NATOの首脳会議が終わりました。ウクライナ側は加入が認められず、将来の期限も示されなかったことに不満を表明していますが、現段階では逆に期限なしの支援継続をとりつけたことをよしとすべきでしょう。
バイデン大統領は会議後の会見で「プーチンはすでに負けている」と述べています。
7月13日のCNNからの引用です。
引用
バイデン米大統領は7月13日、訪問先のフィンランドで記者会見し、ロシアのプーチン大統領はウクライナでの戦争に「すでに負けた」と述べ、戦争は何年も続かないとの考えを示した。
報道陣からウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟がただちに認められないことはプーチン氏を大胆にさせる可能性があるかと問われたバイデン氏は「プーチン氏がウクライナでの戦争に勝つ可能性はない。すでに負けている」と答えた。
バイデン氏は、「ロシアはリソースをそれほど長く維持できないため、ウクライナでの戦争が何年も続くとは考えていない」と発言。また、「プーチン氏がゆくゆくは経済や政治などの観点からロシアにとって戦争は利益にはならないと判断するだろう」と指摘した。
バイデン氏は、ウクライナ軍が現在展開している反攻で前進し、交渉による解決につながることを望んでいると述べた。
引用終わり
この発言、私は実に現在の状況について的を射ていると思います。
そもそも開戦当初3日もあればウクライナ全土を手中に収められるという大きな見込み違いで始めた侵略戦争でしたが、1年以上たっても占領地は全土の2割に満たない面積でしかありません。侵略開始当初、北部からキーウに至る地域をロシアが占領しましたが、それらすべてをウクライナは奪還しています。
キーウに対して今は遠方からミサイルなどで民間人を殺りくする以外、攻撃はできていません。しょせん遠吠えにすぎません。そして東部や南部でも防戦のみで、占領地を拡大できていません。ウクライナ側も反撃の効果は考えていたほど順調ではないとおもいますが、プーチンの計算違いはけた違いです。
その上、東部の激戦地で戦っていたワグネルに武器弾薬を供給できずに、最も勇猛果敢なワグネル部隊を失ってしまいました。ウクライナも弾薬の補充をNATOの国々に要求していますが、ロシアの弾薬不足はもっと厳しいに違いなく、アメリカの情報機関を統括するヘインズ国家情報長官はすでに5月、議会上院の公聴会で、「ロシアは弾薬不足から防御しかできない」と指摘していました。戦況はまさにそのとおりに進んでいるように思えます。こうしたこともバイデンの「プーチンはすでに負けている」の裏付けの一つでしょう。
そしてバイデンが言っている「ロシアにとって戦争は利益にならない」というのもそのとおりで、プーチンも引くに引けないことにさぞかし焦りを感じているでしょう。そもそも自らの野心で始めた戦争で、クリミアの2匹目の大きなドジョウを狙ったものの、ドジョウどころかウツボが出てきて噛まれたのです。世界でプーチンを表立って支持しているのは、同病相哀れむベラルーシのルカシェンコくらいです。
そもそもこの戦争の違法性を、日本のウクライナ大使館はHPで以下のように指摘しています。たくさんありますが、そのまま引用します。https://japan.mfa.gov.ua/ja/news/62845-10-faktiv-pro-zbrojnu-agresiju-rosiji-proti-ukrajini
引用
ロシアはウクライナに武力侵攻し、国際法、二国間、多国間合意の基本的規範と原則に違反した。ロシアは、ウクライナへの武力侵攻という形で、以下に示す国際法の基本的規範と原則に違反した。
- 国連憲章(1945年)
- ヘルシンキ最終法(1975年)
- 国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言(1970年)
- 国連総会決議3314「侵略の定義」(1974年)
- 国家の国内問題への干渉の非許容性および国家の独立と主権の保護に関する宣言(1965年)
- 国家の国内問題への干渉および介入の非許容性に関する宣言(1981年)
- 国際関係における武力による威嚇又は武力の使用を自制する原則の効果の向上に関する宣言(1987年)
さらに、ロシアは以下に示す二国間協定や多国間協定に違反した。
- ウクライナの核不拡散条約加盟に関連する安全保障に関するブダペスト覚書(1994年)
- ウクライナとロシア連邦間の友好、協力、パートナーシップに関する合意(1997年)
- ウクライナとロシア連邦間のウクライナ-ロシア国境の合意(2003年)
- ウクライナとロシア連邦間のアゾフ海とケルチ海峡使用の協力に関する協定(2003年)
- ウクライナとロシア連邦間のウクライナのロシア黒海艦隊の地位と状態に関する合意(1999年)
ロシアの占領およびその後のクリミアとセヴァストポリの併合の試み、ドンバスにおけるロシアの違法行為は、国連総会決議「侵略の定義」(3314(XXIX))の附則3条а), b), c), d), e) ,g)に定めた侵略の定義に該当する。以下の行為は、国際平和に対する重大な犯罪であり、ロシア連邦は国家レベルの国際的責任を負い、ロシア指導部は国際的な刑事責任を負うものである。
引用終わり
大使館によるこの指摘は国際的に十分に通用するもので、ロシアの主張はほぼすべてが虚偽で、戦闘行為は違法です。
オランダのハーグに本部を置く国際刑事裁判所はすでに3月、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、プーチンに逮捕状を出しています。ロシアが占領したウクライナから子どもたちをロシアへと不法に移送し洗脳している容疑です。プーチンはこれによりプーチン側に立たない国々へ行くことができなくなっています。
以上、「プーチン負けたり」でした。