と為替がここまで同じ様に動くカップリング相場は、むしろ珍しい現象と言えるかもしれません。

  たとえば非常に長期で大雑把ですが、バブルの形成時代と崩壊後、そして現状の株と為替相場を比較しますと、あまり関係がないことが見てとれます。

・バブルの形成時代     株式は一方的に高謄、為替はドル安に
・バブルの崩壊後       株式は一方的に下落、為替はさらにドル安に
・アベノミクス以降      株式は一方的に高謄、為替はドル高に


  もちろん期間にかなりの差はありますし、その他の経済環境も違うため比較するのは無理があります。しかし重要なことは、

「株価の決定要因として為替がこれほどまでに重視されることはあまりなかった」

ということです。

それをさらに踏み込んで言いますと、

「いずれはカップリングがほどけて、ドル高=株高という図式が続かなくなる可能性は大きい」と思っています。

カップリングがほどける根拠は、すでに一度みなさんに申し上げている次のことによります。

「円安で輸出産業が儲けて株高になるという今のシナリオは、いずれ輸出が本格的に増加することで貿易収支が改善すると円安は反転して円高になり、長続きはしないハズだ」というものです。

  株式のアナリストなどは、相場上昇にとって都合のよい理屈ばかりを探していますので「今の相場のテーマはこれだ」という部分にフォーカスを当て、その理屈が続かなくなると一転して次の理屈を並べます。

  株と為替、私の結論は「カップリングはいずれほどける」というもので、それぞれが今ほどお互いに影響を与えなくなり、通常の要因の影響が強くなるだろう、というものです。ですので、「為替の予想ができたとしても、株価の予想はそれだけではできなくなる」のです。

じゃ、株価はどっちに行くの?

半年くらいのレンジで見れば、PERの尺度が株価を最もよく説明するはずです。

そして、現在の日経平均PERは15.8倍で、居心地は悪くありません。

  ある方から「オリンピックの影響はどう見るの?」という質問をいただきました。私は株のアナリストではないのですが、次回はそれについて書いてみなす。

  なお、来週1週間は東北地方を旅しますので、ブログはお休みとさせていただきます。


  それに加え、実は先週の日曜日、私がメンバーになっているゴルフ場のクラブ選手権の予選があり、私は決勝進出枠の上位16名に入りました。(自慢です、笑)

  ゴルフを詳しくご存知ない方のために解説します。ゴルフの競技は通常ハンディがあって、グロススコアからハンディを引いたネットスコアで争います。年に一度ハンディなど関係ない実力だけで争う競技があります。それがクラブ選手権です。数十名の参加者のうちスコア上位16名だけが1対1のトーナメント形式で勝負するマッチプレーの本戦に進めます。今回その16名に入った、ということです。16人が8人、8人が4人と淘汰され、最後に1人の優勝者がその年の実力ナンバーワンになります。
  私にはそんな実力はないので、予選を通過するのが目標でした。せっかく通過したので、1回戦くらいは勝ってみたいと思っています。日曜日に決勝トーナメント開始です。旅行の前の日だっていうのに、もー(笑)

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日本株の先行きをどう見るか

2013年09月09日 | 2013年からの資産運用
  オリンピック、東京開催が決まりましたね。生きているうちにまた見ることができるなんて、ラッキーです。アベノミクスにも追い風になるでしょう。

  さて、今回のシリーズが始まった年初以来、私はみなさんとともにアベチャン指数を見てきました。アベチャン指数とは私が勝手に名付けた、株価の変動率と円ドルレートの変動率を並行してみているだけのものです。昨年の11月13日、解散宣言と同時に安倍氏が新政策を打ち出した時点を起点にしています。

  ちょっと指数の推移をレビューしておきましょう。( )内%は昨年11月13日対比です。 
         解散                黒田氏就任
        11月13日   2月28日       4月3日      5月8日 
日経平均  8,661円   11,559円(33%)    12,362(43%)   14,285(65%)
円レート   79円     92円 (16%)      93円 (18%)     99円 (25%)

        バーナンキ発言     安値         先週末
         5月22日        6月13日        9月6日
日経平均   15,627円(80%)    12,445円(44%)    13,860円(60%)
円レート     103円(30%)      94円(19%)       99円(25%)


  株価はバーナンキ発言寸前に15,600円台、80%高をつけたのがピークドルレートもほぼ同時に103円、30%高がピークでした。株価はその後大きく反落し6月中旬には上げた分のほぼ半分が帳消しになりました。その後は私が前回指摘した居心地のよいPER15倍近辺で推移しています。

  では為替と株価の関連性を考えてみます。私は昨年11月以来、株と為替がカップリングして動いていると申し上げてきました。それは現在でも変わりません。株価を毎日見ている方なら気が付くと思うのですが、ちょっと為替が動くと株価はそれをフォローしてほとんど並行して動いています。統計学風に言えば、「為替が株価を決める変数で、大きな決定力を持っている」となります。

  これは今回の相場の初めからそうであったのか、今一度見ておきます。上記の数値のうち2月末の上昇率%に注目すると、株価の上昇率はドルの上昇率16%の2倍程度、33%でした。ところがクロちゃんが日銀総裁に就任した4月3日あたりから、株価が為替変動の2倍を大きく超えて動き始めたのがみてとれます。暴落直前の5月22日には、株価80%、ドル30%でした。倍率は2.7倍に達していました。それが直近、先週末の倍率は2.4倍になっています。為替の影響度にも波があるようです。

  もし日本の上場会社のほとんどが輸出で食べているなら、常に為替変動が株価変動の決定要因だ、と言えるかもしれませんが、当然輸出で食べている会社ばかりではありません。

  それでも昨年11月以来、為替が常に株価を動かしている重要な要素であることは事実だと思いますし、カップリングは今でも続いています。

  では、為替は何によって動いているのでしょうか。それがわかれば株価の先行きが予想できる?

「アーー、数字ばかりで頭がハチ切れそうだよ」と声が聞こえますので、今日はこのへんまで。

  為替と株価、いくらでも追及の価値はあるのですが、次回はあまり深入りせずにまとめに入るつもりですので、しばしの我慢を(笑)
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