ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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八ヶ岳山麓の楽しみ

2015年04月30日 | 旅行

  八ヶ岳山麓への3日間ではなく、4日間の旅行から戻りました。

  今日の株式相場は大荒れですね。最近は日本株の上下動がNYに波及することが多くなっているため、ちょっと心配です。このブログをご覧のみなさんの多くは株式投資から足を洗われた方が多いので、経済指標やFRBの動きに一喜一憂することはあまりないと思います。しかしこのところアメリカ経済については第一四半期のGDPを始め弱めの指標が多いので、私なりのコメントを簡単にさせていただきます。

   経済は生き物ですから一方向はありえず、常に循環波動を繰り返します。私はいつも長期的にものを見ているため四半期の上下動にあまり反応はしません。今回の成長率は前期比年率でわずか0.2%と低成長でしたが、たとえマイナスであってもそれがリセッションの入り口だとは思いません。アメリカ経済の一番重要な数字は個人消費で、それはプラス1.9%でした。心配するほどの数字ではないと思います。

   アメリカがどれほど好調であっても、世界経済が低調であれば一国で全世界を引っ張ることはできません。アメリカ経済は構成比で言えば世界の22%程度ですので。そして一国だけ高成長を継続することもできません。世界の各国経済はより連携を強めているためです。このスローダウンは単なる短期の循環波動のため、株式市場だけが過剰に反応していますが、アメリカに不安を感じる必要は全くないというのが私のコメントです。

   この先もしアメリカの金利引き上げの時期が遅くなれば、金利上昇を期待されている方はじらされるかもしれませんが、逆にドル安が巡ってくれば円からドル転を狙っている方には朗報かもしれません。しかし為替は相手があるので、アメリカと日本の相対比較が重要です。

  Owlsさんが指摘されていたようにフィッチ・レーティングスが日本の格付けをA+から1ノッチ下げてAとしました。理由は「財政再建への懸念」です。今年度予算が史上最大予算となり、再建への意欲が全く見られないことに懸念を表明しました。フィッチ・レーティングスはムーディーズやS&Pより若干影響力は小さいものの、最近は注目度が高まっていますので侮れません。このダウングレード、日本ではわずかしか報道されず政府も無視していますが、世界の投資家の投資先の基準に一定の影響力を持っていますので、要注意です。例えば機関投資家によっては投資対象を「2社からダブルA以上を得ていること」などとしているためです。

 

  さて、旅行の話に移ります。この冬に息子とスキーで泊った八ヶ岳山麓の富士見高原にあるペンション・ラクーンを再訪しました。このペンション1,200mほどの高原にあり、私のお気に入りに登録されています。ペンションとはいえ設備やインテリアもしっかりとしているし、オーナーもとても感じがよく、そして何よりも料理が美味しいのです。比較的若いオーナーとその両親が協力しているため、余裕を持ったサービスが受けられるます。一般のペンション料金に若干のプラスで、オーベルジュ並みの料理が楽しめる、そこがお気に入りなのです。

   オーナーは料理をどこかで本格的に勉強したわけではなく、とにかく食べ歩きと創意工夫が大好きでここまで来てしまったと言っていました。フレンチ風の食事を出すのですが、四季折々新鮮な地元の食材を使い、味付けやソースなどその都度新たな工夫が加えられ楽しむことができます。食器類や料理のプレゼンテーションもなかなかのものがあります。

 

  今回の滞在中に家内と新たに試みたのはなんとパラグライダーです。パラシュートを付けて傾斜地から走って飛びあがり、空中散歩をするあのパラグライダーです。飛行機からの落下傘ではありませんよ、念のため(笑)。もちろん二人とも初めての経験なので、初心者コースに入りました。ペンションから車で3分ほどの富士見高原スキーで体験できます。先生におぶさって空中散歩をするタンデム・コースもあるのですが、我々は一人で飛び上がるコースを選びました。

  初めに健康保険証を示し「怪我をしてもすべて自己責任です」という誓約書にサインするところから始まりますので、ちょっと緊張します。実際にパラシュートを付ける前にまず5分ほどのビデオで、レッスンがどんなものかを見ることから始まります。すぐにパラシュートを持ってスキー場のゲレンデを100mほど上がったところでレッスン開始。体に背負い、両足にベルトをつけるハーネスと、パラシュートの扱いの基礎的なことを20分ほど習い、そのまま一人ずつ試験飛行に飛び立ちます。

   と言ってしまうと簡単ですが、実際も飛び立つまで20分ほどの簡単な講習でした。その日の天候は晴れで、生徒二人に先生と見習い先生の二人が付いて、懇切丁寧に教えてもらえたのがラッキーでした。

   大事なのは風を読むこと。でもこれは難しいので先生まかせです。斜面は10度ほどの穏やかな斜面でスキーでしたらなんなく滑ることができますが、なにせ空中に飛び立つので、恐がりだと足がすくんでしまう人もいるとのこと。例えていうなら、初めて自転車を習うのに平地で習うのではなく、いきなり下り傾斜で習うようなものです。実は平地で自転車を漕ぎだすよりもよほど簡単なのですが、それは後でわかること。最初は勇気がいりますよね。

   その日は丁度斜面を駆け上がる向かい風のため、絶好のコンディションでした。でもパラグライダーはとても微妙で、風速が3mから5mまでの間しかダメとのこと。微風では飛び立てないし、6mも風があるとパラシュートに体をもっていかれ後ろにひっくり返るのです。我々は初心者なので、よくテレビで見る崖から飛び降りるなんてことはできません。緩やかな斜面を駈け降りながら飛び立つのです。

   一回目の飛行は体に装着するハーネスというプロテクターを兼ねた装備品に先生が手を掛けていて、飛び上がっても離さずに一緒に走ってくれます。しかしこの生徒は大丈夫と判断されると2回目からは先生が手を離す単独飛行になります。

   その日の風は弱めだったので、飛び立つまでに風待ちがありました。そしてほどよい風だと先生が判断すると、パラシュートを付けたまま走りだし、すぐに飛びあがります。風がいいとほんの2・3歩ですぐに体が浮き上がってしまうほど簡単に飛び立て、すぐに浮遊感を味わうことができます。この浮遊感、まるで鳥になったような快感で、一度やったらやめられません。私は3度目の飛行では100mのほとんどを飛行することができ、大満足でした。家内も同じ様に恐いもの知らずのため空中浮遊を楽しむことができました。二人とも着地では一度もころぶことがなく、きれいに着地できたので、先生に褒めてもらいました。

 

  さて次の日は乗馬です。八ヶ岳山麓には日本でも有数の乗馬クラブがいくつかあるそうです。我々が行くのは八ヶ岳ロングライディングクラブと言い、馬場だけではなく高原の森の中での外乗ができるクラブで、実は今回が3度目です。森の中の乗馬はこれまた快感そのもの。東に八ヶ岳、西には南アルプスの甲斐駒ケ岳や北岳を望み、南には富士山も望める富士見高原ならではの景観の中のライディングです。

   このクラブのオーナーは日本でも有名な高取さんと言う方で、70歳で日本ロングライディング選手権で優勝をされた方です。ロングライディング競技は100kmを休みなく人馬一体で早さを競う過酷な競技ですが、それを70歳で優勝したとは驚きです。

   前の2回はその方にリードされ外乗をしたのですが、今回は若い女性の先生でした。20分ほど馬場で馬の扱いを復習。今回は並み足だけでなく、速足を練習しました。実は馬場での練習は我々が馬を扱う練習というより、馬が我々の腕前をチェックしているのだそうです(笑)。

   その日も天候は快晴で気温20度。森の中に入ると涼しさを感じ、速足で風を切るのがとても気持ちの良い日でした。2km四方ほどの森の中を、先生を先頭に3頭で並み足、速足で乗馬を1時間ほどゆっくりと楽しむことができました。

  以上、八ヶ岳山麓でのパラグライダーと乗馬の報告でした。

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ホンコン在住のバンカーの話し

2015年04月26日 | 資産運用 

  連休がスタートしましたね。みなさんは旅行など計画されていますか。私は八ヶ岳山麓に3日間だけ旅行します。お気に入りのペンションに宿泊して、のんびりと過ごします。

  さて講演会が終わったところで、10年以上ホンコンに在住し投資アドバイスをしている友人Kさんとゴルフをする機会がありました。このところの日本人の資産家の海外での動きについて教えてもらうことができましたので、その情報をみなさんにお届けします。

   私には3人ほどホンコンにいる日本人のバンカーの友人がいるのですが、その中でKさんは銀行や証券に属さず、独自の投資顧問を営んでいる方です。顧客の85%は日本人でその他は現地の中国人です。

    まずは海外で資産運用をしている日本人の一般的動向について聞きました。一問一答は以下の通りです。

Q;日本の税務当局の「海外保有資産5千万円以上の保有者は税務申告せよ」の指導で日本人の動きに変化はありましたか。

A;大きな変化はない。減るというインパクトはあまり感じない。むしろ日本のリスクを意識する人は増加していて、私の商売は順調です。

Q;日本の何がリスクと感じているのでしょう。

A;もちろん累積した財政赤字の大きさだ。どこかでおかしくなると感じているし、アベノミクスには懐疑的で、むしろリスクを大きくしていると感じている人が増えているように思う。

Q;ということは、日本人の新規口座開設は続いていますか。

A;続いている。ホンコンではかつて日本人をターゲットにツアーを組んで口座開設をしに来て、現地の大手銀行が日本人を配置してそのサポートをしていたが、最近はそうしたサービスを停止しているので、増加数は多くはない。

Q;海外での口座開設がしにくくなったといわれていますが、そうはなっていないのでしょうか。

A;一般的にはかなり困難になっている。日本語しかできないと開設は無理だが、ホンコンでは英語ができれば大きな支障はないため、相変わらず続いている。

Q;日本ではこのところ株価が上昇しているので、株式に目が行っているようですが、そちらでの投資対象はどんなものが多いのでしょう。

A;株にシフトするような変化はあまりない。多額の資産を保有している人は常に債券をメインに株式も運用していて、構成比を積極的に変化させようとする気配はあまり感じない。もともと日本のリスクを避けて比較的安全な外貨建て運用を心掛けている資産家が多いためかもしれない。

Q;中国株がかなり上昇していますが、その他の新興国ものも含めて投資動向はどうですか。

A;私の顧客は新興国ものに手を出す人はほとんどいない。私は中国が安全な投資先とは思っていないので、お薦めもしていない。

Q;債券ではどんな投資対象が多いのでしょう。

A;日本国債はなし(笑)、米国債は大いにあり。しかしイールドが低いので、社債などを織り交ぜている。個別の社債は売買がしづらいので、債券でもインデックスでの投資が多い。中には比較的安全性の高い銀行のイールドの高い劣後債を直接買うこともあるが、それはかなりの資産家。

Q;投資先の通貨は。

A;米ドルがほとんどで、かつてのようにユーロを対象にする人はいない。豪ドルは多少新規もある。高金利通貨は皆無だ。

Q;各国の租税回避防止策が本格稼働していますが、影響は。

A;ある。一番は海外での運用目的が租税回避ではなくなったこと。スイスをはじめ、オフショアなどでの運用などがしづらくなっているので、租税回避ではなくリスク回避目的での海外運用になっている。個人的にも今後租税回避は世界のどこでも無理だと感じる。

  Kさんとの一問一答はこのような感じでした。今回の話のポイントは海外での資産運用の目的が「租税回避ではなく、リスク回避に変化している」という部分です。そうした動きで突出しているのはギリシャ人で、彼の知る限りオーストラリアのメルボルンにはギリシャの大金持ちが集まって資産家コミュニティーを作っているとのこと。本当の資産家はギリシャをすでに捨て去っているようです。

  以上、ホンコン在住の友人のお話しでした。

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講演会での質疑応答

2015年04月24日 | 講演会内容15年4月15日開催

   ここまで講演会内容のサマリーを4回に分けてみなさんにご披露しました。今回は講演会に先立ちいただいていた質問、当日の質問を織り交ぜて、およその質疑応答の模様を再現してみたいと思います。

   実際の講演会に参加された参加者の方のおよその年齢構成は以下のとおりです。

70歳以上 :30人

60歳代  :17人

50歳代  :8人

30-40歳代:4人

  リタイア組、セミリタイア組の方が8割を占めています。私の話もこうした世代構成比に合わせています。

   当日の私の話の内容は講演会の概要をなぞるものではなく、私自身の生き方をサンプルにしながら、いかに「ストレスフリーの生き方」が大事かをテーマに約1時間話をさせていただきました。それをまずかいつまんで紹介させていただきます。

   ブログや著書では小難しい経済や金融の話が大半です、しかし時折お遊びの話を織り交ぜています。実は私の生き方は決して経済・金融ヲタクがすべての大真面目なものではなく、実に単純明快!

〇 一言で申し上げれば、「超楽観主義で、人生はエンジョイするもの」

   スキー・ゴルフ・旅行・アートなどを徹底して楽しんでいる

〇 そのため「ストレスの大きな資産運用などするべきではない」

 

〇 リタイアしたら「資産は増やそうなどとせず、使い切るべき」

  取らぬ狸の皮算用から開始するのではなく、まずは少しで合っても「蓄えをいつから使い始めいつ使い尽くすか」の目標を定めること。

〇 「自分で稼いだオカネを自分で使ってこそ人生をエンジョイできる」

  ほとんどの方は増やすことに頭がいってしまい、使ってエンジョイすることに気が回っていない。使わずに死んでどうする!

   リタイアすることの楽しさを味わうには、資産運用はストレスフリーの資産運用に限る。オカネはたくさんあるにこしたことはない。なければないなりに背伸びをせずに、楽しめばいい。


   ストレスフルな投資から私の唱える「ストレスフリーの資産運用」を実行された方の例を、参加されている方1名様の例を含め紹介。

例1. 参加された高齢の方

2010年夏ころに私がこの方にアドバイスを開始。それまでの株式投資、ハイイールド債投資信託などリスクの超高い資産はすべて売却し、長期の米国債をメインに、スーパーソブリン発行の豪ドル債に投資。元本は遺産にするつもりで、ご本人は元本を減らさずに金利収入を楽しむよう設計。当時は米国債や豪ドル債で5%を超えるクーポンがついていたため、毎年楽しみにされている海外旅行は金利収入だけで十分に賄え、ほかにも趣味の費用に充当。数十年来の株式投資のストレスとわずらわしさからすべて解放され、余生をエンジョイされている。

 例2学校時代の友人

退職金で主に株式での運用を開始したものの、3割程度を失っていた。10年の秋ころそれらをすべて売却し、米国債、豪ドル債、米国REITに投資。ご本人だけでなく同じ様に運用されていたお母様、お姉さまもすべて彼に習い超安全な資産運用に切り替えた。その結果これまでの損失を回復したばかりでなく、今は金利・配当収入をエンジョイされている。資産運用による損失でウツ状態になりそうだった近親者のお二人もすっかり回復し、人生を楽しまれている。

 例3.なんだかんださんを始め私のブログに漂着し(笑)、投資のトラウマから覚め、人生の考え方を大きく変えることができた方の例

 それに対する講演参加者の感想は「もっと早くそうした考えを学んでおけば、投資で損を出さずに済んだ」というものでした。実際には参加者のほとんどの方は私がサイバーサロンに投稿を始め、「米国債を買いなさい」と説き始めた10年夏ころにはそれを読んで知っていました。

  話を終えて質疑応答に移りましたが、予定の30分を超えて45分ほど熱心な質疑応答が行われました。まず参加された皆様に対し、私から何点か質問をさせていただきましたが、特筆すべきものは、

1.私が4年半前にお薦めした米国債などへ実際に投資された方;わずか6名

   比率はたったの10%でしたが、これは予想の範囲。

2.アベノミクスが成功すると考えている方;なんとゼロ

   これは予想外の少なさです。

    ほとんどのみなさんが普段から私の投稿の熱心な読者の方々のため、アベノミクスに懐疑的になった可能性は大いにありますが、友人の薦めで当日急きょ参加された方も何名がいらして、その方々も同様にアベノミクスには懐疑的でした。

   あらかじめいただいていた質問を含め主な質疑応答を以下に記します。

       

Q財政バブル崩壊の前兆としてのシグナルは何になると思われますか。日本国債のCDSあるいは国債入札の不調になってくるのでしょうか?

 A;入札の不調については日銀の買いが継続しているため、可能性は薄い。日銀は入札価格よりちょっと上の価格を常に提示して、入札者が必ず儲かる仕組みをつくっているため不調は回避される。

CDSは大いにありえる。それと同時並行で格付け会社のダウングレードや国際的な銀行監督機関による自国債のリスク認定があり得る。他にもきっかけになりうる事象はたくさんる。例えばヘッジファンドの大量売り、経常赤字と円安の昂進=インフレ昂進による金利高騰、日銀の出口戦略実施、財政再建プランがダメと認識された時、株価暴落、東日本大震災を超える天変地異など。

しかし私が本当にこれがきっかけになる可能性があると思うのは「アベノミクスが成功したと思われる時」です。逆説的ですが日本のバブル崩壊、アメリカのITバブルやサブプライム崩壊を思い起こせばわかるように、『これでもう大丈夫、新しいパラダイムに移行したのだ』と慢心した瞬間から大崩壊は始まるのです。


Q私は団塊世代以降の現役ですが最低限安全なドルというのは何か目安がございますか? 例えば、生活費の10ヶ月分など各人資産状況は違うと思いますが、資産アロケーションとして、どれくらいドルに回すことが良いのでしょうか?

 A;有り金全部です。私はいつも極端なことをお薦めしています。それは金融資産のうち「当座必要な資金を除く全部をドルにしなさい」という考えです。何故ならいくら大胆にドルにシフトしろと言っても、みなさんが言うことを聞かないからです(笑)。円が対ドルで本格的に下落を始めると、非常に短時間で暴落局面となってしまう可能性が高いため、徐々にドルシフトというわけにはいかなくなる可能性が強いと思います。例えば石油価格の暴落に苦しむロシアのルーブルは昨年4月に1ドル35ルーブル程度でした。長く30台を続けた後10月中旬に40ルーブルになって上昇しはじめたかと思いきや、約2カ月後は68ルーブルと半分に暴落しています。


Q企業経営をしているのですが、現預金についてドルに回すことも検討した方がいいでしょうか?

A;私は中小企業のコンサルタントをしていて「企業の資産防衛」に関して数多くのアドバイスをしてきました。日本経営合理化協会からそれに関するCDが発売されています。企業は個人と違い相手があります。例えばドルへのシフトは銀行などから為替の投機と誤認されてしまうため、防衛だと言っても銀行は聞く耳持たずのケースが多いと思います。それでも自由になる資金があれば、かなりの割合を米国債購入に充てることをお薦めします。借金をしてのドルへの投資は避けるべきですし、その名目では銀行は貸してくれません。

Q物価上昇はスローダウンし、ほとんどゼロになっています。林さんも2%のインフレには疑問を呈されています。しかし一方でハイパーインフレの可能性を示唆されていますが、その両者の関係がよくわかりません。

A日銀の政策が思惑通りワークしないでオカネはブタ積みになっており、物価上昇率は今後もゼロ近辺だろうと申し上げています。一方将来起こりうるハイパーインフレは、日銀が信頼を失った結果起こる全く別の事象です。2%のインフレの延長線上の話ではありません。

Qドル円レートの見通しは

A;私には為替を的確に見通す力はありません。ただ日本が貿易収支で黒字を作り出す力が弱っていることと、みなさんが円のリスクに次第に目覚めていくため、円高に大きく振れることはほぼないとみています。それに日本政府・日銀も円安をひたすら念じています。将来、政府日銀が信認を失えば大幅な円安に振れることがあるとみています。

Q米ドルの優位性は良く理解できます。外貨運用として豪ドル、スイスフラン、カナダドルの展望はどのようにお考えでしょうか。

A4年前に資産運用についてシリーズで書いた時から、豪ドルはお薦めしていました。しかし2年前から新規の豪ドルへの投資はストップ、すでに投資済みの豪ドルは継続すべしとしています。理由は中国のスローダウンを主な要因とする資源価格の低下です。カナダドルは米ドルの子供ですので、あまり分散の意味がありません。スイスフランは悪くないのですが、4年前の時点ですでに超低金利だったことと、投資対象がなく流動性にも欠けるのでお薦めする対象ではないという意見でした。今も同様で、マイナス金利のためおすすめしません。

Q;林さんが、いま日銀総裁に就任したとしたら直ちにどのような施策を行いますか。勿論、日本銀行が政治からの独立性を維持したとして。

A;日本国債を爆食する前ならまだしも、あんなに国債を抱えてしまった銀行の総裁就任は拒否します(笑)。黒田氏の就任タイミングであれば、白川氏の政策の継続程度で、安倍政権のやり方には徹底抗戦し、財政の立て直しを主張します。いまのタイミングで私が就任し「国債の爆食を停止する」と言えば、金利上昇で日本は即死でしょう。もう手の付けようがありませんので、やはり辞退ですね。

Q;では一体、日本はどうすべきなのでしょう?

A以前ドイツと日本をアリとキリギリスにたとえました。あとしばらくでギリシャの件が決着すると思いますが、あの国は「ギリギリス」として騒いでいますが、しょせんアリンコのドイツの軍門に下るでしょう。日本もアリンコになる道を選択すべきです。そしてアリンコとして今後は真の「解放経済、規制緩和、国際化」の道を歩むのです。これは中国ではなく日本がどうすべきかの話ですよ、念のため(爆)。人口の減少していく国内だけを相手にしていてはいけない。TPPで政府が言う「国益」とは「業界益」であって、決して国民の益ではありません。

質疑応答の概要は以上です。

1時間45分の講演を終えて、ブッフェスタイルの懇親会に移りました。1時間半ほどの懇親会間、私は多くの参加者の方から個別に様々な質問やコメントを受けてお話ををしました。ほとんどの方が資産運用の講演会で「オカネは使うもんだ」と言われたのは初めてで、とても晴れ晴れとした顔をされて「これからは人生をエンジョイすることにしました」と語っていらっしゃいました。

以上です


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林の講演会の内容 4 資産防衛はどうすべきか

2015年04月21日 | 講演会内容15年4月15日開催

   講演会の内容の配布資料は長文ですが、今回の4回目で終わりです。最初に申し上げましたが、これはあらかじめ配布された資料で、これに対して参加者のみなさんから質問を受け付けました。実際の講演会ではこの内容をなぞることはしていません。どのような話をしたのか、またどうような質疑応答があったのか、次回お話しします。


(4)資産防衛はどうすべきか: 「防衛の必要性と手段」

  私がかつてサイバーサロンで推奨し、私の著書のタイトルにもなった「証券会社の売りたがらない米国債を買え」は依然として有効な資産防衛手段である。アベノミクスの失敗に備えるということは、日本の財政破綻に備えることで、それは「インフレと円安」に備えることである。日銀はすでに後戻りのできない政策に踏み出し、その先に待つと予想される事態は、以下のとおり。

日本財政破綻のシナリオ

 シナリオ1.日銀による財政ファイナンスが国の信用を崩壊させる

・財政の赤字を支えてきた家計の金融資産の増加は、日本人の貯蓄率の高さによっていただが、団塊の世代のリタイアで貯蓄率はマイナスに転じた。近い将来団塊の世代の貯蓄取り崩しが増大し、金融資産は減少に転じる恐れあり

・日本国債は借換を含め毎年160-170兆円発行されるが、その買い手は日銀と政府系金融機関しかなくなる。返済のあてのない国債を買うことが日銀を頂点とする国の信用構造を崩壊に追い込む。自己増殖バブルの自壊

 シナリオ2.円安による預貯金の枯渇ルート

・これまで円高神話に支えられ外貨資産に手を出さなかった家計や生保を始めとする金融機関などが、長期的円安を意識し円リスクのヘッジに走る

・日銀の円安誘導が昂進することで預貯金は取り崩され、国債引受の原資は日銀の爆買い以外枯渇する

 シナリオの1と2は相互作用も伴い、同時進行する可能性が大きくなってきている。

「極度の円安は大きな物価上昇を招き、日銀の国債爆買いによる信用秩序の崩壊は金利の急上昇を招き、財政破綻につながる」

 資産防衛とは、「円資産には大きなリスクがあることを認識しておくことが第一歩」

 

<資産防衛の具体的方法>

 

世の中にオイシイ儲け話などない=証券会社に騙されないこと

株式による運用は長期的成長見込みがある場合以外は避けるべし

 我々が資産を防衛するには

 「円に替えて世界で最も安全な通貨ドルを保有すること」

 ドル建て資産でリターンを確実に得るには、世界で最も安全な資産「米国債を保有する」こと。著書でお薦めしたその他の投資対象であるバークシャー・ハサウェー株と米国REITは、長期方針であれば新規の投資も可であるが、豪ドル債は新規の投資は避けるべき。

 サイバーサロンでの私の解説や著書での方法論をまとめると、以下のとおり

 1.初めに自分の資産内容を評価する。不動産、金融資産、擬似国債である年金、擬似社債である給与など、将来の見込み額を含めて集計する

2.上記合計金額のほとんどが円建てのため、円という通貨のリスクを過剰に抱えていることを理解する

3.一般的には金融資産の理想的なポートフォリオ上の外貨建て資産比率は3分の1程度と言われる。上記の手法で計算し直すと金融資産の3分の1を外貨で保有しても、外貨比率は実にわずかな割合でしかないことに気づくはず

4.対処は金融資産のうち当面必要な円資金を除きほとんどを外貨建て資産にして、円のリスクを防衛すべし

5.外貨でもリスクの低い米ドルへの集中がお薦め。かつてリストに載せた代替手段の豪ドルは13年春以降、「既存の投資は保有を継続し、新規投資は控えるべし」としている。その後豪ドルは円に対してはさらに豪ドル高が進んだが、米ドル高のほうがより昂進している

 

世代別のお薦め投資

 70歳以上の方へ

新規の資産運用は避けるべき。せいぜい円の暴落リスクに備えるため米ドルに替えておくことまで。その場合は預金保険の対象外であるドル預金ではなく、投資口座に分別保管され銀行のリスクからは独立しているドル建てMMFがお薦め。すでに投資済みのドル建て資産、豪ドル建て資産は保有を継続すべし

 中間世代の方へ

米ドル建て資産の中で一番安全なのは米国債。2010年10月、サロンでお薦めした時点で長期債を購入していると、この3年半でリターンは約2倍。ある程度リスクを取って高いリターンを求める方にはウォーレン・バフェット氏の経営する投資会社バークシャー・ハサウェー株米国REIT株式をお薦めしていたが、両者ともお薦めした時点と比較するとやはりほぼ2倍のリターンになっている。豪ドルの債券は1.5倍余りのリターンになっているが、すでに保有されている方は継続し、新規投資は避けるべし。

 若い方へ

資産は長期の米国債を中心にして、リスクを取るつもりのある方はバークシャー・ハサウェー株米国REITを分散保有すべし

 若い方のうち

持家のない方;超長期のローンを組んで返済を長引かせ、来るべきインフレに備えるべし。35年ローンが1%台で借りられるのは夢のような好条件である。不動産購入の対象は人に貸せる便利なロケーションと地震に強い地域限定で考えること。期限前返済など一切せず、余裕資金はドルに替えるべし。その間にドル金利が上昇したら、米国債に投資。日本に本格的インフレが来ればローン残高は実質的に目減りし、何割かは公然と踏み倒したも同然。インフレが来なくともローンが低金利のため、返済額と賃料はさほど変わらないはず。資産が残るだけ得。

 持家のある方;低い金利のローンであれば返済を急ぐことはせず、余裕資金はドルに替えインフレ・円安に備えるべし


 <最後に>

 私の提唱する資産運用は、著書の最後や私のブログのタイトルにもあるように、超安全な債券にのみ投資をする「ストレスフリーの資産運用」です。このことはサロンで連載を始めた2010年夏時点、著書の出版された11年8月時点、そして現時点でも一貫して変わりません。

 これまで日本で行われた資産運用とは株式投資主体で、どれもが極めて高いリスクを取ってリターンを求める方法で、ハイリスク・ハイリターンと言われるものでした。最近はそれにプラスして超ハイリスクの外貨建てハイイールド債(実はジャンクボンド)が加わっています。しかしハイリスクをとってもハイリターンなどにはならず、マイナスリターンになって泣きを見るが関の山でした。そのため投資をすればするほど毎日の価格変動によってストレスを溜め、折角の楽しいはずのリタイア生活が苦しみの連続となっていた方が多く、中には投資鬱と言えそうな方が見受けられました。

 債券投資は投資をしたら最後まで持ち切ることで利益は確定していて、日々の価格変動は一切無視できます。特に安全な米国債であれば為替以外のリスクはほとんどありません。そのため老後には最適で、たとえ金利の低い現状のレベルからの投資でも、それによって得られる安心感は何物にも替え難いものがあります。

 私の提唱する「ストレスフリーの資産運用」を実行され、投資のストレスから解放されたある方から感謝の言葉をいただきましたので、最後にまとめの代わりに引用させていただきます。

 (注)なんだかんださんから昨年9月にいただいたコメントの引用です

引用

林さんのご本に謳われている「ストレスフリーの資産運用」に幸運にも出会えて、人生の過ごし方が本当に変わりました。決して大げさな言い回しでなく、「お金の心配」に向けられていた意識が毎日の生活の中で見つける細やかなりとも豊かな「幸せ」にちゃんと向くようになり、生き方も幸福度も本当にアップしました。

  20余年の投資人生は、訳もわからず証券会社の担当者と私の欲の二人三脚で、一瞬儲かったらすぐに大損。すると担当者はすげ替えられ、損は損切りで気持ちを無理やり整理するさんざんな結果でした。
  若い頃は投資=リスク=利益と思って、私の中の欲に押されて、自分で理論的にも数値的にも理解できもしない投資先に無謀にお金を向けていました。もっと早く林さんに出会えていたら、ストレスフリーで違った時間の過ごし方が出来たと思います。

   今はおかげさまで私の欲も小さくなり、残存寿命と持っているお金の帳尻さえ合えばそれでいいし、長い田舎暮らしで少しずつ創ってきた快適で安心な環境の中で暮らしを楽しむことが嬉しくて、そこにはもうお金に苦しむ私はいません。今はこの国の愚かな治世者やいつ来るとも知れないまさかの天変地異に対して、増やすのではなく、今あるお金を守るべく運用したい。それには米国債が一番と思っています。私は林さんに本当に助けて頂きました。心から感謝いたします。

 引用終わり

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講演内容 3.アベノミクス3本の矢のゆくへ: 「もう一度バブルが欲しいですか」

2015年04月18日 | 講演会内容15年4月15日開催

(3)アベノミクス、3本の矢のゆくえ: 「もう一度バブルが欲しいですか」

   財政的には敗戦濃厚な日本をバクチ的な政策で一発逆転させようと打った手がアベノミクス。アベノミクスのどこがバクチなのか、なぜ私が批判的なのかをまず解説します。

   内閣府のホーム・ページに行くと概要が掲示されています。その内容は、

「安倍内閣は、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、

・大胆な金融政策

・機動的な財政政策

・民間投資を喚起する成長戦略

を「三本の矢」として、一体的に取り組んでいます。

一本目の矢;大胆な金融政策によりデフレマインドを払拭。日銀は2年をめどに物価上昇率2%を達成

二本目の矢;有効需要を創出し持続的成長に貢献する分野に重点を置き、成長戦略へ橋渡し

三本目の矢;民間需要を持続的に生みだし、経済を力強い成長軌道にのせる。投資によって生産性を高め、雇用や報酬という果実を広く国民に浸透させる

   以上が内閣府による説明です。すでに丸2年を経過したアベノミクスだが評価すべき点もある。それが私の言う「でかしたアベチャン」部分で、まずでかした部分からレビューすると、

・大企業を中心とした経済界、証券会社を含む金融界がアベノミクスを手放しで絶賛

・当初は政府・日銀の気合いで踊らされた海外投資家により株高と円安を実現

・その後は企業業績が回復、国内投資家も参加し裏付けのある株価上昇につながった

・国民の中では金持ちもその気になって支持している

・大企業が中心となり賃上げが実行され、雇用環境も改善している

 

  しかしアベノミクス下の昨年1年間を冷静に数字で振り返ると日本経済はどうなっているか。

 1.日本経済成長率・・・14年のGDP成長率は実質マイナス0.01%

最も大切なこの1点を見ても「経済は回復基調にある」という政府発表とは大きな差があり、2年目に至っても実際には全く成長していない。この原因は円安にもかかわらず輸出が増えないこと、GDPの6割を占める個人消費が不調なことによる。中小企業を中心に地方では賃金は上昇せず、賃上げの前に物価上昇と増税があったため消費は冷えたまま。アメリカと違い、ガソリン価格の引き下げインパクトは小さい。輸出は円安によりある程度回復しても、海外生産が国内に大きく回帰することはない。海外市場で伸びている企業は現地生産により為替リスクをうまく回避している。国内に回帰しても雇用の確保すらできない。

  今後の日本経済は労働者数の減少から潜在成長率がゼロに近いため、大きな伸びは見込めない。財政再建シナリオのベースになっている実質2%、名目3%成長はとても無理。


 2.物価上昇率・・・2月のコアの物価指数は前年比0.0%(消費増税分除き)

日銀の黒田総裁は今年4月までの2年間で+2%を実現すると言い切った。それが達成できればデフレは克服され好景気になり、みんな幸せになれるはずと政府も言っている。そして黒田総裁は「デフレは克服されつつある」といまだに言い続けているが、実は昨年1月のプラス1.3%以来、月を追うごとに上昇率は低下し続け、本年1月のコア指数前年比は0%となった。エコノミストの多数派の見通しでは3月までに物価はマイナスになる可能性があり、目標の2% にはほど遠い。当初から私が指摘したように、日銀が資金供給をしても世の中にオカネは回らず、ほとんどが日銀の当座預金に「ブタ積」みされている。

 そもそも物価が上昇すればみんな幸せと言うのは、それ以上に収入が伸びている時だけの話で、現実は収入が増えない中での物価上昇が先行したため、大企業の社員以外の国民はどんどん窮乏化しつつある。今後続々と予定されている食料品などの値上がりが心配。これが林の指摘する「アベノミクスは不幸の連鎖」だという理由。


 3.株価は昨年1年で7%上昇・・・しかし円安でドルベースではマイナス6%

日経平均株価は13年末の16,291円から14年末の17,450円へ1年で7.1%上昇した。円安傾向と企業の収益力向上が株価を後押ししている。しかし取引の3分の2を占める海外投資家の動向を見ると、楽観はできない。おととし13年1年間の海外投資家の買い越し額は15兆円で、それが株価を5割以上押し上げた。それが昨年1年の買い越し額はわずか8千億円と大幅に減少。海外投資家はドル建てで株価を評価しているので、ドルベースで株価を見ると実は日経平均は年間を通してマイナス6%だった。これが海外投資家の行動に影響している。今後は円安=株高という図式にはならない可能性大。

15年に入り株価は上昇基調を続け、3月中旬に一万9千円台を回復した。GPIF(年金運用機構)やゆうちょ、簡保など、政府関係機関による日本国債から株式へのシフトといういわば官製相場の色彩もある。官製相場は先に指摘したバブルの自己増殖の典型であり、要注意。PERで17倍を超えている現在のレベルは過熱気味で危険水域に入りつつあると見える。

今後予定されている3本目の矢は、13年5月に公表した内容が不評で株価が大暴落したため非常に慎重になっている。再度発表してもたいした内容にならないことは容易に想像がつく。その発表時点がアベノミクス相場の終焉となる可能性があると見ている。

 

 4. 為替レートはドルに対して1年でマイナス13.7%

13年末のレート105.36が14年末には119.79となり、14%もの円安となった。政府・日銀・財界は喜んでいるが、自分の資産が国際標準のドルベースで見ると14%も目減りしている。おかげで前項の日経平均も円ベースで7%上昇しても、ドルベースではマイナス6%に終わった。円安は個人の円資産をドルベースで引き直すと大きく目減りさせた。個人も永遠の円高神話の呪縛から抜けつつあり、円の保有リスクに目覚め初めている。

 

5.財政再建に対する取り組みは零点

成長率の低さから消費増税は先送りされ、その一方で歳出の抑制は何も手つかず。それどころか、2本目の矢として機動的に使うという名目の元、14年度中も3兆円以上の補正予算を組み、15年度も史上最大の予算をすでに国会が承認し、赤字解消に取り組む気配はない。国債金利の人為的抑制が財政のタガを緩め、日銀の黒田総裁までもが放漫財政に苦言を呈するほどになっている。しかし苦言を呈する前に自分が国債の爆買いをやめて、警鐘を鳴らすべき。本来金利は実態経済の温度計として様々なシグナルを送るはずであるが、日銀の国債爆買いにより日本経済は体温計を失ったため、突然死に備える必要がある。現在進行中の過大債務国ギリシャの行方をよく見ておくことが、今後の日本を見る上での参考となる。

 

6.政府と日銀の同床異夢

増税見送りの当然の帰結として昨年11月に格付け会社ムーディーズが日本国債をダウングレードし、日本の格付けは中国や韓国を下回った。また日本国債を大量に抱えるメガバンクも一蓮托生でダウングレードされた。こうした格下げは今後も続く可能性が高い。2月には黒田日銀総裁が経済財政諮問会議で、日本国債の将来的なリスクについて言及したが、オフレコとして議事要旨から削除されていた。削除された内容とは、

「国際的銀行監督組織で国債をリスク資産とみなし、銀行への規制を強化する議論が始まっている」。日本国債の格下げに絡み、「安全資産とされている日本国債も持っていることでリスクになり得る」。「財政について信認が失われれば、国債の価格、あるいは金利に影響が出る恐れがある。リスクがあることは事実でありまして、であるからこそ政府は財政再建目標を決め、それに向けて着実に前進しておられると思う」。

  日銀は2%の物価上昇が不可能であることがわかると、次なる緩和策を打つ可能性があると言われるが、財政問題を意識し始めると打つ手などどこにもない。

 

まとめ

  アベノミクスとは気合い中心の精神論である。当初目標は、「資産バブルを再現しそれをテコに経済の再生を果たすつもり」だったが、実態はここまでゼロ成長に終わった。資産バブルの再現は不可能だし、成功すればバブルの崩壊が待つという矛盾を抱えている。財政再建に目をつぶったバラマキ的金融・財政政策のツケは、いままでのツケをさらに拡大させることになる。競馬で言えば負けが混んだ最終レースでの大バクチである。

 

  経済成長率がマイナスで物価も思惑通り上昇していないのに、政府・日銀はこの結果でも「経済は回復基調にある」という大本営発表を繰り返している。その中で昨年11月には残り2%の消費増税を見送った。 増税を見送ったということは、経済運営がうまくいっていない何よりの証拠。しかしアベチャンは「この道しかない」という強弁を続けている。2年やってダメなものは今後続けてもダメ。

  債務の増殖を止めるのに本来打つべき手は、痛みを伴う緊縮財政と増税。それをせずに累積債務地獄から脱出できた国など歴史上ない。

  政府はその取るべき道を取らずにさらなる財政出動を繰り返し、日銀は赤字国債の引受で国家債務の膨張を手助けしている。かれらの目論見は資産バブルを再現させて不況の脱出を計ろうという愚かな目論見。

 

 我々国民は官の暴走を横目に自己防衛をしっかりとすべきである。

コメント (9)
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