ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ドル円相場と米国債金利

2022年08月27日 | 米国債への投資

  8月26 日金曜日、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演がよほど効いたとみえ、NYダウは1千ドル安になりました。きっと週明け月曜日の日経平均も影響を受けるでしょう。

  毎年夏に行われるアメリカの地区連銀主催によるシンポジウムですが、世界の金融界の耳目を集めます。実は去年パウエル議長はこの講演でミソをつけています。どういうことか。

  その当時すでにアメリカのインフレ率は5%台と、ここ10年ほど2%にすらのせることのなかった数字はトレンドを大きく上抜け、5.4%に達していました。しかし彼はその数字を「一時的だ」と言い放ち、放置したのです。その後もインフレ率はじりじりと上昇を続け、ロシアがウクライナに進行する直前の1月に7.5%に達してしまいました。つまりこのところのインフレはロシアのせいばかりではないのです。

  そこにきてあの悪魔皇帝プーチンに追い打ちを食らい、物価はさらに急上昇しました。あわてたFRBはリーマンショック後下げ続けていた政策金利をこの3月に久々に上げたのです。通常であれば市場がショックを受けないよう月ごとに0.25%ずつ程度上げていくところを、倍の0.5%としました。しかし後の祭り。その次の利上げもまた0.5%としましたがインフレは全く収まらず、遂にその後は1回で0.75%を2回も続けたのです。それでもインフレ率は6月には9.1%とこの数十年なかった数字に達してしまいました。この後追い利上げはパウエル氏の信任を損なう結果となりました。

  そこで今回、パウエル氏は金曜日の講演で、「成長鈍化などの痛みを伴ったとしても、インフレが抑制されるまで金融引き締めが必要」という超タカ派の見解を示しました。成長鈍化は雇用の悪化を招く可能性がりますが、それをもいとわずという強い言葉です。その結果がダウの千ドル安につながったのです。

 

  このところ為替や金利のアナリスト達はかなりしんどい夏を過ごしていることと思います。一時の円安高進が7月に140円寸前で収まり、つい最近までアナリスト達は「円安はピークを打った、今後は120円台への円高方向だ」と言っていたのですが、あっという間にまた137円台まで円安になってしまいました。

  米国債金利もしかり。年初までしばらく1%台だった10年物金利ですが、ロシアの侵略によるインフレで一時3.5%程度まで高進しました。そこで私が買いサインを出したのですが、それから間もなく3%を切り2.6%程度に戻ってしまいました。しかし現時点でまた3%台に戻しています。

  その間にアナリスト達は、「FRBは足元と秋以降の景気動向が弱そうだと見て政策金利引き上げ幅を縮小し、年内には利下げに転じる可能性すらある」とまで言っていました。ところが昨日のパウエル氏の発言ですっかり見通しが狂い、苦しい言い訳を始めることでしょう。お気の毒様です。

 

  為替も金利も的確な予想は実に難しいですね。ではこんなに為替も金利も大きく動く時期、米国債投資を考えている方はどうしたらよいのでしょうか。ドルが安くなったらドルを少しずつ買い進み、金利が高くなるまでは債券への投資は待つ。金利が高くなった時期に少しずつ投資するという以外に適切な方法はありません。金利が高い時はドルも高く、円から直接米国債には投資しづらいので、2段構えが必要なのです。

 

  そんな中、低金利であえぐ日本では、債券投資の世界でひどいことが起っています。多くのみなさんはご存じないと思いますし、関心もあまりないでしょう。しかしこの問題は日本の金融機関のリスクを顕在化させる大きな問題でもあるので、要注意です。

  8月25日付の日経新聞の記事をかいつまんで紹介します。

見出し;高リスク仕組債 総点検

小見出し;相次ぐ苦情受け金融庁・監視委員会 販売実態 立ち入り確認

内容の主な点は、「有力地銀などが傘下の証券子会社を使って企業や個人の富裕層向けに儲けの大きな仕組債を販売。地銀の中には利益の8割を仕組債販売で上げているところもある」というものです。そして投資家によってはわずか3か月で投資額の8割を失った例もあるというのですから驚きです。

 

  そもそも仕組債そのものを根本的に理解するのはシロウトでは100%無理です。これは90年代に仕組債で食べてきた私が言い切るのですから、間違いありません。

  銀行・証券会社は顧客に、商品内容のリスクを明確にすることが義務付けられています。それをやっていたら、まさか3か月で投資金額の8割を失う商品を薦めないし、買わないでしょうから十分な説明はしていないと思われます。私のいた投資銀行ではリスクを取るプロの投資家のみを相手にしていましたので、この記事の内容とは異なることを申し添えておきます。日本の銀行証券は儲け優先で説明を怠るので、危うい商品の販売で利益を上げているのです。

  私からみなさんへのアドバイスはたった一つ、「君子、危うきに近寄らず」です。

  もし私の著書をお持ちの方がいらっしゃれば、P.166にある「これだけは許せない!買ってはいけないEB債」の箇所を読み返してみてください。あくどい仕組債の例を挙げています。

 

   しかし一方、この記事を書いた日経新聞にも噛みついておく必要があります。その理由は、何故銀行証券が危ない商品を作り顧客がそれに食らいつくのかの分析がないからです。その理由はたった一つ。

  超低金利を続ける、「クロちゃん、あんたが悪いからだ!」

以上

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元宣伝部員の述懐

2022年08月19日 | ニュース・コメント

  オリンピックのスポンサー契約を巡りD社の元役員T氏の所業をTVなどのマスコミがこぞって取り上げて非難していますね。

  実は民放TV関係者にとってあの人物こそ、にっくき仇なのですから、ここぞたばかりに痛打を浴びせているのです。何故にっくき仇なのか。それはD社がTVメディア広告シェアー4割を有し圧倒的なため、腹立たしい存在なのです。常日頃スポンサーを見つけてくるD社はTV局にとりオールマイティーで文句ひとつ言えない相手。コマーシャル・フィルムの制作からタレントの起用、宣伝露出の頻度から番組選択まで、常に言いなりと言ってよいほど牛耳られています。なかでも大事なビッグ・スポーツ・イベントを牛耳っているT氏こそ、いつかは仕返ししたい相手に違いない。

  私にとって彼は別ににっくき仇ではありませんが、ああいう人物は社会悪を代表する一人だと思っているので、この際マスコミの尻馬に乗ることにします(笑)。

 

  もう時効なのでD社にかかわる私の実体験を包み隠さずお話し、その手練手管をご披露します。最初にD社と仕事で関係を持ったのは30歳代半ば、86年のことです。私はJALの本社で路線計画を作っていましたがある日突然部長に呼ばれ、「君、NYに転勤しないか」と言われました。その部長を含め本社の中枢にいる営業本部出身のお偉いさんたちにNYの米国本社経験者が多く、NYの面白い話を聞かされていたので、一度は駐在してみたい場所NO.1でしたから、もちろん二つ返事で「はい、行きます」。ポジションは全米のセールス&プロモーションの責任者だと言われ、面白そうだなと思いました。

  するとわずか1週間後から2か月間、本社の宣伝部で修行をすることになりました。宣伝事業は航空事業とは別世界なので、一から教育してくれるのです。同時に最大の宣伝広告エイジェンシーであるD社と大手印刷会社でも様々な教育をしてもらうことになると言われました。仕事を離れて教育してもらうなんて、最高ですよね。しかしこれもD社にとっては美味しい教育活動なのです。

 

  本社の宣伝部に赴任すると初日から、「今晩はD社があいさつしたいというから、あけておいてね」といわれたのですが、それこそがD社の魔の手、その一でした。その日の夜連れて行かれたのは金田中(かねたなか)しんばしという高級料亭でした。

  JALからは宣伝部長と私。先方はJAL担当の役員に、全米を統括する役員が出張で来ているとのことでやはり二人。後で知ったのですが金田中はバブル当時の銀座でもとびきり高級な接待場所の一つでした。

  食事のあとはお決まりの高級クラブ。終わって帰るD社差し回しのハイヤーの中で宣伝部長から言われたのは、「こんな接待を受けたことは誰にも話すなよ」の一言。そうか、宣伝部っておいしい部署なんだとつくづく思ったのを思い出します。

 

  当時のJALは宣伝広告費では御三家と言われていて、資生堂、サントリーの2社と肩を並べていました。D社にはさぞかし美味しいクライアントだったのでしょう。その上当時の資生堂やサントリーと違い、海外拠点でも大きな宣伝費を使っていましたから余計です。中南米も含めた米州地区支配人室に赴任する私が札束に見えたのかもしれません(笑)。

 

  D社を含めた広告宣伝の教育を終えてNYに赴任すると、そこでも待っていたのはやはりD社の接待でした。初日からD社NYのオフィスで教育を受け始め、夜はマンハッタンで一番のステーキハウスに連れて行ってもらい、これぞNYという食事を堪能。

  しかしそのあたりから用心深い私は、あまりいい気にならないほうがよいだろう、と自戒しながら仕事を開始することになりました。もっとも私には一つ得意技があります。それはアルコールがダメなこと。飲めない人間はアルコールの臭いを嗅がされても、ノコノコ付いていくことはしないのです(笑)。それが結果的にはD社への最大の防御になったと思っています。

 

  広告代理店の担当者、アカウントエグゼクティブの一番の仕事は接待で、クライアントを接待漬けにして、思うがままに手繰るのがメインの仕事なのです。きっと現在収監中のT氏もその技に長け、クライアントと内外のオリンピック関係者を手繰っていたに違いない。そして裏金もしっかりと受けていたのでしょう。でなければサラリーマンがいくら出世したとしても運転手付きのベンツのマイバッハに乗れるはずはない。報道では車に乗り降りするT氏の様子が映し出されますが、特徴的なあのマイバッハのマークを私は見逃しませんでした。なにせロールスロイスを押しのける世界一の高級車、1億円はくだらない車なのですから。

  そもそもD社が何故大きなスポーツイベントを牛耳ることができるのか、不思議ですよね。一つはT氏のような手練手管を持つ有力者の存在、もう一つはTVを中心としたマスメディア支配力、そして驚くほどの裏金作りの技だと思います。招致活動には政府から支出できない巨額の裏金が動くことは関係者間で周知の事実ですが、それをひねり出す裏ワザこそD社の力の源泉なのでしょう。

  TVの放映枠を日本で一番抑えているのはD社、次がH社ですが、その差は埋めがたいほど大きく、シェアーでいうとD社37%、H社は19%、あとは細かい数字が並ぶだけで、1社独占にも近い存在なのです。上記の数字は公正取引委員会が調査した16年の実績で、ちょっと古いのですが、ほかに適当な調査が見当たりませんでした。

  ネットが普及を始めた頃、これでD社独占の世界も切り崩されるに違いないと言われました。しかしいまだにTVは大きなメディアで、ネット広告費が19年になってやっとTVを抜き去り、20年の広告費シェアーではTV27%に対し、ネット36%と、差が急拡大しています。

 

  従って、D社の力の源泉もだいぶ浸食されてきてはいますが、スポーツのビッグイベントでは依然として大きな力を持っていると思われます。特にオリンピック、そしてサッカーやラグビーのワールドカップを見るのはTVがメインですから、その世界での独占的地位は動かしがたいものがあります。招致活動にビッグマネーが飛び交い、スポンサー料も大金が動く。その利権のおこぼれにあずかる輩は今後いくらでも出てきそうです。むしろ今回のスキャンダルや過労死問題などでのイメージ悪化が今後はボディーブローとして効いてくるに違いないと私は思っています。

 

「奢れる者久しからず」

以上、元宣伝部員の述懐でした。

でも、「この話、誰にもするなよ」(笑)

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プーチンの落日

2022年08月11日 | ロシアのウクライナ侵攻

  日本ではウクライナ侵攻のニュースが、統一教会と「統一教会隠蔽失敗内閣(笑)」の組閣ニュースにかき消されあまり報道されなくなっています。しかし決して見逃すことのできないとんでもないことを悪魔皇帝プーチンは実行していますので、ちょっと叩いておきましょう。

 

  その第一は欧州最大のザポリージャ原発に対するロシア軍の攻撃と占拠です。双方がお互いの戦闘行為をテロだと主張はしているものの、大事故になれば大きな影響を受けるのは100%ウクライナだし、そもそも攻撃はロシアから始まっています。

  原発への攻撃は国際法に照らし明確に違反する犯罪行為で、3月4日に国連でロシアに対する非難決議がありました。侵略者が原発を盾にしているため、ウクライナは侵略者を排除せざるを得ません。核兵器使用の可能性で脅す行為を含め、原発の脅威をカードとして使っているロシアのプーチンは明確な戦争犯罪人です。

 

  第二はあまり報道されていませんが、ロシアによるウクライナの文化遺産破壊行為です。これについても「占領地のロシア化を目指した動きである」とユネスコは非難声明を出しています。ユネスコが確認した文化遺産破壊行為は178施設に及び、そのうち宗教施設が4割を占めています。ウクライナの文化相はそれらの周辺には軍事施設などなく、ひたすらウクライナ文化の破壊を目指していると非難しています。民族浄化と同レベルのとんでもない行為です。

 

  もう一つ、ウクライナ発祥の「ボルシチ」スープを巡るロシアとウクライナの争いがあります。7月にユネスコがウクライナの伝統料理としてボルシチを無形文化遺産として登録したそうです。私はボルシチをロシアの料理だと思っていましたが、実はウクライナの伝統料理でした。それすらロシアは奪おうとしています。

 

  どれをとっても悪魔の所業という以外ありません。

 

  では本題「プーチンの落日」に戻ります。

  8月10日付日経新聞のOPINIONページに「落日のエネルギー大国ロシア」という記事がありました。質の高い論評だと思われるので、簡単に内容を紹介します。

 

サマリー引用

  プーチンは「ロシア経済を崩壊させる欧米の試みは失敗した」と言っているが、その裏付けとなる石油・LNGの高価格が続くとは限らない。すでに制裁により輸出量は大きく減少している。そのため逆に国際価格は高騰し、政府の収入を潤している。しかし石油の国際価格はロシアの侵攻後バレル当たり130ドルを付けたがそこでピークを打ち、現在は90ドル前後まで下落し前年秋冬と同レベルに至っている。

  もともとロシア産石油は硫黄分が多くディスカウントされていたが、今後は西側諸国が輸入をしなくなり長期的にロシアは相手にされなくなる可能性が高い。原油生産はそもそもロシアに必ずしも頼らずに済む。サハリン2の原油生産量は平常時日糧22万バレルだったが、6月はたった1万バレルに落ち込んだ。それでも世界の自動車は動き続けている。

  LNGも平時には100万BTUあたり2~5ドルだったものが侵攻後一時80ドル。それが最近は20~40ドルで推移。最も大きな影響を受けている欧州がEU全体で消費量の15%セーブを決めた。代替エネルギーへの転換を進めるため、今後はロシアのLNG収入も減少に転ずる可能性が高い。

サマリー引用終わり

 

  そもそもロシア政府の歳入の4割から5割は天然資源収入に依存しています。そのためエネルギー価格の変動が財政収支に直結します。もともとロシアの財政収支はおよそ均衡していましたが、侵略戦争を開始して以降悪化の一途をたどっています。政府支出は今年1〜4月に前年同期比25%増加しましたが、それ以降はヤバくなったためか、データの公表を取りやめてしまいました。4月については国防費の急増により財政収支は-2,600億ルーブル超と、月次ベースで初めて赤字に転じたことを発表しています。シルアノフ財務相は5月の政府会合で、2022年は財政赤字がGDP比で2%に達するとの見通しを示しました。しかし実際にはそれ以上に財政は悪化する可能性があります。国際通貨基金(IMF)の見通しによれば、2021年にGDP比で+0.7%とほぼ均衡していたロシア政府の財政収支は、2022年には-4.0%、2023年には-5.3%と急速に悪化すると予想しています。

 

  財政悪化はプーチンによる国民統制の大きな障害になりうると私は見ています。何故ならロシア自身も物価上昇や西側による制裁の影響を受け、たとえば物価手当ともいうべきバラマキ政策を行っているからで、それが収入減により継続できなくなるからです。どんな政策が実施されているか、7月14日リリースのNRI(野村総研)の分析を引用します。

 

引用

1日8.8億ドル程度とも見積もられる戦費のもと財政環境が急速に悪化する中、ロシア政府は子どものいる家庭への現金支給や最低賃金引き上げなどを通じて、国民生活を支援し、政権やウクライナ侵攻への支持を維持しようとしている。

プーチン大統領は「市民とその所得を支える、より効果的なメカニズムを作り出す」として、今までに様々な刺激策を推進してきた。政府は最低賃金を10%引き上げたほか、年金支給額を2度にわたって合計で20%近く増額している。また、子どものいる家庭、妊婦、公務員などにも給付を行っている。

さらにロシア政府は、先進国からの制裁措置によって打撃を受けた企業への支援も強化している。ロシア統計局によると、5月の製造業生産は2か月連続で減少した。特に、自動車生産台数は前年比で3分の1強の水準にまで落ち込んでいる。

政府による企業支援は、資金支援、補助金付き融資、倒産回避策など、様々な形で行われている。航空会社に対しては政府が収入減分を補てんしている。ロシア連邦航空局は「この措置により、国内航空会社の旅客数は昨年の水準に保たれている」と説明している。

引用終わり

 

  こうしたバラマキは独裁政権の専売特許ですね。製造業の悪化は当然雇用の減少につながるに違いない。こうした無理な補助金政策の半分近くは資源収入によるため、価格の下落は大打撃となる。カネの切れ目が運の切れ目。今後欧州が対ロシア政策でどこまで頑張れるかが、カギを握ると思われます。

  かつてメルケルのもと、ドイツは国民のほぼ総意で原発全廃に向け舵を切りました。しかしLNG供給を絞られたことで、最近の調査ではなんと国民の80%が原発再稼働に賛成を表明しています。すでに戦時体制に移行したかのようです。

 

  日本も悪魔皇帝プーチンを引きずりおろすには、対ロシア政策の手綱をしっかりと締め続ける必要があると思います。統一教会なんぞに振り回されているヒマはありませんぞ。

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愚かなる救急体制に物申す

2022年08月05日 | ニュース・コメント

  毎日のコロナニュースを聞いていると、実に愚かな救急体制に驚かされます。救急隊員が救急車で駆けつけても、「100か所の病院に電話をかけたが1つも空きがなかった」などと言っている隊員が本当に気の毒です。そして毎日救急隊から何十件という電話を受ける病院側も気の毒です。この問題は、簡単に解決できます。

  電話は1本かければ済む体制をネットで構築するのです。難しいことではありません。すべての119番コールは集中コントロールセンターで受けています。そこが各消防署に振り分けています。その前に、救急病院から毎日空き病床の数の報告をオンラインアプリで受けておくのです。その情報は空きが出るたび、あるいは逆に空きがなくなったという情報を逐一アップデートする。救急センターがその情報を隊員のアプリでも見られるようにする。

  救急病院はシステムも人手もある病院ですから、そのアプリさえタブレットでもスマホでも入れておけば日々のアップデート作業は簡単にできるハズです。そうすれば病院は毎日何十件もかかってくる救急隊員の悲鳴から解放され、電話回線も余裕が出て、病院に電話がつながらないという患者からの悲鳴も軽減できるでしょう。

 

  消防の集中制御側は空きが出た病院の情報をアプリ上で自動的にアップデートできますし、救急隊員はそのアプリを見れば、空きのある最も近い病院に1回電話すればすぐ出発できる。また空きがなければそれなりの処置に集中できます。例えば患者の酸素濃度が低下していたら、ボンベと吸入装置を渡すなどである程度の救命処置はできるでしょう。

  このアプリの導入により患者の家族は100回も119番にかけることはなくなり、コロナ以外で例えば交通事故で大量出血している方の救助や、溺れて心肺停止状態の人の救助など、別のケースにもスムーズに対応できるハズです。電話回線がガラ空きになるのですから。

  

  私でも思いつく簡単なシステムすら導入できないのは、すべての関係者がデジタル音痴だからに違いない。もちろん救急体制の詳細など一切知らない素人が思いついた方法ですから抜けがあるかもしれません。その場合はその抜けを埋めれば済む。

 

  この話をある方にしたところ、以下の注意点があると指摘を受けました。アプリの運用上、最近のKDDIの不始末を踏まえ、3大キャリアにローミング可能なシステムとし、一つのキャリアがダメでも別のキャリアにすぐ切り替えられるようにする。これはアプリ側ではなく、キャリア側の問題かもしれません

 

  もしITアプリ関係のベンチャー経営者、あるいはエンジニアの方がこの提言をご覧になっていたら、是非早急にアプリを作り提供を始めていただきたいと思います。

 

  ところでコロナのワクチン接種が開始されて早々、私が「65歳以上の接種は電話で希望など聞かず、一方的にアサインをすればよい。ダメな場合だけ電話しろと書いておけば、電話が通じないとか回線が混みあってアクセスできないとかの不都合はなくなるはず。きっと65歳以上の人にとってワクチン接種こそ最重要事項なので、ほかのすべてのスケジュールを変更しても、指定日に黙って来るはずだ」と提案しました。私が参加していて高齢者の多いサイバーサロンですらお一人も「そんなことはダメだ」という方はいませんでした。私のブログでも毎日数千人の閲覧者がいますが反対者は皆無で、むしろ賛成の声があがりました。

 

  しかしいかんせん影響力の乏しい林敬一の声は、政府自治体には届かず、ほんの一握りのいなかの自治体が導入したに留まりました。先日私の所に来た4回目の接種案内でも世田谷区の案内は初回同様で、電話とネットのサイト経由の申し込みのみ。ネットなんぞ知らん、というお年寄りには極めて不便なままでした。

 

  今から悲観的になってもしかたないのですが、愚かな国の愚かなデジタル行政を早く正してほしいものです。存在感のないデジタル庁は何やってるの?

  病院、救急隊が可哀そうだし、患者はもっと可哀そうです。

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全英女子オープン開催のミュアフィールド訪問記

2022年08月03日 | ゴルフ

  先週、7月31日に終わった女子プロゴルフで、古江彩佳選手がスコティッシュ・オープンでの優勝を飾りました。最終日はボギーなしの10アンダーというとてつもないスコアでした。「アメリカツアー初優勝」というタイトルが飛び交っていますが、元々はスコットランドの女子オープン選手権で、アメリカツアーに組み込まれたものです。

  古江彩佳は2000年生まれの有望選手で、日本の女子ツアーでも抜群の成績を残していて、2020・21年の統合シーズンで6勝もしています。22年からアメリカツアーに参戦し、初年度ですが今回初優勝しました。その彼女も含め、今週8月4日木曜日から全英女子オープンが開催されます。コースはプロのゴルファーでもなかなかプレーできないスコットランドのミュアフィールドです。

 

  このコースはスコットランドでもプレーすることが最も難しいプライベートコースと言われています。どのようなコースなのか、Wikipediaの冒頭を以下に引用します。

 

引用

ミュアフィールド(Muirfield)は、スコットランドイースト・ロージアンにあるゴルフ場であり、名門プライベートコースとして知られている[2]

ミュアフィールドは18世紀半ば(1744年)に作られたとされるリンクスコースであり、過去に16回の全英オープンの開催実績がある。1973年にはライダーカップが開催された。2007年には全英シニアオープンも開催され、このときはトム・ワトソンが優勝した。

ミュアフィールドは開場以来長らく女人禁制のポリシーを持ち、2016年5月にそのポリシー見直しのメンバー投票が行なわれたが投票総数の3分の2に2%足りず否決された。それを受け、全英オープンを主催するR&Aはミュアフィールドを全英オープンの開催コースから外した。その後、2017年3月に行われたポリシー見直しの再投票では80%が賛成し、273年目にして初めて女性会員が認められることになり、全英オープン開催コースのローテーションにも復帰した。

引用終わり

  とまあ、いわくつきのコースです。不思議なことにこのコースの名前には、ゴルフクラブだとかカントリークラブだとかがありません。英語名は

Muirfield、

The Honourable Company of Edinburgh Golfers

とだけあります。このカンパニー組織は世界で一番古いゴルフクラブと言われていています。

  私もここだけはプレーは無理だろうと思っていたのですが、投資銀行出身のゴルフ仲間から突然の誘いを受け、2015年にプレーすることができました。その時の様子を15年8月にブログにアップしましたが、今回再掲させていただきます。

 

引用 タイトル;リンクスツアー その3 あこがれのミュアフィールド

   今回のリンクス・ツアーのきっかけは、「ミュアフィールドへ行かないか」という友人Kimiさんの一言からでした。この友人は香港在住の日本人で、世界中の素晴らしいゴルフ場を2,000カ所プレーすることを目標としいて、すでに1,400カ所を達成しています。私は国内310カ所、海外90カ所くらいですので、彼の足もとにも及びません。彼のサイトはkimi golfの名で運営されていますので、興味のある方はどうぞご覧ください。

     その彼から一生に一度はプレーしてみたいと思っていたあこがれのミュアフィールドに誘われては、断るわけにはいきません。私は1997年にスコットランドに10日間ほどのリンクス・ツアーに出かけたのですが、その時はミュアフィールドをプレーすることができませんでした。

  ジャック・ニクラウスが1966年に初めて全英オープンを制したのがこのコースです。それ以来大のお気に入りで、自分の作った故郷オハイオのコースには本家から名前をもらってミュアフィールド・ビレッジと名付けたくらいです。去年松山英樹が勝ったメモリアル・トーナメントの舞台です。

   ミュアフィールドはエジンバラの東、車で40分ほどの距離にあります。その名を世界に轟かせているプライベート・クラブであるオナラブル・カンパニー・オブ・エディンバラ・ゴルファーズのホームコースです。敷居の高さもさることながら、コースの難度も世界一級であることは間違いありません。プレーをするにはゴルフ場にある高級ホテル、グレイ・ウォールズに3泊もしなければなりません。ペブルビーチやオールド・コース・ホテルは1泊すればそれぞれのコースでプレー可能だったと思います。グレイ・ウォールズ・ホテルにはシェ・ルーという名のフレンチレストランがあって、ゴルフをやらなくとも高級なオーベルジュとして楽しむことのできるホテルです。部屋数はたったの23部屋で、世界中のゴルファーが1年も前から予約を入れてその日を待つのです。我々も予約は昨年の10月に開始しました。

   このコースの印象を一言で言いますと、「気品あふれるリンクス」です。オープン開催コースにありがちな挑みかかるようなところはありませんし、フォトジェニックでもありません。しかしラウンドが始まると見方が一変します。

   我々ゲストはインコースの10番ホールからのスタートでした。10番は470ヤードもあるパー4。私のティーショットはフェアウェー左の250ヤード地点。リンクスではボールが実によくころがり、飛距離がすごく伸びたように感じます。キャディが「残りは215ヤードだけど、200ヤードくらいのクラブで十分だ」とのこと。私はグリーン左右のバンカーを意識して、そこまですら届かない7番ウッドを選択し安全を期しました。

  ショットは若干トップ気味で、途中にあるポットバンカーは越えましたが、自分の感覚としてはせいぜい170ヤードくらいしか飛んでいないだろうと思っていました。途中のバンカーの縁が盛り上がり、私にはボールの行方は見ることができませんでした。するとキャディが「Good shot!」というではありませんか。しかしグリーン方向に歩いて行くとボールがありません。キャディにどこかなと聞くと、あれだよと50ヤードも先のグリーン上のボールを指さし「バーディーチャンスだ」というのです。にわかには信じられないのですが、行ってみると確かに自分のボールでした。ティーショットも飛んでいましたが、7番ウッドのミスヒットが215ヤードも飛んで、ピンの真横4mにあるとは驚きです。そのパットを慎重に決めて、なんとミュアフィールドの最初のホールをバーディーでスタートしました。

 

  とまあ、実はすべてのショットはホールごとの詳細なマップの書いてあるコースガイド上に、使用クラブや当たり具合をしっかりとメモしてありますのでたどることができるのですが、みなさんにとってはどうでもよいことだと思いますので、以下省略します。

   最終結果を統計として記しますと、

・ティーショットのフェアーウェー・ヒット;14ホール中9ホール 64%

SWで出すような深いラフは1回だけで、あとはファーストカットか浅いラフでした。

・パーオン;3回 だけ

・パット数;34回  1パット3回、3パット1回、2パットが15回

・バンカー;4回つかまり、すべて1回で脱出成功

・スコア;バーディー1回、パー3回、ボギー10回、ダボ4回  トータル88回(パー71)

   全英オープン開催の名だたる難コースで80台のスコアは、自分としては上出来だったと思います。あこがれのミュアフィールドでのプレーは、十分に満足のいくプレーができました。

   ちなみに戦後のミュアフィールドでのオープン優勝者は、59年ゲーリー・プレーヤー、66年ジャック・ニクラウス、72年リー・トレビノ、80年トム・ワトソン、87年ニック・ファルド、02年アーニ―・エルス、13年フィル・ミケルソン。

  トレビノの勝った72年はニクラウスの絶頂期で、彼はこの年4月にマスターズに勝ち、6月に全米オープンを制し、年間グランドスラム達成かと騒がれましたが、メジャー3戦目7月の全英では1打差でトレビノに敗れました。ちょうど今年のジョーダン・スピースがマスターズと全米オープンを制し、3戦目の全英では1打差でプレーオフに進出できなかったのと同じです。

  ホテルでは最後の夜に1度だけシェ・ルーのフレンチをみんなで食べましたが、イギリスとは思えないほどの美味しいディナーだったことを付け加えます。

  このツアーに誘ってくれたkimiさんに感謝です。

引用終わり

 

  以上が私のミュアフィールド訪問記でした。

  今回初めて女子オープンを開催するミュアフィールドですが、誰が優勝するか今から楽しみです。ちなみに先週全英女子の前哨戦であるスコティッシュオープンで優勝した古江彩佳ですが、彼女のプレーしたダンドナルドリンクスは今世紀に入ってから新しいオープンしたコースです。そのためか彼女のショットはピンそばにビシビシとついていました。そのゴルフがミュアフィールドでも果たして通用するでしょうか。ガンバレ12人の日本女子ゴルファーたち。

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